メタ認知とは|ビジネスでの重要性とトレーニング方法

published公開日:2024.08.05
メタ認知とは|ビジネスでの重要性とトレーニング方法
目次

メタ認知とは、自分の認知活動を客観的に把握し、制御する能力を指します。ビジネスにおいて、自己成長を支える重要なスキルです。

本記事では、メタ認知の基本概念とビジネスにおける重要性、メタ認知能力が高い人の特徴やトレーニング方法などについて解説します。

メタ認知とは

メタ認知は、ビジネスシーンで自己成長を支える重要なスキルです。最初に、メタ認知とは何か、そしてビジネスにおけるメタ認知の重要性について解説します。

メタ認知とは

メタ認知の「メタ」とは「高次の」という意味です。メタ認知とは、自分の認知活動を高次の視点から捉えることを指します。つまり、自分が何を考え、どのように行動しているかを、第三者の視点から客観的に見つめ、冷静に判断することです。

例えば、重要な打ち合わせの最中に、「うまく話せているか」「相手に伝わっているか」と自問自答しながら進め、必要に応じて話し方を変えること。このように「もう一人の自分」の視点から自身を客観的に認知することが、メタ認知なのです。

メタ認知の概念は、アメリカの心理学者であるジョン・H・フラベル氏が提唱しました。メタ認知を行うことで、自分自身をコントロールし、冷静な判断や行動が可能になると考えられています。

メタ認知のビジネスにおける重要性

メタ認知能力は、ビジネスパーソンにとって重要なスキルです。変化の激しいビジネス環境において、自分の行動が正しいかを見極め、必要に応じて修正する能力は、常に求められています。

メタ認知能力が備わっていると、大きな変化や困難に直面しても、自分を見失わずに冷静に判断できます。日常業務だけでなく、ビジネスパーソンが成長するうえで欠かせない能力といえるでしょう。

メタ認知の2つの種類

メタ認知は、以下の2つの種類に分けられます。

  • メタ認知的知識
  • メタ認知的活動

これらは相互に補完し、繰り返されます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

メタ認知的知識

メタ認知的知識とは、自分の長所や短所、得意なことや苦手なことなどを分析して理解し、その結果得た知識のことです。

例えば、「私は書くことは苦手だが、話すことは得意」「読むよりも聞くほうが早く理解できる」などのような、自分に関する認知特性を指します。

また、課題や方略についての知識も含みます。課題についての知識とは、「手入力するとミスが出やすい」「単調な作業を長時間行うと、集中力が低下しやすい」など、課題に関する知識です。

方略についての知識とは、「25分作業して5分休憩を取ることで、集中力が持続する」「相手に合わせて話し方を変える」など、目的達成のための知識を指します。

メタ認知的活動

メタ認知的活動とは、自分が何をしているかを把握し、必要に応じて対策を講じることです。メタ認知的活動には、「メタ認知的モニタリング」と「メタ認知的コントロール」があります。

「メタ認知的モニタリング」とは、自分の行動を第三者の視点から見て(モニタリング)、認知することです。「メタ認知的コントロール」とは、モニタリングの結果によって、言動を修正することを指します。モニタリングとコントロールを交互に行うことで、改善を続けることができます。

具体的には、他者との会話中に自分の話が正しく伝わっているかをチェックすることがモニタリング。うまく伝わっていないと感じたら、説明を補足する、話すスピードを変えるなど、内容や話し方を調整することがコントロールです。

メタ認知能力が高い人・低い人の特徴

では、メタ認知能力が高い人と低い人には、どのような特徴があるのでしょう。それぞれ見ていきます。

メタ認知能力が高い人の特徴

メタ認知能力が高い人は、自己認識と自己管理が優れており、周囲と良好な関係を築く能力に長けています。具体的な特徴を解説していきます。

良好な人間関係を構築できる

自分の立ち位置を客観的に把握できるため、周りの人との距離を適切に保てます。踏み込みすぎず、他者のプライバシーや感情に配慮しながら接することができるため、コミュニケーションがスムーズです。

仕事上でも、良好な人間関係を構築できるため、周囲の人と協力しながら業務に取り組めます。リーダーシップを発揮しやすいため、チームの目標達成などにも貢献できるでしょう。

冷静な判断ができる

メタ認知能力が高いと、状況や目的を客観的に把握できるため、冷静な判断が可能です。トラブルやクレームなど想定外の問題が発生しても、感情に流されず冷静に対処でき、最適な解決策を見つけられるでしょう。

また、冷静に状況を見極めることで、多くの業務を抱えている場合でも効率的に優先順位をつけることができ、マルチタスク能力が高まります。

柔軟な対応ができる

メタ認知能力が高い人は、自分の考えや周囲の様子を客観的に捉えられます。自分にできることや周りの状況をしっかり認識しているため、柔軟な対応が可能です。固定観念や偏った考えにも気づきやすく、変化や課題に臨機応変に対処できます。

意欲的に仕事ができる

メタ認知能力が高いと自己理解も深まるため、目標設定が適切にできるようになります。将来のビジョンが明確になると、日々の仕事にも意欲的に取り組めます。

メタ認知能力が低い人の特徴

メタ認知能力が低い人には以下のような特徴があります。それぞれの特徴を解説します。

感情に左右されやすい

メタ認知能力が低い人は、自分を客観的に認知できず、感情に左右されてしまいます。感情に任せて行動することで、ストレスや衝突を引き起こし、職場や日常生活で問題が増えることがあります。

対人関係に影響が出やすい

メタ認知は自分のことだけでなく、相手の理解を深めることにも役立ちます。メタ認知能力が低いと、相手の行動や質問の意図を汲み取ることが難しくなり、誤解が生じる可能性があります。

人間関係のトラブルが増えやすく、信頼関係の構築やチームでの協力が難しくなり、仕事の効率や成果にも悪影響を及ぼす可能性があります。

モチベーションが低下しやすい

メタ認知能力が低い人は、自分の長所と短所を把握しにくく、その結果、適切な役割や仕事を見つけることが難しくなります。自分に合った成長機会を得ることができないと、自己評価が低下し、モチベーションの低下につながる可能性があります。

メタ認知を高めるメリットとデメリット

メタ認知を高めることで、様々なメリットが期待できる一方で、注意が必要なデメリットもあります。ここでは、メタ認知を高めるメリットとデメリットを解説します。

メタ認知を高めるメリット

メタ認知を高めることで得られる主なメリットは、以下のようなことがあります。

課題解決力が向上する

課題に対する自分の思考プロセスを振り返ることで、課題の本質を深く理解し、適切な解決策を見つけやすくなります。また、自分の心理状態を意識することで、感情的にならずに冷静に事態を判断できるようになります。

成長が促進される

メタ認知を通して、自分の長所や短所、行動パターンを客観的に把握できるようになります。これにより、自分自身の強みや弱みの理解が深まり、現実的な目標設定ができるようになるでしょう。適切な目標を掲げることで、成長が建設的に促進されます。

発想が豊かになる

メタ認知により、多角的な視点から物事を捉えることで、発想の幅が広がります。過去の経験から学びを引き出したり、独自の視点から考えたりできるため、柔軟で創造的な発想が生まれるでしょう。

メタ認知を高めるデメリット

メリットが多いメタ認知ですが、過剰になると、デメリットになってしまう可能性があります。デメリットとして、以下のような点が挙げられます。

  • 過度な思考がストレスにつながる
  • プレッシャーが大きくなってしまう
  • 過剰に気遣いして疲れてしまう

上記のように感じた場合は、休憩をとってリフレッシュすることも必要です。信頼できる人と対話して異なる考えも取り入れましょう。

メタ認知を社内で高めるトレーニング方法

メタ認知を社内で高めるためには、個人で行う方法と組織で行う方法の両方があります。ここでは、それぞれの方法について解説します。

個人でメタ認知を高めるトレーニング方法

1人でメタ認知を高める方法としては、自分の行動や考え、その日の出来事などを書き出すことが効果的です。書くことにより、自分自身を俯瞰し、思考を可視化できるため、物事の本質に気づきやすくなります。

組織でメタ認知を高めるトレーニング方法

組織でメタ認知を高めるためには、他者からフィードバックを受けることが重要です。自分一人で考えるだけでは限界があり、他者から見た自分の姿を知ることが、メタ認知を高めるために役立ちます。

具体的には、以下のような方法があります。

①人事評価面談

最初に、社員と上司で行う人事評価面談の方法をご紹介します。自己評価と上司の評価、対話を通じて、社員自身のメタ認知を高める機会になります。

  1. ステップ1:社員が自身の評価を行い、なぜそのように評価したかをレポートにまとめる
  2. ステップ2:面談で、社員が自己評価の内容を発表する
  3. ステップ3:上司は発表内容とレポートを元に、社員に質問をする(質問することで、思考を深める)
  4. ステップ4:上司が評価した内容と、社員の自己評価をもとに、同じ点と違う点について意見を交換する
  5. ステップ5:社員は気づいたことをレポートにまとめ、上司に提出する

②報告書や日報

次は、報告書や日報を通じてメタ認知を高める方法です。上司からフィードバックを受けることで、自分では気づきにくい行動面での課題に気づくことができ、メタ認知が自然と高まります。

  1. ステップ1:社員が日報や報告書を書く際に、具体的な行動とその結果を入れる
  2. ステップ2:社員は結果の原因となったこと、課題や改善点を記載する
  3. ステップ3:上司は日報や報告書の内容に対して、フィードバックをする

③顧客満足度アンケート結果

最後に、顧客アンケートなどを活用する方法をご紹介します。以下のステップをくり返し行うことで、顧客の視点に立てるようになり、メタ認知が高められます。

  1. ステップ1:アンケート結果によって気づいたことを書き出す
  2. ステップ2:書き出した内容について、同僚と意見を交換し、新たな気づきがあれば追記する
  3. ステップ3:上司に報告する
  4. ステップ4:上司はフィードバックを行う