リフレーミングとは?種類と効果、ビジネスでの活用例を解説
「ビジネスで何度も同じ問題に直面するが、なかなか解決策が見つからない……」そんな状況を打開する方法として、物事を客観的に捉え直す思考スキル「リフレーミング」が注目されています。
本コラムでは、リフレーミングの基本概念から実践方法、ビジネスへの活用法まで、具体例を交えながら詳しく解説します。
リフレーミングとは
リフレーミングとは、物事の見方や解釈を意図的に変えることで、状況に対する認識や感情を変化させる心理テクニックです。
ネガティブな状況や経験を肯定的、または建設的な視点から捉え直すことで、ストレスの軽減やモチベーションの向上、問題解決の促進などの効果が期待できるといわれています。
はじめに、リフレーミングの基本概念や背景について見ていきましょう。
リフレーミングの意味
通常、私たちは物事の特定を行う際に「枠組み(フレーム)」を通して解釈しています。この枠組みには個人差があり、その人の過去の経験や価値観、信念などによって形成されます。
リフレーミングは、普段無意識に使っているこの見方や考え方を、意識的に別の角度から捉え直す作業です。そうすることで、同じ状況でも異なる受け止め方ができるようになり、新たな可能性や解決策の発見につながります。
リフレーミングの具体例
例えば「コップに水が半分入っている」という状況を想像してみましょう。その捉え方が、「半分しか入っていない」「半分も入っている」のどちらかによって、その状況に対する感情は大きく変わります。一般的に、前者の場合は不足感を、後者の場合は満足感を抱きやすいと考えられます。
リフレーミングは、同じ出来事や状況に対して異なる視点を持つことで、感情や行動に変化をもたらすための思考法なのです。
ポジティブシンキングとの違い
リフレーミングと類似する思考法に「ポジティブシンキング」があります。この2つの手法は一見似ているように見えますが、その本質は大きく異なります。
ポジティブシンキングは、「常に明るく前向きに」を目指す思考法です。一方、リフレーミングはネガティブな側面も含め、状況を多角的に捉えます。その状況に新たな意味や価値を見いだすことが目的だといえるでしょう。
リフレーミングの歴史と背景
リフレーミングは、もともとは心理療法の一環として開発された手法です。1970年代にNLP(神経言語プログラミング)の創始者であるリチャード・バンドラーとジョン・グリンダーによって体系化されました。
社会が急速に変化する現代において、柔軟な思考力や問題解決能力はとくに重要視されています。こうした背景から、リフレーミングの活用は、ビジネスや教育、医療・福祉など、様々な領域で広がっています。
リフレーミングの主な種類
リフレーミングには、大きく分けて「状況のリフレーミング」と「内容(意味)のリフレーミング」の2種類があります。それぞれの特徴を具体例とともに見ていきましょう。
(1)状況のリフレーミング
状況のリフレーミングは、置かれている環境や状況の捉え方を変えて、別の状況下での有効性を検討する手法です。短所やネガティブな側面と捉えられがちな事柄も、異なる状況下では長所や価値あるものとして捉え直せるという考えに基づいています。
【例】決断に時間がかかる人の場合
-
リフレーミング前
緊急を要する案件で即断即決ができず、チームの進行を遅らせてしまう
-
リフレーミング後
慎重な判断が求められる重要案件では、多角的な視点から最適な決定を下すことができる
(2)内容のリフレーミング
内容のリフレーミングは、状況や行動そのものではなく、出来事に対する解釈や意味づけを変更することで、心理的影響を変化させる手法です。「意味のリフレーミング」とも呼ばれます。
物事は本質的に中立であり、その評価は私たちが与える「意味づけ」によって決まるという考えに基づいています。
【例】新規プロジェクトが失敗した場合
-
リフレーミング前
「自分の能力不足が原因で、会社に迷惑をかけてしまった」
-
リフレーミング後
「この経験から多くの学びを得られた。次のプロジェクトではこの教訓を活かし、より良い結果を出せるはずだ」
リフレーミングの具体例と実践方法
次に、リフレーミングの具体的な実践方法をご紹介します。リフレーミングをする対象や考え方のパターンによって、主に以下の6種類に分類できます。
(1)「言葉の定義」をリフレーミングする
ネガティブな解釈をポジティブな解釈に言い換える方法です。自己理解や他者理解を深めるうえでも効果的です。
【例】
- 「飽きっぽい」→「好奇心旺盛」
- 「諦めが悪い」→「粘り強い」
(2)「時間枠」をリフレーミングする
過去・現在・未来という時間軸で物事を捉え直す方法です。現在の困難を、未来の成功につながる機会として捉えることができます。
【例】
- 「現在の失敗は、未来の成功のための学びである」
- 「今の努力は、将来の自分への投資だ」
(3)「もし~なら」と考えてリフレーミングする
「もし〇〇だったら」と仮定して考えることで、視野を広げ、解決策の選択肢を増やす方法です。
【例】
- 「もし無限の予算があったら、問題をどのように解決するだろうか」
- 「もし10年後の自分がアドバイスをくれるとしたら、何と言うだろうか」
(4)「Want」を基準にリフレーミングする
「自分はどうしたいのか」に焦点をあてて、状況を捉え直す方法です。本質的な欲求や目標を明確にし、そこに向かうための行動を促します。
【例】
- 「この仕事を早く終わらせたい」→「質の高い仕事をして、達成感を得たい」
- 「上司の指示に従いたくない」→「自分のアイデアを活かして貢献したい」
(5)「隠喩(いんゆ)」を用いてリフレーミングする
隠喩(いんゆ)表現を用いて、物事の捉え方や意味づけを変える手法です。より創造的で印象的なリフレーミングが可能になります。
【例】
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「組織は生き物だ」
組織を生き物に例えることで、変化や適応の必要性を理解しやすくなる
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「人生はマラソンだ」
人生を長距離走に例えることで、短期的な困難を乗り越える忍耐力の重要性を認識できる
(6)「解体」してリフレーミングする
困難に感じている問題を細分化して、個別に考える方法です。大きな問題を小さな要素に分解することで、問題の本質が明確になり、具体的な対策が立てやすくなります。
【例】
- 「仕事が大変でつらい」
- 何が大変なのか?(量・内容・期限など)
- つらい原因は何か?(責任感・プレッシャー・体調・人間関係など)
- どの部分が最も負担になっているか?
- 改善できる要素はあるか?
- 「部下のマネジメントがうまくいかない」
- 何がうまくいっていないのか?(コミュニケーション・業務の割り当て・モチベーション管理など)
- うまくいかない原因は何か?(経験不足・スキルギャップ・価値観の違い・時間の制約など)
- 部下一人ひとりの特性や強みは把握できているか?
- 自分のマネジメントスタイルに偏りはないか?
ビジネスにおけるリフレーミングの主な効果
リフレーミングによる効果は、多岐にわたります。ここでは、ビジネスでリフレーミングを活用する際の効果を見ていきましょう。
【ビジネスにおけるリフレーミングの主な効果】
効果 | 説明 |
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モチベーションの向上 |
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人間関係の改善 |
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課題解決能力の向上 |
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ストレスの軽減 |
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クリエイティビティの向上 |
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自信の向上 |
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対応力の向上 |
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ビジネスでのリフレーミングの活用例と注意点
近年、企業を取り巻く環境は急速に変化しています。そんな中、多くの企業がリフレーミングを活用した社員のメンタルヘルス対策や、多様性を重視する組織づくりに取り組んでいます。
最後に、ビジネスにおけるリフレーミングの活用例と、実施する際の注意点を見ていきましょう。
ビジネスでのリフレーミングの活用例
リフレーミングは、ビジネスの次のような場面で活用されています。
- 社員育成のための研修で、管理職が部下に対してリフレーミングを用いたコミュニケーションを行い、社員の問題解決能力や主体性の向上を促す
- メンタルヘルスケアにおいて、仕事への不安や人間関係の悩みを抱える社員に対し、心理的なバランスを取り戻し、より良い状態を目指すためにリフレーミングを用いてサポートする
リフレーミングの活用によって、個人だけでなく、組織全体にもポジティブな影響を与えることができます。社員のストレス軽減や心の健康維持につながるだけでなく、「失敗は成長の糧」といった、前向きな思考の組織文化醸成にも役立つでしょう。
リフレーミングを実施する際の注意点
リフレーミングを行う際は、相手の立場や状況を十分に考慮しましょう。この手法は、相手の価値観や信念を否定するものではありません。相手の言葉に耳を傾け、共感しながら、その視点に立って物事を捉えることが大切です。状況に応じて、適切なリフレーミング法を選択しましょう。
また、ポジティブ思考に偏りすぎないよう注意が必要です。単に楽観的になるだけでは、真の問題解決につながらない可能性があります。成長に必要な課題から目をそらさず、それらに真摯に向き合う姿勢を保つよう心がけましょう。