フリーランスとは|個人事業主との違いやメリット・デメリット
本コラムでは、フリーランスの定義や個人事業主との違い、メリット・デメリットなどを解説します。
フリーランスとは
フリーランスと聞くと、「会社に雇用されず1人で仕事をする」というイメージを持っている方が多いでしょう。これは、ほぼフリーランスの定義と言えます。ただ、1人で働いていれば必ずフリーランスであるというわけではありません。
まずは、厚生労働省によるフリーランスの定義と近年の傾向を確認していきましょう。
フリーランスの定義
フリーランスとは、組織や団体に所属せずに仕事を請け負う働き方です。厚生労働省の定義によると、店舗を持たず、人も雇わず、知識やスキルに対して対価を得る自営業者や1人社長を指します。
フリーランスという言葉は、法律で定められた用語ではありませんが、
- 特定の組織や団体に属さない
- 働く時間と場所は基本的に自由である(実店舗を持たない)
- 1人で業務を行う
という3点は共通していると考えてよいでしょう。
フリーランスは増加傾向
フリーランスとして働く人は、近年多く見られます。
内閣官房日本経済再生総合事務局が2020年に発表した試算によれば、フリーランスの人数は462万人(本業214万人/副業248万人)。前年に行われたリクルートワークス研究所による試算でも472万人(本業324万人/副業148万人)でした。内閣府政策統括官や独立行政法人労働政策研究・研修機構の試算でも300万人を超えています。
フリーランスは、より身近な働き方のひとつとなっているようです。
*参考:内閣官房日本経済再生総合事務局|フリーランス実態調査結果フリーランスと個人事業主との違い
フリーランスとともに用いられる言葉に「個人事業主」があります。個人事業主とは、法人を設立せずに個人で事業を営む人のこと。フリーランスとは別の観点から定義される言葉であり、フリーランスの範囲と重なる部分もあれば、重ならない部分もあります。
たとえば、法人を設立していないフリーランスは個人事業主の一種ですが、いわゆる1人社長のフリーランスは、法人を設立しているため個人事業主ではありません。
フリーランスの職種・職域例
実際、フリーランスにはどのような職種があるのでしょうか。結論からいえば、自分のスキルや専門性によって職種・職域を選択できますし、自分で作ることもできます。今回は、フリーランスに見られる代表的な職種・職域を3つの分類に分けてご紹介します。
IT・エンジニア系の職種・職域
まずは、フリーランスの中でも占める割合が大きいIT・エンジニア系の職種・職域です。パソコンとインターネット環境さえあればできることが多く、場所や時間にとらわれず働くフリーランスとの親和性が高い分野といえます。
システムエンジニア(SE) | システムの設計や開発プロジェクトの進捗管理を行う |
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インフラエンジニア | サーバー構築や運用保守など、ITインフラの基盤を支える |
Web系エンジニア | WebアプリケーションやWebサービスの開発設計を行う |
ゲームエンジニア | 家庭用ゲームやスマホアプリ、PCゲームの制作に携わる |
プログラマー | プログラミング言語を用いて、システムやソフトウェアの開発を行う |
データアナリスト | ビッグデータを活用して、クライアントが抱える課題解決を支援する |
マーケティング関連の職種・職域
次は、インターネットの普及とともに急速に発展してきた、Webマーケティング関連の職種・職域です。
Webディレクター | Web関連のプロジェクトの監督・指揮・管理をする |
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SNS運用 | SNSを活用し、企業や商品の宣伝を担当する |
Webマーケター | SEOやMEO、広告運用など、Web上のマーケティング全般を担当する |
Webライター | マーケティング戦略にのっとった記事や広告のテキストを作成する |
クリエイティブ系の職種・職域
そして3つめは、クリエイティブ系の職種です。こちらも、IT・エンジニア系やマーケティング関連と同様、多くの人がフリーランスとして活躍しています。
Webデザイナー | クライアントから依頼されたWebサイトのデザイン制作を行う |
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YouTuber | YouTubeに動画を投稿し、動画視聴にともなって発生する広告収益を得る |
動画編集者 | クライアントから提供された動画素材を使い、公開用の動画を作成する |
イラストレーター | 雑誌やWeb、ソーシャルゲームなどで使われるイラストを描く |
グラフィックデザイナー | 雑誌の表紙や書籍の装丁、商品のパッケージなどをデザインする |
カメラマン | 顧客の注文に応じて、動画や静止画を撮影する |
フリーランスで働く3つのメリット
フリーランスには、働き方の上でいくつかのメリットがあります。どのようなメリットがあるか、代表的なものを3つご紹介します。
働き方の自由度が高い
フリーランスの最大のメリットは、働き方を自由に選択できることです。企業や団体に属していないため、働く時間、場所、服装、休日にいたるまで、自身のスケジュールに合わせて柔軟に調整できます。
体力的に無理がなければ、朝早くから深夜まで働くこともできるでしょう。平日の昼間にしかできない手続きや用事にも対応可能ですし、他の人が働いている時間に休暇を取ることもできます。
このような自由度の高さは、自身の健康やライフスタイルに合わせた働き方の実現につながります。ワークライフバランスもより充実させやすくなるでしょう。
収入アップを目指せる
フリーランスは自分で仕事を探して受注するため、その能力や取り組み方が収入に直結しやすい傾向があります。
言い換えれば、高い実力や営業力を持っている人なら、高単価案件の獲得につながり、収入の増加を見込めるということ。場合によっては、会社員時代より年収が上がるケースもあるでしょう。
自己成長とスキルができる
フリーランスは組織や団体に所属していないため、多様な案件に携わることができます。さまざまな業界や職種で活躍できるチャンスがあり、幅広い経験を積めるでしょう。
また、安定した収入を得るには、複数のクライアントとコミュニケーションを取らなければなりません。案件の内容に関する問い合わせや報酬の交渉、業務に関わるミーティングなど、対人スキルや交渉力などが必要です。
仕事内容によっては、新しく知識やスキルの獲得や、それまでの知識・スキルの向上にもつながります。
主体的な学びと自己成長の姿勢を持つことで、自身の市場価値をより高められるでしょう。
フリーランスで働くデメリット
ただし、フリーランスとしての働き方にはデメリットがあることも忘れてはいけません。フリーランスという働き方を選択する前に、そのデメリットを理解し、対策を考えておくことが重要です。
収入が安定しない
フリーランスは、会社員のような安定した収入が保証されているわけではありません。
受注する業務や案件ごとの報酬設定に収入が大きく左右され、大きな収入を得る月もあれば、収入がほぼゼロという月もあるでしょう。
フリーランスとして活動を始めたばかりの段階では、収支がマイナスになることも。体調不良により働けなくなれば報酬を得られませんし、発注者側の都合等で仕事が途切れてしまうリスクなどもあります。
社会保険や厚生年金に加入できない
フリーランスと会社員の大きな違いの1つに、社会保障の適用範囲があります。
例えば、会社員が加入する社会保険や厚生年金には、出産手当金や病気やケガで仕事を休むときの傷病手当金、雇用保険などがあるのに対し、フリーランスが加入する国民健康保険と国民年金にはありません。
また、会社員の場合、健康保険料と厚生年金保険料は会社と社員で折半して負担しますが、国民健康保険と国民年金の保険料は全額自己負担となります。
こうしたお金の不安を軽減するため、フリーランスが加入できる団体等では、一定の金額を定期的に支払うことで多様なサービスを受けられるようにしたり、「文芸美術国民健康保険組合」のような国保組合に加入できたりする等の工夫をしています。
社会的信用度が低下する可能性がある
フリーランスの働き方は自由度が高い一方、収入の不安定さから、社会的信用度が低下する恐れがあります。企業に所属していれば、定期的な収入があるとして一定の社会的信用を得られますが、フリーランスではその信用を得にくいのです。
典型的な例は、クレジットカードやローンの審査、賃貸契約の入居審査が厳しくなるなどのケースでしょう。会社員からフリーランスに転向する場合は、これらを念頭にして、事前に必要な手続きを済ませておく人が多く見られます。
インボイス制度について
2023年10月1日からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始されました。インボイス制度とは、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除方式を指します。これにより、課税事業者が税額控除を受けるには、適格請求書(インボイス)等の保存が必要になりました。
インボイス制度の開始にあたって、多くのフリーランスが免税事業者のまま活動するか、適格請求書発行事業者(インボイス事業者)となるかの選択を迫られました。
これまで免税事業者として活動していた人は、発注者から受け取る消費税分の金額をそのまま収入の一部とすることができました。しかし、インボイス制度を適用すれば課税事業者となり、報酬で受け取った消費税を国に納める必要があります。同時に、インボイスを作成するための事務作業も業務に加わりました。
他方、インボイス制度を適用しない免税事業者のまま活動を続ける場合、課税事業者である発注者は、適正な仕入れ税額控除を受けられなくなります。言い換えれば、発注企業は、免税事業者との取引で消費税の負担が増えてしまうということです。
こうした事情から、課税事業者である発注者は、インボイスを発行できない免税事業者との取引に消極的になったり、これまで報酬とともに払ってきた消費税分を差し引いた金額での契約を求めたりするなどのトラブルが指摘されています。
どのような条件・報酬で取引するかは、発注者と受注者が対等な話し合いによって決めなければなりません。しかし、多くのケースで、組織に属さないフリーランスは、組織として活動する企業よりも弱い立場にあります。
インボイス制度の適用を受けるべきか否かは、一概にいえるものではありません。ご自身の収入や状況に応じて判断する必要があるでしょう。
*参考:国税庁|インボイス制度の概要フリーランスとして仕事を始めるには
フリーランスとして活動を始める場合、どのように仕事を探すか、本業か副業かなどの検討から始めましょう。必要なプロセスや手続きをご紹介します。
仕事を探す
フリーランスで仕事を獲得する方法は、
- これまでの人脈を活用する(企業や知人に営業をかけるなど)
- SNSやポートフォリオサイトなどでクライアントや仕事を募集する
- 人材リストに名前を載せる
など、人によってさまざまです。近年は、クラウドソーシングやフリーランスエージェントに登録するといった手段もよく見られます。
営業力が高い人なら、人脈や求人情報をもとに積極的な営業を展開できるでしょう。逆に、営業力に自信がない場合は、人材リストやクラウドソーシング、エージェントを活用して、存在が認知されやすいよう工夫する必要があります。
どの方法をメインとするかは、続けやすいやり方をもとに考えるとよいでしょう。
健康保険や年金を切り替える
会社員からフリーランスになる場合、健康保険や年金の切り替え手続きが必要です。退職後の健康保険には、「会社の健康保険の任意継続」「国民健康保険」「家族の健康保険の被扶養者」という3つの選択肢があります。
会社の健康保険の任意継続をする場合、退職後20日以内の手続きが必要です。2年間はこれまでと同じ保証を受けられ、保険料も一定。扶養家族も保険の対象になるなどの特徴があります。
国民健康保険に加入する場合は、退職してから14日以内の手続きが必要です。保険料は収入に応じて決まります。
また、それまで加入していた厚生年金から国民年金への変更手続きも、退職後14日以内に行わなければなりません。
開業届を提出する
個人で事業を始める場合は、税務署に開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出します。
収入が少ないうちは開業届を出さずに活動する人もいるでしょう。ただ、もし青色申告で確定申告を行うなら、開業届の提出は必須です。
開業届は、屋号を名義とした銀行口座の開設手続きや、保育園などに提出する就労証明で求められることもあります。
仕事をもらえる人・続けられる人の3つの特徴
フリーランスで活躍し続けるには、1人で業務を行えるスキルや知識が必要です。活躍できる人の特徴を押さえ、スキルアップに励みましょう。
スキルや専門知識がある
企業がフリーランスに仕事を委託する際、社内にはない専門性や高度なスキルを必要としているケースがあります。そのため、専門的な知識やスキルを身につけた人材ほど、継続的に案件を受注できる可能性が高まります。
専門知識が必要でない場合でも、発注者側の業務負担軽減につながるような取り組みが求められるでしょう。例えば、正確性や作業の速さ、付加的業務への対応力などです。
コミュニケーション能力が高い
フリーランスは業務に関わるすべてのことを自分で行わなければなりません。クライアントとの交渉や打ち合わせも、その1つです。
円滑な意思疎通には、高いコミュニケーション能力が必要です。クライアントの要求や希望を齟齬なく理解したり、必要な工数や素材等を適切に説明したりするスキルは、質の高い成果物の提供にもつながります。
近年増加しているオンラインでのコミュニケーションは、対面の場合よりも的確な意思疎通が難しいとされています。メールやチャットにおけるテキストコミュニケーションでは、お互いの表情が見えず、文面から勝手に相手の心情を想像してしまうこともあるでしょう。対面以外のコミュニケーションにおける留意点を押さえ、過度な心配や放置をしないよう、気をつけなければなりません。
また、レスポンスの良さもお互いの安心感につながります。安心して仕事ができる関係性の構築により、仕事量増加にもつなげられるでしょう。
誠実な対応ができる
個人でクライアントとの信頼関係を築く必要があるフリーランスにとって、誠実さは大変重要です。
仕事で嘘をついたり、自分に都合がいいようにごまかしたりするビジネスパートナーは、相手から信用されません。業務の発注にはお金がかかりますし、その成果物の品質によってはクライアントに損失が出ることもあります。自社に損失を与えるフリーランスとは、契約の継続は難しいでしょう。
会社員の場合と異なり、フリーランスで働く人がクライアントと顔を合わせることは多くありません。そのため、日頃から真摯で誠実な対応を心がけ、クライアントとの良好な信頼関係構築を図ることが何より重要です。しっかりとした信頼関係を築ければ、継続的な仕事の機会も得やすくなるでしょう。