ベネフィットとは?意味やメリットとの違い、活用法をわかりやすく解説
ベネフィットとは、製品やサービスがもたらす価値や恩恵のことです。単なる機能や特徴ではなく、顧客の生活や感情にどのような良い変化をもたらすかを示します。
本コラムでは、ベネフィットの意味や重要性、メリットとの違い、効果的な見つけ方、活用法などを詳しく解説します。
ベネフィットとは
ベネフィットとは、製品やサービスを使うことで得られる価値のことです。ビジネスやマーケティング、人事など、様々な分野で使われています。
ここでは、ベネフィットの基本的な意味と、異なる分野での使われ方について説明します。
ベネフィットの意味
ベネフィットは英語の「benefit」に由来する言葉です。直訳すると「便益、恩恵、利益」などの意味を持ちます。
日本では、単なる金銭的な利益ではなく、「恩恵」のニュアンスを示すことが多くあります。また、直接的な効果や結果だけでなく、その先にある価値や満足感も含みます。
マーケティングにおけるベネフィット
マーケティングにおけるベネフィットとは、顧客が製品やサービスを利用したことで得られる利益や恩恵を指します。これは、製品やサービス自体の特性だけではなく、利用後に得られるポジティブな変化や満足感、機能的な便益も含まれます。
例えば、「使って良かった」と感じるような体験や生活の質の向上、具体的な課題解決などが挙げられます。AppleのiPodの「1,000曲をポケットに」やスターバックスの「第三の場所」というコンセプトは、ベネフィットを打ち出して成功を収めた例です。
ビジネスにおいては、製品やサービスの特徴を伝えるだけではなく、顧客がそれを利用することでどのようなベネフィットがあるかを示すことが重要です。
企業における福利厚生としてのベネフィット
企業経営の文脈では、ベネフィットは社員向けの報酬制度や待遇を指すことがあります。これは基本給与以外の諸手当や福利厚生制度全般を含み、フリンジ・ベネフィット(Fringe Benefits)とも呼ばれます。具体的には、社宅の提供、保養施設の利用、食事の提供などです。
フリンジ・ベネフィットは社員の満足度を向上し、仕事への意欲を高める効果が期待できます。また、採用面でも強みとなるため、優秀な人材の確保にも役立つでしょう。
医療におけるベネフィット
医療におけるベネフィットとは、患者が治療や医療サービスを受けることで得られる効果や効能を指します。具体的には、病気や症状の改善、痛みの軽減、生活の質の向上、早期回復、予防的な健康管理などが含まれます。
一方で、医療分野ではベネフィットと同時に、副作用などの「リスク」が常に考慮されます。ベネフィットとリスクを慎重に比較して、最適な治療を選ぶことが重要です。
ベネフィットとメリットとの違い
「ベネフィット」と「メリット」は似たような意味で使われることが多いですが、実は重要な違いがあります。ここでは、両者の定義や特徴、違いについて詳しく見ていきます。
メリットの定義と特徴
メリットとは、製品やサービス、選択肢などの優れた点や有利な特徴を指す言葉です。英語の「merit」に由来し、日本語では「利点、長所、優位性」などの意味で使われます。
日常会話やビジネスの場面では、以下のような使い方が一般的です。
- 「このサービスには多くのメリットがある」
- 「当社製品の最大のメリットは耐久性の高さです」
競合他社の製品やサービスと比較したときに、優位に立てる特徴や機能をメリットと呼びます。
メリットの対義語はデメリットです。メリットは製品やサービスの肯定的な評価であるのに対し、デメリットはそれとは反対に否定的な評価を指します。
ベネフィットの定義と特徴
ベネフィットは、製品やサービスを利用することで得られる利益や恩恵です。具体的には、それを使うことでどう変わるか、どんなものが得られるのかを意味します。
「時間が節約できる」「ストレスが軽減される」「生活が快適になる」といった具体的な成果がベネフィットです。
ベネフィットの対義語としては、「ダメージ(損害や被害)、ロス(時間や機会の損失)、ディスアドバンテージ(不利益や劣勢)」などが挙げられます。
メリットとベネフィットの比較
メリットとベネフィットは、製品やサービスの価値を表現するうえでよく使われますが、その意味合いは明確な違いがあります。
メリットは製品やサービス自体の特徴や優れた点を指すのに対し、ベネフィットはそれらを利用することで得られる具体的な利益や恩恵を表します。この違いを理解することで、製品やサービスの価値をより効果的に伝えることができます。
以下の表では、両者の特徴を比較しています。
メリット | ベネフィット | |
---|---|---|
定義 | 製品やサービスの利点や長所 | 製品やサービスを利用して得られる恩恵 |
対象 | 製品やサービス自体の特徴 | 顧客が体験する結果や効果 |
性質 | 客観的・機能的 | 主観的・感情的 |
例 | 高性能、耐久性、使いやすさ など | 時間節約、ストレス軽減、生活の質向上 など |
マーケティングにおけるベネフィットの重要性
製品やサービスのマーケティングにおいて、ベネフィットを効果的に活用することは非常に重要です。ここでは、顧客視点からベネフィットがなぜ重要なのか、そしてそれを効果的に訴求するポイントについて説明します。
顧客視点でのベネフィットの重要性
マーケティング業界では、「ドリルを売るには穴を売れ」という言葉が知られています。経済学者セオドア・レビット博士は著書「マーケティング発想法」において、「人々が欲しいのは1/4インチのドリルではない。彼らは1/4インチの穴が欲しいのだ」と記しました。
これは、顧客が求めているものは製品ではなく、その製品がもたらす結果(ベネフィット)であることを示しています。つまり、顧客にとってのベネフィットは、ドリルを買うことではなく、「穴をあけること」なのです。
この考えは、マーケティングの本質を捉えており、ベネフィットの重要性を端的に表現しています。
実際、顧客は製品の特徴によって購入を決めるわけではありません。製品を購入することで得られる未来を想像して購入するのです。ベネフィットには、顧客の感情を刺激し、購買意欲を高める効果があります。そのため、ベネフィットを顧客に伝えることはマーケティングにおいて非常に重要な要素となります。
効果的な訴求ポイントの作り方
効果的なマーケティングでは、メリットとベネフィットの両方を適切に伝えることが重要です。メリットは製品やサービスの特徴を示し、ベネフィットは顧客の生活がどう変化するかを想像させます。
訴求ポイントを作る際は、メリットだけでなく、メリットとベネフィットを関連付けて説明すると効果的です。両者の例を見てみましょう。
- メリット:この掃除機は吸引力が強力です。
- メリットとベネフィット:この掃除機は吸引力が強力なため、短時間で掃除ができます。
このようにベネフィットを含めてアプローチすることで、単なる製品説明を超え、顧客の生活にどのような価値をもたらすかを示せます。結果として、顧客の購買意欲を高め、競合他社との差別化が可能になります。
ビジネスにおけるベネフィットの3分類
カリフォルニア大学名誉教授で経営学者のデイヴィッド・アーカー氏は、ブランド価値に関する研究の中で、ベネフィットを以下の3つのカテゴリーに分類しました。
- 機能的ベネフィット
- 情緒的ベネフィット
- 自己表現的ベネフィット
この分類は、ブランド戦略だけでなく、幅広いビジネスに適用可能な概念です。製品やサービスを考える際、機能面に注目しがちですが、3種類のベネフィットを適切に組み合わせることが重要です。
それぞれの特徴と例を見ていきましょう。
機能的ベネフィット
機能的ベネフィットとは、製品やサービスの機能や性能から得られる具体的な作用や効果のことです。多くの場合、測定や数値化がしやすく、客観的に比較できる特徴があります。
<例>
簡単、早い、便利、安い、大きい、おいしい、軽い、立地がいい、頑丈 など
機能的ベネフィットを提示することで、消費者は製品やサービスの具体的な価値を把握しやすくなります。これにより、購入に対する不安や迷いが減り、購買決定がより容易になります。
情緒的ベネフィット
情緒的ベネフィットは、製品やサービスの使用や所有によってもたらされる感情面でのポジティブな変化を指します。
<例>
楽しい、安心、快適、かっこいい、ほっとする、優越感、高級感、充実感など
これらは価値観や状況によって異なるため、個人差を考慮してベネフィットを伝えることが大切です。
また、多くの場合、同じ製品でも、機能的ベネフィットと情緒的ベネフィットの両方が存在します。例えば、スマートフォンの場合は、以下のような機能的ベネフィットと情緒的ベネフィットが考えられます。
- 機能的ベネフィット:長時間バッテリー、高速処理能力、高性能カメラ など
- 情緒的ベネフィット:コミュニケーションの楽しさ、最新技術を使う満足感 など
情緒的ベネフィットは製品やサービスに機能面以上の価値を与え、顧客のブランドへの好感と信頼を高めます。これにより、企業は顧客と長く良好な関係を構築できます。
自己表現的ベネフィット
自己表現的ベネフィットは、製品やサービスの使用や所有によって、自分を表現することにつながる便益です。
<例>
自分らしくいられる、理想の自分に近づける、こだわりを示せる、自分に自信が持てる など
自己表現的ベネフィットは、現状に満足せず、さらなる成長や改善を望む顧客に特に訴求力があります。そのため、高価格帯の製品やサービスのマーケティングで重視される傾向があります。
効果的なベネフィットの発見と活用法
製品やサービスのマーケティングにおいて、ベネフィットを効果的に活用することは、顧客の心を掴むうえで非常に重要です。ここでは、顧客視点からベネフィットがなぜ重要なのか、そしてそれを効果的に訴求するポイントについて説明します。
スペックを洗い出し、ベネフィットを抽出
ベネフィットは顧客が製品やサービスを選ぶ際、決め手となる重要な要素です。ベネフィットを導き出すためには、まずは製品やサービスのスペックを洗い出します。製品の技術的な特徴はもちろん、素材や製法、開発背景など、あらゆる要素を書きだしましょう。顧客の評価、専門家の意見、メディアでの扱われ方、販売実績なども含みます。
次に、それらのスペックが顧客にもたらす直接的なメリットを考えます。例えば、空気清浄機の「高性能フィルター搭載」というスペックは、「空気の清浄効果が高い」というメリットに変換できます。
このメリットがさらに顧客の生活や感情に、どのような価値をもたらすかを検討します。空気清浄機の例では、「きれいな空気で家族が健康的に暮らせる安心感」などのベネフィットにつながるでしょう。この過程で、当初想定していなかった価値が見つかることもあります。
同じスペックでも、人によって感じる価値が異なるため、次のステップであるターゲット分析とペルソナ設定が重要になります。
ターゲット分析とペルソナ設定
効果的なベネフィットを抽出するためには、明確なターゲットを想定することが重要です。ターゲットの年齢、性別、居住地、職業、趣味、価値観などを詳細に設定し、具体的な顧客像(ペルソナ)を作成します。ペルソナを詳しく設定することで、より的確なベネフィットを提案できます。
例えば、30代の共働き夫婦と60代の退職したシニア夫婦では、同じ製品に対しても求めるベネフィットが異なる可能性が高いでしょう。ペルソナの視点から製品やサービスを見ることで、顧客に寄り添ったベネフィットを見いだせます。
課題解決までのストーリーを作成
ペルソナを設定したら、課題解決までのプロセスを考えます。ペルソナが直面している課題を具体的に想像し、どのように解決されるかを段階的に描きましょう。
例えば、忙しいビジネスパーソンのペルソナであれば、「朝の準備時間が足りない」という課題が考えられます。課題解決のために、製品を利用することによって「朝の準備時間が短縮できる」、その結果「余裕を持って出勤できる」というストーリーを作成します。
このストーリーを通じて、製品がどのようにペルソナの生活を改善するか、そして、どのような感情的変化をもたらすかを明確にします。
課題解決のストーリーを丁寧に描くことで、顧客の共感を得やすく、説得力のあるベネフィットを提案できます。
顧客視点でベネフィットを表現
顧客にベネフィットを伝える際は、前述した、機能的ベネフィット、情緒的ベネフィット、自己表現的ベネフィットをバランスよく提供することが大切です。
主語を製品ではなく、顧客(ペルソナ)にすることで、より具体的なベネフィットを伝えられます。
例えば、日焼け止めクリームの場合:
- 機能的ベネフィット:紫外線から肌を12時間守れる
- 情緒的ベネフィット:日中も安心して外出を楽しめる
- 自己表現的ベネフィット:美肌にこだわる自分でいられる
このように、顧客視点で具体的なベネフィットを表現することで、製品の価値がより明確に伝わります。