エンゲージメントとは?意味・サーベイ・高める方法を解説

update更新日:2025.09.29 published公開日:2023.03.27
エンゲージメントとは?意味・サーベイ・高める方法を解説
目次

近年、ビジネス領域においてエンゲージメントの重要性が注目されています。

エンゲージメントとは英語の「engagement」をカタカナ表記したもので、従業員や顧客・ユーザーからの企業に対する愛着度や帰属意識という意味があります。

本コラムでは、エンゲージメントが注目されている背景やサーベイのやり方、エンゲージメントを高めるポイントなどを解説します。

エンゲージメントとは

エンゲージメントとは愛着度や帰属意識を示す言葉ですが、ビジネス領域におけるエンゲージメントには複数の意味があります。

まずは、ビジネス領域におけるエンゲージメントの基本的な意味、企業と従業員の関係についてよくいわれる「ロイヤルティ」や「従業員満足度」との違い、SNSマーケティングにおける使われ方などについて解説します。

ビジネス領域におけるエンゲージメントの意味

ビジネス領域におけるエンゲージメントとは、従業員や顧客が、会社やブランドにどれだけ信頼や愛着を持って関わっているかを示す概念です。

元々のエンゲージメントの対象は従業員から顧客まで、様々なステークホルダーを指しますが、ここでは

「従業員(社員)エンゲージメント=従業員の企業への帰属意識」

という意味で使います。

従業員エンゲージメントとは、「企業と従業員の信頼関係」であり、企業への帰属意識です。そして、「エンゲージメントが高い」とは、従業員一人ひとりが組織に愛着を持ち、企業理念・ビジョンに共感して、企業と従業員がお互いに成長できている状態を指します。

また、働く企業に対してではなく、自分自身の仕事に対してのエンゲージメントを「ワークエンゲージメント」といいます。ワークエンゲージメントの考え方やサーベイの方法などについては、以下のコラムで詳しく解説しているので参考にしてください。

コラム「ワークエンゲージメントとは?3つの構成要素・測定方法・高める方法」はこちら

エンゲージメントとロイヤルティ・従業員満足度(社員満足度)との違い

エンゲージメントと似た言葉に、ロイヤルティや従業員満足度があります。それぞれの意味は、以下の通りです。

ロイヤルティ 従業員の企業に対する忠誠心
従業員満足度(社員満足度) 従業員が職場環境・待遇・報酬などにどれだけ満足しているかを表す指標

ロイヤルティの特徴は、企業と従業員の主従関係です。一方、従業員満足度は働く企業に対する従業員からの評価を示すのが特徴といえます。

エンゲージメントは、ロイヤルティや従業員満足度が高まった結果、「従業員が組織に対して愛着を持ち、企業もそれに応えている」という状態を指します。

SNS・マーケティングにおけるエンゲージメントとの違い

本コラムでは、企業に対する従業員のエンゲージメントについて取り上げますが、上記で説明したように、元々のエンゲージメントの対象には顧客やユーザーなども含まれます。

SNSやマーケティングにおけるエンゲージメントとは、ユーザーが投稿やブランドにどれだけ関わり、反応しているかを表す指標です。

SNSマーケティングが広がるにつれ、企業と消費者の関係は多様化・複雑化しています。いいね!やシェア、コメントなどの反応が多いほど、ファンが増えやすくなる一方で、一方的なクレームや過激なアンチコメントのリスクもあります。

SNSマーケティングでのエンゲージメントは単なる認知ではなく、ユーザーとの強いつながりを築き、リスクを回避するために重要な要素となっているのです。

エンゲージメントが注目される理由

そもそも、なぜ企業経営における従業員のエンゲージメントが注目されているのでしょうか。

エンゲージメントが注目される3つの理由をご紹介します。

市場や職場における価値観が多様化しているため

現代の市場や職場では、価値観が多様化しており、従業員一人ひとりが大切にする考え方も様々です。

働き方やキャリア観が多様化する中で、従来の一律の管理や一方的な指示では意欲を引き出せなくなっているため、従業員のエンゲージメントが注目されているのです。

企業の職場では、出世や昇進を重視する価値観だけでなく、柔軟な働き方を求める人や、社会貢献に重きを置く人などが増えています。

異なる価値観を尊重し、それぞれに合わせた関わりを強化することで、従業員のエンゲージメントを高め、組織の活力を引き出すことが求められています。

有能な人材の確保が必要なため

エンゲージメントが注目される理由として、人材不足という社会的課題が挙げられます。

VUCAと呼ばれる不安定な時代において、企業が存続していくためには有能な人材の確保が欠かせません。しかし、有能な人材は、より自分の力を発揮できる場所を求める傾向にあります。せっかく採用した有能な人材が流出してしまっては、自社の安定した存続や成長は困難でしょう。

有能な人材を確保するためには、エンゲージメントの向上が欠かせません。優秀な人材ほど自分の成長や働きがいを重視し、企業との信頼関係を大切にするからです。

人材の流出を防ぎ、優秀な人材を引き寄せるためにエンゲージメントが注目されています。

顧客やエンドクライアントの満足度を上げるため

従業員のエンゲージメントが高まることにより、顧客やエンドクライアントの満足度も向上します。

なぜなら、従業員が会社に愛着を持ち積極的に働くことで、サービスの質や対応力が高まるからです。それに比例して顧客満足度も上がっていくでしょう。

従業員個人の成長が組織全体の成長につながるという点でも、エンゲージメントは注目されているのです。

エンゲージメントを高めるメリット

従業員のエンゲージメントを高めることは、企業と従業員の両方に大きなメリットをもたらします。

ここで、改めてエンゲージメント向上がもたらす主なメリット3つを確認していきましょう。

生産性・業績の向上

1つ目のメリットは、従業員の仕事に対するモチベーションが上がることです。

所属する組織への愛着を持って働く従業員は、仕事への貢献意欲もアップした状態といえます。仕事に「やりがい」「働きがい」を見いだせれば、より熱意を持って業務にあたることができるでしょう。

企業がコンスタントな業績アップを図るためにも、従業員のエンゲージメントが高まる職場環境づくりが大切です。

社内の一体感・エンパワーメントの醸成

2つ目のメリットは、従業員の自主性や主体性を高められることです。

エンゲージメントが向上し、従業員の仕事に対するモチベーションや満足度が上がれば、「組織に貢献したい」「組織からもっと評価されたい」という気持ちが生まれます。これが、自主性や主体性につながるのです。

自主性・主体性は、困難な状況に立ち向かう原動力となります。難しい課題にも果敢にチャレンジするようになるでしょう。

従業員の自主性・主体性を活かすためにも、管理職の方は部下の方を適材適所で配置することが大切です。それぞれの従業員に合った業務を任せられれば、主体性を発揮しやすくなるとともに、部下のエンゲージメントもさらに高められるでしょう。

離職率の低下と人材定着

3つ目のメリットは、離職率を下げ人材定着を図ることができることです。

エンゲージメントが高い従業員は、総じて組織への定着率が高い傾向にあります。与えられた仕事にやりがいを感じており、組織に対しても愛着を持っているからです。

仕事における不満の1つに、「裁量権がない」ことが、しばしばあげられます。言われたことをこなすだけで、せっかくアイデアが浮かんでも採用されず意見も出しにくい状況は、多くの人にとってストレスとなるもの。不満やストレスがたまりやすい環境では、長く勤めたいと思ってもらえないでしょう。

他の2つのメリットにあるように、エンゲージメントを高めれば、従業員それぞれの能力を発揮しやすい環境づくりができます。それによってやりがいがアップしやすくなり、離職率低下と人材定着につながるのです。

エンゲージメントの測定方法とサーベイの活用

企業が従業員のエンゲージメントを高め、業績の向上や人材定着などのメリットを享受するために、まずは自社の現状を正しく把握・認識する必要があります。

そのためには、エンゲージメントサーベイを実施して客観的なデータやエンゲージメント率を把握し、課題を整理することが必要です。

ここでは、エンゲージメントサーベイとは何か、サーベイのやり方や項目、エンゲージメント率について解説します。

エンゲージメントサーベイとは?

エンゲージメントサーベイとは、従業員が会社や仕事に対してどれほど前向きに感じているかを数値化して把握するための調査です。

従業員のモチベーションや満足度は目に見えにくく、具体的に知るのが難しいものです。

専門的なエンゲージメントサーベイを実施することで、課題や改善点を特定しやすくなり、組織全体の強化につながります。

エンゲージメントサーベイの項目とやり方

エンゲージメントサーベイでは「仕事のやりがい」「上司との信頼関係」「成長機会」など複数の面から質問項目を設定します。なぜなら、従業員が何を重視しているかは一人ひとり異なるため、多角的に把握する必要があるからです。

米国でエンゲージメントの考え方を広め、従業員エンゲージメントの大規模サーベイを実施していることで有名なギャラップ社では、以下のような12の質問項目を掲げています。

<引用BOX>

  1. Q01. 私は仕事の上で、自分が何を期待されているかがわかっている。
  2. Q02. 私は自分がきちんと仕事をするために必要なリソースや設備を持っている。
  3. Q03. 私は仕事をする上で、自分の最も得意なことをする機会が毎日ある。
  4. Q04. この1週間で、良い仕事をしていることを褒められたり、認められたりした。
  5. Q05. 上司あるいは職場の誰かが、自分を一人の人間として気遣ってくれていると感じる。
  6. Q06. 仕事上で、自分の成長を後押ししてくれる人がいる。
  7. Q07. 仕事上で、自分の意見が取り入れられているように思われる。
  8. Q08. 会社が掲げているミッションや目的は、自分の仕事が重要なものであると感じさせてくれる。
  9. Q09. 私の同僚は、質の高い仕事をするよう真剣に取り組んでいる。
  10. Q10. 仕事上で最高の友人と呼べる人がいる。
  11. Q11. この半年の間に、職場の誰かが私の仕事の成長度合について話してくれたことがある。
  12. Q12. 私はこの1年の間に、仕事上で学び、成長する機会を持った。
  13. 引用元:【ギャラップ公式】たった12問であなたの職場の従業員エンゲージメント状態が分かる(Q12)

エンゲージメントサーベイのやり方としては、定期的なアンケート形式で実施し、回答をもとに分析します。社内アンケート方式に加えて、モラールサーベイやパルスサーベイなどを組み合わせて行うのも効果的です。

サーベイの種類 特徴
社内アンケート 従業員の企業や職場に対する満足度を調査
モラールサーベイ 従業員の士気や意欲を調査
パルスサーベイ 簡単な質問項目を高頻度(毎週~毎月)で実施

項目を明確に設定することで、改善すべきポイントが具体的になります。

エンゲージメント率とは

エンゲージメント率とは、従業員がどれだけ会社や仕事に積極的に関わり、貢献しようとしているかを示す割合のことです。

エンゲージメント率が高い組織は生産性が高く、離職率が低いという特徴があります。

測定はサーベイの回答をもとに数値化され、多くの場合、各質問への肯定的な回答の割合を使います。エンゲージメント率を把握することで、現状の課題を可視化できるというメリットがあります。

職場のエンゲージメントを高めるための施策

エンゲージメントサーベイを実施して現状把握を行ったら、いよいよ職場のエンゲージメントを高めるための施策を実施します。

実際に従業員のエンゲージメントを高めるには、自社の課題に沿った施策を行うことが必要です。

最後に、職場のエンゲージメントを高めるための施策を3つのポイントに分けて解説します。

組織のビジョン共有と価値観の浸透組織や企業、チームのビジョンを共有する

エンゲージメントを高めるには、組織のビジョンを共有し価値観を浸透させることが重要です。組織のビジョンが共有されていないと、メンバーは行き先がわからない道をひたすら進まなければなりません。

目指す先がわからなければ従業員は大きなストレスを抱えてしまいますし、目的意識が薄いまま仕事に取り組むことになります。そのような状態では、なかなか業績も向上しません。

具体的には、社内報や定期的な全体会議などでビジョンを繰り返し伝えることが有効です。共通の目標を持つことで、一体感が生まれ、従業員の貢献意欲が高まります。つまり、ビジョン共有はエンゲージメント向上の土台づくりといえます。

企業のビジョンについて説明するのは入社時だけ、年1回の説明会だけ、では日々の業務に忙しい従業員の頭には残りません。企業のビジョンや価値観などは、機会あるごとに意識的に繰り返して周知しましょう。

働きやすい環境整備/公平性・透明性のある評価制度

働きやすい環境と公平な評価制度は、従業員のエンゲージメントを高めるために欠かせません。

安心して働ける環境や正当に評価される仕組みがあると、従業員は組織に信頼感を持てます。

反対に、一部の人だけが不当に評価されている状態では、従業員の主体性やポテンシャルは引き出せません。

従業員に信頼してもらえる企業を目指すなら、公平性・透明性のある評価制度が必要です。

具体的な例としては、個人単位で目標を設定する目標管理制度(MBO)や、高い業績を上げる従業員を評価基準とするコンピテンシー評価などが挙げられます。

自発的な成長意欲が促される環境と透明性のある評価により、従業員の意欲と満足度が高まり、エンゲージメントが向上します。

人事評価制度の目的や課題、評価方法の種類などについては、以下の記事で詳しく解説しています。

コラム「人事評価の目的と意味とは?人事評価制度のメリットや人事評価シートの書き方などを解説」はこちら

職場のコミュニケーション活性化

職場のコミュニケーションの活性化は、エンゲージメントを高めるうえで非常に効果的です。なぜなら、円滑な情報共有や信頼関係の構築は、従業員の安心感と仕事への意欲を育むからです。

例えば、定期的なチームミーティングや1on1面談を実施することで、意見交換や問題解決がしやすくなります。これにより、組織全体の連携が強化され、一体感が生まれます。

活発なコミュニケーションが、従業員が組織に貢献したいという気持ちを高めるきっかけになるのです。

人材育成とキャリア支援

人材育成とキャリア支援は、従業員のエンゲージメント向上に大きく貢献します。自分の成長や将来のキャリアが見えると、従業員の仕事へのモチベーションが高まります。

具体的には、スキルアップ研修やキャリア面談を定期的に実施し、一人ひとりの目標に合わせた支援を行うとよいでしょう。

また、人材育成やキャリア支援は、前述した企業のビジョン共有や公平な評価制度などと絡めながら実施することが大切です。企業のビジョンと結びついた人材育成と公平な評価制度に支えられたキャリア支援により、従業員の自発性やモチベーション向上が期待できます。

企業が人材育成やキャリア支援を積極的に行えば、従業員は「自分は大切にされている」と感じ、組織への信頼と愛着が深まるでしょう。

エンゲージメントを高めることは組織力を高めることにつながる

従業員のエンゲージメントを高めることは、生産性向上や離職率低下、ひいては業績の向上やコストの削減などにつながります。しかし、エンゲージメントを高めるには、職場の管理職や上司に

  • 部下に企業のビジョンや目標を正しく認識させ
  • 公平に評価を行い
  • 職場のコミュニケーションを活性化し
  • 人材育成やキャリア支援を実施する

という高度なマネジメントスキルが求められます。

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