リーダー必見 ! 4つの行動で変わる、 多様な視点で物事を捉える「多眼的認知」の身につけ方
今の時代のリーダーに「多様な視点」が欠かせない理由
日々の業務の中で、「お客さまへの提案がなかなか刺さらない」「メンバーが意欲的に行動してくれない」と感じることはないでしょうか。また、「市場を読み違えたのか、新しい事業で成果が全く出なかった」、そんな苦い経験を持っている方もいらっしゃるでしょう。
実は、これらは全て「自分の視点でしか物事を見られない」ことに関係しています。企業やビジネスを取り巻く環境が大きく変化する中、自分の視点、自社の視点だけで物事を見ていては、顧客のニーズを取り違えたり、状況が変わっているのに同じアプローチばかり繰り返してしまったり...、その結果として、事業をうまく回せなくなることは容易に想像できます。
また、従業員の多様化が進む今の時代。メンバー一人ひとりの価値観を理解せずに、自身の価値観だけでメンバーを見てしまうと、指示を出しても動いてくれない、指示に対する認識がずれてしまうなど、チームとして機能しない事態に陥ってしまうかもしれません。
これは裏を返せば、今の時代のリーダーには、「多様な視点」を持って事業を運営する、業務を推進する、メンバーを束ねる、という姿勢が求められるということです。そして当社では、「多様な視点で物事を捉える力」のことを「多眼的認知」と呼び、リーダーとして力を発揮していくために必須の力と位置づけています。
ここから、この多眼的認知を獲得するための"4つの行動"をご紹介しますので、「多様な視点を持ったリーダーを育てたい!」「リーダーとしてチームを変えていきたい!」、そう考えている人事担当者やリーダーの皆さま、そしてこれからリーダーになるという方は、ぜひ参考にしてください。
「多眼的認知」の獲得に必要な4つの行動
多様な視点を持つための取り組みとして、ぱっと思いつくのが、同業他社や他業種の人と話してみることではないでしょうか。また、ロジカル・シンキングやクリティカル・シンキングなどの研修を活用し、自身の物の見方や考え方の癖、傾向を知るという方法も考えられます。
こういった多眼的認知の獲得に向けた取り組みの根底にあるのが、次の4つの行動です。
- 1.不寛容から脱却する
- 2.自分に対する相手からの見られ方を認識する
- 3.様々な立場の視点に切り替える
- 4.知識・教養を広げる
これら4つが意味することは何なのか、そしてこれら4つの要素を身につけるにはどうしたらよいのか。
1つずつ詳しく見ていきます。
1.不寛容から脱却する
(1)なぜ「寛容さ」が必要なのか
本コラムで言う「不寛容」とは、自分の価値観を優先し、人の言動を受け入れないことを指します。対して「寛容」とは、
自分とは異なる意見や価値観を拒絶せずに受け入れること。決して、他人の意見に従う、振り回されるということではなく、「こんな物の見方もあるんだな」などと、他の意見や価値観を理解するプロセスを踏むということです。言い換えれば、寛容さがあれば多様な視点で物事を捉えることができるということ。そのため、不寛容から脱却することが、多眼的認知の獲得に欠かせない要素と言えるのです。
(2)「寛容さ」の身につけ方
寛容さが大切だと理解していても、人間には「確証バイアス」と呼ばれる「自身の経験や思考に沿った事象をより重要だと捉える心理的な傾向」があるため、意識的に取り組まないとなかなか寛容さはつくれません。また、「自分の経験則は正しいはず」「自分と異なる意見を受け入れること=自分が否定されること」といった潜在意識が働いてしまうことから、自分一人で「こんな見方があるのか」などと気づき、意識を変えていくことは困難です。
そこで重要となるのが、周囲からの継続的な働きかけです。単眼的な言動が見られたら声を掛ける、「こんな見方もあるよね」と別の視点を具体的に伝えるといったアプローチを通じて、意識変容を促すとよいでしょう。
2.自分に対する相手からの見られ方を認識する
(1)なぜ「相手からの見られ方」が重要なのか
「リーダーシップを発揮する」というのは、いわば「メンバーに対して影響を与える」行為です。
例えば、メンバーに難易度の高い仕事を任せようとしたとき、「面倒くさいことを振ってくる人」と思われているか、「自分にとってためになる仕事を振ってくる人」と思われているかで、反応は大きく変わってきます。その反応こそが、リーダーの影響力の表れであり、相手からの見られ方の表れ。それを正しく認識することが、メンバーの多様な価値観の理解につながり、多様な視点の獲得につながるのです。
(2)「相手からの見られ方」を正しく認識する方法
自身の見られ方を正しく把握するための方法は2つ。1つ目が、「相手の反応を観察し、仮説検証する」ことです。
先ほどの例で言うと、メンバーに仕事をお願いしたときに、「面倒くさいことを振ってくる人」と見られていれば、返答に警戒心が表れることがあるでしょう。一方、「自分にとってためになる仕事を振ってくる人」と思われていれば、乗り気で前向きな言葉が出てくるがというように、同じことを同じようにお願いしても、様々な反応が返ってきます。
このような反応をよく観察して振り返り、検証しながら相手と認識を合わせていくことが、自身の見られ方を正しく知る第一歩。ただし、"面従腹背"という言葉があるように、声掛けのような短い時間では判断できないこともありますので、1on1ミーティングなど、しっかり時間を取って対話する場を設けることが必須です。
もう1つの効果的な方法が、「リーダーが他者からのフィードバックを受けられる機会をつくる」ことです。
チームリーダー、さらに管理職というように立場が上がっていくにつれ、他者からフィードバックを受ける機会は減っていくもの。加えて、自分の意見がそのまま通ってしまうことも多くなり、反対意見をもらうことも減っていきます。そうなると、どうしても他の意見を受け入れる習慣が薄まり、多様な視点をはじきたくなってしまいます。
そのため、リーダーが自身の見られ方を正しく把握できるよう、リーダー層への1on1ミーティングを実施したり360度評価を実施したりと、意図的にフィードバックの場をつくることも大切です。
3.様々な立場の視点に切り替える
(1)なぜ「視点の切り替え」が重要なのか
ビジネスを進めるには当然、様々な立場・環境の人との関わりが出てきます。また、個人個人で物事の捉え方や価値観は異なり、たとえ年代や育った環境が同じだったとしても、これまでの経験によって見方は変わってきます。そのため、様々な立場の人の視点に立って物事を考えてみることも、多眼的認知の獲得に不可欠な要素と言えます。
(2)「相手からの見られ方」を正しく認識する方法
まず取り組みたいのが、普段接する機会のない人との会話・対話です。先ほど、同業他社や他業種の人との交流を挙げましたが、社内だったら他部署の先輩・後輩でもいいでしょう。当たり前のことかもしれませんが、いつもと違う考えや価値観に触れることで、別の視点に気づくことができます。
また、自社の顧客や事業領域だけでなく、他の領域に目を向けることも大切です。例えば「自社の商品を使っている人」がなぜ自社を選んでくれたのかを考えることはよくあると思いますが、それにとどまらず、「競合他社の商品を使っている人」とは何が違うのか、また何を重要視して他社を選んだのかなどと考えを広げていくことで、少しずつ多様な視点が備わり、
視点を切り替えられるようになっていきます。
先に紹介した「不寛容から脱却する」「自分に対する相手からの見られ方を認識する」を通じて多様な意見や価値観を受け入れる"土壌"をつくる、そのうえで「様々な立場の視点に切り替える」ための行動を実践する。これも大事なポイントです。
4.知識・教養を広げる
(1)なぜ幅広い「知識・教養」が必要なのか
世の中には、デジタルトランスフォーメーション(DX)やSDGs、またコロナ禍の今であればWithコロナやニューノーマルなど、新しい言葉がどんどん生まれています。これは、単に新しい単語が登場しているだけでなく、例えばDXという言葉ひとつを取っても、10年前であれば単純に「システム化」のことを指していたかもしれない、またCSRからの流れでSDGsが出てきたかもしれないというように、同じような性質・系譜の言葉でも別の捉え方が発生し、その結果として新しい言葉へと進化しているということです。
言葉の数だけ物の捉え方があるということは、言葉をたくさん知っている、つまり語彙力があればあるほど物事の捉え方が広がるということ。そう考えると、知識・教養を広げることは、多眼的認知を獲得するために必要不可欠な行動であり、また"前提"であると言えるのかもしれません。
(2)「知識・教養」を広げる方法
知識・教養を広げる手段として、本を読む、先人の教えを乞うといった方法のほか、動画やSNSの活用、研修やセミナーへの参加で見聞を広げるなど、様々な方法が考えられます。もちろん、仕事の経験から得られる知識もたくさんあります。
目的に応じて様々な方法を組み合わせる、また、自身の興味がある分野以外にも視野を広げて知識をインプットすることが大切ですが、ここでのポイントは、知識を「入れ続ける」「得続ける」ことです。
当社が実施した調査で、仕事で成果を出すための基礎的な知識・スキルである"ビジネス基礎力"のスコアが最も高い年代は「20代後半」。そこをピークに、年齢とともにスコアが下がる傾向があることが判明しています。つまり、年齢を重ねて仕事の経験を積んだからといって、それに応じて知識も増え続けるとは限らないということです。
ぜひ、知識を「入れ続ける」「得続ける」ことまでを意識し、日々の仕事に取り組んでみてください。
「情報を得る≠知識を得る」を前提とした知識インプットを
今回のコラムでは、現在のビジネス環境で求められる理想のリーダー像や、リーダーシップを発揮するために必要な「多眼的認知」とその身につけ方をご紹介しました。
最後の章で、知識インプットを継続することの重要性をお伝えしましたが、必ず頭に入れておいていただきたいのが、「情報を得る=知識を得る」ではないということです。インターネットやスマートフォンの普及により、簡単に「情報」を得られる今の時代。たくさんの情報に触れることで「知識が増えた」と感じてしまいがちですが、情報に触れて"知っているつもり"になっているケースは実に多いのです。
ここから言えるのは、情報を得て終わりではなく、情報に触れた後の「解釈→思考→理解」というプロセスを踏んで、"知っているつもり"を"知識"に変える必要があるということ。この視点を忘れずに知識インプットを継続し、"真の"知識を広げて多眼的認知の獲得に努める。そしてその先にある、「今の時代のリーダーシップ」の発揮につなげていきましょう。