無断欠勤の原因とは?会社の対応と懲戒処分の注意点

published公開日:2024.03.13
無断欠勤の原因とは?会社の対応と懲戒処分の注意点
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部下が無断欠勤をしていませんか?無断欠勤とは、従業員が事前の許可なく通常の勤務日に出社しない行為や、正当な理由なく出勤時間を守らない行為を指します。無断欠勤は業務に悪影響を与え、ときには取引先への迷惑にもなります。

本コラムでは、無断欠勤の定義やその悪影響、企業がとるべき対策や注意点について解説。懲戒処分をする前に考慮したい無断欠勤の主な理由もご紹介します。

無断欠勤とは

無断欠勤とは、従業員が、事前の許可なく通常の勤務日に出社をしない、または正当な理由なく定められた時刻になっても出社・勤務開始をしない行為を意味します。法令などによる明確な定義はありません。

無断欠勤は通常欠勤や有給休暇、傷病休暇とは異なり、事前の連絡や許可を得ずに行われることが多く、労働契約や会社の規則に反する行為とされることがほとんど。そのため、就業規則で無断欠勤の定義を明示したり、無断欠勤が繰り返された場合の懲戒処分について規定していたりする会社が多く見られます。

無断欠勤による悪影響

従業員の無断欠勤は、予定外の欠員が突然発生する状況です。そのため、業務の遅れや人間関係の悪化など、悪影響が生じる可能性があります。

生産性が低下して業務に遅れが出る

無断欠勤による欠員は、職場にとって突然発生する予定外の欠員です。無断欠勤した従業員が担当するはずだった業務を遂行できませんので、それを代わりに行うメンバーの確保や業務の割り振りを行わなければなりません。

こうした予定外の欠員と対応は、他の従業員の業務を圧迫し、プロジェクトやタスクの遅延を招く恐れがあります。業務の引き継ぎも行われていませんので、代わりに担当することになったメンバーは「どこまで進んでいるのか」「何をどこからやればいいのか」などの確認から始めなければなりません。その結果、無断欠勤した従業員が自分で行う以上のコストをかけて業務を行わざるを得なくなります。

こうしたコストの増大、他のメンバーへの予定外の負担は、全体の生産性低下を招くでしょう。ひいては、企業全体の収益にも悪影響を及ぼすかもしれません。

取引先や顧客の信用を損なう

このような突発的な対応に他の従業員の労力が割かれることは、納品が遅れる、取引先との打ち合わせをリスケするなど、大きな機会損失にもつながりかねません。

特に情報共有がしっかり行われないまま無断欠勤が続けば、取引先や顧客は「伝えていたはずのことが伝わっていない」と感じたり、「約束通り予定を空けておいたのに、無視された」と感じたりしてしまうでしょう。そうなれば、組織全体の信用をも失う恐れがあります。

職場の人間関係・雰囲気が悪化する

無断欠勤は、職場の同僚や上司との信頼関係を損なう可能性が高い行為でもあります。

会社の業務は、基本的に他のメンバーと連携・協力しながら進める場面が多いものです。それにもかかわらず、自分の都合だけで事前連絡もなく突然欠勤するメンバーがいれば、他のメンバーはスケジュールの再調整を行わなければなりません。

こうした事態が繰り返し発生すれば、無断欠勤を繰り返すメンバーに対する信頼性は大きく低下します。安心して業務を任せることが難しくなり、円滑なコミュニケーションや情報共有を妨げる要因にもなるでしょう。他のメンバーの不満やストレスが高まり、職場の雰囲気自体が悪化するリスクもあります。

無断欠勤の主な理由5つ

悪影響を及ぼすことが多い無断欠勤ですが、その理由は従業員の身勝手と思えるものもあれば、やむを得ないと考えられるものもあります。やむを得ない理由の場合は、無断欠勤を理由とする懲戒処分を行わなかったり、そもそも無断欠勤の扱いにはしなかったりするケースも。適切な対応を行うためにも、主な理由をチェックしておきましょう。

突然の事故・事件・病気・災害

それまで真面目に勤務してきた従業員が、突然、長期の無断欠勤をするようになった場合、やむを得ない理由によって欠勤の連絡ができない状態である可能性があります。

代表的な例は、事故・事件に巻き込まれて入院している、あるいは亡くなったというケースです。また、病気で倒れて入院している、被災して通信手段がないといったケースもあります。

人間関係の悩みやハラスメント

職場内で人間関係に課題が見られる場合も、無断欠勤が発生するリスクを高めます。

典型的には、同僚や上司との間に生じる対立やハラスメント、いじめです。「何となく職場になじめない」という孤独感もあれば、明確に「嫌がらせを受けている」「人権を侵害されている」などの大きな問題が発生している可能性もあります。

このような状況は従業員が仕事場を避ける気持ちを強め、「職場に行こうとしても行けない」「欠勤連絡をしようとしても手が止まってしまう」といった事態を招きかねません。結果として、無断欠勤につながってしまいます。

ハラスメントやいじめが考えられる場合は、無断欠勤をしている従業員のケアを行うとともに、その上司などにヒアリングを行い、原因の特定と対応を行わなければなりません。

精神疾患やメンタルヘルスの問題

人間関係の大きな悩みやハラスメントがない場合でも、精神疾患の発症や悪化、メンタルヘルスの問題が発生する場合があります。主な要因としては、長期にわたる仕事のストレスや過度なプレッシャーなどが考えられるでしょう。

特に、完璧主義が強い傾向にある従業員や、過度な競争を強いられる環境にある従業員の場合、本人も自覚しないままストレスを抱え込み、「気がつけば、動けなくなっていた」「悪い想定やイメージが頭から離れない」という状況が生じ得ます。

精神疾患やメンタルヘルスの問題は、適応障害やうつ病などに見られる気分の落ち込み、睡眠障害、疲れやすさなども引き起こし、生活リズムが崩れ、コミュニケーション自体が困難なこともあります。

こうした事情がある従業員のケースでは、まず本人にしっかり療養してもらうことを伝えましょう。もし休暇制度を使えそうであれば、その手続きを説明するとともに、職場環境や業務の進め方などに改善点がないかもチェックしてください。

新入社員(新卒)のリアリティショック

精神的な問題の中で、特に新入社員の場合に考慮すべき要因が「リアリティショック」です。

リアリティショックとは、新入社員や新たに組織に参加したメンバーが、理想と現実のギャップに衝撃を受けること。

  • それまでに抱いていた期待やイメージと実際の状況が大きく異なっていた
  • 同期・同僚の仕事内容と自分の担当内容に大きな差があった
  • 他のメンバーとの関係がうまくいかない

などが原因となって無視できないほどのギャップを感じると、リアリティショックに悩まされることがあります。

リアリティショックによる影響は、焦りや不安、モチベーションの低下などに及びます。心身が疲れやすくなり、欠勤や離職につながることも。本人が悩んでいる状況を理解し、暗黙知や職場における力関係、求められる役割などを明確にして、その習得をサポートしていく必要があります。

基本的なビジネススキルや責任感の不足

基本的なビジネススキルや責任感の不足も、無断欠勤の要因になり得ます。

基本的なビジネススキルに関しては、欠勤に関する手続きを知らなかったり、そもそも会社の連絡先をメモしていなかったりする例があります。会社が規定する手続き方法を無視して、正式な連絡手段として認められていない方法で「連絡をしたつもり」になっているケースもあるかもしれません。

また、望んでいた配属先での仕事ができないことを理由に、勝手に欠勤を始めてしまう場合もあります。「近いうちに退職するつもり」と考えている場合、会社での自分の評価に無頓着になり、連絡を怠ってしまう状態です。

二日酔いや寝坊により、「起きたら始業時刻を過ぎていた」というケースもあるでしょう。そうした場合、欠勤理由を言い出しにくく、結果的に無断で休んでしまうことがあります。

いずれの場合も、会社で仕事をするために必要な手続きや社会人としてのマナー、自己管理能力の不足が原因といえます。

特に、「無断欠勤を続けて職場からフェードアウトしてしまおう」「自分が一人休んだところで、業務に支障はない」という姿勢が見られる場合は、仕事に対する責任感が問われる事態です。

当該従業員が担当する業務や役割、会社全体における位置づけを再認識してもらうとともに、社会人としての自己管理能力やビジネスマナーなど、基本スキルの習得を支援しましょう。

無断欠勤に対する会社の対応

無断欠勤に対してとるべき会社側の対応は、早期の安否確認と従業員の意思確認などです。突発的な事態で困っている従業員を放置しないよう、一般的な初期対応や無断欠勤を繰り返す従業員への対応を確認しましょう。

初期対応

無断欠勤が発生した際に会社側がとるべき一般的な初期対応は、安否確認と無断欠勤につながった問題・原因の特定、事情に応じた注意・指導です。

安否確認

無断欠勤が判明して最初に行うべき対応は、無断欠勤をした従業員の安否確認です。

たとえ勤務態度に課題が見られる従業員であっても、事故や急病、やむを得ない事情で連絡をとれずにいる可能性があるため、一方的に「サボった」と決めつけてはいけません。従業員の健康と安全を第一に考えましょう。従業員が緊急事態に陥っていないか、事実確認を行うことが重要です。

具体的な連絡手段としては、電話やメールがあるでしょう。正式な連絡手段としてチャットやメッセージアプリ等の活用が認められている場合は、それらを使っても構いません。1回だけでなく、事情を把握できるまで何回か連絡を試みてください。

もし本人と連絡が取れないようであれば、従業員の親族など「緊急連絡先」に連絡しましょう。

本人にも親族にも連絡が取れない場合や、本人の状況を実際に確認する必要がある場合は、会社に届け出されている自宅住所を訪問する場合もあります。

問題・原因の特定

本人や親族と連絡が取れたら、無断欠勤の理由を特定しましょう。このとき、「無断欠勤をするなんて非常識だ」と感情的に怒るのではなく、「やむを得ない理由があったのかもしれない」という視点で事情を聞くことが重要です。同時に、人には話せないプライベートな事情があることも考慮し、会社側の対応として必要な情報だけを尋ねるようにしてください。

もし災害や病気、事故などで規定の手続きによる連絡ができなかった場合は、他に連絡しやすい方法を検討することで、再発防止につなげられます。ハラスメントやメンタルヘルスの問題が理由なら、カウンセリングやメンタルヘルスの専門家によるサポート、職場環境改善や人間関係を考慮した業務や配属の調整も選択肢のひとつです。精神疾患の症状が強い場合は、休職も考えられます。

寝坊や生活リズムの乱れ、仕事へのモチベーション低下が原因となっている場合でも、社会人としての基本的なスキルやマナーの習得、本人が希望するキャリアパスを考慮した仕事の仕方など、今後取り組むべき課題が見えてくるかもしれません。

従業員がなぜ無断欠勤したのかを明確にし、問題の根本を理解するように努めることが、再発防止策としての第一歩です。

注意・指導

問題や原因の特定を行ったあとは、従業員の職場復帰を支援します。

事故や病気、メンタルヘルスの問題がある場合は、本人の心身の回復を優先し、休職の検討が必要です。本人の心身に問題がなくても、被災して仕事ができない状態の場合は、会社と当該従業員でよく話し合った上で、必要に応じて休職の措置を講じましょう。

職場環境や人間関係に問題がある場合は、具体的にどのような点が問題になっているかを分析し、効果的な措置を講じます。

以上の理由に該当せず、本人の心身にも特に問題がない場合は、ビジネスマナーや基本的な自己管理スキルなどについて、注意・指導を行うとよいでしょう。出勤の義務、正式な欠勤の連絡手段などを再確認し、本人と話し合いながら再発防止策を講じます。

困りごとがある際に相談できるよう、相談しやすい環境づくりとコミュニケーション強化も意識しましょう。

懲戒処分

本人と連絡が取れたあとも正当な理由なく無断欠勤が続き、注意・指導を経ても改善が見られない場合は、懲戒処分を検討することになります。

懲戒処分には、戒告やけん責などの軽いものから、出勤停止や降格などの比較的重いものもあり、さらに重い処分として諭旨解雇・諭旨退職・懲戒解雇があります。

無断欠勤を理由とする懲戒処分としては、戒告・けん責・出勤停止・降格、そして諭旨解雇・諭旨退職・懲戒解雇が考えられるでしょう。減給については、「そもそも当該従業員が出勤していないため、会社側は賃金を支払う必要がない」という事情を考えると、懲戒という点であまり効果的ではないかもしれません。

無断欠勤に対する懲戒処分の主な種類や概要は、下表の通りです。

【主な懲戒処分の種類と概要】(無断欠勤を理由とする場合)

懲戒処分の種類 概要
戒告 ・今後の勤務態度について戒める
・始末書等の提出は求めない
けん責 ・今後の勤務態度について戒める
・始末書や顛末書を提出させる
出勤停止 ・当該従業員の就労を一定期間禁止する
・原則として出勤停止期間中は賃金を支払う必要がない
・就業規則に定めがある場合は、出勤停止期間中も賃金を支払う
降格・降職 ・当該従業員の職能資格や等級、職位を引き下げる
・職能資格や等級、職位の引き下げにともない、給与が減額される
諭旨解雇 ・懲戒解雇に相当する事由があり、本人が反省している場合に行われる懲戒処分としての解雇
・退職金がある場合は、自己都合退職の場合に準じた金額、または一部を減額した金額を支払う
諭旨退職 ・懲戒処分として、当該従業員に退職願の提出を勧告し、退職させる
・応じない場合は懲戒解雇を行う
・退職金がある場合は、諭旨解雇の場合と同様に支払う
懲戒解雇 ・最も重い懲戒処分で、企業秩序の維持に重大な支障を及ぼした場合に行われる解雇
・解雇予告や解雇予告手当の支払いなしに、即時に行われることもある
・退職金がある場合は、退職金の一部のみを支払うか、全額不支給とする
・当該従業員の再就職に大きな影響を与えるため、処分の有効性が厳しく審査される

なお、懲戒処分を行うには、事前に就業規則に懲戒処分について明記し、従業員がその内容を確認できるようにしておかなければなりません。その上で、懲戒処分の理由となる事実の客観的な証拠と、処分の重さが社会通念に照らして妥当であると判断される必要があります。

特に、無断欠勤を続ける従業員に対して、いきなり懲戒解雇を行おうとしても、よほどの事情がない限りは有効性を認められにくいのが実状。懲戒解雇ではなく普通解雇による労働契約の終了を推奨する弁護士の方も見られます。

無断欠勤を理由とする懲戒解雇と注意点

無断欠勤を理由とする懲戒解雇は、非常に重い処分です。その理由となっている事実の認定や会社の対応の仕方、社会通念から見て妥当であることが認められなければ、裁判によって「無効」と判断される可能性があります。やむを得ず懲戒解雇を検討する場合でも、慎重な情報収集と確認、手続きを行いましょう。

懲戒解雇の準備と手順

懲戒解雇に関する主な手順は、以下のようになります。

懲戒解雇理由が正当であることを示す客観的証拠を集める

無断欠勤による懲戒解雇では、当該従業員が正当な理由なく無断欠勤を続けていたことを示す証拠が必要です。加えて、繰り返し注意・指導や他の軽い懲戒処分を行っても、改善されなかったという事実も重要になります。

具体的には、

  • 勤怠の記録
  • 注意・指導の記録
  • 始末書や顛末書等の書類、懲戒処分通知書
  • 業務への影響等に関する同僚や上司へのヒアリング結果

などがあるとよいでしょう。

本人による弁明の機会の設定

懲戒解雇は懲戒処分の中で、最も重い処分となります。そのため、「会社が一方的に判断を通知して終わり」というわけにはいきません。無断欠勤を続けた従業員が弁明できる機会として、面談などを実施しましょう。

無断欠勤の期間やその理由などを本人と確認し、弁明を聞きます。もし反省している様子が見られる場合は、懲戒解雇よりも軽い諭旨解雇や諭旨退職、あるいはそれよりも軽い普通解雇を検討するのもよいでしょう。

弁明を受けても懲戒解雇が相当であると判断される場合は、懲戒解雇処分となること、その理由や給与・退職手当の詳細などを伝えることになるかもしれません。その場合でも、感情的に叱責しないよう、冷静に対応することを心がけましょう。

懲戒解雇通知書の作成

懲戒解雇は口頭で伝えるだけでなく、懲戒解雇通知書を作成し、当該従業員に渡す必要があります。社印を押した原本とコピーを作成しましょう。

懲戒解雇通知書には、解雇の理由・通知日・解雇予定日を明記します。理由の部分では、具体的で明確な事実を記載することが大切です。感情的な表現や不適切な言葉の使用は避けてください。

なお、解雇をするには30日前に予告を行うか、30日分以上の平均賃金である解雇予告手当を支払うことが原則です。これは懲戒解雇も例外ではありません。ただし、労働基準監督署に解雇予告除外認定の申請を行い、認められれば、即日解雇が可能です。

懲戒解雇通知書の交付と受領サイン

当該従業員を別室に呼び、改めて懲戒解雇を行うことを伝えて懲戒解雇通知書を渡しましょう。通知書には、受領したことを示す署名を本人に書いてもらってください。原本は本人が、コピーは会社側が保管します。

懲戒解雇を伝えたあとは、今後の給与の支払いや退職金の支払いについて、明確に説明します。特に最後の給与の支払い日は重要です。通常は、これまでと同様の給与支払い日に支払いますが、本人から別の日の支払いを求められるかもしれません。その場合は、請求日から7日以内に支払わなければならないと定められています(労働基準法第23条)。

もし本人に通知書を手渡しできない場合は、内容証明郵便で本人宛に懲戒解雇通知書などの必要な書面を郵送しましょう。

退職手続きの進行

以降は、退職予定日に向けて、退職に伴う手続きを適切に進めます。

従業員への連絡や対応を行い、手続きを完了させるとともに、それらの記録をしっかりと書面で残しておきましょう。後に裁判になったときの重要な証拠となります。

社内での周知

本人への通知が終わったら、懲戒解雇処分となったことを社内で周知する必要もあります。これには、当該従業員への制裁という目的だけでなく、無断欠勤に対する会社側の姿勢を改めて示し、企業秩序を維持するという目的もあります。

詳しい事情までを知らせる必要はありませんが、正当な理由のない無断欠勤の再発防止策として、処分対象となった理由や関連する就業規則などを明示するとよいでしょう。

注意点

繰り返しになりますが、懲戒解雇を行うには事前に就業規則等にその旨の規定を明記し、従業員に周知しておかなければなりません。

同時に、会社側できちんと勤怠管理・記録を行っていたかどうか、懲戒処分を検討する前に必要な注意・指導を行っていたかどうかなども重要です。従業員の権利を守り、法的要件を守ることが不可欠ですので、あらためて以下4つの注意点を確認しておきましょう。

  • 懲戒解雇に関する法的アドバイスを受けながら進める
  • 公平性を保つ
  • コミュニケーションをとる
  • 文書化して保管する

まず、懲戒解雇に限らず、解雇手続きでは違法にならない決定と手続きが必要です。それには、法令や実務に関する専門知識が欠かせません。労働法の専門家や顧問弁護士などから適切なアドバイスを受けつつ、手続きを進めましょう。

特に、客観的証拠として何が必要か、判断の内容には社会通念上の相当性があるのかといった点は、過去の判例と照らし合わせながら検討しなければなりません。「普段の勤務態度が悪いから、きっとこの無断欠勤もさぼりに違いない」という推測だけでは、懲戒解雇はできないのです。

従業員との日頃のコミュニケーションや教育も重要です。それまで無断欠勤に対して厳しくない対応をしてきたり、無断欠勤者をただ放置してきたりすると、会社側の落ち度とされることがあります。欠勤に関するルールや無断欠勤への会社側の対応を日頃から伝えるとともに、無断欠勤をした従業員には注意・指導を必ず行ってください。

こうした会社側の姿勢を繰り返し示し、ていねいに説明することは、従業員との感情的な対立を最小限に抑えること、そして何よりも無断欠勤の再発防止につながります。

無断欠勤を理由とする注意・指導や懲戒処分に関する文書は、必ず適切に保管しましょう。これらは今後の対策に生かせるデータであり、かつ、懲戒解雇を解雇権濫用であるとして訴えられた際に法的な証拠として重要な文書だからです。

無断欠勤の再発防止対策は?

最後に、改めて無断欠勤の再発防止策を見ていきましょう。就業規則における無断欠勤に関する規定の見直し以外に実施できる主な施策は、従業員の適性の見極めやメンタルヘルスに関する施策です。

採用プロセスでの見極め精度の向上

採用時にできることは、応募者の仕事に対する価値観や働く意欲、労働条件に関して考慮すべき事項などを明確化することです。

仕事の価値観やモチベーション

まずは応募者の志望動機やキャリアプランを確認し、企業との相性や長期的な勤務意欲を見極めます。

入社後に取り組みたいこと、それに関連する知識や過去の実績、経験について深掘りすることで、どのくらい本気なのかを推測することも可能です。

ストレス耐性

応募者のストレス耐性を確認することも、自社の業務との相性や入社後の教育方針の検討に役立ちます。具体的には、実際の業務に近い作業やグループワーク、面接などでやや困難なシナリオを提示し、その対応や反応を観察する方法があります。

いわゆる「圧迫面接」を思い起こす人もいるかもしれませんが、これは応募者にも企業に対する評価にもネガティブな影響を与えますので、おすすめできません。

病気や家庭環境に対する配慮の必要性

応募者には、それぞれの特性や私生活での事情があるものです。持病を持っている人もいれば、家庭環境に配慮が必要な場合もありますし、今後のライフイベントによる働き方の変化が生じる可能性もあるでしょう。

プライバシーに関わる問題ですので何でも聞けるわけではありませんが、会社側で配慮すべき事項があるかどうかを確認することは大切です。勤務時間やリモートワーク等、必要に応じて柔軟な選択肢をとれることも併せて伝えておきましょう。

メンタルヘルスのサポートを充実させる

近年、無断欠勤の理由として、過度なストレスやメンタルヘルスがあげられることが多くなりました。それらの問題に対処し、従業員に対するサポート体制を整えておくことは、無断欠勤の再発防止策として大変有効です。これには、メンタルトレーニング、カウンセリングサービス、柔軟な働き方への対応などがあります。

メンタルトレーニング

従業員が自らメンタルヘルスやストレスマネジメントの重要性に気づき、対処できるようにするため、メンタルトレーニングやメンタルヘルス研修を行いましょう。

トレーニングや研修で扱う内容は、

  • 睡眠の重要性(メンタルヘルスへの影響と良い睡眠のポイント・社会的時差ボケなど)
  • 生活習慣の重要性(睡眠・食事・適度な運動など)
  • 呼吸法によるリラクゼーション(緊張時の呼吸とリラックス時の呼吸の違い・呼吸のコントロールなど)
  • コミュニケーション(言いにくいことを伝える方法)
  • 性別ごとのメンタルヘルスケア(仕事量や内容・家庭生活との両立・PMS・更年期障害など)
  • 中高年労働者のメンタルヘルスケア(定年・役割や収入の変化・体力低下など)
  • テレワークにおけるメンタルヘルスケア(孤独感の原因・孤独感軽減の方法など)

が代表例です。

この他、精神疾患や障害などの困難を抱えている従業員については、症状や障害特性に応じた対応方法などを支援者や産業医等から伝えるとよいでしょう。

カウンセリングサービス

メンタルヘルスに関してトラブルを感じている従業員への対応では、社内外の専門家によるカウンセリングが有効です。

心療内科や精神科、カウンセリングセンターなど、外部でのカウンセリングが必要な場合は、その時間を確保するために休暇制度を利用できるとよいでしょう。社内の産業医やカウンセラーなどに相談しやすい環境づくりも大切です。

心の悩みを持つ従業員が安心して気軽に相談できる体制を整えましょう。

柔軟な働き方

メンタルヘルスに課題を抱えている人の場合、そうでない人よりも疲れやすくなったり、緊張しやすくなったりすることがあります。通勤ラッシュなどの人混みやランチ時のコミュニケーションなどで疲れてしまい、業務に支障を来すケースもあります。

これらのトラブルを抱える従業員が働きやすいよう、必要に応じて短時間勤務やシフト制度の見直し、フレックスタイム制やテレワークの活用を行いましょう。

業務の最適化と勤怠管理の徹底

無断欠勤の背景には、業務や働く環境の問題が潜んでいることも多くあります。無断欠勤の理由で見たように、業務内容が本人の希望や適性とミスマッチを起こしていることや、完璧主義が高じて本人が疲れ果ててしまうことなどがひとつの例です。

業務内容が本人の希望や適性に合っていない場合は、業務の調整や配置転換が解決策になり得ます。業務の内容や量を定期的に評価し、必要に応じて調整やサポート、配置転換を実施しましょう。自己の成長について悩んでいるようなら、新しいプロジェクトへのチャンスを提供する方法も有効です。

つい頑張りすぎてしまう従業員の場合は、計画的な休暇制度の利用を勧めましょう。他の従業員も休むシーズン毎の休暇推奨期間のリマインドや、プロジェクトが一段落した時点での有給休暇取得など、計画的に休めるタイミングを伝えることで、メンタルヘルスの悪化防止を図ります。

勤怠管理の強化も重要です。誰がいつ働き、いつ休んでいるのかを正確に記録することで、従業員の働き方の変化や働き過ぎに気づけます。時間外労働が目立つ期間があるなら休息を取るよう促し、遅刻・早退が目立つようなら、その理由のヒアリングとケアを行いましょう。

これらの取り組みにより、無断欠勤を予防するとともに、従業員が抱えるトラブルへの早期対応が可能になります。