中小の都市を中心に水インフラ事業を手掛ける株式会社フソウ。持続的な成長を実現するために、どのような取り組みを行っているのか。野村充伸社長に、人材育成の方針や施策、求める人材像などを伺いました。
- 目的
「変化に対応できる人材」「人をつくれる人材」の育成
- 解決策
“部分最適”ではなく”全社最適”な人材を育てる育成モデルへの変革
「若手社員の底上げ」、拠点長・部門長をはじめとした「経営人材の強化」を軸にした育成
- 成果
多角的な視点で物事を見られるようになる
真摯な人材になってもらう
- 社名
- 株式会社フソウ 様
- 業種
- 製造業
- 従業員数
- 501~1,000人以下
- エリア
- 関東
- 階層
- 全社員
- 利用サービス
- Mobile Knowledge
- 課題
- チームビルディング 教育体系の構築
トップインタビュー「若手の底上げと経営人材の強化 その"サンドイッチ"で進める全社最適な人材育成を実践」
"仕事のやり方"を変えられないなら"人"を変える
「人をつくる人材をどうつくっていくか」が当面の課題
野村 当社は1946年に香川県で創業し、70年以上にわたり水インフラ整備に取り組んできました。創業以来、東京や大阪などの大都市ばかりではなく、中小の都市を主なお客さまとして事業を展開してきました。このため、少子高齢化や人口減少、それに伴う需要水量の低下といった影響を受け、事業が縮退しつつあるのが実情です。このような状況の中で当社が生き残り、さらなる成長を遂げていくためにも、地域社会の課題をどう解決していくのか、いかにして課題解決のパートナーとなっていくのかが大きな課題となっています。
加えて新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、長期的に見ると当社にもその影響が及ぶことは間違いないでしょう。この課題に会社としてどう立ち向かうのか、そういった視点も取り入れ、"次のステップ"を考えていかなければなりません。この6月には、フソウグループ全体としての事業の方向性を取りまとめた「FUSO VISION 2030」を策定しました。創業時の高い理想に立ち返る「原点回帰」の視点も取り入れたこのビジョンをもとに、今まさに事業戦略の策定を進めているところです。
野村 やはり人材の育成、それに尽きますね。公共事業である水インフラの枠組みはそう簡単に変えられるものではなく、「仕事のやり方」を変えることは困難。そのため社員一人ひとりの考え方や気持ちを変えていかないと、会社として成立しません。大切なのは人の意識。社員としっかり対話を重ね、変化に対応できる人材、そして人をつくれる人材を育てていきたいと考えています。
部分最適な"拠点自治"からの脱却で、全社最適な人材の育成モデルを模索中
野村 当社は従来、転勤や部門間の異動がほとんどなく、"拠点自治"によって成長してきました。拠点自治とは、広島なら広島タイプの仕事をする、そのため同じ建設管理の仕事だとしても東京や大阪のやり方とは全く違うというように、社員の入れ替わりがないことで拠点が独自で生産性を高め、独立して経営が成り立っていることです。転勤も異動もなく同じ部署にいれば、2~3年で一人前の社員に育ちますよね?
ですから、その拠点を考えればものすごく効率的で、当社はそれによって成功・成長してきたと言っても過言ではありません。
しかし、1カ所で最適化してしまうと、会社を俯瞰的に見られない、また営業一筋なら営業色が強い人材、ひいては営業色ばかりを強く打ち出す経営層になってしまうなど、将来を考えたときにバランスの取れた人材が育ちません。また、マーケットの縮小によってリソース(人材)があふれてしまったとき、人材の配分をし直したくても自由な異動ができなくなってしまいます。そのため、部分最適ではなく全体最適な人材を育てるための育成モデルへの変革を推進しています。
野村 「若手社員の底上げ」、そして拠点長・部門長をはじめとした「経営人材の強化」を軸にした育成を進めています。
若手に関しては、10年スパンでの取り組みを始めました。技術職でいうと、現場・施工管理、設計・計画、営業の3つを約3年ごとに異動し、10年ほどかけて一回りするという計画です。これまで現場を経験して設計に移り、本社で営業を行っている社員は一人もいませんでしたが、この3つを経験すれば、会社を俯瞰的に見ることができる、また多角的な視点で物事を見られるようになるはずです。
また、拠点長や部門長をはじめとした"上"が変わらない中で"下"だけ変えようとしてもうまくはいきません。拠点自治が確立している中、これまでと違う人がポンと来て文化を変えようとしても、その人自身も大変だし部下も大変。そのため、"アンラーニング(学習棄却)*"によって拠点自治という成功体験から脱却させ、経営人材の意識変革を図る必要もあると考えています。
ただし、若手の育成や拠点長・部門長の育成に重点を置くとはいえ、当然、若手の指導者となる中間層の育成も不可欠です。若手社員の底上げと経営人材の強化の"サンドイッチ"、そして途切れることのない連続型の人材育成によって結果を出していくことが今の目標。ALL DIFFERENTさんのような外部の力も借りながら育成を進め、少しずつ人を動かしていきたいですね。
「本物の真摯さ」を持っていればエキスパートとしてもマネージャーとしても活躍できる
野村 私が常日ごろ社員にお願いしているのは、「真摯な人材になってください」ということ。会社に対するロイヤリティであったり部下を慮る気持ちであったり、いろいろな意味で「真摯さ」を持った人材を育てたいし、不可欠な要素でもあると考えています。本物の真摯さがあれば、エキスパートとして成長したとしても、会社を引っ張っていくマネージャーとしても十分成長できる。幸いにも当社の社員は非常に真面目で、真摯さの"一部"をすでに持っている方がほとんどですから、そこに何を付け加えていくかが重要になってきます。
その1つに、「資格」も入るのではないでしょうか。例えば、「私、下水のことをよく知っていますよ」と言っても、それは自分で言っているだけ。もちろん仕事を進めていく中で技術や知識はにじみ出てくるものですが、施工管理士であったり海外でも使えるプロフェッショナルエンジニアであったり、"自分の指標"ではなく"第三者の評価"、つまり資格を取得することもお客さまに対する真摯さといえますよね。自分がオーソリティ(権威者)だと思っていれば資格を取るのは簡単なはずで、それをやらないのは真摯さに欠けるというのが私の考え。社員の皆さんには、積極的に資格を取ってもらいたいですし、そのサポートもしっかり行っていきます。
野村 人材育成はすぐに効果が表れるものではなく、今の方針・方向性でいいのか、焦っている部分があるのが正直なところです。そんなときこそ役に立つのが外部の情報ではないでしょうか。こういうことをして成功した会社、こういうことをしなくて失敗した会社、そういった情報はなかなか入ってきません。研修という点で見ても、社内の研修を受けるよりも外部の研修を受けた方が緊張感を持って受講しますし、刺激にもなります。
また今後は、人材育成を単体で考えるのではなく、人材育成と組織開発をどう交差させていくのかも考えていかなければなりません。今後もALL DIFFERENTさんの力を借りながら、人材育成、そして組織開発の最適解を追求していきます。
*フソウ様のMobile Knowledge for Freshers 導入事例『将来を支える若手の育成「実践して振り返り、次に活かす」、その繰り返しの先にある成長を見据える』
も掲載中。ぜひご覧ください
事業内容: 水処理施設(浄水場等)の設計/施工からオペレーション/メンテナンス、施設に必要な技術開発や資機材の製造から調達、販売
従業員数: 650名
本社: 東京都中央区日本橋室町2丁目3番1号 室町古河三井ビルディング17F(コレド室町2)