働き方改革の担い手である管理職が目指すべき「成果を出せるリーダー」の条件 ~求められるスキルと学び~

update更新日:2022.04.13 published公開日:2017.02.20
目次
ダイバーシティや女性活躍、リモートワークに代表される働き方改革をはじめ 、ひと昔前と比べ目まぐるしく環境が変わる中で、今管理職に求められる「あるべき姿」とは何なのでしょうか。成果を上げ続ける管理職のコンピテンシーを明確にするとともに、「管理職のあるべき姿」に近づくための学びのステップをご紹介します。

働き方改革法のほぼ全てが施行済み

2019年より順次施行されている働き方改革関連法(正式名称:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)は、2023年4月に中小企業を対象として施行予定の「月60時間超の残業の割増賃金率の引上げ」を以て、全ての法律が施行されることとなります。

労働基準法では、1か月に60時間までの時間外労働については法定割増賃金率を25%以上、60時間を超える時間外労働については50%以上にすることが定められていますが、経営資源に乏しい中小企業はこれまで適用が免除され、時間外労働が60時間を超えた分の法定割増賃金率も25%以上にすれば良いとされていました。

2023年4月以降はこの免除が廃止され、中小企業でも月の時間外労働時間が60時間を超えた場合は50%以上の法定割増賃金を支払わなければならなくなるのです。

少ない人員数で業務をこなし、残業が発生することが恒常化している中小企業にとっては、2023年4月以降は従来と同じ残業時間数であっても人件費が余計にかかることになり、経営的には大きな痛手となるでしょう。

また、企業が働き方改革を推進するよう、

  1. 1.年次有給休暇の時季指定
  2. 2.時間外労働の上限制限
  3. 3.同一労働同一賃金
の3つの柱を中心とした罰則付きの法律が施行されていますが、特に2.時間外労働の上限規制については、「残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできない」 という厳しいものです。もし違反した場合には、罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあるため、注意が必要です。

本コラムでは、働き方改革に取り組み、残業(時間外労働)時間数削減のために様々な工夫をしている企業の事例をご紹介します。

働き方改革を行い、残業(時間外労働)時間を削減している大手企業の成功事例

大成建設株式会社 「トリプル100」の定量的目標を掲げ、全社員の意識・習慣を変える

  • 全員が年間100日以上の休日休暇取得
  • 月100時間を超える残業の社員を0にする
  • 外勤社員の100%が工事節目の休暇を取得する

という目標を掲げ、社員全員に周知し、目標未達でも原因を分析してチャレンジをし続ける取り組みを行った。
勤務報告システムトップ画面に各自の当月残業時間やノー残業実施日数などを表示し「見える化」することで、意識改革を図った。

大和ハウス工業株式会社 「ブラック事業所認定制度」の導入で長時間労働を撲滅

  • 長時間労働防止の社内基準に抵触する事業所をブラック事業所として認定
  • ブラック事業所に認定されると事業所全体の賞与額が減少される
  • ホームホリデー取得率を業績評価特別加算項目に追加

などを行うことで、労働時間削減に対する社員のインセンティブを高めることに成功。ライン管理職とプレイングマネージャーの評価項目に「時間管理と生産性向上の両立」「効率化につながる提案の有無」を加えることで、マネージャー層の意識改革も実現した。

株式会社岩田屋三越 「PC自動シャットダウンシステム」の導入で社員の生産性向上を実現

  • 個人のパソコン利用時間を8時30分から21時30分に限定
  • 使用時間終了30分前から警告が表示され、21時30分になると自動的にシャットダウン
  • 継続申請により利用継続は可能だが、その旨が上司に報告される

という仕組みを作ることで、いつでもパソコンが使える環境をなくし、限られた時間を有効活用することで業務を進めるという意識づくりに効果を上げている。

※参照:経団連「働き方改革事例集」

中小企業が実践している残業(時間外労働)時間削減の工夫

中小企業では、働き方改革を実現するために大手企業のようにシステムを刷新することなどはなかなか難しいと言えますが、様々な工夫を凝らすことで残業(時間外労働)時間を削減しています。

業務着手前の工数見積もり実施

  • 朝一番に、A業務には90分、B業務には120分かかるというように、その日実施する業務項目と見積もり分数を日報に書いたうえで業務に着手
  • 退勤前に実際にかかった分数を日報に書き込み、自分が行った工数見積もりと実際にかかってしまった分数を比べる

結果として「時間内に業務を終わらせようという意識と工夫」が高まった。

社内異職種業務体験

  • 営業担当者は経理、総務担当者は設計というように、社内で普段とは異なる職種を体験できる日を設定
  • 普段と違う立場と視点で業務を行うことで、別部署や別職種の方の苦労や自分の配慮の足りなさなどを体感

結果として、例えば営業は経費精算のための領収書を書類に添付する際に、経理担当者が処理をしやすいように配慮して貼り付けるなどの工夫をし始めた。
全社で残業(時間外労働)時間数の削減つながり、社内コミュニケーションも良くなった。

朝礼時の残業時間事前申告

  • 毎日の朝礼時に、残業を行う可能性のある従業員は、その旨を他の従業員に申告
  • また、全員が当月の累計残業時間数を毎日発表しあうことを習慣化

結果として、残業数が伸びてしまっているメンバーのフォローをし始めるなど、社内で助け合いの風土と習慣が生まれ、残業(時間外労働)時間の削減を実現。

というように、多額の費用をかけずに、工夫と意識を変えることで働き方改革を実現し実際に残業時間数を削減している企業も存在しています。

働き方改革や残業(時間外労働)時間の削減は一朝一夕では決して実現しません。

経営者や管理者が働き方改革に取り組むことを全社員に宣言し、ルールを自ら決め、社員がそのルールを守りやすいように環境整備を進んで行うことこそが、改革成功のための第一歩と言えます。

ぜひ、上記成功事例や工夫をご参照いただき、自社にあった働き方改革とはどのようなものか、どうやったら残業(時間外労働)時間数を削減できるのかを考えてみてください。