リーダーシップとは何か?マネジメントとの違い、理論と鍛える方法

update更新日:2025.10.09 published公開日:2023.11.27
リーダーシップとは何か?マネジメントとの違い、理論と鍛える方法
目次

リーダーシップとは、組織を率いる人材に求められる「統率力」です。具体的な定義は理論によって異なり、複数のリーダーシップのタイプが提唱されています。多様な人材の参加や変化の激しいビジネス環境などを背景に、優れたリーダーシップの発揮がますます求められるようになりました。

本コラムでは、リーダーシップの定義や有名な理論をわかりやすく解説。優れたリーダーシップを発揮する人の特徴、鍛える方法もご紹介します。

リーダーシップとは何か

「リーダーシップ(Leadership)」とは、簡単にいえば「目標を達成するために組織を導く力」のことです。リーダーシップに関する理論は数多くあり、定義も様々。まずは、それらの理論に共通するイメージをおさえておきましょう。

より明確なイメージをつかめるよう、リーダーシップとマネジメント、オーナーシップの違いも解説します。

ドラッカーによるリーダーシップの定義と類義語・対義語

リーダーシップの辞書的意味は、指導者としての地位や能力です。ビジネスシーンに即した意味合いでいえば、「目標を達成するために組織を導く力」となります。

「現代経営学の父」と呼ばれるピーター・F・ドラッカーは、著書『現代の経営』で「人の視線を高め、成果の基準を上げ、通常の制約を超えさせるもの」と定義しました。ドラッカーは、リーダーシップについて「カリスマ性のような資質ではなく、職責」であるとも語っています。

リーダーシップは、日本語で「統率力」「指導力」とも言い換えられます。その対義語は「フォロワーシップ」です。フォロワーシップとは、リーダーが示す方向性や意図を理解し、リーダーをサポートすることを意味します。

かつてのリーダーシップのイメージは、「生まれ持った資質」や「後天的に身につけることができないもの」でした。しかし、研究が進んだ現在では、学びとトレーニングによって鍛えられる能力であると考えられています。

リーダーシップとマネジメントの違い

組織やチームとして成果を出すには、リーダーシップのほかに「マネジメント」も必要です。では、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。

マネジメントとは、プロジェクトや業務の計画を策定したり、進捗を管理したりするためのスキルです。チームリーダーや管理職が担う業務であり、「労務管理」「業務管理」「予算管理」といったように、日々、一定のルールに基づいて実施されます。

他方、リーダーシップは、組織の管理ではなく「統率」です。メンバーに明確なビジョンを示し、全員が同じ方向を向いて成果を出せるよう導くことです。新規プロジェクトやチームの発足、進捗の遅れ、トラブル発生時などで特に大きな役割を果たします。

チームリーダーや管理職には、リーダーシップの発揮とマネジメントの両方が求められますが、求められる場面と役割に違いがあるということです。

リーダーシップとオーナーシップの違い

もう1つチェックしておきたいのは、リーダーシップとオーナーシップの違いです。

オーナーシップとは、一言でいえば「当事者意識」です。自身の役割を認識し、任された業務に自分事として取り組む姿勢を意味します。そのため、チームリーダーや管理職に限らず、全ての社員に求められます。

リーダーシップには、リーダーが自らの役割を認識して主体的に取り組むことだけでなく、ほかのメンバーにビジョンを示し、それを浸透させ、目標達成に向けて指導することが含まれます。

セルフマネジメントの範囲に収まるものがオーナーシップ、その範囲の外にまで発揮されるのがリーダーシップです。

リーダーシップの必要性と役割

組織を導く効果的なリーダーシップを発揮するには、その必要性と具体的な役割を理解しなければなりません。リーダーシップに求められる役割を3つに分けてチェックしていきましょう。

(1)組織の方向性を統一する

1つ目の役割は、組織の方向性を統一することです。具体的には、「何を実現するために進むのか」というビジョンを明確化し、その実現に向けた戦略を示すという役割です。

組織の方向性が曖昧なままでは、メンバー間において、組織が目指す姿に対する理解や業務に対する認識にズレが生じてしまいます。各人の担当業務での意思決定も混乱しやすくなるでしょう。

もしリーダーが目指すべき方向性を定め、しっかり伝えていれば、メンバー間での判断基準のズレが生じにくくなり、意思決定がスムーズになります。各メンバー個人の目標設定はマネジメントで行いますので、リーダーシップでは「組織として目指す姿」の浸透を重視します。

(2)多様な人材をチームとしてまとめる

2つ目の役割は、多様な人材をチームとしてまとめることです。

近年、価値観や働き方の多様化、ビジネスのグローバル化が加速し、様々なバックグラウンドをもつ人材が同じチームで働く機会が増えました。言語や文化的背景、家庭の事情などから、メンバー同士の意見が衝突することもあるでしょう。

そうしたとき、その衝突を和らげ、メンバー間の関係構築を促し、チームとして一体的に動くための“力”が必要です。それが、リーダーシップです。

リーダーは、メンバー一人ひとりの価値観や状況、意思を尊重しながら、主体性の発揮と相互の連携を支援する役割を担っています。

(3)組織を成長させる

3つ目の役割は、組織を成長させることです。

社会情勢の急激な変化や技術の発展により、ビジネス環境は刻一刻と変化しています。新しい技術を自社に導入する場合は、社内体制の整備も行わなければなりません。このような状況でも、組織は安定した事業活動および成長を続ける必要があります。

変化への柔軟な対応と生き残りには、メンバーのスキルアップやリスキリングが欠かせず、それには誰かが成長意欲を刺激し、目指す方向を示さなければなりません。加えて、目の前に立ちはだかる課題を乗り越えられるよう、メンバーを鼓舞する存在も求められます。

学びの方法をただ指示するのではなく、「何のために学ぶのか」「どこに向かって成長するのか」を示すことが、リーダーシップに求められるのです。

リーダーシップを発揮する人の具体例・特徴

ここで、リーダーシップを発揮できる人に見られる特徴として、「リーダーシップを発揮している姿」をより具体的にイメージできる4つのポイントをご紹介します。いずれも、優れたリーダーには欠かせない重要な特徴です。

(1)周囲から信頼され、影響力がある

リーダーシップを発揮している人の大きな特徴は、コミュニケーション能力の高さです。自分の考えをわかりやすく明確に伝えるとともに、多様なコミュニケーションスタイルを使い分けます。そうすることで、一方的な伝達で終わらない、双方向のコミュニケーションを行うのです。

そして、「噓をつかず、相手に寄り添い、約束を守る」という行動特性もあります。自身に都合の悪いことでもごまかさず、約束をすればきちんと守る。そのようなリーダーは、メンバーから厚く信頼されるものです。

「リーダーが言っているのだから、そのやり方で進もう」というように、メンバーからの厚い信頼が、リーダーの高い影響力の源です。

(2)周囲のモチベーションを引き出し、チームワークを支援する

優れたリーダーシップを発揮する人は、自身の影響力をポジティブな方向に活用します。嫌がらせや仲間はずれといったネガティブな方向には使いません。

具体的な活用例には、メンバーの説得や励ましがあります。困難に直面しているメンバーに対しては、これまでの努力を評価し、助言と次の一歩を踏み出す力を与えます。関係性が良好でないメンバー同士については、それぞれの立場を考慮したうえで、「チームとして一体的に活動する」という視点で問題解決に当たります。

こうした全体と個人の状況を同時に見る視点が、リーダーシップには欠かせません。リーダーがメンバーを引っ張るからこそ、良好なチームワークが実現され、チーム全体の効率をいっそう高めるのです。

(3)判断力と責任感を併せ持っている

優れたリーダーシップを発揮する人は、状況を的確に把握し、迅速に決断して行動する力を持っています。タイミングを逃さず決断することで現場の混乱を防ぎ、チームを導く力があるということです。

そうした決断や行動、そして組織の活動に、自ら責任を負う姿勢もあります。困難や失敗から逃げずに対応し、最後までやり切る姿勢こそ、チームがビジョンの実現に向けて走る推進力となっています。

(4)精神的に安定し、学びを怠らない

そして、優秀なリーダーの多くは、難しい局面に直面しても、冷静かつ柔軟な対応ができます。感情に任せてメンバーを叱責したり、性急な判断で組織を誤った道へ導いたりしないようにするためです。

リーダーの精神的な安定は、組織全体の心理的安全性を高め、メンバー自身も冷静な判断・対処がしやすい環境をつくります。そのような環境下では、問題解決に向けたアイデアも提案しやすくなります。

しかし、リーダーはそのような自身の能力に満足して学びをやめることはありません。時代は変化することを知っているため、常に新しい知識やノウハウを学び、自己成長を続けます。

こうしたリーダーの姿は組織の模範となり、メンバーの主体的な学びも促されます。

リーダーシップの主な理論・種類と人物例

リーダーシップを鍛えるうえで役立つリーダーシップ理論は、時代とともに変化してきました。そこで、理論の主な変遷を確認し、リーダーシップに関する代表的な理論を年代順に見ていきましょう。

リーダーシップ理論の変遷

リーダーシップ理論には、大きく分けて特性理論、行動理論、条件適合理論、コンセプト理論などがあります。

特性理論は1940年代まで活用されていた古典的なリーダーシップ理論であり、「リーダーシップは生まれつきの能力や特性によるもの」と考えていました。そのため優秀なリーダーに共通する特性をもつ人物にリーダーシップを発揮させることができるようにするという立場をとります。

しかし、研究が進むにつれ、個人の先天的特性だけではリーダーの特徴を十分に説明できないことがわかりました。

そこで1940年代〜1960年代に注目されたのが、行動理論です。行動理論の考え方は、「リーダーシップは適切な行動によって発揮される」というもの。チームに影響を与えるリーダーの行動を分析しました。

その後に登場した条件適合理論は、個人の特徴だけでなく、リーダーシップが発揮される環境にも目を向けます。1960年代〜1980年代に用いられた理論であり、「万能で完璧なリーダーは存在しない」「リーダーが取るべき行動は、組織が置かれた状況によって異なる」という考え方を示しました。

そして、現在主流となっているリーダーシップ理論が、コンセプト理論です。条件適合理論を発展させた理論であり、環境や組織に応じた適切なリーダーシップを重視する考え方です。

ここまでの流れと代表的な理論をまとめると、下表のようになります。

【リーダーシップ理論の歴史】

理論の分類 年代 考え方 代表的理論
特性理論 〜1940年代 リーダーシップは先天的なものである ストッグディルの特性論
行動理論 1940〜1960年代 リーダーシップは適切な行動によって発揮される 三隅のPM理論
条件適合理論 1960〜1980年代 リーダーが取るべき行動は組織の状況により異なる ハーシー&ブランチャードのSL理論
コンセプト理論 1980年代〜 環境・組織に応じたリーダーシップを重視する 変革型リーダーシップ
EQ型リーダーシップ
サーバント型リーダーシップなど

コンセプト理論には複数の有名な理論があり、リーダーシップのスタイルで分類すると主に5つのタイプが見られます。それぞれのスタイルと人物例は、次の通りです。

【コンセプト理論のリーダーシップスタイルと代表的な人物の例】

理論・スタイル 特徴 代表的な人物
カリスマ型リーダーシップ
  • 部下にカリスマとして認知される
  • 高い行動力と挑戦する姿勢がある
  • スティーブ・ジョブズ氏(Apple)
  • ビル・ゲイツ氏(Microsoft)
  • 鈴木敏文氏(セブン&アイ・ホールディングス)
変革型リーダーシップ
  • 明確なビジョンと変革への意欲がある
  • 迅速な状況判断と高い実行力がある
  • 松井忠三氏(良品計画)
  • 稲盛和夫氏(日本航空)
EQ型リーダーシップ
  • メンバーの感情や人間関係を重視する
  • EQ(Emotional Intelligence Quotient、感情知能)が高い
  • 林文子氏(ダイエー)
ファシリテーション型リーダーシップ
  • メンバーと同じ目線に立つ
  • メンバーの自発的行動を重視する
  • 中立的なまとめ役となる
  • 星野佳路氏(星野リゾート)
サーバント型リーダーシップ
  • メンバーを支援する立場となる
  • 「リーダーは裏方」というスタンスをもつ
  • 池田守男氏(資生堂)

これらの理論・スタイルは、どれか1つが正しいというものではありません。組織の状況に応じて選ぶことが大切です。そこで、次項からは、現在も活用されている理論をより詳しく見ていきましょう。

三隅二不二のPM理論(Performance and Maintenance Theory)

PM理論とは、社会心理学者の三隅二不二が1966年に提唱した理論です。リーダーシップで重要な機能について、目標達成機能(Performance、P機能)と集団維持機能(Maintenance、M機能)という2軸で捉え、その組み合わせによってリーダーシップを分類しました。

ここでいうP機能は、目標達成のためにリーダーが行う計画や指示などの活動で、生産性や業績向上を目指す機能。一方、M機能は、チーム内の人間関係や協力を維持・強化するという、集団の調和を保つ機能です。P機能とM機能のバランスから、次の4タイプのリーダーシップが定義されます。

三隅二不二のPM理論

リーダーとして理想的なタイプは、「PM型」です。簡単にいえば、計画力・管理力があり、チームビルディングにも優れると同時に、目的達成への強い意志とチームの成長に向けた支援も行えるバランスの良いタイプです。

Pm型(目標重視型)とpM型(人間関係重視型)は、2つの機能のどちらかが高く、他方は低いタイプ。低い方の機能を高めることで、PM型に近づくことができます。

これらに対し、いずれの機能も低いpm型(未熟型)は、まだリーダーシップに必要な基本的要件を満たしていません。P機能とM機能の両方を高める必要があります。

このように、PM理論でリーダーシップの種類を捉えると、リーダーに不足している要素を確認し、意識的に強化する取り組みへつなげやすくなります。

コラム「PM理論とは?リーダーシップ4タイプの特徴と強化法、活用例をわかりやすく解説」はこちら

ハーシー&ブランチャードのSL理論(Situational Leadership Theory)

SL理論は状況(S:Situational)に応じたリーダーシップ(L:Leadership)で、メンバーの成熟度に応じてリーダーシップの種類を使い分けるリーダーシップ理論です。1977年に、アメリカの行動科学者であるポール・ハーシーと組織心理学者であるケネス・ブランチャードによって提唱されました。

SL理論の特徴は、各メンバーの状況に応じてリーダーがその都度リーダーシップのスタイルを変えるところにあります。メンバーの成熟度の定義は、下表の通りです。

【SL理論におけるメンバーの成熟度の定義】

成熟度 意欲 スキル 特徴
1 低い 低い 目標達成に向けた業務遂行に関する具体的な助言・指導が必要
2 ある 低い スモールステップで地道に成長を重ねる段階
3 低い ある 自律的に業務を進めつつ、リーダーからのやる気を引き出す働きかけが必要
4 ある ある 主体的に適切な意思決定を行える段階

こうしたメンバーの成熟度に応じたリーダーシップ・スタイルとして、教示型・説得型・参加型・委任型が挙げられました。異なるアプローチを取ることで、メンバーの成長や自立的な業務遂行を促すという考え方です。

【SL理論におけるリーダーシップの種類】

成熟度 リーダーシップの種類 特徴
1 教示型リーダーシップ
  • 具体的な指示と指導を行い、細かく監督する
2 説得型リーダーシップ
  • 論理的に情報を伝えて説明し、質問に答える
3 参加型リーダーシップ
  • メンバーにアイデアを出してもらい、それに対してフィードバックを行う
  • リーダーは「相談役」となる
4 委任型リーダーシップ
  • メンバーに意思決定や問題解決など仕事の遂行を任せる
  • 本人だけでは対応しきれない場合に、リーダーが介入する

SL理論は、「リーダーが常に先頭に立たなければならない」というリーダーシップのイメージを覆す理論といえます。メンバーの成熟度に応じたリーダーシップの使い分けは、効果的な人材育成にもつながるでしょう。

ジョン・コッターの変革型リーダーシップ

1980年代に広まったコンセプト理論の1つである「変革型リーダーシップ」で有名なものは、ハーバード・ビジネススクールの教授であるジョン・コッターによる理論です。著書『変革するリーダーシップ』において、「変革はリーダーシップに含まれる主要な機能である」としました。

変革型リーダーシップのプロセスは、大きく3つの段階に分けられます。各段階でリーダーがとるべき行動とともにまとめたものが、下表です。

【コッターの変革型リーダーシップのプロセス】

プロセス リーダーの行動
将来の方向性を定める
  • 優れたビジョンと優れた戦略を策定する
メンバーの方向性を統一する
  • メンバーと多くのコミュニケーションをとり、方向性を繰り返し伝達する
  • メンバーとの信頼関係を築く
モチベーションを高める
  • メンバーの達成感・帰属感を高める
  • メンバーの頑張りを認める
  • メンバー自身の尊厳の追求、自分の人生をコントロールしているという感覚、メンバー自身の理想の追求を支援する

ここでいう「優れたビジョン」とは、経営者だけでなく顧客や従業員といったステークホルダーの利益を満たすビジョンであり、「優れた戦略」とは、ビジョンを実現できる可能性が高い戦略を意味します。

リーダーがメンバーに信頼されるには、リーダー自身の説得力ある経歴やメッセージの内容だけでなく、言葉と行動の一貫性も重要であると指摘しました。

変革型リーダーシップ理論には複数の論者がいますが、コッターの理論は特にメンバーに対する精神的支援の比重が大きいものとなっています。

ダニエル・ゴールマンのEQ型リーダーシップ

アメリカの心理学者ダニエル・ゴールマンは、EQ(Emotional Intelligence Quotient)型リーダーシップ理論において、6種類のリーダーシップ・スタイルを提唱。1998年の『Harvard Business Review(ハーバード・ビジネス・レビュー)』掲載論文である“What Makes a Leader?”において、リーダーシップにはIQよりもEQが重要であると主張しました。

【EQ型リーダーシップの6つのスタイル】

リーダーシップの種類 特徴
ビジョン型リーダーシップ
  • ビジョンを共有し、目標に向かってチームを動かす
  • 達成のプロセスは押しつけない
  • メンバー全員で試行錯誤しながら、目標達成に向かって進む
コーチ型リーダーシップ
  • メンバー一人ひとりの特性を活かす
  • メンバーそれぞれの希望を重視する
  • メンバーを支援しながら、組織の目標達成につなげる
関係重視型リーダーシップ
  • 課題や目標達成よりもメンバーの気持ちを大切にする
  • チームの調和を引き出す
民主型リーダーシップ
  • メンバーからの意見を積極的に聞く
  • メンバーの参加、コンセンサスを通してコミットメントを得る
ペースセッター型リーダーシップ
  • 手本として、リーダー自身がレベルの高いパフォーマンスを発揮する
  • メンバーにも、リーダーと同じレベルを求める
強制型リーダーシップ
  • メンバーに考える余地を与えない
  • 強制的に指示・命令しながらメンバーを動かす

ビジョン型・コーチ型・関係重視型・民主型は、チームの組織風土にポジティブな影響を与える、成長や業績向上に適したリーダーシップとされています。これに対し、ペースセッター型や強制型はネガティブな影響を与えるスタイルです。

具体的な活用場面を考えると、例えば、チームビルディングなどの初期段階では関係重視型リーダーシップによって、メンバー間の信頼関係の構築を促すことができます。一方、既にスキルが高く一体的に動けるチームであれば、主体的な行動を促すビジョン型が効果的でしょう。

ペースセッター型や強制型は、状況によっては有用かもしれません。例えば、短期的に成果を出したり、大きなトラブルにすぐに対応したりするケースなどです。しかし、メンバーの自律性が大きく損なわれるため、チーム内で摩擦を生む可能性を否定できません。実施する場合は、慎重に進めましょう。

いずれにせよ、現状におけるメリット・デメリットを考慮したうえで、スタイルを選択することが重要です。

リーダーシップを発揮するために必要なスキル・能力

こうした様々なリーダーシップ理論を概観すると、現在のビジネス環境で求められているリーダーに欠かせないスキル・能力が見えてきます。それが、次の4つです。

  • ビジョニング
  • チームビルディング
  • コミュニケーション
  • 意思決定

各要素を順番に解説します。

ビジョニング

1つ目は、ビジョニングです。

ビジョニングとは、組織の将来像を明確に描くこと。特に、短期的な将来像ではなく、長期的な「組織としてあるべき姿」を描くことです。このビジョンが明確化されることで、目標達成のためにどのように進むかという戦略の立案が可能になります。

戦略の立案においては、ビジョンを実現するための目標や道のりを示します。より具体的・個別的な目標設定はマネジメントの範囲になりますが、リーダーシップにおいても、漠然とした抽象的な表現に留まらず、具体的なイメージをもてる形に落とし込みましょう。

経営層ではない管理職のリーダーシップでは、経営トップ層がリーダーに対して何を期待しているのかを把握し、会社全体のビジョンと矛盾しない方向性・戦略を策定することが重要です。

チームビルディング

2つ目は、チームビルディングです。

チームビルディングとは、目標達成に向けて一丸となって働く強力なチームをつくること。策定したビジョンや戦略を繰り返しメンバーに伝え、リーダーとメンバーの信頼関係を築き、メンバー同士の相互理解とビジョンの共有を進めます。適材適所の役割分担、メンバー同士の円滑なコミュニケーション促進などにも取り組みましょう。

万が一、メンバー同士が対立している状況なら、リーダーが間に入って不満や不信感を解消できるよう働きかけなければなりません。それぞれの立場からの意見を傾聴し、改めてワンチームとして連携できるよう、環境や関係性の改善を進めます。

コミュニケーション

3つ目は、リーダーシップを発揮する全ての段階で求められるコミュニケーションです。

チームにビジョンや戦略を浸透させ、メンバーとの信頼関係を築くには、頻繁かつ丁寧なコミュニケーションが欠かせません。特にチームの発足やプロジェクトの開始時期には、目指すべき方向性の理解・情報共有・メンバーの相互理解が円滑に進むよう、リーダーからの発信だけでなく、メンバー同士のコミュニケーションの支援も必要です。

もし、メンバーからの提案がある場合、リーダーは相手の話に耳を傾け、自身の見解や決定を伝えなければなりません。

近年は、対面や電話だけではなく、メールやチャット、オンライン会議システムなど、コミュニケーション手段も多様化しています。適切なタイミングと適切な手段を選び、効果的なコミュニケーションを実現しましょう。

意思決定

そして4つ目がリーダーの意思決定です。意思決定は、リーダーシップを発揮するために特に重要な能力。自身の業務だけでなく、チームが直面する困難に対処するための指示・助言、メンバーの業務に関する判断や、他部署・他社との調整など、様々な局面で適切な判断を行わなければならないからです。

適切な意思決定を行うには、信頼性の高い情報を収集するスキル、それを的確に分析・評価するスキルも欠かせません。総合的な視点で判断を行うためにも、日頃からチームの状況や過去のデータ、業界の動向に注意を払うことが重要です。

リーダーシップを鍛える方法

リーダーシップは、意識して取り組むことで後天的に身につけられる能力です。多くの場合、経営層や管理職にリーダーシップの発揮が求められます。ただ、現場レベルの柔軟な対応がビジネスの成否を握る現在、一般社員にもリーダーシップの理解と発揮が期待されています。

そこで、多くのビジネスパーソンが日頃から実践できる4つの鍛え方をご紹介します。

自分のチームに合うリーダーシップを見つける

これまで見てきたように、リーダーシップには様々な種類があります。どれか1つが正解というものではなく、チームの状況に応じて最適なやり方を選ばなければなりません。つまり、「自分のチームに合うリーダーシップ・スタイルは何か」を考える必要があるのです。

効果的なリーダーシップ・スタイルを見極めるには、以下の4つのステップで分析・検討を進めるとよいでしょう。

【リーダーシップ・スタイルを見極める4ステップ】

ステップ 概要 取り組み内容
1 活躍するリーダーの強みを分析
  • 自社で活躍するリーダーの能力・強みをリストアップする
2 チームへの影響を評価
  • リストアップした能力・強みが組織に与える影響を評価する
3 外部環境・経営戦略を確認
  • 自社を取り巻く外部環境や今後の経営戦略を確認する
4 リーダーシップ・スタイルを決定
  • 戦略で求められる行動とリストアップした能力・強みを比較する
  • 取るべきリーダーシップ・スタイルを決定する

強みの分析やチームの評価においては、評価項目を定めたうえで見ていくと、より客観的な評価をしやすくなります。複数のリーダーに関して一定の項目で評価すれば、組織や業務の特徴と有効なリーダーシップの関係性も比較しやすくなるでしょう。

ビジョンを伝え、コミュニケーションを取る

どのようなリーダーシップ・スタイルを選択するにしても、リーダーとメンバーのコミュニケーションは欠かせません。コミュニケーションで特に身につけたいスキルが「傾聴力」です。

「リーダーシップを発揮するには、自身の発信力が重要である」と考えてしまいますが、発信力と同時に、相手の話を深く聞いて理解する力が必要です。相手の話を聴かず一方的に主張するリーダーは、メンバーとの信頼関係を築けません。

傾聴力を身につけるには、まず話を聴く際の行動面から意識するとよいでしょう。例えば、

  • 相手と目を合わせる
  • 話を聴きながらうなずく
  • 意図的にボディランゲージを活用する

などが可能です。「きちんと話を聴いてくれている」と感じられれば、相手も安心して話せます。

他方、発信力の面で意識したいのは、話すスピードや声のトーン、難しい内容をわかりやすく伝えることです。わかりやすく伝えるには、適切な言語化と簡潔なメッセージにまとめるスキルが必要になります。イメージしやすく、印象が良く、記憶に残りやすい表現を見つけましょう。ほかの人が使う表現からヒントを得られることも多くあります。

日常的に情報収集と意思決定を行う

リーダーシップを発揮するうえで、情報収集と意思決定も欠かせません。特に、「どの情報が正確で目的に合っているのか」を見極める力は適切な意思決定において大変重要です。

しかし、そのような適切な情報を見極めるリテラシーは、一朝一夕に習得できるものではありません。日々のタスクや課題を通じて、トレーニングを重ねましょう。

例えば、目の前のタスクや課題について、円滑な遂行に役立つ情報を集めたり、うまく進まない原因を分析したりしてみてください。集めた情報をもとに具体的な処理方法をいくつか考え、その処理に役立った情報を整理することも効果的です。

情報収集では、どのような人物や媒体が発信している情報なのか、いつ・誰に向けて発信された情報なのかをチェックします。これらの基本情報を確認するだけでも、より正確な情報を選びやすくなるでしょう。

意思決定を行って実行したあとは、ぜひ、その結果を踏まえて意思決定の妥当性を振り返ってみてください。

自身の成長に向けた目標設定を行い、行動する

リーダーには多様な知識やスキル、組織全体を見渡す視点が求められます。組織を取り巻く状況の変化や利用可能なリソース、新しい理論や技術が与えるビジネスへの影響なども考慮しなければなりません。

流動的なビジネス環境の中でビジョンを描き、戦略を練るには、リーダー自身も価値観ややり方を更新する必要があるということです。

リーダーの自己研さんに終わりはありません。常に学び続ける姿勢をもち、具体的な成長目標を設定して行動しましょう。

リーダーシップを発揮する人材の育成におすすめの研修

リーダーシップを効果的に鍛えるには、リーダーに必要な知識・スキルを習得できる研修の活用がおすすめです。ほかの参加者とのディスカッションを含むプログラムなら、周囲から見た自身の現在地も認識しやすくなるでしょう。

企業の様々な階層を対象に人材育成をご支援してきたALL DIFFERENTでも、リーダーとしての役割や重要なスキルを理解するための研修や、次期リーダーが身につけるべき姿勢を学ぶ研修をご提供しています。グループワークを活用するコミュニケーション研修も豊富にご用意していますので、ぜひリーダーシップの向上にお役立てください。