生産性が上がる?シングルタスクの利点やマルチタスクとの違い
本コラムでは、シングルタスクを進めるうえでのポイント、マルチタスクとの違いを紹介します。
シングルタスクとは
シングルタスクとは、1つの業務だけ集中的に作業を進めること。一度に複数の業務を並行して進めるマルチタスクと異なり、仕事を一つひとつ完了させます。特に頭を使って考える仕事に有効です。加えて、優先順位を決めるだけのシンプルなタスク管理になるのも魅力です。
また、ハーバード大学のある研究によると、能率の高い社員は注意を向けるタスクの切り替えが少ないことがわかっています。タスクからタスクへ注意を向ける先を切り替えるたびに生産性が下がるため、1つの作業に集中するシングルタスクは、生産性の最大化につながると考えられています。
シングルタスクに適した仕事とは
シングルタスクに向いているのは、企画の立案やアイデア出しなどといった、頭を使って考える・時間をかけて取り組む仕事です。集中力を維持でき、創造力を発揮できる可能性が高いでしょう。データ入力や製品企画の検査など、集中力が求められる細かな作業もシングルタスク向きです。
シングルタスクのメリットとは
集中力が維持できる
基本的に脳はマルチタスクに向いていないため、タスクを一つひとつこなしていくほうが集中できます。いくつものことを同時に考えるとそれだけ頭を使い、疲労感も高まります。
ミシガン大学の研究では、マルチタスクだとシングルタスクよりも40%生産性が落ちるという結果も出ているほどです。シングルタスクは同時にいくつものことを考えることがないため、思考を邪魔されず、1つのことをじっくり考えることができるのもメリットです。
ストレスが減る
マルチタスクは複数の業務を同時進行で進めるため、振り返ったときに「思ったよりも仕事が進んでいない」といった状況になるケースがあります。進捗率が低い未完了の業務を複数件、数日から数週間にわたって抱えることもあるので、ストレスに感じる人もいるでしょう。
一方、シングルタスクでは一つひとつの業務を集中して完了させながら進めていくため、都度達成感を感じることができるのが利点です。完了させて次の業務に進めることで、業務に対するストレスが軽減されます。
タスク管理がシンプルで簡単
同時に複数の業務をこなすためには、どの業務をいつまでにどこまで進めるのか、長期的な視点を持って複雑に管理する必要があります。しかし、シングルタスクはシンプル。完了するまで1つのタスクに集中するだけです。
優先順位の決定や、一つひとつのタスクにかける時間管理は重要になりますが、1つのタスクが終われば案件も完了するので、それぞれの業務の期限を把握してスケジュールを組むだけで進められます。タスクの進捗管理に苦手意識がある人は、シングルタスクが向いているでしょう。
シングルタスクのやり方・コツ
雑念はメモしておく
シングルタスクで生産性を高めるためには、1つの業務にじっくり集中することが大切です。しかし、業務中にふと別の業務が気になったり、差し込みの依頼を受けたりすることもあるでしょう。浮かんできた雑念や、後で着手しようと考えた内容はメモに残しておくことがおすすめです。緊急性が高くないものをメモにアウトプットすることで頭をすっきりさせ、集中力を高められます。
タスクを細分化・明確化する
「プレゼン資料の作成」など大雑把なタスクにせず、「競合サイトをチェックする」「過去のプレゼン資料から参考になる情報を探す」など、タスクは細分化して設定しましょう。一つひとつの作業ボリュームが大きいと、途中で疲れたり集中力が切れたりしてしまいます。
大雑把なタスク管理では、いつまでに・どこまで進めることができれば完了か見えにくいため、業務を進めるうえで迷ってしまうことも。一つひとつの仕事量を小さくすることで、ハードルが下がりモチベーションの維持にもつながります。
また、難しいタスクは後で慌てないよう優先的に設定しましょう。はじめに優先順位を整理して進めることが、シングルタスクをうまく活用するポイントです。
タスクごとに目標を決める
一つひとつの仕事に集中して取り組むため、時間の管理をしていないと後ろのタスクが徐々に後ろ倒しになる可能性があります。こだわり過ぎて1つのタスクに必要以上に時間をかけてしまう可能性もあるので、注意が必要。その日に取り組むタスクを細分化したら、目標時間も細かく設定しましょう。適度に小休憩を入れることも、集中力の維持に有効です。
積み上がった仕事は「1×10×1」の考え方が有効
タスクがうまく処理できず、積み上がってしまったら「1タスク1分で片付けられるタスク」「1タスク10分以内で片付けられるタスク」「1タスク1時間以上かかるタスク」の順に着手する方法があります。すぐに終わる仕事から手をつけ、山積みになった仕事を片付けるという考え方です。タスクがたまってしまったら、差し込みの業務が発生しない朝のうちにこの方法で処理しましょう。
空白タイムを強制的に入れておく
1日2回、各30分程度、タスクを入れない空白の時間を用意しておくのもシングルタスクのコツです。予想外の事態や急な依頼などに対応する時間を作ることができます。また、何もなければ前倒しで予定を進められ、柔軟な対応が可能となります。
シングルタスクとマルチタスクの違い
マルチタスクとは複数の作業を並行して行ない、短時間で都度案件を切り替えながら仕事を進めていくことです。ファイルを印刷しながら別案件のメールを返信したり、作成した資料を確認してもらっている間に他案件のミーティングの日程を調整したりするような業務の進め方を指します。
シングルタスクと比べた際に「複数の仕事に着手するため飽きがこない」「時間を有効活用して仕事を進められる」といったメリットが挙げられますが、キャパオーバーになりがちで生産性が低下しやすい点が課題です。複数タスクのスイッチングが得意な人は全人口のわずか2%だという研究結果もあり、ほとんどの人がマルチタスクに課題を感じているといっても過言ではありません。
もともと「タスク」という言葉はコンピューターが処理するプログラムの単位のことを指していて、マルチタスクも複数の作業を同時に処理するコンピューター能力を指す言葉でした。
自身のマルチタスクに課題を感じてしまう人が多いのも、自然なことなのかもしれません。
こんなときはマルチタスクが求められる
管理職や医療従事者はどうしてもマルチタスクが求められる職業です。
管理職の人は自分の仕事をこなしながら、部下の仕事の管理やサポートをすることがほとんど。それぞれの仕事の進捗と全体のマネジメントを都度確認するなど、マルチタスクが求められます。
医療現場は突発的な仕事ばかり。人の生死にかかわるため、どうしても同時に複数人の状況を確認したり治療したり、といった場面が少なくありません。組織によってはマルチタスクの能力を鍛えるための訓練も行なわれているほどです。
業種や環境によって、マルチタスクが求められる状況もあります。また、生産性を落とさずにマルチタスクができる人は、社内でも評価が高まるでしょう。
効率的なのはシングルタスク?マルチタスク?
一般的にはシングルタスクのほうが効率的だといわれています。ミシガン大学の研究では生産性に40%もの差が出るという結果も出ているため、できる限りシングルタスクで業務を進めるほうが効率的でしょう。
しかし、実際には色々な人、部署から同時に仕事を頼まれることも。そのような状況下で、本当に同時並行に仕事を進められる人は少なく、ほとんどの人はマルチタスクといっても複数のシングルタスクを切り替えて対応しているのです。シングルタスクの管理方法同様、複数のタスクの優先順位や時間配分を考え、スケジュールを組むことが効率化につながります。
生産性をそこまで落とさずマルチタスクで複数案件を並行に進めることができれば、一つひとつ完了させるまで次のタスクに移れないシングルタスクよりも効率が上がる可能性は高いでしょう。
シングルタスクからマルチタスクまで!仕事の進め方を習得するおすすめ研修
ALL DIFFERENT株式会社では本コラムでご紹介した「タスクを細分化・明確化」する考え方を身につけるための研修をご用意しています。「タスク分解」のコツを身につけることで業務の全体像を把握し、進捗をこまめに管理することができるようになります。未経験の業務に取り組む際にも有効でしょう。
また、できればシングルタスクで一つずつ集中的に案件を進めることが理想ですが、役職や職場環境によってはそうはいきません。顧客の要望に合わせ柔軟に対応し、新入社員のサポートもして欲しいなど、マルチタスクがうまくできる人ほど会社からの需要も高まります。
ALL DIFFERENT株式会社の「マルチタスクの進め方」研修では、マルチタスクを使いこなし高い生産性で仕事をするための思考法や手法を解説。注意点を押さえながらマルチタスクをこなすポイントについて、ワークを交え学ぶことができます。「今より生産性を高めたい」「複数の案件をスムーズにこなしたい」という人におすすめです。