採用とは何か|会社の人事担当者が知っておくべき意味や基準

published公開日:2023.12.26
採用とは何か|会社の人事担当者が知っておくべき意味や基準
目次
会社が事業を継続し成長するには、採用活動で事業に必要な人材を獲得する必要があります。しかし、適切な採用戦略がわからず、マッチングに苦労している採用担当者もいるでしょう。
本コラムでは、担当者の方が知っておくべき採用の意味や目的、採用手段、採用基準の作り方などを解説します。効果的な人材採用にお役立てください。

採用とは

ここでいう採用とは「人材採用」を指します。つまり、企業の経済活動に必要な経営資源の中で最も重要な「人材を雇い入れること」。採用活動によって、企業は自社で働いてもらう人材を集めます。

採用活動で不可欠なことは、目的の明確化です。目的があいまいだと「採用しても長続きしない」「早期離職者が多い」など、ミスマッチの原因になる可能性があります。

しかし、求める人材を容易に見つけることは難しく、多くの企業が課題と感じているでしょう。そのため、採用活動には適切な戦略が必要です。

採用という言葉の意味

採用には、「必要なものを採取して利用する」「適当である人物や意見、手法などを用いる」といった意味があります。ビジネスシーンでは、「人を雇用する」という意味で使いますが、大元の意味からも分かるように、単に人を雇うのではなく、「適した人材を選んで雇用する」ことが採用の本質です。

企業が採用を行う目的

では、企業はどのような目的で採用を行うのでしょう。代表的なケースを以下に3つご紹介します。

欠員を補充するため

目的の1つには、欠員補充があります。

たとえば、5人のチームで退職者が1人出たとします。従来5人でやっていた業務を4人でこなそうとすると、負担が大きく、生産性の低下などが懸念されます。このような場合は、退職した人と同等、または、それ以上のスキルを持つ人材の採用を目指すことになるでしょう。

課題解決のため

2つめは、組織が抱えている問題を解決したい場合です。

問題解決のノウハウやスキルを持つ人材を新しく採用することで、異なる経験やアイデアを獲得したり、既存の社員に刺激を与えたりすることができます。専門知識の不足や考え方の硬直化といった課題の解決に役立ちます。

リーダーとなる人材を確保・育成するため

3つめは、組織拡大や新規事業の立ち上げで、新たな役職者やリーダーが必要になるケースです。

社内で育成してきた人材にリーダーを任せられればよいのですが、新しい分野で事業を始めたり、海外進出を図ったりする場合など、自社の人材でまかなえないときは、外部から採用する必要があるでしょう。

役職者やリーダーには高いスキルや経験が求められるため、採用の難易度は高くなります。

対象者ごとの採用方法

次に、採用方法をご紹介します。新卒者や中途採用者など、対象者ごとにさまざまな採用方法があります。それぞれの方法を簡潔にまとめましたので、ぜひチェックしてみてください。

新卒採用

新卒採用とは、高校や大学を卒業予定の学生を採用する手法です。新卒者は通常、卒業してすぐの4月に一斉入社するため、採用担当者は、会社説明会や求人から選考まで事前にスケジュールを組んで準備します。

新卒採用の目的は、毎年一定数の人材を安定的に確保すること。企業が持続的に成長するためには、各世代の人材を絶えることなく確保する必要があるからです。

新卒者は、他の企業での就業経験がなく、いわば真っ白な状態です。他企業の文化や価値観にとらわれず、自社の風土の中で一から教育できるため、企業のマインドや風土をしっかり吸収できるでしょう。

人材の選定や育成にコストや時間がかかりますが、長期的に雇用・育成する方法として、多くの企業が取り入れています。

第二新卒採用

第二新卒採用とは、高校や大学を卒業して就職した後に1~3年で離職し、転職活動に取り組む若手求職者を採用することです。一般的な第二新卒の定義は卒業後3年以内。年齢は、4年制大学卒の場合は25歳前後ですが、明確な定義はありません。

第二新卒者採用のメリットは、新卒者ほど育成コストがかからない点です。多少なりと主社会人経験があるため、一通りのビジネスマナーや社内での立ち居振る舞いを身に付けていると考えてよいでしょう。それでいて社会人経験自体はまだ浅く、自社の風土になじみやすい点が魅力です。

新卒採用で想定していた人数を確保できなかった場合、第二新卒採用にも注力するとよいでしょう。第二新卒者は、前職の経験を踏まえてスキルアップやキャリアアップを考えていることが多いため、意欲の高さにも期待できます。

中途採用

中途採用とは、就業経験がある人材を採用する手法です。即戦力を確保するための手段として用いられることが多く、人手が足りない部署の人員補充などで活用されます。

中途採用者はしっかりとした社会人経験があるため、ビジネスの基礎に関する研修はほとんど必要ありません。前職の業種が自社と同じであれば、業界研修の手間も省け、それまでに培ってきた経験をすぐに生かせます。専門知識やスキルを持っていることから、職務内容を限定して採用する「ジョブ型採用」にも中途採用が見られます。

中途採用者が自社に入ってくるメリットは、他社で培ったノウハウが自社に入り、これまでとは異なる視点で事業の課題を捉え、より効果的なアプローチにつながる可能性があることです。

特に求める経験やスキルを積んだ人材の採用は「キャリア採用」とも呼ばれ、即戦力としての活躍が期待されます。一方、潜在能力を重視する「ポテンシャル採用」というアプローチもあります。業界未経験者を対象に、今後の成長への期待を込めて採用する方式です。

アルバイト・パート採用

アルバイト・パート採用とは、パートタイム労働者を採用することです。パートタイム労働者とは、1週間の所定労働時間が正社員より短く定められている、アルバイト、パート、嘱託、契約社員などを指します。

労働人口におけるアルバイト・パートの割合は年々増加しており、企業の戦力として欠かせません。繁忙期や閑散期に合わせて人員を調整できるため、人件費の削減を目的に採用活動が実施されます。また、アルバイト・パートとして雇った人材が自社に合うと分かれば、本人の意志や会社からの要請によって正社員登用することもあります。

主な採用手段12選

続いて、どのような手段で採用を行うかを見ていきます。ここでは、実際に利用されている12種類の採用手段をご紹介します。

1. 求人広告

1つめは、求人情報サイトや就職情報誌などに自社の求人広告を掲載する方法です。掲載には費用が発生します。求人広告の内容に興味を持った求職者からの応募が来るため、それを待ち、連絡が来たら選考進める形となります。

2. 合同企業説明会

2つめは、合同企業説明会です。合同企業説明会とは、1つの会場で複数の企業が出展し、説明会に参加した求職者と直接会って話す採用活動です。地方自治体や求人情報サイトが主催するケースが多く見られます。

1人の参加者が複数の企業をまわる形が多いため、企業側としても、より多くの求職者に自社をアピールできるでしょう。1対1で話す時間もあり、質疑応答や面接を効率良く進められます。

3. 人材紹介サービス

3つめは、人材紹介サービスの利用です。これは、登録した求職者と採用を行いたい企業のマッチングを行うサービス。複数の業種から広く選べる場合もあれば、1つの業種に特化している場合もあります。特定の業種に特化したサービスでは、より専門性の高い人材を見つけられるでしょう。

4. ハローワーク

ハローワーク(公共職業安定所)は、求職者への職業紹介や企業側の雇用に関する相談などを行う国の行政機機関です。無料で求人情報を掲載できるため、通常の採用手段の1つとして活用する他、あまりコストをかけられない場合にも有用です。

基本的には、人員の補充や未経験者の採用・育成を前提とする企業に向いています。エージェントを利用する転職活動とは異なり、どのような求職者も利用できる仕組みですので、高度なスキルを持つ求職者の割合は低い傾向にあります。

他方、障害者雇用や助成金に関する相談が可能です。採用戦略に応じて活用するとよいでしょう。

5. 自社Webサイト(採用サイトの運用)

5つめは、自社サイトで採用情報をメインに扱うサイトやページを作成し、これを通して人材を募る方法です。企業サイトでは「求人情報」「採用情報」といった名称で見かけることが多いでしょう。

採用サイトや採用ページには、募集要項だけでなく、企業理念やビジョンを踏まえたメッセージ、在職者インタビューなども掲載できます。自社の魅力をしっかり提示できますので、企業風土や事業内容、働き方にマッチした人材にアプローチしやすい点が特徴です。

6. リファラル採用

リファラル採用とは、自社の従業員による紹介をもとに新たな人材を採用する手法です。自社の文化や業務内容をよく知っている従業員が候補者を選んで採用担当者に紹介する形ですので、職務経歴やスキルだけでなく、人柄や企業風土との相性も考慮した採用ができます。他の採用手段で発生しやすいミスマッチのリスクを下げられるでしょう。

ただ、紹介者や求職者が「採用されるだろう」と大きな期待を持っていると、万が一紹介された求職者が不採用となった場合に、人間関係へ悪影響を及ぼす恐れがあります。「まずは少し話してお互いを知る」など、一気に採用プロセスを進めず、自社が本当に求める人材かどうかを検討するとよいでしょう。

7. ソーシャルリクルーティング

7つめのソーシャルリクルーティングは、X(旧、Twitter)やFacebook、InstagramなどのSNSを活用して採用活動を行う方法です。

ソーシャルリクルーティングの利点は多くあります。最も大きな特徴は、求職者か否かを問わず、広い層にアピールできること。媒体ごとに主な年齢層が異なり、若い世代ではInstagram、20代以上はX(旧Twitter、30代以上はFacebookが良いとされています。まだ就職・転職活動をしていない潜在層にも気軽に自社を知ってもらえる点も魅力です。

また、SNSの特性上、候補者のアカウントからプロフィールや日頃の発信内容を閲覧することもできます。興味・関心、仕事や社会問題への向き合い方、他の人とのコミュニケーションの仕方などを確認できる場合もあるでしょう。

自社と相性が良さそうなら、SNSのメッセージ機能を使って直接コミュニケーションすることも可能です。

8. 学校の就職課

8つめは、高校や大学・専門学校などの教育機関の就職課に、求人を掲示してもらう方法です。学部や専門分野を指定して募集できますので、自社に必要なスキルを持った人材にピンポイントでアプローチできるでしょう。採用において特に重視したい知識やスキルがある場合は、とても有効です。

また、学校内に設置された掲示板などに貼り出されるため、求人情報が学生の目に留まりやすいというメリットもあります。

9. インターンシップ

インターンシップとは、選考活動の6か月~1年前に企業内で就業体験をしてもらう方法です。産学協議会の定義では、「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」と「高度専門型インターンシップ」があります。いずれも就業体験を必須とし、一定期間以上の実施が求められます。

インターンシップでは、実際に自社で学生が働く姿を見て、適性を見極められる点に大きな魅力があります。就業体験の中で、得意な業務や苦手分野、発想力、コミュニケーション力などを見ることもできるでしょう。入社後のミスマッチも発生しにくくなります。

10. ヘッドハンティング

ヘッドハンティングは、経営者や管理職・幹部候補者、特定の分野で大きな業績を上げた専門職など、ビジネスの最前線で活躍している優秀な人材を引き抜く採用手段です。自社に必要なハイクラスの人材をヘッドハンティング会社に探してもらい、自社に引き入れます。

ヘッドハンティングを行う目的は、専門スキルや経験のある人物をスカウトし、優秀な人材を確保することです。そのため、入社段階で高いポストや好待遇を用意するケースが一般的です。

11. アルムナイ採用

アルムナイ採用とは、一度離職した従業員を再び雇用する方法です。かつての日本では終身雇用を前提とした働き方でしたが、現在は転職が身近な選択肢となっています。こうした人材の流動化が進む中で、「自社を離れた人材を再雇用する」という企業側の採用手段は、重要な手段の1つとなりました。

アルムナイ採用の魅力は、自社の業務を経験している人材を再雇用できること。企業理念や業務に関する教育コストを削減できるとともに、即戦力としての活躍も期待できます。

12. ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングは、企業が求職者に直接アプローチする採用手法です。求人を出して待つのではなく、自社にマッチする人材を企業自ら探してコンタクトを取るため、「攻めの採用」といわれます。前述したソーシャルリクルーティング、リファラル採用、ヘッドハンティングなども、ダイレクトリクルーティングの一種です。

ダイレクトリクルーティングは、他の業者を通さず自社が直接アプローチするため、求める人材にピンポイントでオファーできます。一方で、適切な人材を探したり個別に対応したりする必要があり、採用担当者の負担は大きくなるでしょう。

採用基準の作り方

応募者を採用する際は、面接官によって判断に差が出ないよう、明確な採用基準の設定が大切です。そこで、最後に採用基準の作り方のチェックリストをご紹介します。適切な人材採用にお役立ててください。

1. 人材要件を定義する

人材要件とは、企業がどんな人材を求めているかを定めた基準です。業務経験、スキル、資質、資格や免許、雇用形態など、必要な要件を設定しましょう。

こうした要件を定める際は、経営陣だけでなく現場担当者などの意見も取り入れ、現場が必要とする人材像から乖離しないよう注意してください。

育成を前提とするか、即戦力となる人材を募集するかで、求められる経験やスキルは大きく異なります。採用後の育成計画も考慮しつつ、人材要件を定義することが大切です。

2. コンピテンシー項目を洗い出す

コンピテンシーとは、高い業績を上げる人材(ハイパフォーマー)に共通する行動特性のこと。日本では2000年前後から人事評価や人材育成に活用されています。

コンピテンシーを設定するには、自社で高パフォーマンスを発揮する社員の行動・思考を分析し、できるだけ細かく行動内容や動機を洗い出すことが重要です。職位・職種別に分析する必要がありますので、十分に時間を取って進めましょう。

分析によって抽出したコンピテンシーは、求職者がどのくらいその特性を持っているかを判断するために活用します。5段階程度にレベル分けをして指標とすると、自社への適合性を確認しやすくなります。

3. 求める人材像の明確化

3つめのチェックポイントは、求める人材像の明確化です。人材要件の定義やコンピテンシーの分析をもとに、求める人材像を明確化します。その際、できるだけ具体的な人物像を設定すると、面接官もイメージしやすくなります。スキルセットやマインドセット、パーソナリティーについても明記しましょう。

例えば、経理の経験者で有資格者を募集する場合、「経理としての実務経験が3年以上ある独身女性、経理に関する資格を保有しているにも関わらず、給与が上がらないため転職活動をしている」のように具体的に言語化しましょう。

4. 重視すべき評価項目の決定

最後に、各要件や行動特性、その他人物像にある要素から、特に自社が重視する評価項目を決めます。企業理念やミッション・ビジョンに関わる項目もあれば、業務に必須となるスキルや特性といった項目もあるでしょう。

ただし、あれもこれもと多くの項目を重視しすぎると、候補者の誰もそれを満たさないケースが発生します。採用担当者や面接官の負担が増えてしまう点にも注意してください。「最低限、これだけは満たしてほしい」「この点を満たしていれば高評価する」など、絞り込んでいくことが大切です。

明確な評価項目と重視するポイントを設定し、各面接官による評価のばらつきを減らしましょう。