単身赴任|転勤の目的や現状、手当、社内公募・FAの施策とは?

published公開日:2024.07.23
単身赴任|転勤の目的や現状、手当、社内公募・FAの施策とは?
目次

単身赴任は、転勤に伴い家族と離れて生活する働き方です。近年、働き方の多様化により、単身赴任のあり方も変化しつつあります。

本記事では、企業の担当者向けに、単身赴任の目的や現状、手続き、手当、メリットとデメリットなどを解説。さらに、企業と社員にとって効果的な人事施策をご紹介します。

単身赴任とは

単身赴任は、転勤する際に、家族と離れて単身で赴任することです。ここでは、単身赴任の定義や、似た言葉との違いについて解説します。

単身赴任の定義

単身赴任とは、転勤に伴う別居生活のことを指します。具体的には、自宅から通勤できない距離の職場に転勤を命じられた社員が、家族を残して単身で引越し、新たな生活を始めることです。

単身赴任は、配偶者や扶養親族がいる社員が1人で暮らすことを指し、独身者が単身で生活する「一人暮らし」とは、意味合いが異なります。

単身赴任中の社員は「単身赴任者」と呼ばれます。

単身赴任と異動・転勤・出向との違い

ここでは、単身赴任と似た意味を持つ異動・転勤・出向について解説します。

異動

異動(人事異動)とは、会社からの辞令により、部署や任務などが変わることです。昇進・昇格、降職・降格、配置転換なども含み、転勤や出向も異動の1つです。単身赴任は異動に伴う働き方の一種です。

転勤

転勤は、職場が変わる異動を指します。必ずしも転居を伴うものではありませんが、新しい職場が自宅から通えない距離にある場合は、引越しが必要になります。その際に、単身で転勤先に赴任することを、単身赴任といいます。

出向

出向は、グループ会社や子会社、関連企業など、別の会社に勤務することです。所属する会社に籍を残したまま別の会社で勤務する在籍出向と、出向先の会社に籍を移す転籍(移籍)出向の2種類があります。出向の場合も転居の可能性があるため、単身赴任になることがあります。

企業が転勤や単身赴任を導入する目的

企業が社員に転勤や単身赴任を求める背景には、様々な戦略的意図があります。その主な目的について見ていきましょう。

人材育成

転勤や単身赴任の重要な目的の1つが、人材育成です。これまでと異なる業務を経験することで、新しいスキルを身につけられ、職務遂行能力が向上します。仕事の幅が広がることで、将来のキャリアの可能性も拡大するでしょう。

また、異なる部門や地域での経験を通じて、会社全体を見渡す力が養われます。企業活動を多角的に理解することで、幅広い知識と経験を持つゼネラリストの育成も可能です。

生産性の向上

企業の生産性を高めるためには、適材適所の人員配置が重要です。新規プロジェクトや新しい拠点の立ち上げの際などに、知識や経験がある人材が参加することで、業務が円滑に進みます。社員の適性を見極め、最適な職務に配置することは、組織全体の生産性向上につながります。

人員補充

退職や休職など様々な理由で人手不足が生じた場合、転勤を活用して解決することがあります。新規採用と比べ、転勤による人材は即戦力となり、業務をスムーズに継続できるでしょう。短期的な人員不足の解消だけでなく、中長期的な人材配置の最適化にも貢献します。

マンネリ化防止

転勤には、長期間同じ環境で働くことで生じるマンネリ化を防止し、組織に新しい風を吹き込む目的もあります。新しい人材とコミュニケーションをとることで、社員の向上心と意欲を刺激し、社内を活性化できます。

また、異なる視点が加わることにより、新たなアイデアが生まれる可能性もあるでしょう。職場の雰囲気を一新し、社員の満足度向上に役立つこともあります。

不正防止

転勤や単身赴任などの定期的な配置転換は、悪い慣習や不正の防止に効果的です。

長期間、同じ職場で勤務を続けると、周囲の目が行き届かなくなることがあります。チェックの省略などによりミスや不正が起こりやすくなり、取引先と癒着が生じるリスクもあるでしょう。

異なる視点を持つ人材が入ることにより、これらの不正を防ぎやすくなります。

単身赴任の現状

続いて、単身赴任の現状についてご紹介します。日本における単身赴任の実態や期間、家族帯同の割合などを詳しく見ていきましょう。

日本は転勤が多い

日本の転勤制度の背景には、終身雇用制度が深く関わっています。定年退職まで1つの企業で働く「メンバーシップ型」の雇用が主流であったため、企業が社員の職務を割り振るスタイルが浸透し、転勤を命じることも一般的になりました。

労働政策研究・研修機構が2017年に発表した「企業の転勤の実態に関する調査」によると、「正社員(総合職)のほとんどが転勤の可能性がある」企業は33.7%、「転勤をする者の範囲が限られている」企業が27.5%。合わせて6割以上と、多くの企業に転勤があることがわかっています。

*参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「企業における転勤の実態に関する調査」

単身赴任の期間

転勤や単身赴任の期間は3年程度が多いようです。「企業における転勤の実態に関する調査」によると、転勤による赴任期間は以下の通りです。

  • 3年程度:43.2%
  • 5年程度:27.0%
  • 1~2年程度:15.3%

転勤や単身赴任の期間は企業によって異なり、3年程度の回答が多く集まりましたが、長期間や短期間の場合もあります。

*参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「企業における転勤の実態に関する調査」

単身赴任と家族帯同の割合

2017年に発表された「転勤に関する個人web調査」によると、単身赴任より家族帯同の割合がやや多めなものの、単身赴任は国内転勤で約4割、海外転勤では約半数を占めています。

国内転勤 海外転勤
家族帯同 58.5% 50.4%
単身赴任 41.5% 49.6%

また、単身赴任者の割合は、国内・海外を問わず男性の方が多いこともわかりました。

*参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「転勤に関する個人web調査」

単身赴任は減少傾向

しかしながら、近年、単身赴任者は減少しています。「ユースフル労働統計2023」によると、単身赴任者の割合は1992年から2017年にかけて増加したものの、2022年には大きく減少しました。

この背景には、キャリアへの考え方の変化やリモートワークの普及などが考えられます。転居を伴う異動が時代にそぐわないという見方もあり、転勤制度の見直しを始める企業も増えてきました。

*参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2023」

単身赴任を選択する理由

「転勤に関する個人web調査」によると、単身赴任を選択する理由として、持ち家があることや、子どもの就学、配偶者の仕事などが挙がりました。

<国内転勤で単身赴任を選んだ理由>

  • 持ち家があったため:48.0%
  • 子の就学・受験のため:44.5%
  • 配偶者が働いていたから:26.2%

<海外転勤で単身赴任を選んだ理由>

  • 子の就学・受験のため:42.5%
  • 持ち家があったため:30.8%
  • 赴任地の生活環境が悪いため:25.2%
  • 配偶者が働いていたから:21.6%

また、「転勤は家族に与える負担が大きい」と考える人は70.6%に達しており、多くの社員が転勤について懸念を抱えていることもわかります。

*参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「転勤に関する個人web調査」

単身赴任に関する企業と単身赴任者の手続き

単身赴任では住所が変わるため、様々な手続きを行う必要があります。ここでは、健康保険や厚生年金の住所変更、雇用保険の手続き、住民票の異動など、単身赴任に伴う手続きについて解説します。

健康保険と厚生年金の住所変更

マイナンバーと基礎年金番号が結びついていない被保険者の場合、企業は「健康保険・厚生年金被保険者住所変更届」を提出する必要があります。

マイナンバーと基礎年金番号が結びついている場合は、基本的には届出は不要です。ただし、以下の場合は例外となります。

  1. (1)被保険者が健康保険のみに加入している、海外居住者、短期在留外国人
  2. (2)住民票住所以外の居所を登録する

雇用保険被保険者転勤届

企業は転勤先の事業所を管轄するハローワークに、「雇用保険被保険者転勤届」を提出する必要があります。提出期限は転勤した翌日から10日以内です。

住民票の異動

単身赴任者は、住民票の異動を行う必要があります。住民基本台帳法では、転入後14日以内に住民票を移すことが定められています。

ただし、以下のような理由がある場合、住民票を移さなくてもよいケースがあります。

  • 一時的な転居で自宅に戻る見込みがある場合
  • 生活の拠点が変わらない場合(平日は単身赴任先で暮らすが、週末には自宅に戻る場合など)

住民票の所在は様々なことに影響を及ぼします。以下の点を考慮して、住民票の異動を行うかどうかを判断しましょう。

  • 運転免許証の更新手続き(書き換え)
  • 選挙権の行使
  • 公的サービスの利用
  • 公的通知の受け取り

*参考:住民基本台帳法

単身赴任の手当と補助

単身赴任には、社員の負担を軽減するために様々な手当や補助が用意されています。ここでは、単身赴任手当や家賃補助、帰省旅費手当、転勤支度金などについて詳しく説明します。

単身赴任手当

単身赴任手当は、単身で赴任する社員に対して支給される手当です。「別居手当」と呼ばれることもあります。家族と別々に暮らすことで生活費や交通費などの追加コストが発生するため、経済的負担を軽減する目的があります。

単身赴任手当は法律で定められているものではなく、企業ごとに条件が異なります。2020(令和2)年の「就労条件総合調査の概況」によると、「単身赴任手当、別居手当など」の支給額を平均すると月額47,600円であり、企業の規模による差は目立ちませんでした。

しかし、2023年頃から大手企業や金融機関などで手当の値上げの動きが始まっています。

*厚生労働省「令和2年就労条件総合調査の概況」

家賃補助(住宅手当)

家賃補助は、企業が社員の家賃の一部を負担する制度です。赴任先への引っ越し費用や敷金・礼金、移動費、光熱費、駐車場代などを含む場合もあります。

企業ごとに補助の形態は様々で、社宅の提供や会社契約の賃貸住宅に住むケースも見られます。住宅費を補助する場合、手当として支給するよりも社宅などを提供するほうが税制上は有利です。社宅の費用は非課税として処理できるため、社員にとっても企業にとってもメリットがあります。

帰省旅費手当

帰省旅費手当は、単身赴任先から自宅に帰省するための費用を補助するものです。

労働政策研究・研修機構が行った「転勤に関する個人web調査」によると、国内の単身赴任の場合、月に1回帰省する人が78%でした。

単身赴任者の帰省頻度 国内転勤 海外転勤
月に1回 78.0% 6.5%
数カ月に1回 16.3% 39.0%
年に1~2回 4.1% 47.4%

毎回自費で帰省することは、経済的に大きな負担になるため、帰省旅費の補助は重要です。

また、会議など業務を理由に帰省する場合の旅費は非課税ですが、帰省旅費手当は定額支給でも実費精算でも課税対象となります。

*参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「転勤に関する個人web調査」

転勤支度金(単身赴任準備金)

転勤支度金は、新しい赴任先で必要な家具家電や道具などを準備するための費用です。買いそろえるものは社員ごとに異なるため、一律の金額を支給する企業が多いようです。

単身赴任のメリットとデメリット

単身赴任には、家族の生活環境を維持できることや通勤ストレスの軽減といったメリットがありますが、一方で費用増加や孤立感の増加といったデメリットも存在します。ここでは、単身赴任の主なメリットとデメリットについて解説します。

単身赴任のメリット

単身赴任の主なメリットをご紹介します。

家族の環境を維持できる

家族の環境を変えずに済むことは、単身赴任の大きなメリットです。配偶者の仕事、子どもの学校や習い事、友人関係、通院など、生活に密接している様々なことをそのまま維持できるため、負担は最小限に抑えられるでしょう。

通勤のストレスが減る

単身赴任先では、夫婦それぞれの通勤時間や子どもの学区などを考える必要がなく、勤務地の近くに住めます。これにより、通勤時間の短縮が可能なため、通勤に伴うストレスが軽減されることが多いでしょう。

自分の時間を確保できる

家族と同居している場合と比較すると、単身赴任では家族の予定などを気にする必要がないため、自分の時間を確保できます。帰宅後や休日に趣味や勉強に充てられるなど、自分のペースで生活をコントロールできることは、単身赴任ならではのメリットといえるかもしれません。

単身赴任のデメリット

単身赴任には、社員と企業双方にデメリットもあります。

費用の増加

単身赴任者は、生活費が二重にかかるため、経済的な負担が増加します。また、企業も、単身赴任手当など各種手当を支給する必要があるため、コストが発生します。

孤立感の増加

家族と離れることにより、単身赴任者は孤立感や寂しさを感じやすくなります。これにより、ストレスの増加やメンタルヘルスの悪化につながる可能性があります。子どもがいる場合は、近くで成長を見守れないことも大きなデメリットといえるでしょう。

離職のリスク

単身赴任が困難な場合、社員が退職してしまうことがあります。労働政策研究・研修機構「転勤に関する個人web調査」によると、「できれば単身赴任はしたくない」と考える人は51.3%と半数以上でした。

実際に、転勤や単身赴任が理由で離職を考える社員も多く、優秀な人材が流出するリスクがあります。

*参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「転勤に関する個人web調査」

転勤や単身赴任の課題と新しい施策

最後に、転勤や単身赴任に関する現状の課題と、それに対応する新しい人事施策について説明します。

現状の課題

近年、終身雇用制度の崩壊や働き方の多様化により、転勤や単身赴任に関する課題が顕在化しています。特に共働き世帯の増加やジョブ型雇用の導入により、従来の制度と社員の意識との間にギャップが生じています。

一方的な転勤命令は、家庭や個人の生活に大きな影響を及ぼすため、抵抗感を抱く社員が増えています。

新しい人事施策

この課題に対応し、ジョブローテーションを効果的に活用するためには、企業と社員の双方にとって有益であることが重要です。ここでは、「社内公募制度」や「社内FA制度」という新しい人事施策をご紹介します。

従来の一方的な人事異動とは異なり、社員の希望を反映した配置を可能にするため、社員の仕事に対するモチベーション維持が期待できます。

社内公募制度

「社内公募制度」は、空いているポストや新規事業に必要な人員を社内で募集する「求人型」の制度です。社員は自分のスキルやキャリアパスに合わせて応募できるため、モチベーションが高まります。

社内FA制度

「社内FA制度」は、社員が希望する部署や職種に自ら手を挙げる「求職型」の制度です。希望部署に働きかけることや、スカウトを待つこともできます。社員の主体性を尊重し、企業への帰属意識を高める効果も期待できます。