次世代リーダーの育成方法とは|求められる要件と8つのステップ

update更新日:2022.01.20 published公開日:2019.01.24
目次
企業が存続し、また価値を生み出し続けるためには、組織と事業を力強く引っ張っていくリーダーの存在が必要不可欠です。10年後、20年後の将来、この人に会社を任せたい、と思う人をすぐに思い浮かべることができますか?

本コラムでは、会社の将来を担うリーダー、すなわち「次世代リーダー」をどのように選抜し、またどのように育てていけばいいのか、次世代リーダーの育成ポイントをご紹介します。

今の時代に求められる「次世代リーダー」とは?

そもそも、次世代リーダーとはどのような人材を指すのでしょうか。次世代リーダーとは一般的に、「企業の次世代を担う経営幹部や将来の経営者候補」と定義されます。簡単に言うと、「会社の将来を担うリーダー」と表すことができます。

特に、高度情報化や科学技術の進歩、少子高齢化や人材の多様性の高まり、そしてコロナ禍による急速な働き方の変化など、企業を取り巻く環境が目まぐるしく変化する今の時代、このような変化に柔軟かつスピーディーに対応できるリーダーこそが、次世代リーダーと言えるのではないでしょうか。

しかし、そのようなリーダーを育成することは簡単なことではありません。実際に当社のお客さまの中にも、次世代リーダーの育成に苦戦されている企業が多くいらっしゃいます。では、なぜ次世代リーダーの育成は難しいのか。まずはその理由から確認していきましょう。

次世代リーダー育成がうまくいかない4つの理由

次世代リーダーの育成がうまくいかない背景には、「育成の取り組み自体が推進しづらい」ことがあります。その理由として、次の4つが考えられます。

1.経営戦略の中で優先順位が低くなりやすい

次世代リーダーが学ぶべきテーマは、リーダーシップやマネジメント、経営知識など多岐にわたり、それ故、学習時間も知識を身につけるまでにかかる時間も長くなります。また、育成期間中は周囲の協力も不可欠で育成の負担がかかってしまうだけでなく、プレイヤーとして活躍している人材を現場の業務から離したくないといった懸念から、育成の取り組みが後回しにされることが多いのが実情です。

2.次世代リーダーを育成する体制が整っていない

次世代リーダーを育成するには、ストレッチな業務のアサインや育成部隊の編成、人事評価・教育制度の構築など、様々な取り組みが必要です。経営資源に限りがある企業では、次世代リーダーを育成するだけの体制を整えられないことも少なくありません。

3.次世代リーダーの選定基準や選定方法がわからない

「そもそも、どのような基準でどのように候補者を選定すればいいのかわからない」という理由から、次世代リーダーの育成計画が進まず立ち止まってしまうケースもあります。

4.育成の効果が見えづらい

次世代リーダーの育成に取り組んでも、学んだ知識を実践する環境を用意することは容易ではありません。実践するまでに時間が空いてしまうと、せっかく学んだ内容を忘れてしまい、取り組みの効果が薄れてしまいます。また、「何をもって育ったとするのか」、効果検証の基準を設けにくく、効果そのものを実感できないことが、次世代リーダー育成が敬遠される要因となってます。

このような理由から、次世代リーダーの育成は後回しにされがちですが、育てようとしなければ、いつまでたっても次世代リーダーは育ちません。ここから紹介する8つのステップを踏んで、少しずつでも育成を進めていくことが大切です。

次世代リーダー育成の8つのステップ

次世代リーダーの育成で必ず頭に入れておきたいのは、長期目線で計画的に考えること。前述した通り、次世代リーダーの育成効果はすぐに現れるものではないからです。各候補者の適性や能力を観察して見極め、様々なリスクヘッジを考え、また長期的かつ計画的に育成していくことが次世代リーダー育成の重要なポイントです。早速、8つのステップを見ていきましょう。

次世代リーダー育成の8つのステップ

Step1:ゴール設定

繰り返しになりますが、次世代リーダーの育成は時間がかかるため、長期的な周囲の協力が欠かせません。周囲の協力を得るには、まずは「なぜ次世代リーダーを育成する必要があるのか」という理由・ゴールを明確にし、関係者に周知して意識を統一する必要があります。

Step2:条件・要件の明確化

次は、具体的にどのような人材になってほしいのか、次世代リーダーに求める条件・要件を明確化するステップです。それにより、計画的な育成を実行に移しやすくなります。

次世代リーダーに求められる条件・要件は様々ありますが、一般的には、1.企業を率いるリーダーシップ力、2.ビジョンを実現するマネジメント力、3.経営管理に関する知識の3つに分けることができます。

1.企業を率いるリーダーシップ力
次世代リーダーには、自社だけでなく、社会全体の動きを読み、これからの時代において何をすべきか判断する力が求められます。また、ビジネスの推進だけでなく、周囲の人が理解し、共感してくれるようなビジョンを設定する力も必要です。そのビジョンを浸透させるには、「この人の言うことならついていきたい」と思ってもらうことが重要。そのため、熱意をもってビジョンを伝え続け、日々の自身の言動を律し、日ごろから周囲と信頼関係を築いておくことも欠かせません。

2.ビジョンを実現するマネジメント力
どんなに素晴らしいビジョンを設定しても、具体的なプランに落とし込まない限り実現はできません。ビジョンを具現化するためのプランニングをしっかり行い、計画を先導して実行し、最後までやり切る・やり切らせる力が必要です。また、現場で起きている様々な問題に対し、本質的な課題は何かをつかみ、適切な解決策を打ち出す力も求められます。

3.経営管理に関する知識
次世代リーダーには、経営に関する幅広い知識が求められます。事業別組織や機能別組織など、企業戦略に基づいた組織設計をするための知識だけでなく、勤怠管理やハラスメント防止、メンタルヘルス対策など、人事・労務の知識も必須。また、適切な経営のかじ取りをするための財務知識、会社の信頼性を守るための情報セキュリティの知識も不可欠です。

これら3つの条件・要件を表にまとめていますので、参考にしてください。

次世代リーダーに求められる3つの要件

1.企業を率いる
リーダーシップ力
2.ビジョンを実現する
マネジメント力
3.経営管理に関する知識


先見性

判断力

ビジョン
設定力

ビジョン
浸透力

熱意

周囲からの信頼


戦略、
戦術設計力

推進力

実行力

課題解決力


組織運営

人事・労務

財務・会計

情報
セキュリティ

コンプライアンス

Step3:候補者の選抜

次世代リーダーに求める条件・要件が明確になったら、次は育成対象者の選抜です。次世代リーダーの選抜は、現状の実務能力や評価結果だけでなく、意欲や基礎能力など、将来のポテンシャルを盛り込むことが重要です。

選抜方法としては、一般的に部門長による推薦が多いですが、この場合、顕在化した能力のみで判断されてしまいがちで、潜在的な能力(将来性)が判断軸からもれる可能性があります。そのため、次世代リーダー候補者を全員リストアップし、徐々に絞っていく「ロングリスト・ショートリスト方式」を用いる、また挙手制(自薦)で募ることも視野に入れておくとよいでしょう。

Step4:トレーニング、育成計画の設計

候補者が決まったら、実際にどのような育成を行うか、本人の強み・弱みを明らかにしながら、育成計画を立てていきましょう。ここでは、計画に盛り込みたい2つの育成方法をご紹介します。

経営知識を身につけるためのトレーニング(Off-JT)
Step2で紹介した次世代リーダーに求められる要件に基づき、「社外研修」や「社長塾」などを通して学ぶ機会を設けます。今までの経験では習得できなかったような、決断力や実行力、先見性や洞察力を磨くような研修や、異業種の同じ立場の方との交流を通し、新しい時代を生き抜くための知識を習得する機会を設けることが重要です。

実践経験を積むストレッチアサインメント
次世代リーダーに欠かせない胆力や判断力は座学だけでは身につきません。配置異動(例:子会社の社長)や、部門横断のプロジェクト、新規事業の立ち上げなど、数々の修羅場経験を意図的に積ませることも必要です。現在の実力では達成困難と思われるようなより難しい役職やポジションをあえて任命する「ストレッチアサインメント」によって、経営者としての器を育てることができます。

Step5:役割・期待の伝達

候補者が厳しい環境の中でも意欲的に学び続けるには、動機づけと期待の伝達が欠かせません。育成計画を立て、それを実行に移す前に、「なぜこれをやるのか」「なぜあなたなのか」「どのようなメリットがあるのか」などを明確に伝えましょう。

Step6:トレーニング実施

ここまで来て初めて実践です。Step 4で設計した計画を実施します。次世代リーダーのトレーニングは、先にも述べたように、期間が基本的には長期間となる場合が多いため、根気強く実施を推進し続けることが何より重要です。育成施策自体は、どのような業務にアサインするかによっても大きく変わりますが、どの施策であっても「個々人の成長と成果」を重視したプログラムであることがポイントとなります。

Step7:モニタリング

Off-JTの取り組みも修羅場経験のアサインも、やりっぱなしではいけません。Step 1で設定したゴールに近づいているか、ストレッチアサインメントを乗り越えられそうかなど、継続的にモニタリングすることが重要です。自分自身でしっかり振り返りをしてもらうだけでなく、本人にとって負担になりすぎていないかなどのフォローを入れるようにしましょう。ポストによっては、経営層がメンターとなり、本人の課題に対する個別指導を実施するなどの方法も検討できると、育成効果も高まるでしょう。

Step8:改善策の検討

モニタリングの結果、問題や課題が発生した場合は改善策を検討します。次世代リーダー育成の仕組み自体を見直したり、本人への動機づけを再度行ったり、仕組みと個人の両方の視点を持って改善策を検討することが肝要です。

急に全部は難しい...それならまずはここから!

この8つのステップを長期的な目線で計画・実践することで、確実に次世代リーダーを育成することができます。しかし、最初から全てのステップを踏まえて実行するのは難しいという方もいらっしゃるかと思います。そう感じた方は、まずは以下3つのうちから実践してみてください。

1.次世代リーダー育成の目的の明確化
Step1でもご紹介した通り、周囲の理解・協力がないと次世代リーダーの育成はできません。次世代リーダーを育成することが必要な理由やゴールを明確にし、協力者を増やしていくことが、次世代リーダー育成の第一歩です。

2.候補者の選抜
誰を育成するかが決まれば、育成方針や具体的な取り組みを決めやすくなります。Step3では、選抜方法として自薦、他薦、ロングリスト・ショートリスト方式、また選抜基準として実務能力や上司の評価、将来のポテンシャルなどの要素に触れました。これら方法や基準には"絶対のもの"があるわけではないため、自社に合った選抜方法や選抜基準を見つけていきましょう。

3.ストレッチアサインメント
ストレッチアサインメントが成功すると、仕事を与えられた本人は大きな自信を得ることができます。また、仕事を与える側としては、その社員が「難易度の高い仕事に粘り強く取り組み、問題を解決できる人材」であることがわかり、次世代リーダー候補者の見極めにもつながります。ストレッチな仕事の経験で人の成長は加速します。「次世代リーダーの候補者だから」ではなく、ある程度の経験を積んだ社員に対しては、ストレッチアサインメントを課すことを日頃から意識しておくとよいでしょう。

いかがでしょうか。
今回のコラムでは、次世代リーダーの育成が進まない理由を確認するとともに、効果的な育成を行うための8つのステップをご紹介しました。様々な経営課題を抱える中、効果が見えにくい次世代リーダーの育成はどうしても後回しにされがちですが、先手必勝で動くことが大切です。「大廃業時代」とも言われる環境の中、気づいたときにはもう手遅れだった...という事態にならないよう、今日から早速、次世代リーダーの育成に取り組んでいきましょう。