リフレクションとは?ビジネスで取り入れる意味や効果的なやり方を解説
リフレクションは、教育や医療・看護の現場や企業の人材育成など様々なビジネスシーンで取り入れられています。リフレクションとは自分の仕事を振り返り、次のアクションや対応を考えることです。
本コラムでは、リフレクションの意味やビジネス上の効果、具体的なやり方などについて解説します。
リフレクションとは?意味と反省やフィードバックとの違い
人材育成や生産性向上のためにリフレクションが注目されていますが、正確な意味や反省やフィードバックとどう違うのかわからない、と感じている人も多いでしょう。
ここではリフレクションの意味や、反省・フィードバックとの違いについて解説していきます。
リフレクションの定義や英語の意味
リフレクションは、英語で「reflection」と書き、日本語訳としては「反射・反響」などといった言葉が充てられています。
元々は、光や音などの物理的な反応を示す言葉として使われていました。例えば、写真では水面や鏡などの反射を利用して撮影する方法をリフレクションと呼んでいます。リフレクションフィルターといえば、レコーディングの際に室内やマイクの音の反響を抑える道具のことです。
リフレクションには、物理的な反射や反響という意味から転じて、自分自身の中で熟考することや内省といった意味もあります。ビジネスでは、日々の業務や行動を振り返り、自己の行動や結果について考察するプロセスという意味で使われています。
リフレクション(振り返り)と反省やフィードバックとの違い
リフレクションに似た言葉として「振り返り」や「反省」「フィードバック」などといった言葉がありますが、違いはどのようなところにあるのでしょうか。
振り返りは、自分の仕事のやり方や内容を内省するという意味で、ビジネス上はリフレクションと同じような意味で使われています。一方、反省には、悪い部分を中心に見直すという意味があります。リフレクションは悪いところだけでなく、良いところも含めて客観的に振り返るという点で、反省と違いがあります。
また、フィードバックは他者から客観的な意見や評価をもらうことです。リフレクションは、自分自身の中で業務や経験を振り返り、見つめ直すことをいいますので、その点に違いがあります。
リフレクションのビジネスでの使い方
リフレクションは、ビジネス上の生産性向上や人材育成・評価など様々な目的・手法で取り入れられています。
また、医療や看護の現場では、経験学習の効果を高めるために、マネジメントや臨床現場における継続教育にリフレクションを導入しているところも多いようです。一部の教育や看護の現場では、リフレクションシートと呼ばれる、自分自身の学びや体験を振り返り、自己学習に役立てていくための記録シートが使われています。リフレクションを定期的に行うために、リフレクションの内容を発表するリフレクションミーティングを実施している企業もあるようです。
リフレクションは、教育や医療・看護業界にとどまらず、様々な企業やビジネスシーンにおいて使われています。
ビジネスでリフレクションを活用するメリット
ビジネスにおいてリフレクションを活用することは、個人や組織の成長を促進し、効率を高めるうえで有益です。自己の振り返りを通じて、個々の成長を促し、組織全体のパフォーマンス向上を図ることができます。
ここでは、リフレクションがビジネス上の生産性向上やリーダーシップ育成にどのように貢献するか、具体的な効果を解説します。
生産性向上
リフレクションを取り入れると、従業員は自身の業務や行動を客観的に振り返る習慣がつきます。こういった習慣は、自発的に日々の業務改善を促し、結果的に生産性の向上につながることが期待できます。
例えば、毎日の作業後に「どのように効率化できたか」「次回はどこを改善すべきか」といった振り返りを行えば、ミスを減らし、作業のスピードと正確性を高められるでしょう。従業員はリフレクションを習慣化することで、問題を指摘される前に自ら改善策を見つける能力が向上します。結果的に、上司からのフィードバックに頼らずに業務効率が上がり、生産性が高まるのです。
リーダーシップ育成やチームワーク向上への影響
リフレクションは、従業員のリーダーシップを育成するうえでも重要です。リーダーはリフレクションを通じて自らの行動や決定を振り返り、メンバーへの影響や指導のあり方を客観的に見直すことができます。効果的なリーダーシップを確立でき、メンバーとの信頼関係を強化できるでしょう。
さらに、リフレクションはチーム全体の振り返りを促進することで、チームワークの向上にも寄与します。リフレクションミーティングで、チームのメンバーが一緒にリフレクションを行えば、よりオープンで密なコミュニケーションにつながるでしょう。リフレクションにより、各メンバーが自分の役割や他者との協力の仕方を見直すことで、チームのパフォーマンス向上も期待できます。
従業員の成長
リフレクションは、従業員の自己成長を促進し、モチベーション向上に貢献します。自分自身の行動や結果に対する理解を深めることで、目標に向かうための課題が明確になり、それを克服するための行動を計画する力が養われます。また、リフレクションを定期的に行うことで、自分自身の成長を実感できるため、モチベーションの向上にもつながるでしょう。
従業員が高いモチベーションで自発的に行動できるようになれば、企業全体の生産性向上にも大きく寄与します。従業員がリフレクションを通じて自ら改善を続けることで、仕事の効率が高まり、全体として組織の競争力が強化されるのです。
リフレクションのやり方、活用できるフレームワーク
リフレクションの導入は企業にとって様々なメリットがありますが、実際にどのように取り入れたらよいのでしょうか。
ここでは、リフレクションの具体的なやり方や活用できるフレームワークについて解説します。
リフレクションの実践的なやり方
実際にリフレクションを行う際には、以下のようなステップで進めていきましょう。
- (1)経験した出来事を振り返る
- (2)振り返った出来事の周囲の環境・関係者・因果関係などを整理する
- (3)理想と現実のギャップや結果について客観的に評価する
- (4)自分自身の行動を振り返り、続けること・新しくやること・やめることなどを整理する
時間が経過してから体験を振り返ることで、感情が整理され、客観的に当時の状況や因果関係などを判断できるようになります。そのうえで、自分自身の行動を振り返り、今後の改善や計画に生かしていきましょう。
ジョハリの窓
リフレクションに活用できるフレームワークの1つに「ジョハリの窓」があります。ジョハリの窓とは、アメリカの心理学者ジョセフ・ルフト(Joseph Luft)とハリー・インガム(Harry Ingham)によって提唱された心理学モデルです。
ジョハリの窓では、人間のコミュニケーションと心理状態の関係を以下の4つの領域に分けています。
開放の窓 | 自分と他者の両方が知っている領域 |
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盲点の窓 | 他者が知っているが、自分が気づいていない領域 |
秘密の窓 | 自分だけが知っている領域 |
未知の窓 | 自分も他者も知らない領域 |
リフレクションを通じて、「盲点の窓」のように自覚していない特性に気づくことで成長を促したり、「秘密の窓」のように隠されていた領域をオープンにすることでコミュニケーションを円滑化したりできるようになります。また、盲点の窓や秘密の窓をオープンにしていくことによって、「未知の窓」にある隠された才能や潜在力が引き出されます。リフレクションにより、それぞれのメンバーが自身の「開放の窓」を広げていくことを目指しましょう。
ジョハリの窓については、以下のコラムで詳しく解説していますので、興味がある方は参考にしてください。
関連コラム:ジョハリの窓とは?自己分析とビジネスにおける活用方法
KPT法、YWT法などのフレームワーク
リフレクションの代表的なフレームワークとして、「KPT法」「YWT法」などのフレームワークがあります。
KPT法は、「Keep(継続)」「Problem(問題)」「Try(挑戦)」の3つに分けて振り返りを行う方法です。課題や改善策を発見するのに適しています。
一方、YWT法は「Y(やったこと)」から「W(わかったこと)」を抽出し「T(次にやること)」を決めるというステップで進めていくのが特色です。YWT法は出来事中心ではなく、自分軸で振り返りを行う手法ですので、従業員の自発性を高めたい場合や人材育成を促す場合に向いています。この他に、「Keep(やり続けること)」「Discard(やめること)」「Add(つけくわえること)」の3つの要素に分類して振り返りを行う「KDA法」というフレームワークもあります。
いくつかの要素や段階に分けて振り返りを行うことで、リフレクションの効果がアップします。リフレクションを導入する目的や職場環境に合わせて、こうしたフレームワークを活用してみましょう。
経験学習モデルの使い方
経験学習モデルとは、アメリカの哲学・教育学者であるデービッド・コルブ氏によって提唱された学習手法です。経験学習モデルでは「具体的経験」「内省的反省」「概念化・抽象化」「能動的実験」の4つのステップからなるサイクルを繰り返して、自身の経験から学習効果を引き出します。
具体的経験 | 初めてかかわる分野や業務内容を実際に経験する |
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内省的反省 | 結果について振り返り、内省する |
概念化・抽象化 | 経験で得られた気づきを、他の場面にも展開できるよう抽象化・概念化する |
能動的実験 | 概念化・抽象化された仮説を他の業務に応用して試してみる |
リフレクションに経験学習モデルを取り入れれば、従業員は業務経験から自発的に学習し、さらにその学びを実践に活かすことができます。従業員個人が成長することで、組織の中に、より良い方法論や改善策が浸透し、全体のパフォーマンス向上にもつながるでしょう。
企業がリフレクションを取り入れる際の注意点
多くの企業が人材育成や業務改善の手法としてリフレクションを取り入れていますが、リフレクションを実践するためにはいくつか注意点があります。リフレクションのやり方やフォーカスする点を間違えると、期待する効果が得られないリスクがあるからです。
ここでは、企業がリフレクションを取り入れる際の3つの注意点について解説します。
失敗や悪い点にフォーカスしすぎない
リフレクションを行う際に、失敗や悪い点にだけフォーカスしないように注意しましょう。
もちろん、改善すべきポイントを振り返ることは大切ですが、それだけでは従業員が自信を失い、モチベーションを失うリスクがあります。リフレクションは反省とは異なります。成功した点や良かった部分も同時に振り返ることで、従業員は自身の強みを再確認し、次の成長に向けた前向きな気持ちを持てるのです。失敗だけでなく、成功体験も共有し、バランスの取れたリフレクションを行いましょう。
具体的なやり方を明示する
リフレクションを効果的に行うためには、従業員に明確なやり方やフレームワークを提示することが重要です。漠然とした指示や定型のリフレクションシートを埋める作業だけでは、効果的なリフレクションはできません。
リフレクションを導入する際には、その重要性や目的を組織内でよく共有したうえで、具体的なやり方を明示するようにしましょう。KPT法やYWT法などの実践的なフレームワークを活用するのもおすすめです。このような実践的なフレームワークを活用すれば、従業員が自分の行動や成果を整理しやすくなります。
組織内でリフレクションの方法を統一することで、チーム全体での共通理解が深まり、リフレクションの質を高めることにもつながります。
振り返りだけで終わらせない
リフレクションは、単なる振り返りに終わらせてはいけません。振り返りの結果から、次に何を改善すべきか、どのように行動すべきか、という具体的なアクションにつなげることが重要です。
KPT法、YWT法などのフレームワークには、必ず「Try(挑戦)」や「T(次にやること)」など、次のアクションや改善につなげる要素が含まれています。経験学習モデルでも、概念化・抽象化された仮説を他の業務に応用して能動的実験を行うことで、リフレクションとアクションのサイクルを回していきます。改善点や成功体験を踏まえて、今後の具体的な目標や行動計画を立てることで、リフレクションは初めて意味を持つのです。
リフレクションを導入する際には、必ずリフレクション後にどう行動するかを明確にして実行に移すステップを準備してください。そのうえで、組織的に新しい試みや挑戦をサポートする仕組みがあると、従業員のさらなる成長につながるでしょう。