リーダーシップとは何か?理論や種類、要素と高める方法
リーダーシップは、ビジネスの現場で欠かせない重要なスキルです。リーダーシップの役割や必要性を理解することは、チームの成功に直結します。
本コラムでは、リーダーシップの定義からその理論や歴史をわかりやすく解説。リーダーシップが高い人の特徴、高める方法もご紹介します。
リーダーシップとは
「リーダーシップ(leadership)」に関する理論は多岐にわたり、時代やビジネス環境によって様々な定義がなされてきました。
まずは、多くの理論に共通するリーダーシップという言葉の意味をおさえましょう。さらに、より明確なイメージをつかむため、リーダーシップとマネジメントの違いも簡単に解説します。
リーダーシップの定義
リーダーシップとは、一言で言えば「目標を達成するために、組織を導く力」のことです。日本語では「統率力」「指導力」とも言い換えられます。
古くは、リーダーシップは生まれ持った資質や特性と考えられていました。しかし、研究が進むにつれ、現在では後天的に身につけて発揮できるスキルの1つとされています。
「現代経営学の父」と呼ばれるピーター・ドラッカーは、リーダーシップは「カリスマ性のような資質ではなく、仕事」とし、著書「現代の経営」には「人の視線を高め、成果の基準を上げ、通常の制約を超えさせるものである」と記しています。
リーダーシップとマネジメントとの違い
リーダーシップとマネジメントはどちらも組織やチームを成功に導くうえで重要ですが、その役割は異なります。
リーダーシップは、目標達成に向けてメンバーに働きかけ、意欲を引き出すスキルです。明確なビジョンや方向性を示し、組織を導きます。
一方、マネジメントはプロジェクトや業務の計画、進行、成果などを管理するスキルです。チームの力を最大限に活かし、状況に応じて軌道修正を行うなど、手段を見極め、チームを運営します。
リーダーシップとマネジメントは、必要とされるタイミングが異なります。リーダーシップは新しいプロジェクトの発足や、進捗が停滞している際に求められます。一方で、マネジメントは組織の方向性が定まった後に必要とされることが多いでしょう。
リーダーシップ理論の歴史
リーダーシップ理論は、時代とともに変化してきました。その歴史を知ることで、リーダーシップには多様なアプローチがあることがわかります。ここでは、代表的な4つの理論を年代順にご紹介します。
特性理論
特性理論は1940年代まで活用されていた、最も古典的なリーダーシップ理論です。この理論では、「リーダーシップは生まれつきの能力や特性によるもの」とされ、研究者たちは優秀なリーダーに共通する特性を特定しようと試みました。
しかし、研究が進むにつれて、個人の先天的特性だけではリーダーの特徴を十分に説明できないことが明らかになり、別の要因が模索されました。代表例として、ストッグディルの特性論が挙げられます。
行動理論
1940年代~1960年代には、「リーダーシップは適切な行動によって発揮されるもの」とする行動理論が台頭しました。チームに影響を与えるリーダーの行動が分析され、複数の理論が生まれました。代表例として、後述するPM理論があります。
条件適合理論
条件適合理論は、1960年代〜1980年代に注目された理論です。万能で完璧なリーダーは存在せず、リーダーが取るべき行動は組織が置かれた状況によって異なることを前提としています。代表例として、後述するSL理論が挙げられます。
コンセプト理論
コンセプト理論は、条件適合理論を発展させたもので、現代、主流となるリーダーシップ理論です。環境や組織に合わせて、適したリーダーシップをとることを重視しています。
コンセプト理論には、主に以下の5タイプがあります。
理論 | 特徴 | 代表的な人物 |
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カリスマ型リーダーシップ |
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変革型リーダーシップ |
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EQ型リーダーシップ |
EQ(Emotional Intelligence Quotient)は感情知能を意味する |
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ファシリテーション型リーダーシップ |
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サーバント型リーダーシップ |
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リーダーシップの種類
リーダーシップには、多くの種類があります。ここでは以下の代表的な4つの考え方について解説します。
- PM理論
- SL理論
- クルト・レヴィンの3つのリーダーシップ
- ダニエル・ゴールマンの6つのリーダーシップ
1つずつ見ていきましょう。
PM理論(Performance and Maintenance Theory)
PM理論とは、リーダーシップで重視する機能を目標達成機能(P:Performance)と集団維持機能(M:Maintenance)の2軸で考えた理論です。
P機能は、目標達成のためにリーダーが行う計画や指示などの活動で、生産性や業績向上を目指す機能です。一方、M機能は、チーム内の人間関係や協力を維持・強化するためのリーダーシップを指し、集団の調和を保つ役割があります。
PM理論では以下の図のように、P機能とM機能のバランスに応じてリーダーシップを4つのタイプに分類しています。
SL理論(Situational Leadership Theory)
SL理論は状況(S:Situational)に応じたリーダーシップ(L:Leadership)で、部下の成熟度に応じてリーダーシップの種類を使い分けることを示しています。
部下の成熟度は4段階に分けられ、最も低い1から最も高い4までそれぞれ異なるアプローチが求められます。
部下の習熟度 | リーダーシップの種類 | 特徴 |
---|---|---|
1 | 教示型リーダーシップ | 具体的な指示と指導を行い、細かく監督する |
2 | 説得型リーダーシップ | 論理的に情報を伝えて説明し、疑問に答える |
3 | 参加型リーダーシップ | メンバーが考えをまとめて意思決定や問題解決に取り組めるよう、協力する |
4 | 委任型リーダーシップ | メンバーに意思決定や問題解決など仕事の遂行を任せる |
経験豊富な人材に対しては「委任型」を用いるなど、部下のスキルによって4種類のリーダーシップを使い分けると、無理のないステップアップが期待できます。
クルト・レヴィンの3つのリーダーシップ
「社会心理学者の父」とよばれたクルト・レヴィンは、1939年に3種類のリーダーシップを提唱しました。リーダーとメンバーの関係性によって、分類されています。
リーダーシップの種類 | 特徴 |
---|---|
専制型リーダーシップ |
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民主型リーダーシップ |
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放任型リーダーシップ |
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上記3つのリーダーシップは、プロジェクトの状況に応じて使い分けることが大切です。プロジェクトの初期段階ではビジョンや進め方を明示するために、専制型や民主型が効果的です。
チームの自主性が高まってきた段階で放任型へ、課題発生などで検討が必要になった場合は民主型へ移行するなど、柔軟に対応するとよいでしょう。
ダニエル・ゴールマンの6つのリーダーシップ
米国の心理学者ダニエル・ゴールマンは、EQ(Emotional Intelligence Quotient)型リーダーシップという6種類のリーダーシップを提唱しています。どれか1つが「理想」というわけではなく、状況に応じて使い分けることが推奨されています。
リーダーシップの種類 | 特徴 |
---|---|
①ビジョン型リーダーシップ |
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②コーチ型リーダーシップ |
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③関係重視型リーダーシップ |
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④民主型リーダーシップ |
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⑤ペースセッター型リーダーシップ |
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⑥強制型リーダーシップ |
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①~④はチームの育成や業績向上に適したリーダーシップとされています。
例えば、チームビルディングなど初期段階では、メンバー間の信頼関係を築くために「③関係重視型リーダーシップ」が有効です。
対して、既に熟練したチームであれば、自主的な行動を促す「①ビジョン型リーダーシップ」が効果的でしょう。⑤、⑥は状況によっては有用ですが、チーム内で摩擦を生む可能性があるため、慎重に使う必要があります。
現在の状況を分析し、どの型が最も効果的か、メリット・デメリットを考慮して選択しましょう。
ビジネスにおけるリーダーシップの必要性
組織の目標達成において、リーダーシップは欠かせません。リーダーシップがどのように機能するかを理解することで、チームの成功をより確実なものにできるでしょう。ここでは、リーダーシップが必要な主な理由を2つご紹介します。
(1)方向性の統一のため
リーダーシップの重要な役割の1つは、組織が進むべき方向を明確に示し、チームをゴールに導くことです。リーダーは、メンバーが同じ方向に進めるよう、具体例を示す必要があります。全員が目標を共有することで、組織の結束力が強化されます。
一方で、方向性が曖昧なままでは、メンバー間に意識のズレが生じ、それが積み重なって組織全体に影響を与えることがあります。こうした問題を防ぐためにも、リーダーがビジョンを明確に伝え、全員がその意義を理解することが重要です。
(2)変化に耐える組織をつくるため
「VUCAの時代」と呼ばれる現在、ビジネスを取り巻く環境は日々激しく変化しています。こうした先行き不透明な状況でも、企業は安定した経営を維持し、成長し続ける必要があります。組織が変化に柔軟に対応し、生き残るためには、方向性を示し、チームを導くリーダーシップが不可欠です。
また、価値観や働き方の多様化により、社員が企業に求めることも多岐にわたります。人材の流動化や新しい働き方にどう対応するかについても、リーダーは適切な指針を示さなければなりません。
リーダーシップは、このような激しい変化に耐えられる組織づくりにおいて、極めて重要な役割を果たします。
リーダーシップが高い人の特徴
リーダーシップが高い人は、チームを率いて目標達成をサポートするだけでなく、メンバーの信頼を得ながら組織を強化します。ここでは、良いリーダーに共通する特徴をいくつかご紹介します。
相手を尊重し、寄り添う
リーダーシップがある人は、チームのメンバーを尊重し、一人ひとりの意見に耳を傾けます。悩みやトラブルを抱えるメンバーに対しては、寄り添いながらともに解決策を考えます。こうした姿勢が、チーム内の信頼関係を築き、メンバーの意欲を自然と引き出すのです。
迅速に決断し、行動する
優れたリーダーシップを発揮する人は、迷うことなく迅速に決断を下し、即座に行動する力を持っています。適切なタイミングで決断することで、チームの効率を高め、目標達成をサポートします。
コミュニケーション能力が高い
リーダーシップが高い人の特徴として、コミュニケーション能力の高さが挙げられます。
優れたリーダーは、自分の考えを明確に伝え、状況に応じて説得や励ましなど、多様なコミュニケーションスタイルを使い分けます。メンバーとの双方向のコミュニケーションを通じて、信頼関係を築きます。
誠実で責任感が強い
リーダーシップが高い人は、誠実で責任感があります。嘘をつかず、約束を守るため、常に信頼できる存在です。困難に直面しても逃げずに対応し、自分のミスにも責任を持って行動します。こうした姿勢が、メンバーからの信頼獲得につながり、チームの結束力を高めます。
精神的に安定している
優れたリーダーの多くは、困難な状況でも冷静さを保ち、柔軟に対応できます。リーダーの精神的な安定は、チーム全体に安心感を与え、信頼を深める大きな要素となります。
学び続けている
リーダーシップが高い人は、常に新しい知識やスキルを学び、自己成長を続けています。変化の激しいビジネス環境でも、学び続ける姿勢が組織に良い影響を与え、チームを前進させる原動力となります。
リーダーシップを発揮するための4つの重要要素
適切なリーダーシップを発揮するには、様々な知識やスキルが必要です。その中で、特に重要な要素が以下の4つです。
- ビジョニング
- チームビルディング
- コミュニケーション
- 意思決定
それぞれの要素について詳しく解説します。
ビジョニング
ビジョニングとは、組織の将来像を明確に描くことです。短期的ではなく、長期的な視点で、目標達成のためにどのように進むかを示します。
リーダーは設定した目標や方向性を具体的な形に落とし込み、チームを導きます。目標を定める際には、経営トップ層がリーダーに対して何を期待しているのかを把握することも重要です。
チームビルディング
チームビルディングとは、目標達成に向けて一丸となって働く強固なチームをつくることです。ビジョンや方向性を的確に伝え、適材適所の役割分担やメンバー同士の円滑なコミュニケーション促進などに取り組みます。
万が一、メンバー同士が対立する場合は、リーダーがメンバーの相互理解を深め、不満や不信感を解消することが大切です。こうした状況を乗り越えることで、チームがよりスムーズに機能し、最終的には成果へとつながる組織へと成長します。
コミュニケーション
チームにビジョンや方向性を浸透させ、メンバーとの信頼関係を築くためには、コミュニケーションが欠かせません。チームの発足やプロジェクトの開始時期には、情報共有や相互理解が円滑に進むよう、リーダーには高いコミュニケーション能力が求められます。
また、業務を進めるうえで報連相への対応やメンバーへのフィードバック、他部署との連携など、様々な場面でリーダーは相手の話に耳を傾け、自分の見解や決定を伝える必要があります。
近年は対面や電話だけではなく、メールやチャット、オンライン会議システムなど、コミュニケーション手段も多様化しています。適切なタイミングで適切な手段を選び、コミュニケーションを行うことが重要です。
意思決定
意思決定はリーダーシップを発揮するために重要な要素です。リーダーは自分の業務だけでなく、メンバーの業務に対する判断や、チームの運営、他部署との調整など、様々な判断や決定を行う必要があります。
適切な意思決定を行うためには、信頼性の高い情報を収集し、それを的確に分析・評価しなければなりません。日頃からチームの状況やメンバーの様子、報連相の内容に注意を払い、過去のデータや業界の動向などを総合的に考慮しながら判断することが重要です。
リーダーシップを高める方法
リーダーシップは、意識して取り組むことで後天的に身につけられる能力です。昨今は、経営層や管理職だけでなく、一般社員にもリーダーシップが求められています。自社や自部署に必要なリーダーシップを見極め、そのスキルをどう高めるかを探っていきましょう。
ここでは、リーダーシップを高めるための4つの方法をご紹介します。
自分のチームに合うリーダーシップを見つける
これまで見てきたように、リーダーシップには様々な種類があり、どれか1つが正解というものではありません。チームの状況やメンバーの特徴に応じて、最適なリーダーシップを選び、発揮することが重要です。
まず、効果的なリーダーシップを見極めるための4つのステップをご紹介します。
①成功しているリーダーの強みを分析
自社で活躍しているリーダーの能力や強みを洗い出します。どのようなスキルや行動が役立ったかを、具体的にリストアップして確認しましょう。
②チームへの影響を評価
洗い出したリーダーの能力や強みが、どのようにチームや会社に貢献したのかを客観的に評価します。
③外部環境と経営戦略を確認
現在の自社を取り巻く外部環境や今後の経営戦略を確認し、必要となるリーダーシップを検討します。
④リーダーシップを決定
これまでの分析をもとに、チームに合うリーダーシップスタイルを選び、実践します。
効果的にコミュニケーションを取る
いずれのリーダーシップスタイルを選択するにしても、コミュニケーション力は欠かせません。特に、相手の話を深く聞き、理解する「傾聴力」を高めることで、信頼関係を築く基盤ができます。傾聴する際は、目を合わせる、うなづく、ボディランゲージを加えるなど、相手が安心して話せる環境を整えることが大切です。
話し方では、話すスピードや声のトーンを工夫する、難しい内容をわかりやすく伝えるなどのスキルが求められます。また、リーダーが自分の考えや情報を適度に開示し、安心感を与えることで、メンバーとの信頼関係を深められます。
フィードバックでは、感情的にならず、冷静に適切な言葉を選ぶことを意識してください。
日常的に情報収集と意思決定を行う
リーダーシップを発揮するうえで、情報収集と意思決定は欠かせないスキルです。日常のタスクや課題を通じて、分析・判断・意思決定の練習を積み重ねることで、いざというときに正確な判断ができます。
具体的には、目の前のタスクや課題に対して、複数の処理の方法を考えてみましょう。情報収集では、どのような人物や媒体から情報を得るか、どのようなテーマで調べるかを検討し、最も効果的だと思う方法を実践します。
その結果を振り返り、確認することで、より精度の高い適切な判断や意思決定を行えるようになります。
研修でリーダーシップを磨く
リーダーシップを高めるためには、研修の活用も有効です。研修では、日常の行動を振り返り、自身のリーダーシップスタイルを見直すことで、新たな視点が広がります。また、実践的なケーススタディにより、リーダーシップのスキルを強化できます。
さらに、他の参加者とのディスカッションを通じて、新たな気づきも得られるでしょう。
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