ゆとり世代の年齢や特徴は?仕事観から考える教育方法

update更新日:2024.07.08 published公開日:2023.12.06
ゆとり世代の年齢や特徴は?仕事観から考える教育方法
目次

ゆとり世代とは、ゆとり教育を受けた世代のことです。主な特徴として、ワークライフバランスを重視する仕事感、多様性の尊重、ストレス耐性の低さなどが指摘されています。

本コラムでは、ゆとり世代の特徴や指導方法について詳しく紹介します。世代としての傾向をつかみ、効果的な人材開発・育成にお役立てください。

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ゆとり世代とは

「ゆとり世代」に明確な定義はありませんが、一般的に1987年4月2日から2004年4月1日生まれで、ゆとり教育を受けた世代を指すことが多いようです。年齢は20歳から37歳(2024年時点)にあたります。

ゆとり教育は1998年に学習指導要領で改訂され、2002年に開始。その後、約10年間続きました。2002年に小学校に入学した1995年生まれの人は、義務教育から高校まですべてがゆとり教育だったことから、「フルゆとり世代」と呼ばれることもあります。

ゆとり教育はどんなものだった?

ゆとり教育は子供たちに、詰め込み型の学習からゆとりある学習へ転換し、個性を大切にしながら豊かな人間性を育て、「生きる力」を育むことを目的として実施されました。代表的な取り組みは、以下のようなものがあります。

  • 完全週休5日制の導入
  • 授業時間の削減
  • 成績評価を相対評価から絶対評価へ変更
  • 暗記型の台形の面積公式などを教科書から削除
  • 中学英語の学習単語数を削減

ゆとり教育では、従来の詰め込み型教育からの脱却を目指しましたが、学習内容や授業時間の削減による学力低下の懸念などが浮上。そのため、2008年に学習指導要領が改訂され、2011年度から小学校で、2012年度から中学校で「脱ゆとり教育」が全面実施されました。

ゆとり世代の特徴

「ゆとり世代」は個性を尊重する傾向があります。必ずしも全員に当てはまるわけではありませんが、世代としての大まかな傾向を把握することで、コミュニケーションや指導がより円滑になるでしょう。

ワークライフバランスを重視する

ゆとり世代は、ワークライフバランスを重視します。それは、子ども時代に完全週5日制で過ごし、学校以外の時間を多く持っていたためです。プライベートな時間では、趣味や興味のあることに時間を割いてきたため、社会人になっても「仕事一筋」ではなく、プライベートを充実させることも大切にしながら、仕事と両立を図る傾向が見られます。

多様性を尊重する

個性を大切にされて育ってきたゆとり文化は、他人の個性についても尊重する傾向が見られます。近年重要視されているダイバーシティ&インクルージョンの社会づくりにも関心がある世代です。例えば、マイノリティや異文化の人など、自分と異なる価値観や特徴を持っている人たちにも寛容で、排除ではなく理解、共存しようとする傾向にあります。こうした特徴は、多様化が進む社会における事業活動において、非常に重要と言えるでしょう。

人間関係を重視する

ゆとり世代は、それぞれの個性を尊重しながら関係性を築く教育を受けてきました。また同時に、社会の変化として、核家族化や共働き家庭が増えた時代でもあるため、他者との競争の中で自分が勝つという姿勢より、それぞれの個性を大切にしながら関係性を築くことを好みます。一方で、インターネットが普及し、子どもの頃からオンラインでの友達づくりに慣れている点も特徴の一つと言えるでしょう。

独創的なアイデアがある

既存の枠組みにとらわれず、新しい発想や解決策を考えることが得意です。個性を育む教育を受けてきたゆとり世代は、自分の意見を大切にし、独創的なアイデアを持っています。

暗記型の画一的な知識の獲得から、それぞれの能力や個性に合わせた学習への転換は、既存の枠組みにとらわれない柔軟な発想の土台となりました。それまでの世代が「当たり前」としてきたやり方を踏襲せず、自分で新しいアイデアを生み出すことに抵抗がありません。こうした長所は、多様化する価値観やライフスタイルに応じた商品・サービスの開発でも大きなメリットとなります。

効率を重視する

子ども時代にインターネットが普及したゆとり世代には、わからないことがあるとインターネット検索で答えを見出そうとする傾向があります。紙の辞書や書籍で調べる、詳しい人に話を聞くという手間をかけるかわりに、すぐに解決策や最短ルートがわかるインターネット検索を活用します。こうした行動が習慣化しているため、プライベートでも仕事でも、効率を重視する人が多いようです。

繊細でストレス耐性が低い

個性を尊重され競争を避ける教育により、ゆとり世代の人々には繊細さやストレス耐性の低さが見られます。特に、褒められることには慣れている一方、叱られることへの耐性は低いようです。仕事で上司や取引先から叱られた場合、怒っている相手にどのように対応すればいいのか、叱られた際の自分の感情のコントロールをどうすればいいのか、といった点でつまずきやすい傾向にあります。そうした仕事や人間関係におけるストレスにうまく対処できず、休職や離職につながることもあるので、注意が必要です。

協調性や自主性が乏しい

ゆとり世代は、個人を尊重する教育を受けてきたので、周囲に合わせず、自分の価値観を大切にする傾向があります。会社の付き合いより、自分が好きなことや興味あることを優先するため、協調性が低いと見られることも。仕事を優先してきた世代と比べると、最低限の仕事はするものの自主的には動かず、「指示待ちが多い」と思われることもあるでしょう。

転職しやすい

ゆとり世代は転職に抵抗がなく、自分らしく働きたいという思いが強い傾向があります。不況の中に生まれ、社会に出る前にバブル崩壊やリーマンショックなどを目の当たりにし、終身雇用制度や年功序列が崩壊する中で生きてきました。こうした背景から、ゆとり世代は一生その会社で働けるという前提を持たず、自分の能力に合った仕事や生活が安定しやすい職場へ移りながら、キャリアプランの実現を目指しているようです。

上昇志向は低め

ゆとり教育の中では、競争で優位に立つという経験をあまりしてこなかったため、自分の個性や能力に合わせて学べばよい、という環境で育ってきました。こうした背景から、積極的に上を目指すという上昇志向はあまり見られず、自分の「身の丈に合った」もので満足するという傾向があるようです。

ゆとり世代と他の世代との違い

世代の呼び方には、ゆとり世代だけでなく、「さとり世代」「ミレニアル世代」「Z世代」などの名称もあります。世代間の違いを押さえることは、職場でのコミュニケーションや指導の大きなヒントになります。ここからは、経営層やシニア雇用に多く見られる「団塊世代」や、ゆとり世代と重なる「つくし世代」についてもご紹介します。

ゆとり世代とさとり世代の違い

さとり世代の定義はあいまいですが、1990年代に生まれた世代を指すことが多く、ゆとり世代とも重なっています。「ゆとり世代と同じようにバブル崩壊や世界的な不況を経験し、その他大きな災害などもあって厳しい現実に直面してきました。そうした厳しさから悟ったような態度を取るようになったと考えられます。「さとり世代」という呼び方も、こうした姿勢をもとに名付けられたようです。

ブランドや名声に興味がなく、自分のキャパシティ内で物事を楽しむ傾向がある点は、ゆとり世代と似ていますが、さらに自分に必要なものや情報を見極めている点に違いがみられます。

ゆとり世代とミレニアル世代の違い

ミレニアル世代はゆとり世代と時期が重なり、1980年から1995年頃に生まれ、2000年代に成人した人たちのことです。海外で生まれた言葉で、Y世代(ジェネレーションY)と呼ばれることもあります。世代としての特徴をみると、ゆとり世代と同じく、デジタル技術に触れ始めた世代で、個性の尊重やライフワークバランスを重視する傾向があります。

ゆとり世代とZ世代の違い

Z世代は、1990年代中盤以降に生まれた世代です。Y世代(1980年~1995年生まれ)の次の世代として、Z世代と呼ばれています。Z世代には、非ブランド志向やITリテラシーがあり、個性や多様性尊重するという点でゆとり世代と似ています。また、インターネットで得られる世界の情報から、社会問題への関心が高く、ダイバーシティ&インクルージョンの実践にも理解があります。より社会問題への関心が高く、合理性や平等性を求め、自分らしくあることに価値を見出しているのも特徴です。
他方、Z世代は「デジタルネイティブ」とも言われるように、インターネットの利用に関するスキルがより高い傾向があります。SNS等で情報収集を積極的に行う一方、プライバシーに関する情報を流出させないよう気をつけています。

他にもさまざまな世代の特徴

上述した世代以外にも、「団塊世代」「しらけ世代」「バブル世代」「氷河期世代」「プレッシャー世代」「つくし世代」などの言葉があります。これらのネーミングは時代背景や社会状況などを反映しています。世代ごとの特徴は、概ね次のように言われています。

  • 団塊世代:1947年から1949年に生まれた世代で、競争意識が強い傾向がある
  • しらけ世代:1950年〜1964年に生まれた世代で、無気力・無関心・無責任の三無主義といわれている
  • バブル世代:1965年から1969年に生まれた世代で、消費が多いという特徴がある
  • 氷河期世代(就職氷河期世代):
    1970年から1982年生まれで、バブル崩壊後の就職難の時期に新卒だった世代。
    堅実さや安定を求める傾向がある
  • プレッシャー世代:
    1982年から1987年生まれで、氷河期世代とゆとり世代との間の世代。現実的でプレッシャー
    に強いといわれる
  • つくし世代:
    1992年以降に小学校に入学した世代。人に尽くすことに喜びを感じる特徴から名付けられた。思い
    やりの心で他者を尊重し、人に尽くすことに喜びを感じる傾向がある

ゆとり世代を指導する5つのポイント

最後に、ゆとり世代の特徴や他世代との違いを踏まえたうえで、指導する際に押さえておきたいポイントを5つご紹介します。

(1)キャリア形成を支援する

個性を大切にしながら育ってきたゆとり世代には、一人ひとりのキャリアに対する考え方に寄り添い、目標達成を促すアプローチが必要です。

ALL DIFFERENTが毎年実施している新入社員アンケートでゆとり世代のデータを見ると、管理職になりたいと考える人の割合は減少傾向にあります。管理職よりは専門家を目指したいとする人のほうが多く見られますが、必ずしも多数を占めているわけではありません。

他方、特にキャリアについて特別な志向はなく、楽しく仕事をしていたいとする人の割合や「まだはっきりしていない」という人の割合も、それぞれ2割程度でした。

これらの傾向から、同じゆとり世代といっても、キャリアに対する考え方は異なり、個人の志向を理解して支援することが重要です。ITリテラシーに強みがある点を生かし、ICTを活用した育成やキャリア支援を行うなどもよいでしょう。

(2)具体的に指示を出す

効率を重視するゆとり世代には、具体的な指示が効果的です。曖昧な指示は非合理に感じられ、モチベーションを下げてしまう可能性があります。仕事の指示を出す際は、手順や納期、どのようにするのか、なぜ必要かなど、具体的に何をすればよいのかを伝えるよう意識してみてください。

(3)プロセスを評価する

具体的な指示を出したら、進捗状況に対してフィードバックを行いましょう。個人を尊重するゆとり世代は、褒められることや評価されることで、やりがいを感じて意欲的に仕事に取り組みます。定期的な声かけで「見守られている」という安心感を与えることができるとともに、困った際に相談しやすい関係性を築くことができます。細かくプロセスを評価・助言していくことで、モチベーションの維持や向上につなげられるでしょう。

(4)感情的な伝え方は避ける

ゆとり世代を注意する際は、「叱る」のではなく「アドバイスを意識する」ことが大切です。繊細でストレス耐性が低い傾向があるため、感情的な伝え方をしてしまうと、萎縮して問題解決への意欲を失ってしまう恐れがあります。ミスやルール違反に対して、なぜいけないのか、どのように改善すべきかなどを、落ち着いて論理的に伝えましょう。

(5)プライベートな話題には踏み込まない

効果的な指導には、心理的安全性の確保が不可欠です。ゆとり世代と信頼関係を構築するなら、プライベートな領域で距離を詰めるのではなく、仕事の姿勢や成果を細やかに評価しながら、一人の人間として尊重する姿勢が欠かせません。「仕事とプライベートは別」と考えるゆとり世代は、直属の上司であっても私生活のことをあまり話さない傾向があります。無理にプライベートに入り込もうとせず、一緒に仕事をする人間として信頼できる存在であると示すことで、自然と距離が縮まり、コミュニケーションをとりやすくなるでしょう。