仕事の成果を左右するストレスからの"回復力" 『レジリエンス』を高める3つの方法とは?
本コラムでは、レジリエンスの意味や必要性を確認しながら、レジリエンスを高めるために実践したい3つの行動をご紹介します。
レジリエンスとは?
レジリエンスの意味
レジリエンス(resilience)とは、日本語では「回復力」や「弾性」などと訳され、ストレスを受けたときの復活力や回復力といった意味で使われる用語です。レジリエンスは、挫折や困難な状況からのしなやかな回復力*とも定義され、レジリエンスが高い人ほどストレスからの立ち直りが早く、逆にレジリエンスが低いと、ストレスからなかなか立ち直れず、落ち込みが長引いてしまうという特徴があります。*『レジリエンス ビルディング』(英治出版)
ビジネスパーソンにレジリエンスが必要な理由
日々の仕事を思い浮かべてみると、私たちの周りには、人間関係や将来への不安、仕事での失敗や挫折、また管理職になれば成果に対するプレッシャーなど、実に多くのストレス要因が存在し、「ストレスとは無縁!」という人はそうそういないでしょう。
そこで効果を発揮するのが、ストレスから回復する力である『レジリエンス』です。例えば、仕事で失敗して落ち込んだ経験は誰しもあるはず。そのストレスからいつまでも回復できずにいると、無力感や不安感が生じ、業務が滞ってしまう、あるいはミスを重ねてしまう...、そんな状況に陥ってしまうリスクが高まります。一方、レジリエンスが高く、落ち込みからすぐに立ち直ることができれば、素早く次の行動に移したり、改善策に反映したりすることができます。
この例からもわかるように、ビジネスパーソンにとってレジリエンスは必須の力。当社では、ビジネスパーソンに求められるレジリエンスのことを「ワークレジリエンス」と呼び、仕事でパフォーマンスを発揮し続けるためにも高めておきたい力と位置付けています。ここから、ワークレジリエンスの向上につながる3つの行動をご紹介しますので、ぜひ今日から取り組んでみてください。
レジリエンス向上につながる3つの行動
レジリエンスは生まれつきの個性、才能のようなものと感じている方もいらっしゃるかと思います。しかし、レジリエンスは先天的なものではなく、意識的に行動することで誰でも高めることができ、ワークレジリエンスにおいては、次の3つを意識することで鍛えることができます。
- (1)柔軟に物事を捉える
- (2)自己効力感を高める
- (3)身体面を整える
1つずつ、詳しく見ていきましょう。
(1)柔軟に物事を捉える
仕事に取り組む中で、「仕事では絶対にミスをしてはいけない」「あの人はいつも厳しく注意してくる。絶対に私のことを嫌っている」「私が置かれている状況は特殊だから、他人のアドバイスは全く参考にならない」 といった感情を抱くこともあるでしょう。
しかし、仕事において物事が白黒はっきりしていることは稀。そのため、自分の中で"黒認定"して落ち込むのではなく、「"多分"こうなんじゃないか」「こうだという"可能性が高い"」などと灰色的に捉える、つまり柔軟に物事を捉えられる人の方が、落ち込みにくく、また回復しやすいと考えることができます。
柔軟に物事を捉える考え方の例
「仕事では絶対にミスをしてはいけない」
→「ミスをしてしまった。しっかり反省して、改善策を見つけよう」
「あの人はいつも厳しく注意してくる。絶対に私のことを嫌っている」
→「あの人に注意されることが多いな。どこを直せばもっとパフォーマンスが上がるのか?」
「私が置かれている状況は特殊だから、他人のアドバイスは全く参考にならない」
→「私が置かれている状況は特殊に見えるけど、他の人とも共通しているところがあるはず。参考になるアドバイスもあるだろう」
捉え方に柔軟性を持たせるポイント!
物事の捉え方に柔軟性を持たせるには、「視点を切り替える」ことが有効!
視点を切り替えるとは、上司や先輩、同僚、お客さまなど、自分以外の人の立場で物事を考えること。様々な立場で考えることで、物事を捉える幅が広がっていきます。レジリエンスの観点では、「気持ちを書き出す」「他者に相談する」の2つに取り組むことをおすすめします。
①気持ちを書き出す
ストレスを感じたり落ち込んだりしたら、そのときの気持ちを書き出してみましょう。自分の思うまま感じるままに書き出し、客観的に自分の感情と向き合う。それによって気持ちが落ち着いた経験は皆さんもあると思いますが、ここでのポイントは、「他者」や「未来の自分」という視点でも書き出してみることです。上司や同僚になったつもりで書いてみる、1年後の自分を想像して書いてみるなど、様々な立場で考え文字にすることで、柔軟な思考が身についていきます。
②他者に相談する
気持ちの整理をつける、ストレスを発散するという意味でも他者への相談は大切です。しかし、相談の効果はそれだけではありません。他者に相談するというのは、自分とは別の考えに触れるということ。たとえ具体的なアドバイスが得られなかったとしても、物事の捉え方を広げることにもつながります。テレワーク下では、同僚に「ちょっと聞いてほしいんだけど...」という声かけはなかなかできないかもしれませんが、相談相手は職場の人に限らず、家族や友人でも構いません。また、上司や先輩と話す機会があっても、相談しづらいこともあります。そんなときは、社外の相談窓口を利用することも一手です。
視点の切り替えについては、掲載中のコラムリーダー必見 ! 4つの行動で変わる、多様な視点で物事を捉える「多眼的認知」の身につけ方でも紹介していますので、ぜひそちらも参考にしてください。
(2)自己効力感を高める
自己効力感が高い状態とは、「自分ならできる」「これはできそうだ」という自信を持っている状態のこと。逆に自己効力感が低い状態とは、「自分にはできそうにない」「自分がやってもどうせうまくいかない」という自信のない状態のことを指します。自信がある状態の方が感情のコントロールをしやすく、また困難に直面してもすぐに回復し、ポジティブな気持ちで立ち向かうことができます。そのため、自己効力感を高めることもワークレジリエンスの向上に欠かせない要素といえます。
自己効力感を高めるポイント!
自己効力感を高めるためのキーワードは「成功体験」!
仕事に限らず、人は何かに成功すると「自分はできる」と思うようになり、それによって自ずと自己効力感は高まっていきます。「会議で意見が採用された」「いつも2時間かかる仕事が1時間30分で終わるようになった」という仕事上の成功体験はもちろんのこと、「ついついお酒を飲みすぎてしまうが、今日は控えることができた」「今日は最寄り駅の1つ手前で降りて歩いて帰ることができた」など、日常の小さな成功体験でもいいので積み重ねて自信につなげていくことが大切です。
また、周りにいるうまくできている人の行動を観察して自分自身に落とし込んでみるなど、他者の成功体験を疑似体験することでも、「自分もできそう!」という気持ちが芽生えます。「自分で自分を励ます」ことも意識してみるとよいでしょう。
(3)身体面を整える
体が重いと心も重い、心が重いと体も重い...。皆さんもそう感じることはありませんか。心と体は連動していて、どちらかが好調/不調になると、それに伴いもう片方も好調/不調になりやすいことがわかっています。そのため、身体面を整えることが「心=気持ち」を高めることにつながり、ストレスへの抵抗力を高めることにつながります。それによってストレス反応をコントロールする力が高まり、ワークレジリエンスも高まっていくということです。
身体面を整えるポイント!
身体面を整えるには、「健康的な生活」「呼吸」「リラクゼーション」の3つに取り組むことがおすすめ!
①健康的な生活
体を整える基本は、健康的な生活を送ることです。健康的な生活には、食生活や運動習慣、睡眠といった生活習慣が関わってきます。ここでは、ブレスローの7つの健康習慣をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- 喫煙をしない
- 定期的に運動をする
- 飲酒は適量を守るか、しない
- 1日7~8時間の睡眠を取る
- 適正体重を維持する
- 朝食を食べる
- 間食をしない
②呼吸
自律神経を整えることも、身体面を整えるために欠かせない要素です。体の中に酸素をたっぷり取り込むと自律神経の働きが良くなることから、「呼吸」もレジリエンス向上につながる大切なポイントといえます。鼻から息を吸う、鼻から吸った息をお腹にためる、お腹にためた空気を口から吐き出す、この3つを意識してみましょう。
③リラクゼーション
身体面のケアには、"癒し"も大きな効果を発揮します。例えば、職場では「自席でコーヒーを飲む」、自宅では「リビングで好きな音楽を聴く」ことでリラックス、リフレッシュしている方も多いでしょう。ただし、注意が必要なのが、「絶対にやってみて!」とされている方法でも、自分に合っていなければリラクゼーション効果は得られないということ。「自分に合ったものであれば何でもOK!」という気持ちで、リラクゼーション方法を選ぶことが大切です。また、リラクゼーション方法は1つではなく、状況に応じて使い分けられるよう、複数用意しておくことが理想です。
まずは「できること」から始めよう
今回のコラムでは、レジリエンスを高めるために実践したい3つの行動をご紹介しました。「これならできる!」そう思えたものはありましたか。
ご紹介したものの中には、すぐに実践できるものがある一方、一人ではなかなか実践しづらいものもあるかもしれません。特に、テレワークが普及した昨今は、仕事で落ち込むことがあっても、「隣に座っている同僚が話を聞いてくれてスッキリした!」「様子を見ていた上司が励ましてくれて、気持ちが落ち着いた」など、従来のような他者を起点とした「回復」が望みにくい状況になっています。
しかし、ストレスによる打撃を「回復」させずに放っておいては、冒頭でもお伝えした通り無力感や不安感が生じ、業務に悪影響を及ぼすリスクが高まってしまいます。まずは自身で取り組めそうなことからチャレンジし、レジリエンスの向上につなげていきましょう。
また、今回のコラムでは、「個人」でできる取り組みをご紹介しましたが、「企業・組織」として取り組めることも多々あります。当社では、社員の自己効力感向上にも役立つ「コーチングスキル」を高める研修や、「健康管理」「メンタルヘルス対策」をテーマにした研修など、様々な研修を開催しています。個別のお悩みにもお応えしていますので、レジリエンス向上の取り組みについてもっと詳しく知りたいという人事担当者、経営者の皆さまは、お気軽にご相談ください。