エグゼクティブとは|エグゼクティブの意味や役職、転職が増えている理由など

published公開日:2024.11.14
エグゼクティブとは|エグゼクティブの意味や役職、転職が増えている理由など
目次

様々な使われ方をしているエグゼクティブという言葉ですが、「正確な意味や使い方が分かりにくい」と思っている人も多いのではないでしょうか。

エグゼクティブとは、企業の経営を司る上級管理職のことです。ビジネス上は、エグゼクティブオフィサーやエグゼクティブマネージャーといった役職名で使われることもあります。

本コラムでは、エグゼクティブの意味や役職名、必要なスキル、エグゼクティブへの転職が増えている理由などについて解説します。

エグゼクティブとは

エグゼクティブとは、英語で「executive」と表し、元々は行政官のことを意味します。そこからビジネス上では、取締役を含む上級管理職や幹部のことを指して使われるようになりました。

日本でも外資系企業を中心に「エグゼクティブ」という言葉が広まり、様々な意味や使い方が見られます。

ビジネス上のエグゼクティブの意味

ビジネス上のエグゼクティブとは、会長や社長、取締役をはじめとする上級管理職・幹部のことを指します。CEO(最高経営責任者)やCOO(最高執行責任者)など、幹部の役職者をまとめて指すこともあれば、エグゼクティブマネージャー、エグゼクティブプロデューサーのように、「エグゼクティブ○○」といった役職名で使われることもあります。

また、欧米では投資家向けに事業計画書を提出する際、事業計画の概要や重要なポイントを整理した要約(エグゼクティブサマリー)を添付する慣行があります。最近では、ビジネス資料の概要を簡潔にまとめたものをエグゼクティブサマリーと呼ぶこともあります。

エグゼクティブの役職一覧

エグゼクティブの代表的な役職としては、CEO(最高経営責任者)やCOO(最高執行責任者)があります。いずれも、各部門の総責任者という役割を担います。

エグゼクティブの役職名としては、具体的に以下のようなものがあります。

役職名

(英語表記)

役職名

(日本語表記)

略称 役割
Chief Executive Officer 最高経営責任者 CEO 企業の経営方針を最終決定する最高責任者
Chief Operating Officer 最高執行責任者 COO 企業の業務執行を統括する責任者

Chief Technical Officer

または

Chief Technology Officer

最高技術責任者 CTO 企業の技術部門の最高責任者
Chief Financial Officer 最高財務責任者 CFO 企業の財務部門の最高責任者
Chief Information Officer 最高情報責任者 CIO 企業の情報部門の最高責任者
Chief Human Officer 最高人事責任者 CHO 企業の人事統括部門の最高責任者

このほか、エグゼクティブの呼称を用いた役職名には、例えば以下のようなものがあります。

役職名

(英語表記)

役職名

(日本語表記)

主な使われ方
Executive Manager エグゼクティブマネージャー 上級管理職全般、または執行役や事業部長など
Executive Officer エグゼクティブオフィサー 執行役員
Executive Director エグゼクティブディレクター 専務取締役などCEOやCOOのすぐ下に位置する役員
Executive Producer エグゼクティブプロデューサー 製作総指揮、プロデューサーの上級職や幹部

エグゼクティブアドバイザーやエグゼクティブコーチなど、業界や企業によって独自の役職を設けているところもあります。実際の役職や使われ方は、企業によって異なりますので、上記はあくまで参考としてください。

ビジネス以外でのエグゼクティブの意味

ビジネス以外では、「エグゼクティブ会員」や「エグゼクティブラウンジ」など、エグゼクティブは「上級」「高級」といった意味で使われています。

最近では航空会社で、ビジネスクラスのことを「エグゼクティブクラス」と呼んでいるところも多くあります。この場合、エグゼクティブラウンジやエグゼクティブシートは、ビジネスクラスのラウンジや席のことを指します。

ホテル業界でもビジネス向けのサービスを「エグゼクティブサービス」と呼んでいるところがあり、エグゼクティブという言葉は「標準サービスよりランクが上」といった意味から、単に「ビジネス上の」といった意味まで、幅広く使用されているようです。

エグゼクティブに必要な5つのスキル

上級管理職や幹部であるエグゼクティブは、企業の舵取り役として高度なスキルが求められます。エグゼクティブになるためには、どんなスキルが必要なのでしょうか。ここでは、エグゼクティブに必要とされる5つのスキルを紹介します。

先見性とビジョニング

エグゼクティブには、未来を見据えたビジョンを描き、企業の進むべき方向を明確にする「先見性とビジョニング」が求められます。変化の激しいビジネス環境において、企業が長期的な成功を収めるためには、業界のトレンドを予測し、新たなビジネスチャンスを見極める先見性が必要です。

さらに、客観的根拠やロジックを用いて合理的な判断を行い、経営陣やステークホルダーを納得させて、実現に向けた方向性や戦略を定めることができるビジョニングの能力が求められます。

意思決定力

エグゼクティブは部門の責任者として、チームの運営や部門間の調整、メンバー育成、評価など、多岐にわたる事項をその都度判断し、意思決定を行う必要があります。

エグゼクティブの判断は、組織や会社全体のパフォーマンスに影響を与えるものです。最適な意思決定を行うためには、日頃からの情報収集と俯瞰的な視点が欠かせません。また、リスク評価や対応策に関する判断も求められます。

エグゼクティブは、こうした意思決定において重大な責任を負っているのです。

チームビルディング能力

エグゼクティブには、メンバーが最大限の力を発揮できるよう、組織を構築する力が求められます。そのため、組織全体を1つにまとめ上げる「チームビルディング能力」が重要です。

社会情勢や会社の状況・方向性に最も適した組織編成行うためには、自社の人的リソースに関する理解が必要です。

具体的には、適材適所の配置や、社員同士の信頼関係の構築、ビジョンの浸透が求められます。チームビルディング能力が高ければ、メンバー一人ひとりが持つ力を最大限に引き出し、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。

コミュニケーション能力

エグゼクティブは、社内外のステークホルダーと効果的に意思疎通を図る「コミュニケーション能力」が求められます。様々な立場や利害関係の人に、会社の方針や戦略をわかりやすく、実行しやすい形で伝えなければならないからです。それには、相手の理解度や職務習熟度を見極めたうえで、適切なコミュニケーションをとることが求められます。

例えば、会社の方針を説明するうえでも、外部の人には客観的に分かりやすい数値やデータを用いて説明し、社員や部下には参加や共感を促すように説明するなど、コミュニケーション方法を工夫するとよいでしょう。

リーダーシップを発揮しながらも、様々な立場のステークホルダーと協力関係を築けるヒューマンスキルを求められるのがエグゼクティブなのです。

コンプライアンス経営と社会的課題への理解

エグゼクティブは会社経営に関わる職であり、コンプライアンス経営への理解と、それを遂行するための倫理観やモラルが求められます。

会社法の遵守や内部統制はもとより、近年ではCSR・環境経営・ダイバーシティなど対応すべき領域も幅広くなっていることから、多角的な視点で社会の要請に応えなくてはなりません。コンプライアンスを遵守し、社会的課題の解決に貢献することで、企業は社会的な信頼を獲得し、長期的な成長を維持することが可能となります。

コンプライアンス経営と社会的課題の理解と対応は、エグゼクティブにとって重要な使命となっています。

エグゼクティブのキャリアプラン

自社の人材が将来エグゼクティブを目指す場合、キャリアプランをしっかりと描いたうえで、明確な目標を立てることが重要です。

エグゼクティブへのキャリアプランの重要性やキャリアプランの立て方について解説します。

なぜキャリアプランは重要なのか

エグゼクティブへの道は全ての人に開かれているわけではありません。高い能力が必要なうえに、ポジションにも限りがあり、エグゼクティブになろうと思い立ってすぐになれるものではないからです。そのため、エグゼクティブへのキャリアプランは5年~10年単位の中長期的視点で考える必要があります。

長いスパンでキャリアビジョンを見通し、エグゼクティブ登用のチャンスがあればすぐに対応できるような準備をするためにも、キャリアプランを作成しておくことが重要なのです。

エグゼクティブへのキャリアプランの立て方

エグゼクティブへのキャリアプランは、以下のステップに沿って考えるとよいでしょう。

  1. ①これまでのキャリアと現在の状況を整理する
  2. ②エグゼクティブになって実現したいことを明確にする
  3. ③エグゼクティブになるために必要なことを洗い出す
  4. ④必要なスキル・知識・実績を積み上げるためのマイルストーンを決める

マイルストーンを設定し、計画的にスキルアップや実績を積むことで、エグゼクティブになるための道筋がより明確になります。また、具体的なキャリアプランを立てることで、仕事や学びへの意欲が高まり、業務上で難しい状況に直面した際にも乗り越えるモチベーションになるでしょう。

エグゼクティブの転職

従来の日本企業では、年功序列で役職が決まり、同じ会社の中で昇進してエグゼクティブになるのが一般的でした。しかし、最近ではエグゼクティブの転職が増えています。

なぜ、エグゼクティブの転職が増加しているのでしょうか。その理由やポイントについて解説します。

エグゼクティブ転職が増加している理由

年功序列と終身雇用が一般的だった時代には、経営幹部はいわゆる社内の「生え抜き」の社員だけがなれるもので、エグゼクティブクラスの転職はレアケースでした。

しかし、近年ではエグゼクティブでの転職、あるいはエグゼクティブへのキャリアパスとして転職を利用するケースも増えてきています。その理由は、3つあります。

企業のグローバル化

近年では、企業はその規模を問わずグローバルな競争にさらされています。海外に拠点を展開したり、外国人スタッフを雇ったりするには、外国の慣習や法律などを熟知した専門的なマネジメントが必要です。

以前からグローバルな事業展開をしていた企業であれば、社員に海外派遣などのグローバルな経験を積ませてエグゼクティブに向けた人材育成が可能ですが、ここ数年で急なグローバル化に直面している企業ではそうもいきません。

こうした事情から、自社で人材育成を行う代わりに、既に高い能力や豊富な海外経験をもつマネージャー、英語などの語学が堪能なマネジメント層を、外部から受け入れたいと考える企業が増えているのです。

市場や顧客ニーズの変化

市場や顧客ニーズがめまぐるしく変化している業界では、エグゼクティブの転職が活発化しています。事業の多角化を行う企業が増え、従来の企業内のノウハウや経験では対応が難しくなっているのです。

従前の知識やスキルだけを頼りに新規の事業開拓や新商品の開発を行っていても、なかなかイノベーションは生まれません。外部から優秀な人材を獲得できれば、自社に新しいノウハウを蓄積できてイノベーションにつながる可能性が高まるため、エグゼクティブの転職を積極的に受け入れている企業が増えているのです。

働き方の多様化

働き方の多様化が進んだこともエグゼクティブ転職の増加を後押ししています。

年功序列型の企業で、外部からいきなりエグゼクティブが転職してくると、現場のハレーションや社風との不一致が生じる恐れがあります。しかし、人材の多様化が進み、様々な属性や職務の人が働く職場では、外部からのマネージャーやエグゼクティブを受け入れやすい雰囲気も生まれてきています。

さらに、働き方の多様化が進み、長時間労働ではなく、効率的に成果を出せる人材が必要です。企業に所属し続ければ自動的にポジションや待遇が上がっていく時代ではなくなった今、エグゼクティブでも労働生産性が高い人材は高い市場価値を認められます。自身のキャリアプラン実現のため、優秀な人材ほど、より活躍できる場を求めて転職するケースが増えているのです。

エグゼクティブが転職する際のポイント

急速なグローバル化や市場の変化に伴い、エグゼクティブの転職が活発になっていますが、まだまだマネージャー以下の転職ほど一般的ではありません。

エグゼクティブが転職する際に気をつけたいポイントを解説します。

転職動機や条件を明確化しておく

エグゼクティブの転職は個別性が高いため、交渉の中で転職後の具体的な仕事内容や条件が決まっていくケースが多くあります。

ここで重要なのが、交渉や転職活動中に軸がブレてしまうことのないよう、転職前に動機や希望する条件などをはっきりさせておくことです。希望通りに動くとは限らないので、肩書き・給与・仕事内容など各条件の優先順位をつけておくのも大切です。

また、エグゼクティブの転職では仕事のやりがいや組織文化への共感といった動機面も重視されます。ただ良い条件を求めて転職するではなく、自身の転職動機と照らし合わせて、企業の将来性やエンゲージメントについても確認するようにしましょう。

アピールできるキャリアやスキルと求めるポジションのマッチング

自分がアピールできるキャリアやスキルと、求めるポジションの適合性についても徹底的に分析しましょう。

当然ながら、エグゼクティブの転職は給与面などで条件が優遇されている分、スピーディでハイレベルな結果を求められます。

20代30代の若手であればポテンシャルに期待することもできますが、40代50代エグゼクティブの転職ではそうはいきません。ハイクラスな人材やエグゼクティブに近づくほど、成果を求められるスピードもレベルも上がります。エグゼクティブの転職は、「転職さえすれば安泰」ではないのです。

転職する際には、自分がアピールできるキャリアやスキルと、求めるポジションが本当に合っているか、自分の価値や強みを生かせる転職先なのかをよく検討しましょう。

専用の転職エージェントやヘッドハンティングを活用する

エグゼクティブの転職は、通常の転職に比べて求人数が少なく、情報やネットワークが限られているのが特徴です。

エグゼクティブクラスの転職情報は、人事部が出す求人広告や採用サイトには掲載されていないことが多いものです。業界や業種などの垣根を超えて転職するケースもあるため、ハイクラス人材専用の転職エージェントサービスを利用した方がよいでしょう。

コンサルティングが充実している、特定の業界に強い、ヘッドハンティング型でマッチングの制度が高いなど、エージェントサービスにはそれぞれ特色があります。自身の目的に合ったサービスを選んで活用しましょう。