コーチングとは?ティーチングとの違い、メリット・デメリットをご紹介
本コラムでは、コーチングとティーチングの違い、やり方のポイントをご紹介します。部下や後輩の育成にご活用ください。
コーチングとは?
「質問をすること」「部下育成で用いる手法」という理解はあるものの、コーチングとはどのようなものなのか?正しく理解できているか不安な方のために、目的やティーチングとの違いなどを確認していきましょう。
コーチングの目的
コーチングとは、コーチ(指導者)が質問や問いかけを行い、相手に気づきや自ら考え行動するきっかけを与え、目標達成や問題解決のサポートをする技術を指します。
コーチングの目的は、相手が持っている能力や可能性を最大限引き出すことです。相手にノウハウや知識を一方的に与えるのではなく、相手の話を聞き、質問しながら気づきを与えることで、相手の可能性を引き出していきます。
よって、相手に自発性や主体性を求める場合は、ティーチングよりもコーチングを取り入れたほうが、より効果的に機能します。
コーチングとティーチングの違い
コーチングとティーチングを言葉では知っているものの、日々の部下育成で両者の違いを意識していらっしゃる方は少ないのではないでしょうか。しかしコーチングとティーチングでは、その手法や目的に大きな違いがあります。
まず、ティーチングとは、ノウハウや知識を上司から部下へ一方的に指示・助言する技術を指します。コーチングが並走する・横並びの関係性であるのに対し、ティーチングは上下の関係性であることが特徴です。それぞれの技術を使う対象者や、得られる効果などが異なるため、理解した上で適切に使い分けることが重要です。
次に、コーチングとティーチングでは目的や指導する側に求められる姿勢などが異なります。下表をご覧ください。
このようにコーチングとティーチングを比較してみると、その違いが一目瞭然ではないでしょうか。部下や後輩を指導する際、その対象者の状況や目的などと照らし合わせ、適切な指導法を選択できるようにしましょう。
コーチングのメリット・デメリット
「部下自身が、自分で考えて動いてほしい」
そう考える上司の皆さまにとって、コーチングは非常に有効な手法です。しかし、目的や対象者の状況を把握して使わないと、デメリット=指導される側にとって良くない側面が生じてしまうでしょう。
この章では、コーチングのメリット・デメリットを確認していきます。
コーチングのメリット
- 1. 相手の潜在能力や特性など、可能性を引き出せる
- 2. 自ら考え行動する力を身につけさせることができる
- 3. 自分で決めることによりモチベーションの維持・向上が期待できる
コーチングは、これまでの経験や業務のやり方を振り返りつつ、指導対象者の可能性を引き出すアプローチです。そのため、基本的には指導される側が主体的に考え、発言・行動することが求められます。
またコーチングでは、指導される側が自ら目標を設定するとともに、目標達成に向けた行動を選択できるよう促します。指導する側の言った通りにするのではなく、自ら選択し決定できるようにすることで、モチベーションの維持・向上を促していくのです。
このように、指導される側の主体性や自立性を促進することがコーチングを用いるメリットと言えます。
コーチングのデメリット
- 1. 知識・経験が不足している場合、自分で回答を考えられず、業務が進まない
- 2. 業務が進まないことで、自分の欠点が気になりモチベーションが下がる
- 3. 一人ひとりに合わせた質問を投げ、考えさせるため、ティーチングより時間がかかる
コーチングでは、指導される側の経験が乏しいと、適切な問いかけをどんなにたくさん行っても、指導される側から答えを引き出すことはできません。うまく回答を考えられない状況で繰り返し問いかけを続けると、指導対象者が「自分はできていない」と感じ始め、モチベーションが下がってしまう可能性もあります。
相手の経験や状況に合わせた質問を考え投げかけること、相手が考え発言・行動するまでじっくり待つことなど、目的を果たすために相応の労力や時間が掛かることを指導する側が理解しておくことが必要です。
指導する側の注意点
昨今、部下育成のお悩みとしてよくお伺いするのが、「自ら考え積極的に行動する部下に育ってほしい」という要望です。このようなお悩みを抱える上司の方、ご自身が優秀で気付きやすいがゆえに、ついつい細かい指示を出しがち。部下が考えをまとめる前に答えを伝えてしまい、考える機会を奪っていることもあります。また、細かい指示を出し続けることで、部下の「自分で工夫してみよう」意欲を奪っているかもしれません。
効果的に部下を育成する場合、まずは育成対象者の経験や状況を把握する必要があります。自ら回答を考えるほどの経験がない人に対してはティーチングで型を伝え、確実に型通りに仕事を進められるようにしてあげましょう。型通りに仕事を遂行できた際には、正しく出来ていることを評価してあげることもポイントです。
業務を遂行した経験、そして正しく型が身についているという評価を受けた経験がないと、コーチングで指導を受けても自ら考えることができません。「自ら考える部下に育ってほしい」というお悩みを持つ上司の皆さまにこそ、ティーチングとコーチングの違いを理解し、使い分けていただきたいのです。
コーチングの活用事例
では、コーチングをさらに確実に理解するために、実際の活用事例を見ていきましょう。
コーチング活用シーン
入社3年目のAさんは、着々と業務をこなし今では一人前に業務を完遂できるまでに成長。業務を依頼すれば納期内に仕上げはするものの、同期のBさんと比べて今ひとつ自発性、主体性が足りない...。それに比べBさんは、依頼業務に繋がる先の業務まで見据えて取り掛かるため、依頼業務+αで仕上げてくれる。
入社3年目のAさんは、指示された業務を遂行する力はついたものの、自ら考え行動する力は不足しているようです。上司であるC部長は、入社5年目の先輩社員Dさんにコーチングを依頼しました。
DさんがAさんに行ったコーチングは以下のような内容です。
- 具体的な目的の確認、擦り合わせ
- 過去に実施してきた類似業務経験の有無
- 過去に実施してきた類似業務での成功・失敗のポイント
- この業務はどんな人に役立つ業務なのか
- この業務をAさんが取り組むことの意義
- そもそもAさんは1年後にどんな状態を目指すのか
AさんはDさんの質問に繰り返し回答することで、自ら考え行動する力を伸ばしていきました。こうした経験を通じ、今やAさんは「依頼された業務だけをやる作業屋さん」から脱出しつつあります。
コーチングを行う際の質問例
最後に、指導される側=部下に対してコーチングを行う際に用いる質問の例をご紹介しましょう。
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1. 「具体的にはどういうこと?」
部下の発言が漠然としている・抽象的で理解が乏しいと感じる時に投げかけましょう。この質問を通じて、部下自身の頭の中を整理させることができます。
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2. 「XXXさんの視点や気持ちになってみたら、どう考える?」
部下の発言や振る舞いが、思い込み、独りよがりになっていると感じる時に投げかけましょう。また、上司である皆さまや、先輩社員、別部署の人などの視点を身に付けさせたいと感じる時に有効な質問です。
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3. 「どうしたらよいと思うの?」
部下自身に具体的なネクストアクションを考えさせ、行動させたいときに投げかけましょう。この質問を問いかけ続けて回答が得られない時には、ティーチングすることも必要となります。
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4. 「なぜ、そう考えるの?」
部下自身の考え方を理解する時に投げかけましょう。コーチングは、部下の考えを引き出すことが必要です。そのためにも、部下が上司である皆さまに自分の考えを伝えられる人かという信頼関係ができていなければなりません。信頼関係を築く一つの要素が相手を理解することです。
ここで挙げた質問はあくまで一例です。日々の部下育成を通じて効果的であった質問を手帳などに書き溜め、ぜひ、自分なりの質問集を作ってみてください。
まとめ
本コラムでは、コーチングを中心にティーチングとの違い、コーチングのやり方についてご紹介してきました。
コーチングとは「本人が自ら考え行動する能力を引き出す技術」であり、ティーチングとは「ノウハウや知識を一方的に指示・助言する技術」です。
どちらの手法が正しいか、優れているかではありません。重要なのは、指導される側のスキル・知識・経験、取り組むべき業務内容の難易度、与えられた時間などを考慮し使い分けることと、その結果として部下の持つ能力を最大限に発揮させることです。
部下育成で少しでもお悩みの方は、部下ごとにティーチングとコーチングを使い分けた育成計画を立てることから始めてみてください。