コアコンピタンスとは?他社に勝つ自社の強みの見つけ方
コアコンピタンスとは、特定の技術や特徴などの「自社の強み」を意味する概念です。ニーズが多様化し変化も激しいVUCA時代、コアコンピタンスを軸とした戦略や経営が欠かせません。コアコンピタンスの意味やメリット、コアコンピタンスを見つける方法などを分かりやすく解説します。
コアコンピタンスとは? 意味と企業の事例
「コアコンピタンス(Core competence)」とは、日本語に直訳すれば「核となる能力」となります。具体的にどのような能力なのか、その意味や概念の特徴と、日本企業におけるコアコンピタンスの事例を最初に見ていきましょう。
コアコンピタンスの意味と特徴
コアコンピタンスは、競合他社よりも優位性がある中核的な技術やノウハウ、事業プロセスなどを意味します。製造業においては、他社が真似できないような技術や生産体制がコアコンピタンスになり得ます。
コアコンピタンスの概念は、G.ハメルとC.K.プラハラードの著書『コア・コンピタンス経営』(日本経済新聞出版社、1995年)によって広められました。その定義として、以下3つの特徴があげられています。
- 顧客に何らかの利益をもたらす自社能力であること
- 競合相手に真似されにくい自社能力であること
- 複数の商品・市場に推進できる自社能力であること
日本企業における事例
コアコンピタンスの事例としてよく紹介される日本企業が、ソニー株式会社や本田技研工業株式会社です。
ソニーのコアコンピタンスは小型化技術。精密機械を手がけてきた同社が製造したポータブルオーディオプレイヤー「ウォークマン」は、1979年に発売して以来、高い人気を誇るシリーズとなっています。小さく、そして高品質な製品を製造する確かな技術は、オーディオ機器以外の多様な製品・サービスでも活用されています。
本田技研工業のコアコンピタンスは、エンジン技術です。エンジンといえば自動車、と考えるかもしれませんが、本田技研工業では他に芝刈り機、除雪機、オートバイなどにもエンジン技術を活用してきました。しかし、2021年には気候変動問題を受けて「脱エンジン宣言」をしたことが話題に。同社の方向転換は、時代や状況の変化に合わせてコアコンピタンスの大胆な変更・更新を行った事例としても、非常に重要なものです。
コアコンピタンスとケイパビリティの違い
「自社の強み」として知られる概念には、コアコンピタンスの他に「ケイパビリティ(Capability)」があります。
両者の違いは、コアコンピタンスがバリューチェーンの特定の機能に関する強みであるのに対して、ケイパビリティはバリューチェーン全体を見たときの組織的な強みを意味する点です。
エンジンの例なら、優れたエンジンを開発・製造する技術がコアコンピタンス、それを可能とする品質管理体制や生産効率がケイパビリティであるといえるでしょう。
コアコンピタンスと同様、ケイパビリティも企業によってさまざまな事例が見られます。
コアコンピタンス経営の重要性とメリット
コアコンピタンスを軸とした戦略や経営は「コアコンピタンス戦略」「コアコンピタンス経営」と呼ばれています。なぜビジネスにおいて、コアコンピタンスがこれほど注目されているのでしょうか。
コアコンピタンス経営とは
まず、「コアコンピタンス経営」について概要を押さえておきましょう。
コアコンピタンス経営とは、市場における競争優位性を持つ自社の強みを軸として行う経営のことです。コアコンピタンスの強化につながる戦略や施策にリソースを多く投じます。
コアコンピタンス経営の具体的な戦略の一つに、自社の強みが市場においてどのような立ち位置にあるかを分析し、それをもとに事業活動を進める方法があります。「アウトサイド・イン戦略」と呼ばれるものです。外部環境の状況や社会的ニーズに応じて自社の強みを打ち出したり事業内容を決定したりします。
一方で、近年のような外部環境が激しく変化するVUCA時代では、アウトサイド・イン戦略だけではトレンドに大きく影響され、事業活動の安定に支障をきたす恐れもあります。そこで、コアコンピタンスを出発点として社会的ニーズに対応するという、内から外へ視点を向けるアプローチも考慮しなければなりません。
社会が抱える課題と自社のコアコンピタンスを比べつつ、どのような点を強化すれば競争優位性が高まるかを考える必要があります。
VUCA時代におけるメリット
VUCA時代にコアコンピタンス経営が持つメリットは、不安定なビジネス環境の中で明確なビジョンを持ち、時代のニーズに合ったアプローチが可能になることです。
先述したコアコンピタンスの定義には、競合相手に真似されにくい自社能力であることと、複数の商品・市場に推進できる自社能力であることが含まれていました。すなわち、時代のニーズに応じて多角的に展開できる自社能力がコアコンピタンスであり、それを軸とした経営がコアコンピタンス経営なのです。
自社の強みが明確であれば、他社との連携や共創もしやすくなるでしょう。
自社の強みを見つける5つのポイントと3つのステップ
自社のコアコンピタンスを見つけるには、自社の強みと思われることを書き出し、それらを5つのポイントから分析しましょう。本項では、はじめに分析の5つのポイントを確認してから、コアコンピタンス決定の手順を解説します。
コアコンピタンスを探す5つのポイント
コアコンピタンスを見出すために必要なポイントとして、以下の5つがあります。
模倣可能性(Imitability) | 競合他社が簡単には真似できない |
移動可能性(Transferability) | 1種類の製品や分野だけでなく、多くの製品や他の分野に応用できる、幅広い展開ができる |
代替可能性(Substitutability) | 他社の製品などに置き換えられない |
希少性(Scarcity) | 市場において希少価値がある |
耐久性(Durability | 長期間にわたって競争優位性を保てる |
こうした条件を満たす強みこそ、自社のコアコンピタンスとして有効に機能するでしょう。
コアコンピタンス決定への3つのステップ
自社のコアコンピタンスを明確化するには、大きく分けて3つのステップがあります。
- 自社の強みを列挙する
- 列挙した強みを評価する
- 真似されにくく長期にわたって活用できるものを選ぶ
第1のステップでは、自社の強みと思われる技術や特徴を思いつく限り書き出していきます。経営層や開発部門、営業部門の社員だけでなく、さまざまな部門の社員に協力してもらいましょう。カスタマーサポートを担う社員なら、自社製品・サービスのどこに顧客が満足しているか、あるいは不満を持っているか示してくれます。競合他社の技術や特徴などと比較しながら進めることも重要です。ブレインストーミングのように、とにかくどんどん出していくことを意識しましょう。
第2のステップでは、第1ステップで列挙したそれぞれの強みを評価します。このときに、先ほどの「コアコンピタンスを探す5つのポイント」を活用します。それぞれの強みに対して5つのポイントから点数をつけていきましょう。比較対象として競合他社の類似項目も点数化しておくと基準が明確になります。
最後のステップでは、強みを絞り込んで自社のコアコンピタンスを決定します。点数の高いものを優先することになりますが、長期間にわたって優位性を維持し、活用できる技術や特徴であるという点も重視してください。これには、従来とは異なる市場に展開できるかどうかという視点も含まれます。
なお、時代の変化によってコアコンピタンスの大胆な変更や更新が求められることもあります。特に技術面は日進月歩で発展しており、市場や競合の動向を考慮した分析・評価が欠かせません。一度コアコンピタンスを決定したあとも、それが現在あるいは将来も有効であるのか、定期的にチェックしていきましょう。
自社の強みで市場獲得・拡大へ
自社の強みにリソースを投じるコアコンピタンス経営は、時代の変化の中で柔軟に対応し、多様化するニーズをしっかり捉えて顧客に価値を提供し続けるために不可欠な視点です。コアコンピタンスを検討する際は、経営層だけで行うよりも、社内のさまざまな部門の社員や顧客の声も大切にしましょう。視野を広げることで、思わぬ強みが浮かび上がるかもしれません。
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