費用対効果とは?計算方法や生産性向上のポイント
費用対効果は企業が意思決定をする上で、非常に重要な指標となります。費用対効果を高め、利益率を向上することは、安定した企業経営の実現につながるでしょう。
本コラムでは、費用対効果の重要性、指標となる5つの専門 用語、生産性向上の方法などをご紹介します。
費用対効果とは
費用対効果とは、施策にかけた費用に対してどの程度の効果が得られたかを表す言葉です。
費用はコスト全般を意味し、製造、販売、広告活動、システム開発などにかける金銭的な支出だけでなく、人件費やかかった時間なども含みます。効果は施策によって異なり、金額だけでなく、集客数やアクセス数、ブランドイメージの向上などを指す場合があります。費用対効果の使い方と例文
例えば、売上向上を目的とした商品のキャンペーンにおいて、かけた費用に対し売上(得られた利益)が多い場合は、費用対効果が「高い」「良い」などで表します。
<例>
- 費用対効果が高い
- 費用対効果が良い
逆に、売上がキャンペーン費用を下回る場合は、費用対効果が「低い」「悪い」のように表します。
<例>
- 費用対効果が低い
- 費用対効果が悪い
- 費用対効果が見合わない
仮に、キャンペーン費用に100万円をかけ、200万円の売上があった場合は、「キャンペーン費用に対して2倍の費用対効果があった」といえます。
コストパフォーマンスとの違い
費用対効果は英語では、「Cost Effectiveness(費用と効果)」「Cost Efficiencies(費用と効率)」「Benefit by Cost(便益と費用)」などのように表しますが、日本語では「コストパフォーマンス」と呼ばれることがあります。
費用対効果とコストパフォーマンスは、費用(コスト)に対する効果(パフォーマンス)を表す言葉として似ていますが、用途が異なります。
費用対効果は、企業が使うことが多いビジネス用語です。一方、コストパフォーマンスは、顧客や消費者の視点で用いることが多く、「価格に見合う商品かどうか」を評価する際に使います。コストパフォーマンスは「コスパ」と略され、「コスパが良い」「コスパが悪い」と言うこともあります。
費用対効果がなぜ重要か
企業の健全な経営と利益の継続的な確保のために、費用対効果の測定は欠かせません。ここでは、費用対効果の重要性について見ていきましょう。
経営判断の指針となる
費用対効果は数値データで示されるため、利益の出る構造を客観的に検証できます。他の施策や商品などと容易に比較ができ、投資や施策、プロジェクトなどを選択する際に役立ちます。事実に基づく分析のため、主観的な意見や感情に左右されず、合理的な経営判断の指針となるでしょう。
事業や施策の成果を判断できる
費用対効果の評価は、事業や施策の成果を判断する重要な手段です。例えば、以下の施策Aと施策Bのケースでは、売上が高い施策はBですが、費用対効果が優れている施策はAとなります。
- 施策A:売上200万円-経費100万円=純利益100万円
- 施策B:売上250万円-経費200万円=純利益50万円
費用 と利益の理解が深まると、費用対効果の高い商品やサービスの開発を目指せるようになるでしょう。商品の販売だけではなく、サービスの開発、マーケティング戦略など、費用対効果はさまざまな場面で使えます。
また、教育プログラム などにおいても、効果測定が用いられます。人材育成の分野では、中・長期的に費用対効果を測定し、投資としての有効性を判断できます。
費用対効果の指標となる5つの専門用語
費用対効果を考える際、施策内容や費用の対象により、さまざまな指標があります。ここでは、費用対効果と合わせて理解を深めたい以下の5つの用語について解説します。
- ROI(費用対効果)
- ROAS(広告費用対効果)
- CPA(顧客獲得単価)
- CPO(注文獲得単価)
- CPR(レスポンス獲得単価)
ROI(費用対効果)
※読み方:アールオーアイ/ロイ、Return on investmentの略
ROIは投資費用から、どのくらい利益や効果が得られたのかを表し、「投下資本利益率」や「投資利益率」とも呼ばれます。
算出方法は以下の通りです。
利益÷費用(投資金額)×100=ROI(%)
ROIの数値が高いほど費用対効果が良く、利益率が高いことが分かります。ROIは金額ではなくパーセンテージで示されるため、事業の大きさに関わらず、効果を比較しやすい特徴があります。
ROAS(広告費用対効果)
※読み方:ロアス、Return on Advertising Spendの略
ROASは広告の費用対効果を意味し、以下の通り、広告費に対する売上から算出します。
広告による売上÷広告費用×100=ROAS(%)
ROASは、デジタルマーケティングなどの分野で活用されることが多い指標で、数値が高いほど、広告効果が高いと評価されます。複数の媒体に広告を出した場合は、媒体ごとの効果を比較する際にも役立ちます。
ただし、ROASは売上に対する指数のため、高くても利益が出ているかどうかは判断できません。的確な分析のためには、ROASだけではなくROIやCLV(顧客生涯価値)など、他の指標や要素を組み合わせて検証する必要があります。
CPA(顧客獲得単価)
※読み方:シーピーエー、Cost Per ActionあるいはCost Per Acquisitionの略
CPAとは、1件の成果や顧客獲得にかかった費用のことです。成果とは、購入、資料請求、問い合わせなど、その施策が顧客に求めるアクション(コンバージョン)を指します。
CPO(注文獲得単価)
※読み方:シーピーオー、Cost per orderの略
CPOは1件の注文を獲得するためにかかった費用を指します。前述したCPAは売上に関わらないこともありますが、CPOは直接売り上げに関わる指標です。
CPOの計算方法は以下の通りです。
広告費÷注文件数=CPO(円)
CPOは低いほど効率が良いと評価されます。広告費をかけて、受注を増やすことは可能ですが、広告費に対して売上が適切でない場合、経営を圧迫する可能性があります。CPOは売上と広告費のバランスを見極める、重要な要素です。
CPR(レスポンス獲得単価)
※読み方:シーピーアール、Cost Per Responseの略
CPRは1件のレスポンスを獲得するためにかかった費用を示します。レスポンスとは顧客の反応のことで、無料サンプルの請求、無料お試し期間の利用、メールアドレスの登録、問い合わせ数などを指します。
CPRの計算方法は以下の通りです。
広告費÷レスポンス数=CPR(円)
CPRの数値は低いほど、効果的な広告を行っていると評価できます。化粧品通販の無料サンプルや、サブスクリプションサービスの無料お試し期間など、購入や契約の前段階の効果測定に用いられます。CPRが良くても、CPOが悪くては意味がありません。CPRはCPOとセットで分析するとよいでしょう。
費用対効果を向上させる方法
費用対効果が予想より低い場合は、対策を練る必要があります。費用(コスト)を削減することで、費用対効果の向上が見込めます。ここでは、コスト削減につながる4つの方法を解説します。
生産性を向上する
生産性向上のためには、業務の洗い出しが欠かせません。業務フローをチェックし、重複している業務や、現在は必要のない業務などを見直しましょう。会議時間の短縮や社内資料の廃止なども、有効です。
その過程で、業務の標準化 を進める必要もあります。ベテラン社員が持つノウハウや経験に基づく知識など、特定の人にしか分からないことを、誰もが分かるよう整備しましょう。
組織だけでなく、個人の生産性 も重要です。長時間労働が評価につながらない制度の導入や、タイムマネジメント研修などは、個人の生産性向上に役立ちます。生産性向上により、業績がアップすれば、必然的に費用対効果も高くなるでしょう。
ツールやシステムを導入する
アナログな管理や手作業での入力などは、デジタル化や自動化ツールを導入することで、業務効率を改善できます。スケジュール管理やタスク管理に専用のツールを導入することは、作業時間の短縮だけでなく、チーム内の共有やミス防止などにも役立ちます。
また、顧客管理や顧客のサポートには、顧客管理システムを導入することで、顧客情報を一元管理できます。ツールやシステムの導入は、費用対効果を上げるだけでなく、業務の精度向上にもつながるでしょう。
アウトソーシングを利用する
アウトソーシングを利用することも、一つの方法です。研修や広告運用、システム管理など専門知識が必要な業務を、外部に委託することで、固定費の削減につながります。社内リソースを本業につぎ込むことができるため、本来やるべき業務に集中できるでしょう。
価格設定を見直す
生産性を上げても費用対効果が向上しない場合は、価格設定を見直し、必要があれば改定します。
ただ、値上げに踏み切る場合は、慎重な対応が必要です。顧客が納得できる要素がないと、購買につながらず、顧客離れのリスクもあります。デザインのリニューアルや懸賞の実施、アフターサービス内容の見直しなど、付加価値を付けたり、やむを得ない理由がある場合は示したりする必要があるでしょう。