育休とは|期間や条件、育児休業と育児休暇の違い

published公開日:2024.05.30
育休とは|期間や条件、育児休業と育児休暇の違い
目次

育休とは、従業員が育児のために取得する休業および休暇のことです。2022年には男性の育休取得を推進する「産後パパ育休」が制度化されるなど、育休に関する法改正が進んでいます。

本コラムでは、育児休業の概要や育児休暇との違い、育児休暇のメリットや導入のステップなどを解説します。

育休とは

育休とは、育児休業や育児休暇の略称であり、働く親が子育てと仕事を両立するための制度です。働き方改革や女性の社会進出が推進される中、育休制度も大きく変化しています。ここでは、育児・介護休業法に定められている公的な制度である育児休業について解説します。育児休暇との違いは後述します。

育児休業の対象者

育児休業の対象者は以下の条件を満たす人です。

  • 1歳未満の子供を養育する人
  • 継続して雇用されている人
  • 子供が1歳6カ月になる日までに、労働契約があることが明らかな人

育児休業は、男女を問わず取得できます。正社員だけでなく、一定の条件を満たす非正規社員も対象です。派遣社員、パート・アルバイト、契約社員など、雇用形態を問いません。

育児休業の申請があった場合、企業は原則として拒めません。条件を確認したうえで、取得の手続きを進めましょう。

*参考:厚生労働省|育児・介護休業法のあらまし

育児休業給付金

育児休業中は給与が支給されないことが多いですが、以下の要件を満たす場合は育児休業給付金が支給されます。

  • 雇用保険に加入している
  • 育児休業開始前の2年間に11日以勤務した月が12カ月以上ある
  • 支給単位期間(1カ月)に得た給与が休業開始前の1カ月の賃金の8割未満である
  • 支給単位期間(1カ月)に就業した日が10日以下、10日を超える場合は80時間以下である
  • 有期雇用社員の場合は、子供が1歳6カ月になっても労働契約の継続が明らかである

給付額は以下の通りです。

  • 育児休業開始日から180日(半年)まで:休業開始時の賃金日額×支給日数×67%
  • 育児休業開始日から181日以降:休業開始時の賃金日額×支給日数×50%

育児休業給付金は非課税のため、所得税がかからず、翌年度の住民税を決める際の計算にも含まれません。社会保険料も免除ですが、保険証は育児休業前と同様に使用可能です。年金も支払っていたものとみなされます。

*参考:厚生労働省|「育児休業給付金が引き上げられました」

育児休業の期間

育児休業の期間は、原則として子供が1歳になるまで(誕生日の前日まで)です。ただし、子供が1歳を過ぎても保育園に入れないなど、仕事を続けるために休業が特に必要だと認められる場合は、1歳6カ月(または2歳)まで育児休業期間を延長できます。

女性の場合、出産後8週間の産後休業(産休)が終了してから育児休業を取得できます。一方、男性は子供が生まれた日(出産予定日)から取得可能です。

また、男性は出生時育児休業(通称、産後パパ育休)も取得できます。産後パパ育休(出生時育児休業)については次の章で詳しく解説します。

さらに、これまで育児休業は連続して取得する必要がありましたが、2022年10月からは2回に分割して取得可能となりました。

育児休業運用の注意点

育児休業を取得する場合は、原則として開始1カ月前までに雇用主に申し出る必要があります。

ただし、実際のところ1カ月で交代人員の充当や引き継ぎは難しいため、企業は妊娠中(または配偶者が妊娠中)の社員に対して、できるだけ早めに育児休業取得の意思を確認しましょう。休業中の連絡方法や復帰プラン、分割取得の可能性についてもヒアリングが必要です。

育休前から従業員としっかりとコミュニケーションを取ることで、スムーズな復帰につながるでしょう。

出生時育児休業(産後パパ育休)とは

出生時育児休業(通称、産後パパ育休)は2022年10月から運用開始となりました。子供が生まれてから8週間以内に、2回に分けて4週間まで休業できます。

女性は産後8週間に産後休業(産休)を取得するため、通称、産後パパ育休とされています。ただし、要件に性別の区別はなく、特別養子縁組の際などには女性でも取得可能です。

*参考:厚生労働省|産後パパ育休制度(出生時育児休業制度)

パパ・ママ育休プラスとは?

パパ・ママ育休プラスは、父母ともに育児休業を取得する際に、以下の要件を満たす場合、子供が1歳2カ月になるまで育児休業を延長できる制度です。育休の最大取得日数は変わらず、終了日を延長できます。

<要件>

  • 子供が1歳になるまでに配偶者が育児休業を取得している
  • 本人の育児休業開始予定日が、子供の1歳の誕生日より前である
  • 本人の育児休業開始予定日は、配偶者が取得している育児休業の初日以降である

*参考:厚生労働省|「両親で育児休業を取得しましょう!」

育児休業と育児休暇の違い

育児休暇(育児目的休暇)とは、配偶者の出産に付き添うための休暇や子供の行事参加のための休暇などを指します。法律に基づく育児休業とは異なり、育児休暇は企業独自の制度です。

導入は事業者の判断に委ねられていますが、育児・介護休業法第24条においては、育児休暇の設置は努力義務とされています。男性の育児目的休暇を促進するため、出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)も用意されています。

厚生労働省の調査によると、2016年度時点で「育児休業以外の育児参加のための休暇制度」を設けている事業所割合は、全体の17.1%という結果でした。傾向としては、事業所規模が大きいほど育児休暇の導入割合が高く、500名以上の規模では42.5%の事業所が「制度あり」と回答しています。

*参考:厚生労働省|事業所調査 結果概要

育児休暇制度を導入する2つのメリット

育児休暇は働く親を支援する制度ですが、企業にとっても様々なメリットがあります。育休制度を導入することで、長期的に人材を確保し、定着させることができます。ここでは、企業が育休制度を取り入れることで得られる、主な2つのメリットをご紹介します。

従業員の定着率向上

仕事と育児の両立に不安を感じる人は少なくありません。企業独自の育児休暇や育児サポート制度を設け、従業員が安心して出産や育児に臨める環境を作ることは、社員の定着率向上に役立ちます。

人材の定着により、企業は技術やノウハウを蓄積できるだけでなく、新たな人材を雇用・育成するための人員・時間・費用などの負担を軽減することができます。長期的に安心して働ける職場であることを求職者にアピールできるため、人材確保にも良い影響が期待できるでしょう。

女性の活躍推進

近年、男性の育児休業取得率は上昇傾向にありますが、2022(令和4年度)の数値を見ると、女性80.2%、男性17.13%と、依然として育児への参加は女性に偏っています。

出産後も女性が仕事を続けられるよう、法律で定められた育児休業に加えて、企業独自の育児休暇や育児サポート制度を導入することは効果的です。キャリア継続をサポートすることで、女性の管理職や役員への登用の道も増えるでしょう。

定着率と同様に、女性の活躍は採用活動におけるアピールポイントといえます。優秀な人材を引き付け、長期的な好循環を生み出すことにつながるでしょう。

*参考:厚生労働省|「令和4年度雇用均等基本調査」結果

育児休暇・育児休業導入の4つのステップ

では、育児休暇や育児休業を制度として導入する際、実際にどのように進める必要があるでしょう。最後に、育休制度を導入するための4つのステップを詳しく解説します。育休制度の導入と効果的な運用を通じて、従業員が仕事と育児を両立できる環境の実現を目指しましょう。

ステップ1:法律の確認と社内規定の整備

初めに、育児休業制度については妊娠・出産・育児に関連する労働法である「労働基準法」「育児・介護休業法」「男女雇用機会均等法」を確認し、定められた措置や制度を把握しましょう。最新の内容が自社の規定・制度に反映されていない場合は、早急に整備が必要です。制度の対象は正社員のみではなく、条件を満たす契約社員やアルバイト・パート従業員も含まれるため、適用条件を明確にすることが大切です。

ステップ2:自社がカバーする範囲を検討

次は、法で定められた基準を上回り、育児休暇制度で自社がカバーしたい範囲について検討します。例えば、配偶者の出産時の立ち合いや子供の行事参加のための休暇取得などが考えられます。

自社従業員のニーズが分からない場合、まずは運用で柔軟に対応し、要望を集約したうえで制度化する方法もあります。必要性の高い制度から整備しましょう。

また、実効性のある制度にするため、運用体制の整備も欠かせません。従業員が気軽に相談できる窓口の設置や相談担当者の配置など、サポート体制の強化が求められます。

ステップ3:就業規則の変更と制度の周知

独自の育児休暇制度を導入する際は、就業規則に反映して労働基準監督署に変更を届け出ます。同時に、制度の社内周知を徹底することが重要です。制度の内容を社内掲示板やポータルサイトなどで共有することで、「育児休暇を取りたかったのに知らなかった」といった状況を防ぎ、社員が育児を理由とした不利益な扱いを受けることを防止できます。

また、育児休暇制度は対象者だけでなく、全従業員の理解や協力が不可欠です。制度導入の背景や意義を説明し、職場全体で取り組みましょう。管理職は法令や規則を正しく把握し、従業員が円滑に育休を取得できるようサポートすることが求められます。

制度導入後も、定期的な説明会の開催や新入社員研修で説明の場を設けるなど、継続的に周知する必要があります。育児休暇制度を企業文化として根付かせ、効果的に運用しましょう。

ステップ4:ロールモデル人材の事例周知

育児休暇制度の定着には、社内のロールモデル人材の事例を社内に周知することが効果的です。育児休暇取得の事例がない環境の場合、従業員が休暇を取得しにくいと感じている可能性があります。休暇取得後に復職し、活躍している従業員の事例を周知することで、取得を考えている従業員に良い影響を与えられるでしょう。

また、ホームページなどに掲載し、社外からも閲覧できれば、採用活動にも効果的です。育児休暇取得者を周囲が後押しし、ロールモデルを作ることは、休暇取得を促進するだけでなく、企業ブランディングにもつながります。積極的な育児支援は、従業員と企業の両方のメリットとなるでしょう。