マネジメントとは?種類とマネジメント業務の内容
しかし、「うまくいかない」「何をすることなのか?」など、悩みを持つ方も多いでしょう。
本コラムでは、マネジメントの意味や業務内容、マネジメント力の構成スキルをご紹介。
よくある課題や、マネジメント能力を高めるにはどうすればよいかも解説します。
マネジメントとは?その意味と種類
マネジメント(management)とは、一言で言えば「経営資源を活用して組織を管理すること」を意味します。
より具体的なイメージをつかむために、基本的な意味や、マネジメントの2つの種類、リーダーシップとの違いを見ていきましょう。
マネジメントの基本的な意味
マネジメントは、「ヒト・モノ・カネなどの経営資源を効率的に活用し、資源やリスクの管理を行うことで、経営上の効果を最適化すること」を意味する言葉です。
アメリカの経営学者であるピーター・ドラッカーが、1973年に刊行した著書『マネジメント 課題・責任・実践』で提唱したと言われています。
マネジメントはあくまでも手段であり、その目的は目標を達成するために組織を適切に機能させることにあります。
マネジメントの種類
マネジメントの種類は、階層別マネジメントと業務別マネジメントの2つに大きく分けられます。
各マネジメントの種類には、下位分類としてさらに 3 つの種類があります。
階層別マネジメント
階層別マネジメントは、企業や組織の階層(役職や役割)をもとにしたマネジメントの分類です。
以下の3種類に分けられます。
種類 | 内容 | 役職の具体例 |
---|---|---|
トップマネジメント | 目標設定・意思決定・将来のビジョン設定など | 代表取締役をはじめとする経営層 |
ミドルマネジメント | 経営層と現場の橋渡し・全社方針に基づく現場の指揮 | 部長・課長などの中間管理職 |
ローワーマネジメント | ミドルマネジメントによる指示の業務への落とし込み・現場の監督と業務遂行 | 係長・リーダーなどの現場の指示役 |
業務別マネジメント
業務別マネジメントは、企業・組織の業務範囲に応じたマネジメントの分類です。
業務内容から、組織運営、人材管理、メンタルヘルスの 3 種類に分けられます。
さらに、各分類の下に、より細分化された具体的なマネジメントがあります。
種類 | 下位分類のマネジメント | 内容 |
---|---|---|
組織運営 | チームマネジメント | チームで団結して成果をあげるため、メンバーをまとめ、コミュニケーションをとり、計画的に業務を遂行させる |
プロジェクトマネジメント | プロジェクト成功に向けて人員を配置し、目標達成のための計画を立てて遂行させる | |
ナレッジマネジメント | 社内の人材が持つノウハウを組織で管理・共有し、組織全体における知識・スキルの向上を図る | |
人材管理 | タレントマネジメント | メンバーの知識・スキルを把握し、適材適所で最大限に能力を発揮できるような人員配置を行う |
モチベーションマネジメント | 適切な目標設定やリカバリーのサポートを行い、メンバーのモチベーションを引き出し、維持する | |
パフォーマンスマネジメント | 部下と上司が一緒に目標を設定し、上司がフィードバックを行いながら、部下の目標達成をサポートする | |
メンタルヘルス | メンタルヘルスマネジメント | 心の健康や精神的不調といった負担を解消・軽減するために、心の健康に関する知識の習得や定期的なチェックを行う |
ストレスマネジメント | メンタルヘルスマネジメントと共に行われることが多く、職場内ストレスを緩和・コントロールしたり、定期的なストレスチェックを行ったりする | |
アンガーマネジメント | 怒りの感情がわいてきた時の感情的な行動を見直し、怒りの原因を分析してより効果的な対処法を検討する |
業務別マネジメントと階層別マネジメントの違いは、必ずしも役職に応じた分類ではなく、一般社員が自 分自身について行うマネジメントも含まれている点です。そのため、こうしたマネジメント力を身につけるに は、業務内容だけでなく、どのような社員にとって特に必要かを見極めることが重要となります。
リーダーシップとマネジメントの違い
マネジメントと似たような言葉に「リーダーシップ」がありますが、両者には違いがあります。
リーダーシップは、「具体的な方向性を示すこと」を目的に発揮される能力。
ビジョンや方向性を示し、メンバーを鼓舞することで組織を前進させる力です。
対して、マネジメントは、設定した目標に従って組織を運営するために「手段を示すこと」が目的となります。
人員配置、信頼関係の構築とパフォーマンス向上に向けた施策、予算管理など、さまざまなリソースを管理しながら計画的に組織を運営し、目標達成を実現する能力です。
簡単に言えば、リーダーシップは組織をけん引するために必要な対人スキルであるのに対し、マネジメントは目標達成に向けて人材や他のリソースを管理し、具体的な手段を講じるスキルです。
リーダーとマネージャーの違い
したがって、リーダーとマネジャーにも異なる役割が求められます。
リーダーの仕事は、リーダーシップを発揮して組織が目指すべき方向性や目標を示すこと。
マネージャーの仕事は、リーダーが示した方向性を理解し、より具体的な目標を設定したり、目標達成するために業務が正しく進むように先導したりすることです。
経営方針や目標、ビジョンなど組織やチームが向かう先を示すのがリーダーであり、リーダーの意思に従ってメンバーや予算などを管理し、目標達成を目指すのがマネージャーであると考えるとよいでしょう。
マネジメントの具体的な業務内容
では、マネジメントの具体的な業務内容を見ていきましょう。
目標設定
マネジメントでは、リーダーが示した大きな目標を、より具体的で段階的な目標に落とし込みます。
組織として成果を上げられる、適切な目標設定を行い、達成に向けて何をすべきかの道筋を付けるのです。
リーダーが示した目標だけを目指して業務に取り組んでも、現場の細々とした業務を具体的にどう進めればよいかという点で行き詰まってしまうでしょう。
組織としての力を十分に発揮するためにも、マネジメントの最初の段階で、最終目標の達成に向けた小さな目標を設定してください。そして、それを従業員・メンバーを周知し、理解・浸透させることが大切です。
組織化
目標を達成するには、それに必要な業務は何か、各業務をどのように進めるかなどを考える必要があります。そして、実際に業務を遂行する人材をチームに配置しなければなりません。
はじめに、業務遂行に必要な役割と責任を明確にしましょう。
その上で、そうした役割を担える人材を配置し、チームを編成します。誰にどの役割を与えるのか、指示系統はどうするのかなど、各メンバーの能力を活かした配置を行い、組織を作っていきましょう。
動機付け
メンバーの配置を行ったら、目標達成に向けてメンバーの動機付け、すなわちモチベーション管理を行います。
メンバーが組織やプロジェクトの目的を理解し、高いモチベーションを維持して業務に取り組むことが、優れたパフォーマンスの発揮や生産性の向上につながるからです。
適切な動機付けには、マネージャーとメンバーの信頼関係が重要です。良好なコミュニケーションを行い、メンバーの関心や経験、得意分野を把握しましょう。そうした関心や経験、得意分野に関連付ける形で、プロジェクトの目的・目標を伝えることで、メンバーはより自分事として取り組んでくれるはずです。
評価
メンバーの働きを評価する際の基準設定も、マネジメントにおける大切な業務です。
評価は、マネージャーの印象だけで行ってはいけません。被評価者が不公平感を抱かないよう、適切な評価基準を設定する必要があります。同時に、メンバーにはさまざまな能力や特性があるため、その強みをきちんと評価できる基準であることも重要です。
適切な評価基準は、メンバーのエンゲージメント向上につながるだけでなく、組織全体にも良い影響を与えるでしょう。
適切な評価とフィードバックを繰り返すことで、課題が生じても改善ポイントを把握しやすくなり、メンバーの成長をサポートできます。
人材育成
マネージャーの仕事には、人材育成も含まれます。
メンバーの成長を促すには、各メンバーの現在の知識・スキルや特性をしっかり把握しましょう。
現在の地点をもとに考えることで、その人に合った育成目標を設定し、成長をサポートできます。
人材育成では、メンバーが「なぜこの業務をやるのか」「この業務をやることが、どのような結果につながるのか」など、納得感とやりがいを持って取り組めるようにすることが大切です。そして、本人の能力をより発揮できるように、業務内容の調整や遂行方法の工夫なども考えるとよいでしょう。
業務の割り振りでは、本人が少し頑張れば達成できそうな「ストレッチ目標」を設定すると効果的です。同時に、成功事例や失敗事例の分析、次に失敗しないための工夫などを分析・検討する場も設定してください。
マネジメント能力を構成するスキル
マネジメントで組織の成果を上げるには、複数のスキルの習得・向上が望まれます。
マネジメントに必要な主要スキルは、意思決定能力、コミュニケーション能力、ロジカルシンキング、そして分析能力です。
意思決定能力
目標達成へと導くさまざまな局面で、マネージャーの判断が求められます。全員一致の見解で決定されることはほとんどなく、メンバー同士の意見対立の中で、何らかの意思決定を行わなければなりません。マネージャーは、「なぜそう判断・決定するのか」という根拠をもって決定し、メンバーに説明することも仕事のひとつです。
ケースによっては、即座の判断が求められる場合もあるでしょう。当事者だけでは判断・決定できない場合、マネージャーが適切な判断・決定をしなければなりません。ここでマネージャーの意思決定能力が不足していると、トラブルが生じたり、それが拡大したりする可能性があります。
適切な意思決定能力が不足していると、メンバーからの信頼が低下するだけでなく、クライアントからのクレームが生じたり、ユーザーに不利益を与えてしまったりすることもあるでしょう。
こうした事情から、マネージャーには迅速で適切な意思決定が求められるのです。
コミュニケーション能力
マネージャーとメンバーの信頼関係構築や組織全体の生産性向上には、コミュニケーション能力も欠かせません。
組織が目標を達成するには、メンバーの意見を引き出してまとめ上げるスキルが必要だからです。
価値観の変化や人材の多様化が進むにつれ、同じ組織でもさまざまな考えを持つメンバーが一緒に働く機会が増えました。働き方の多様化により、リモートワークを行うメンバーもいるでしょう。
そうした多様なメンバーと信頼関係を築き、安心して意見を言ったり課題を指摘したりできる環境は、組織の生産性向上につながります。設定した目標や業務の進め方を説明し、納得してもらう際も、マネージ ャーのコミュニケーション力は鍵となるでしょう。
メンバーの認識をひとつにできてこそ、組織としての力を発揮できます。皆が納得して目標達成に向かうためにも、マネジメントではコミュニケーションをおろそかにはできないのです。
ロジカルシンキング
目標達成に向けて一貫した業務遂行や課題解決を行うには、ロジカルシンキングが必要になります。
ロジカルシンキングとは、物事を論理的かつ客観的に分析する力のこと。管理職はもちろん、すべての社会人に必要とされるスキルです。特にマネージャーでは、ロジカルシンキングを習得することにより、根拠やデータに基づいて考えられるようになります。
ロジカルシンキングを習得することは、トラブルが生じても感情的にメンバーを叱るのではなく、より建設的な解決法を模索できるという点で非常に重要です。問題の原因を適切に分析し、その原因に対して策を講じることで、メンバー個人の性格や能力だけに原因と対策を求めずに済みます。
精神論によるトラブル解消・防止ではなく、仕組みとして取り組むことで、より成果につながる組織運営ができるでしょう。
分析能力
ロジカルシンキング以外にも、問題の分析を行うにはいくつかのスキルが求められます。
それは、数字を見て全体の傾向を掴むスキル、メンバーや顧客の声から問題の原因を探るスキルなどです。
こうしたスキルをまとめて「分析能力」としましょう。
分析能力は、組織が抱える課題について、データを分析して原因を探るスキルです。
現状の分析や外部環境の分析によりリスクを明確化したり、現に起きている問題の原因を分析したりします。
分析能力によって原因や関係するファクターを明確にすれば、トラブルを予防・回避したり、解決したりする戦略立案に活用できます。一部メンバーの経験だけを頼りに解決を図るよりも、より適切なアクション選択につながるでしょう。
もちろん、組織が成果を上げるべく PDCA サイクルを回す際にも不可欠なスキルです。
データをもとに検証を重ね、成果を最大化を図りましょう。
マネジメントでぶつかる課題
マネジメントに必要なスキルを身につけていても、マネージャーは多くの課題にぶつかるでしょう。
特に、生産性やチームワークに関する課題を抱えやすいようです。円滑なマネジメントに向け、あらかじめ課題を予想し対策を講じることが重要です。
そこで、マネージャーが直面しやすい課題を 3 つご紹介しましょう。
(1)部下のパフォーマンス低下
プロジェクトを進めていくと、何らかの原因でメンバーのパフォーマンスが低下することがあります。
原因はモチベーション低下かもしれませんし、目標設定の納得感のなさかもしれません。
労働時間や環境の変化でストレスや疲労が蓄積している可能性もあれば、全く別のことが要因となっている可能性もあります。
いずれにしても、長期的な生産性の低下は組織全体に影響を与えるため、早急の対策・改善が必要です。
生産性が低下した原因を探るには、まず業務プロセスや手順を見直してみましょう。
その進め方が実状や担当者の能力・特性に合っているのかどうかも重要です。
また、パフォーマンスが低下しているメンバーと 1 対 1 で面談を行い、話を聞いて原因を分析する方法も有効でしょう。
不安に感じていること、業務の進め方、目標設定の適切さなどをヒアリングし、納得感のあ る解決策を探りましょう。
(2)チームワークの悪化
多様な人材が集まる組織では、しばしばチームワークが悪化します。異なる価値観ややり方が対立しやすいためです。
しかし、多様な人材が集まるからこそ、それぞれの強みを活かして補い合いながら成果を出せるという大きなメリットもあります。
メリットを引き出しながらチームワークを取り戻すには、各メンバーにプロジェクトの目的を再認識させる必要があります。それぞれの業務が全体の中でどのような位置づけなのか、誰と連携することでより良い成果が生まれるのかをしっかり説明しましょう。
もし、各自の作業に時間を取られて他のメンバーと関わる機会が少ないのであれば1つの業務を2人以上で行う体制も部分的に取り入れてみてください。チーム内のコミュニケーションが活性化し、チームワーク強化につながります。
(3)業績に対するプレッシャー
マネジメント担当者は、目標達成に向けて具体的な成果を出さなければなりません。大きな責任を伴うため、「絶対に成果を上げなければならない」とプレッシャーを感じる方も多いはずです。特に新任のマネージャーは、自分の立場に大きなストレスを抱えるかもしれません。
こうしたプレッシャーに対処するには、「目的に立ち返ること」「任されたという自信を持つこと」「目標達成後のビジョンを明確に持つこと」がポイントです。また、一人で悩まずに、先輩や上司に適宜相談をするとよいでしょう。
マネジメント能力を高めるには
マネジメントは専門職です。先述のとおり、業務を遂行するには多くのスキルや能力が求められます。
マネジメント能力を高めるには、普段からマネジメントについて学ぶ姿勢を持つことが大切です。
自身のマネジメント力を高める方法
自身のマネジメント力を高めるには、社会全体の激しい変化の中でビジネスが進行していること、職場環境もそれに応じて変化しやすいことを意識するとよいでしょう。
そのため、時代に応じた適切なマネジメントに向けて、新しい知識や手法を学び続けることが大切です。
マネジメントに必要な知識を身につけるには、マネジメント研修を受講したり、マネジメント関連の資格取得をしたりするとよいでしょう。特に資格取得に向けた勉強は日常的なインプットの姿勢を養うこともできます。研修では、「これは知っている」と決めてかからず、「自分が知らないことはないだろうか」という視点で受講すると新しい知見の発見につながりやすくなります。
そして、経営層から求められている自身の役割と、その目的を正しく理解することも大切です。
目指すべきマネージャー像と比較して自分に足りない部分があるなら、それを積極的に補っていきましょう。
部下のマネジメント力を高める方法
部下にマネジメントを任せる場合は、第一にその部下とコミュニケーションを取り、信頼関係を築きましょう。
信頼関係のないまま指導をしてしまうと、たとえ適切な指示であったとしても、お互いに意図を汲めなかったり、部下からの反発を招いたりしてしまいます。
適切なコミュニケーションを重ねながら、マネージャーとしての目標を設定し、定期的にフィードバックを行うことが大切です。面談などを利用してマネージャーとしてのスキルの習得度を確かめましょう。
もちろん、マネージャーといえども人間です。モチベーションが低下したり大きな困難を感じたりする場面もあるでしょう。そのようなときは、マネージャーとしての仕事の意義や、現在取り組んでいるプロジェクトの目的・目標を再確認しつつ、自身のマネージャーとしての経験や困難の乗り越え方といったヒントを伝えてください。
実際にマネージャーとして自らモデルを示すことも、具体的なイメージを与えられるため効果的です。
これらの方法を実践して部下のマネジメント力を向上させ、組織の成果を最大化していきましょう。