PDCAの基礎知識や使い方、メリット・デメリットを解説

update更新日:2022.04.26 published公開日:2021.12.09
PDCAの基礎知識や使い方、メリット・デメリットを解説
目次
PDCAとは、Plan(プラン・計画)、Do(実行)、Check(チェック・振り返り・評価)、Act(改善)の頭文字を取ったもの。 本コラムでは、PDCAについて、その概要やメリット・デメリット、うまくPDCAが回せなかった場合の解決方法などについて解説します。

PDCAとは

PDCAは、Plan(プラン・計画)、Do(実行)、Check(チェック・振り返り・評価)、Act(改善)を繰り返して、目標の達成や業務改善などを行うセルフマネジメントの方法です。計画を立案・実行し、結果を確認しながら、より良い目標達成手段へと改善していくことを言います。

PDCAの話題では、PDCAサイクルという言葉が良く出てきます。PDCAサイクルは、P→D→C→Aまできたら、再度Pに戻ってくることを表した言葉で、PDCAとはほぼ同義です。

提唱したのは、アメリカの統計学者ウィリアム・エドワーズ・デミング博士とウォルター・シューハート博士。もともとは、品質管理のために考え出されたメソッドです。それが今では一般企業にも浸透し、個人や部署のなどの目標達成・スキルアップのためのフレームワークとして用いられています。

なぜビジネスパーソンにはPDCAが必要か‍

会社組織では、自身が取り組む課題や目標は明確に提示されることがほとんど。営業や販売であれば売上や販売数、エンジニアであれば成果物のクオリティアップや業務効率化など、やるべきことは明白です。

しかし、がむしゃらに目標に向かって仕事をするだけでは不十分。仕事がうまくいった理由・いかなかった理由も明確にできてこそ一人前のビジネスパーソンと言えるでしょう。

そこで活用できるのがPDCA。PDCAは、ゴールに向かって仮説や計画を立てて実行していくため、理想と現実の乖離がはっきりします。その結果、自分が取るべき具体的なアクションプランが作成できるのです。

例えば、売上が上がらないという問題に対して、新規顧客が獲得できていない課題があると仮定します。そこで、新しい市場へアプローチする戦略を考えて実行した結果、売上が伸びたのだとすれば仮説は合っていたと言えます。

逆に、それでも顧客獲得につながらない場合は、営業方法や自社サービスの内容といった別の課題が見えてくるでしょう。新たな課題を抽出してはPDCAを回し、改善を繰り返します。すると、PDCAを回し続けることで仕事が最適化されていくので、成果が出るようになります。結果、自身の評価にもつながるのです。

PDCAサイクルの回し方・準備の仕方

P(プラン・計画)

計画を立てるときは、まず所属している部署やチームの目標を把握してください。そして、計画を立てたら方向性が間違っていないかを必ず上司や先輩に確認してから実行に移しましょう。

計画を立てる際は、最初に何をもってして目標達成となるのか、ゴールを設定しましょう。そして、ゴールに対して達成すべき目標を定めます。

次に、期限を切ります。ゴールの期日は会社の決算の時期や査定期間、プロジェクトの期日などさまざまなため、状況に合わせて決めます。そして、ゴールを達成できるように目標の期限も切りましょう。

期限を決めると同時に、目標に合わせて売上金額や見込み顧客からの反応数などといったクリアすべき「数値」を決めます。数値にするのは、自分だけではなく上司や先輩が見ても達成・未達成がわかる状態が好ましいためです。適切な数値が自分で出せないときも、上司や先輩に相談しましょう。

そして、目標に対して取るべきアクションを具体化・細分化したものがプランとなります。慣れないうちは、無理のない計画であるか、上司や先輩に見てもらいましょう。

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D(実行)

D(実行)は、P(プラン・計画)を実行に移す段階です。「何をしたらどうなったのか」は忘れずに記録してください。計画通りでもそうでなくても、記録は必須です。これがないと、次段階のC(チェック・振り返り・評価)が適切に行えません。また、若手のうちは日々の進捗を上司や先輩に報告して、日々の取り組みをアピールしたり、アドバイスをもらったりして進めると良いでしょう。

記録についてはフォーマットを用意しておくと便利です。記録の方法や成否の基準を統一しておくことで、振り返りがしやすくなります。記録する項目は、P(プラン・計画)の段階で洗い出しておくのがベターですが、実行してみてわかることもあるので、ある程度拡張性を持たせたフォーマットにしておきましょう。

C(チェック・振り返り・評価)

C(チェック・振り返り・評価)では、D(実行)で実行したアクションを振り返ります。まずは、定めていた数値目標を達成していたかどうか。次に、目標値が適切であったかをチェックします。

C(チェック・振り返り・評価)に使える手法として、KPT(ケプト)というものがあります。結果に対して、Keep(良かった点は?)、Problem(改善すべきポイントは?)、Try(次回は何をやってみるか?)の3つから振り返り、改善点を探す方法です。

自身でKPTを振り返ったあとに、上司にもKPTを出してもらい比べてみましょう。特に、Problem(改善すべきポイントは?)とTry(次回は何をやってみるか?)に大きくズレがないかはチェックしておきたいポイントです。ここの認識が双方で大きくズレている場合、目的の共有や目標設定においてコミュニケーションがうまくいっていない可能性があります。

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A(改善)‍

A(改善)では、次のPDCAサイクルを回すためにどのような対策や改善策を講じていくべきかを検討します。C(チェック・振り返り・評価)での検証や振り返りをもとに考えましょう。目標を達成できなかったのであれば、次は何をして達成を目指すのかを考えます。上司との認識にズレが生じていたなら、コミュニケーションの頻度を増やして方向性がブレないようにしましょう。

また、結果が良かった場合は、目標を上方修正したり、逆に想定以上に悪かった場合は下方修正するなどして調整を行います。目標そのものを見直すといったケースも1つのA(改善)策です。

PDCAを繰り返して業務改善が進んだら、成功事例として業務を標準化し、社内でノウハウを共有すると企業の成長にも寄与できます。

PDCAのメリット・デメリット

PDCAのメリット

PDCAには、明確なゴールと目標があります。ゴールと目標に対して行動した結果、自身の仕事の改善点や良かった点などが明白になるため、次の行動に何を活かせば良いかが把握しやすいのがメリットです。

仮説と記録と実行、そして振り返りを習慣化することは、学びを増やすことにもつながります。若いビジネスパーソンは、ベテランと比べるとどうしても経験が足りません。少ない経験で最大の学びを得る手法となり得るのがPDCAサイクルなのです。

成功例はスタンダードにできますし、失敗例は改善・効率化の課題になるため、目標達成の合否に関わらず次につなげることができるのもPDCAのメリットです。

また、PDCAを回すにあたって上司や先輩とのコミュニケーションが活発化するのも利点と言えるでしょう。若手のうちは、個人の目標は見えても組織の目標にまで意識を向けるのは、なかなか難しいものです。上司や先輩とのコミュニケーションを通して、上の立場の考え方を知る機会を増やしていけば、ビジネスパーソンとしてどう振る舞えば良いかも見えてくるはずです。

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PDCAのデメリット

PDCAのデメリットは、時間がかかること、そして目標・目的が定まっていて、それを達成するための手法のため、突発的な出来事に対しての対応には向いていないということです。1サイクルを回すのに時間がかかってしまえば、それだけ成長は鈍化します。そのため、スピーディーにPDCAを回すための仕組みづくりが必要です。

PDCAサイクルを回すうえでは前回の結果を踏まえた改善策が出されることがほとんど。そのため、新しい技術やアイデアなどが生まれにくい側面があります。そんなときは一人で改善策を出すのではなく、上司や先輩に相談する・チームで考えるなどの取り組みが必要です。

また、PDCAはあくまで目的を達成するための手段です。PDCAを回すことが目的になってしまわないよう注意しましょう。

PDCAを高める方法

目標設定は具体的な数字にする

PDCAの効果を高めるために外せないのが、定量的な設定です。期間や達成したい目標は、具体的に数値で出しましょう。例えば、売上目標を立てるなら金額と、達成期間です。「●年●月までに、××円を達成する」のようにします。

数値にするのは、振り返りがしやすいようにするためです。チェックの段階で振り返ったときに、達成できていたのかどうか、どのくらい目標と乖離があったのかなどがわかるように数値で考えましょう。

無茶な目標や計画にならないようにする

実現可能な目標や計画になっているかは重要です。誰の目から見ても明らかに目標が高すぎる、実現するまでの期間設定が短いなど、立てたプランが実行できるものになっているかを客観的かつ現実的に考えましょう。

また、実現できない目標を掲げると、初めからこなす気がないと捉えられかねません。自分自身でも、「できなくてもしょうがない」と言い訳になるような計画になっていないか見極めましょう。

定期的に振り返って進捗が予定通りか確認する

日々の進捗を振り返るようにしましょう。上司や先輩にメンターとしてついてもらっているなら、報告して計画通りにPDCAサイクルが回せているか見てもらうのも手です。振り返りの際には、計画段階で出した数値に対しての進捗を追うとわかりやすくなります。サイクルを回すうえで課題が見えたなら、都度改善策を講じていきましょう。

PDCAサイクルを継続する

PDCAの効果を高めるために欠かせないのが、PDCAサイクルを回し続けることです。計画を立てて、改善のためにアクションを起こして振り返る。そこで、新たに課題が見つかるので、また計画を立てて改善策を講じる。どこかでサイクルが途切れてしまえば、結果にはつながりません。

継続的な実施のためには、いきなり高い目標ではなく低いところから始めるのがおすすめです。PDCAサイクルが習慣化すれば、自然と日々の仕事の中でも目標達成に向けて動いていけるようになります。

PDCAの改善事例

PDCAを導入することで、業務や売上が改善した事例があります。ここでは2つ紹介します。

業務水準を上げるマニュアルの作成

従業員の知識やスキルに個人差が大きいという課題に対して、マニュアルを作成した無印良品の事例です。個人が仕事のコツとしてまとめていたノウハウを、全社員が閲覧できるマニュアルにすることにしました。これがP(企画)にあたります。

D(実行)では、実際に社員からノウハウを集めマニュアルを作成。C(チェック)では、マニュアルの内容や更新頻度を見直すようにして、情報が古いのでマニュアルは見ない・必要なことが書かれていないといった状況にならないようにA(改善)しました。

結果、従業員がマニュアルを活用するようになり、業務水準が向上。新入社員もマニュアルを見れば仕事が理解できるので、教育コストの削減にもつながっています。

ツールと組み合わせてPDCAサイクルを改善

PDCAはサイクルを回さないと改善ができません。サイクルをうまく回せない場合は、ツールを用いるのも1つの手です。GMOメイクショップ社は、途切れてしまうサイクルを回すために、SFA/CRMツールを用いて対応しました。

ツールに状況を記録し、顧客へのアプローチやその進捗を管理できるようにしました。そうすることで、チェックの段階で課題が何かが明確になります。課題がわかったことで改善につなげるアクションが取れるようになり、売上向上や会議時間の短縮につながったと言います。

うまくPDCAが回せないときは

PDCAがうまく回せないときは、そもそもの計画が破綻している・習慣化できる仕組みになっていない・目標が高すぎてモチベーションが保てないなど、理由はさまざまです。

特に若手のうちは社会人経験がまだ浅いこともあり、PDCAサイクルを回すこと自体が難しいと感じることもあるでしょう。どのタイミングで計画を立て、いつ振り返ればいいのか、改善点を具体的な行動に落とし込むためにはどうすれば良いのかなどは、経験も大事になってくるためです。

そのようなときは、一人で解決しようとするのではなく上司や先輩など周囲の力を借りると良いでしょう。また、書籍や研修で学ぶのも手です。特に研修は、よりPDCAを取り入れやすいように講義内容が体系立てられているうえに、講師に疑問点を質問してすぐに解消できる点に優れています。書籍で基礎知識をつけたうえで参加する方法もあります。ビジネスパーソンとしてPDCAを回して成長を続けましょう!