PM理論とは?リーダーシップ4タイプの特徴と強化法、活用例をわかりやすく解説

update更新日:2025.03.18 published公開日:2017.12.08
PM理論とは?リーダーシップ4タイプの特徴と強化法、活用例をわかりやすく解説
目次

PM理論は、リーダーに必要な能力を「目標達成」と「集団維持」という2つの軸で捉えた行動理論です。1966年に社会心理学者の三隅二不二によって提唱され、そのシンプルさと汎用性の高さから、半世紀以上にわたり様々な場面で用いられています。

本コラムでは、PM理論の基本的な考え方から実践的なリーダーシップ強化法、そして現代のビジネスシーンにおける具体的な活用事例まで、わかりやすく解説します。

PM理論とは

PM理論とは、リーダーシップを「目標達成機能(P:Performance)」と「集団維持機能(M:Maintenance)」という2つの行動特性で捉え、その組み合わせによってリーダーの類型を分析する理論です。

PM理論形成の背景

この理論が生まれた背景には、リーダーシップ理論の大きな転換があります。1940年代まで主流だった特性理論では、リーダーシップは生来の性格や個性といった先天的な特性によって決まると考えられていました。

しかし1940年代以降、リーダーシップは後天的に育成できるという行動理論が台頭。意識的な行動によってリーダーシップを身につけられるという考え方が主流となり、その代表的な理論としてPM理論が確立されました。

2つの機能の定義

PM理論における「P」と「M」の2つの機能は、以下のように定義されます。

【P機能(Performance):目標達成のための能力】

  • 具体的な目標を設定する
  • 計画を立てて指示を出す
  • 進捗を管理する

【M機能(Maintenance):集団を維持する能力】

  • メンバーとよくコミュニケーションをとる
  • 人間関係を良好に保つ
  • チームの雰囲気づくりを行う

PM理論の最大の特徴は、これら2つの機能の強弱によってリーダーを4つのタイプに分類し、各タイプの特徴を明確にした点にあります。この分類により、リーダーの特性を客観的に把握し、不足している部分を意識的に強化できるようになりました。

このPM理論の考え方は、現代のリーダーシップ育成理論やプログラムの土台となっており、多くの企業の人材育成に活用されています。

P機能とM機能の具体的な特徴

PM理論における2つの機能、「P:目標達成」と「M:集団維持」の具体的な行動や特徴をさらに詳しく見ていきましょう。

P機能の特徴

P機能(Performance function:目標達成機能)は、成果を上げるために発揮されるリーダーシップです。目標設定から達成までのプロセスを管理し、組織全体のパフォーマンスを向上させる機能を指します。

具体的には、以下のような行動が該当します。

  • 組織の目標を明確に示し、メンバーと共有する
  • チームの進むべき方向性を具体的に提示する
  • 業務の進捗状況を定期的にチェックし、必要な修正を行う
  • チーム統率のために適切な指導を行う
  • 業務の効率化を積極的に推進する
  • メンバーの成果を適切に評価し、建設的なフィードバックを行う

M機能の特徴

M機能(Maintenance function:集団維持機能)は、組織の人間関係を良好に保ち、チームワークを維持・強化するために発揮されるリーダーシップです。

具体的には、以下のような行動が挙げられます。

  • メンバーや部下一人ひとりへの気配りと積極的な声かけ
  • チーム内の良好なコミュニケーション環境の整備
  • メンバー間の対立が生じた際の調整と解消
  • 個々のメンバーの成長支援とモチベーション維持
  • チームの一体感を高めるための施策実施
  • メンバーの心身の健康状態への配慮

PM理論における4つのリーダーシップ分類

そしてPM理論では、P機能(目標達成)とM機能(集団維持)の強弱によって、リーダーシップを4つのタイプに分類します。それぞれのタイプの特徴を詳しく見ていきましょう。

PM理論における4つのリーダーシップ分類の図

「Pm型」(目標重視型)

P機能が強くM機能が弱い「Pm型」は、緻密な計画立案と徹底した進捗管理により、短期的な成果を上げることができます。しかし、集団をまとめる力が弱いため、長期的に見るとメンバーのモチベーションの低下やパフォーマンスの低下につながる可能性があります。

「Pm型」の主な特徴は以下の通りです。

  • 数値目標の達成に強いこだわりを持つ
  • 厳格な管理体制でチームを統率する
  • チーム内の人間関係への配慮が不足しがち
  • メンバーの心理的負担が増加しやすい
  • 長期的にはチームの疲弊や離職率上昇のリスクがある

「pM型」(人間関係重視型)

M機能が強くP機能が弱い「pM型」は、メンバー間の良好な関係づくりに長けています。「pM型」リーダーの強みとしては、

  • メンバーの声に耳を傾け、個々の成長を支援する
  • チーム内の対立を未然に防ぎ、良好な人間関係を構築する
  • メンバーの心理的安全性を重視する

などが挙げられます。

一方で、以下のような課題も抱えています。

  • 目標設定や戦略立案が不得意
  • 業績向上への具体的なアプローチが弱い
  • 過度な和を重んじるあまり、必要な改革が進まない

「PM型」(理想的バランス型)

P機能とM機能のどちらも強い「PM型」は、計画力、管理力があり、チームビルディングにも優れたリーダーです。以下の特徴を見てわかるように、目標達成への強い意志と、チームの維持・発展への配慮をバランスよく備えています。

  • 明確なビジョンと具体的な戦略を示せる
  • メンバーの自主性を尊重しながら成果を追求する
  • 個々の成長とチーム全体の発展を両立できる
  • 危機的状況でも冷静な判断と適切な対応が可能
  • 組織の持続的な成長を実現できる

「pm型」(未熟型)

P機能とM機能のどちらも弱い「pm型」は、リーダーとしての基本的な要件を満たしておらず、早急な改善が必要です。

  • 明確な方向性を示す力の向上
  • チームマネジメント能力の強化
  • 問題発生時の対応力の改善
  • リーダーとしての自覚と責任感の醸成
  • 計画立案力とコミュニケーション能力の向上

理想的なリーダーを目指すには、P機能とM機能の両方を高めることが重要です。特に、どちらか一方に偏りがちな場合は、特性を客観的に把握し、不足している機能を意識的に強化していく必要があります。

PM理論と他のリーダーシップ理論との違い

リーダーシップ理論は時代とともに進化し、様々な理論が提唱されてきました。PM理論の特徴をより深く理解するために、代表的な理論と比較してみましょう。

種類 特徴とPM理論との違い
SL理論(Situational Leadership Theory)
  • 部下の成熟度(レベル1~4)に応じて、教示型・説得型・参加型・委任型の4つのリーダーシップスタイルを状況に合わせて使い分ける理論
  • PM理論が自身のリーダータイプを把握し目標達成能力と集団維持能力を向上させることを目的とするのに対し、SL理論は部下一人ひとりの能力や習熟度に合わせてリーダーシップを変化させることを重視する
クルト・レヴィンのリーダーシップ理論
  • 1939年に社会心理学の先駆者であるクルト・レヴィンによって提唱された理論
  • リーダーシップスタイルが集団の行動や成果にどのような影響を与えるかを研究し、「専制型・民主型・放任型」の3つに分類した
  • レヴィンの「アイオワ研究」で実証された民主型リーダーシップの有効性を、三隅二不二が日本での15万人規模の追試実験を通じて目標達成と集団維持の2軸で体系化し、PM理論として確立させた
ダニエル・ゴールマンの「EQ型」リーダーシップ理論
  • ビジョン型・コーチ型・関係重視型・民主型・ペースセッター型・強制型の6つのリーダーシップスタイルを状況に応じて使い分けることを提唱する理論
  • 感情知性(EQ)に基づき、メンバーの感情を適切に理解・管理することで組織の生産性と活力が高まると考える
  • PM理論が行動面での評価に重点を置くのに対し、「EQ型」リーダーシップ理論は組織内の人間関係やモチベーションなどの感情面に特化している

各理論にはそれぞれに特徴と活用場面があり、一概にどの理論が優れているとはいえません。PM理論の強みは、目標達成と集団維持という2つの軸でリーダーシップを捉えるシンプルな枠組みにあり、他の理論と柔軟に組み合わせて活用できる点です。

企業の規模や業態、組織文化、時代背景によって求められるリーダーシップは異なります。そのため、自社の経営戦略や直面する課題を見極めたうえで、最適な理論を選択し実践することが重要です。

コラム「リーダーシップとは何か?理論や種類、要素と高める方法」はこちら

PM理論に基づくリーダーシップの強化方法

理想的な「PM型」リーダー育成に向けて、P機能(目標達成)とM機能(集団維持)をそれぞれどのように伸ばしていけばよいのでしょうか。具体的な方法を見ていきましょう。

P機能を伸ばすために必要な取り組み

P機能の強化には、「ゴール設定」と「行動管理」という2つの要素が重要となります。

【P機能の強化ポイント】

項目 具体的な取り組み
ゴール設定
  • 組織全体の方向性を正確に理解する
  • チームの役割とゴールを具体的に設定する
  • メンバーにゴールや役割を繰り返し伝える
  • 達成に向けた具体的なステップを示す
行動管理
  • メンバーに行動目標を設定させる
  • 適切な間隔で進捗確認を行う
  • 必要に応じて軌道修正を実施する
  • 成果に対する適切なフィードバックを行う

1つ目のゴール設定については、まずはリーダーが会社(組織)全体の目指すべき方向性を理解し、「自チームの役割や目指すべきゴールは何か」を的確に把握することが大前提となります。そのうえで、自チームのメンバーがゴールへの意識を常に高く持てるよう、繰り返しゴールや役割を伝える、またゴールを達成するためにやるべきことをかみ砕いて伝える必要があります。

しかし、"伝える"だけではそう簡単に目標は達成できません。そこで2つ目の要素である行動管理、「ゴールに向けた行動を徹底させる」ことが大切になってきます。このような取り組みを続けることで、P機能を伸ばしていくことができます。

M機能を伸ばすために必要な取り組み

一方、M機能の強化には、「縦」と「横」の2つの人間関係の軸に注目する必要があります。

「集団をまとめる」ために必要な要素は多数ありますが、ここでは「上司対メンバー」という縦の人間関係と、「メンバー対メンバー」という横の人間関係の2つに分けて考えていきます。

【M機能の強化ポイント】

項目 具体的な取り組み
縦の関係強化
(上司とメンバー)
  • 定期的に1on1面談を実施する
  • メンバーとキャリアビジョンを共有する
  • 日常的に声かけと傾聴を実践する
  • 高圧的にならない接し方を意識する
横の関係強化
(メンバー間)
  • 全員参加型の会議にする
  • メンバー同士が価値観を共有できる場を設ける
  • チーム内での情報共有を促進する
  • 業務外でのコミュニケーション機会をつくる

まず縦の人間関係においては、例えば月に一度の面談時間をしっかり確保してメンバーの思いを確認する、キャリアイメージを共有することで、信頼を獲得していくという方法があります。また、メンバー一人ひとりに日常的に声をかける、メンバーから声をかけられたときは手を止めて真剣に聞く、高圧的な態度にならないよう意識することも、縦の人間関係を良好に保つための大切なポイントです。

横の人間関係においては、例えば会議の場でチーム全員に考えを発表してもらう、メンバーの人となりや仕事において大事にしていることを共有する場を設けるなどの取り組みが有効です。ときには懇親会を開催するなど、業務と離れた場でコミュニケーションを取ることもよいでしょう。

このように、縦の人間関係と横の人間関係双方を強化することで、M機能を伸ばすことができます。

PM理論を活用して組織力を向上させる方法

ここまでPM理論によるリーダーシップ像のパターン分けや、それぞれの機能の伸ばし方について説明してきました。PM理論は、組織の運営力を高め、チーム全体の成果を向上させるために効果的なツールです。ここでは、実際の企業での活用事例を3つご紹介しながら、組織力を高めるためのポイントを解説します。

(1)リーダー候補者の強み・弱みの整理

自社・自組織のリーダー候補者を選抜し育成する際に、対象者それぞれの強み・弱みを整理することがあります。このときP機能とM機能に分けて強み・弱みを整理することで、候補者それぞれの現状と今後の育成ポイントが特定しやすくなります。また、各ポジションに誰を配置するべきかなどの判断もしやすくなるでしょう。

そのほか、現役のリーダーが自己評価を行う際にも、この2つの機能を軸に振り返ることで自身の強みや改善点を客観的に把握できます。

(2)リーダー像言語化の切り口として活用

組織の成長に伴い、「求められるリーダー像」を具体的に示すことが重要になってきます。このとき、以下の表のようにP機能とM機能の2つの切り口から考えることで、バランスの取れたリーダー像を描くことができます。

【理想的なリーダー像の定義】

項目 具体的な取り組み
目標達成力(P機能)
  • 目標を適切に要素分解し、適切な中間指標・中間目標の設計ができている
  • 目標達成のための実行計画を厳密に組み立て、実行している
  • 実行を徹底するために、適時適切な進捗管理・介入をしている
  • 組織ルールを率先して遵守し、メンバーにも守らせている
組織維持力(M機能)
  • メンバー間の人間関係や対立などにアンテナを張り、課題があれば解消している
  • 前向きな言動でチームを鼓舞し、組織の一体感をつくり上げている
  • メンバー一人ひとりを気づかい、頻繁に声をかけて適切にフォローしている
  • メンバーごとの持ち味に応じた役割を付与し、高い意欲で業務に取り組ませることができている

このように、P機能とM機能の視点で人材要件を整理することで、新任リーダーの育成計画や評価基準の設計にも活用できます。また、部門や職種によって求められるP機能とM機能のバランスは異なるため、配置や登用の判断材料としても有効です。

(3)リーダーシップバランスの組織診断への活用

PM理論を活用すれば、組織のリーダーシップバランスを簡単に診断できます。自社のリーダー陣を4つのタイプにマッピングすることで、組織全体のリーダーシップの特徴や課題が見えてくるでしょう。

例えばM機能が弱い(「PM型」「pM型」のリーダーが少ない)場合、長期的な組織発展が難しい可能性があります。もしかすると、離職率が高い、社員間の対立が多く組織がぎくしゃくしている、などの事象が既に現れているかもしれません。

逆にP機能が弱い(「PM型」「Pm型」のリーダーが少ない)組織だと、社員同士の仲は良いものの、お互いに指摘することを遠慮しがちで、高い成果を上げることができないといった"なれ合い組織"に陥ってしまっている可能性があります。

マッピングをもとに自社・自組織の組織バランスを検証し、課題をあぶり出すことで、組織体制の改善・強化につなげていくとよいでしょう。

「PM型」のリーダー育成に向けて

今回のコラムでは、PM理論の定義を確認しながら、P機能、M機能を伸ばす方法と、PM理論の活用例をご紹介しました。PM理論の考え方や、その理論を人材育成や組織運営に活用する方法はご理解いただけましたでしょうか。また、"理想のリーダー"に近づくためのヒントはつかんでいただけましたでしょうか。これならできる、これはやらないとまずい、と思ったものがあれば、本コラムを参考にぜひ今日から試してみてください。

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