賞与(ボーナス)とは?賞与の社会保険料や所得税の計算方法、平均額などを解説

update更新日:2025.03.13 published公開日:2024.07.04
賞与(ボーナス)とは?賞与の社会保険料や所得税の計算方法、平均額などを解説
目次

賞与(ボーナス)とは、一般的な給与とは別に、特定の期間や業績に応じて支給される特別な報酬です。賞与は、従業員が算定期間に達成した成果に対する報酬として支払われることが多く、従業員のモチベーションに与える影響は大きいといえます。

本コラムでは、賞与の支給金額の基準や計算方法、支給時期などについてのパターンを紹介します。また、賞与支給に伴う手続き、所得税や社会保険料の計算についても詳しく解説します。

賞与(ボーナス)とは?その意味と基本

はじめに、賞与(ボーナス)という言葉の意味と、似た意味の言葉である給与や寸志との違いについて解説していきます。

賞与とは

賞与とは、通常の給与とは別に支給される特別な報酬や手当のことです。賞与の支給対象者や支給額の基準は、企業ごとに就業規則や労働契約などで定められており、一般的には企業または従業員個人の業績に基づいて支払われます。

就業規則や労働契約などで賞与を「会社の業績に応じて支給」「原則として支給」などと表記する場合、業績不振などの理由で賞与不支給にできる可能性があります。一方、これらの規則で賞与の支給を確約していたり、支給額や支給条件を明示していたりする場合、企業は賞与を必ず支払わなければなりません。

なお、賞与の支給を確約していない場合、賞与は支給しなくても違法ではありません。

賞与とボーナスの違い

ボーナスは英語の「bonus」に由来した言葉で、日本では賞与と同じ意味で使われています。英語の「bonus」は、元々「思いがけない贈り物」という意味があり、賞与のほか、株主への優待金や政府からの補助金などといった意味をもつ言葉です。

国税庁の公式サイトでは、「賞与とは、定期の給与とは別に支払われる給与等で、賞与、ボーナス、夏期手当、年末手当、期末手当等の名目で支給されるものそのほかこれらに類するもの」と定義されています。*

*出典:国税庁|賞与に対する源泉徴収

賞与と給与の違い

給与は労働者に定期的に支払われる賃金であり、賞与は特別な成果や労働に対する追加的な報酬です。

給与の支払い方については、労働基準法第24条において、支払いの5原則が定められています。給与は「①通貨で」「②直接労働者に」「③その全額を」「④毎月一回以上」「⑤一定の期日を定めて」支払われる必要があります。

これに対して賞与のような「臨時に支払われる賃金」については、5原則のうち「④毎月一回以上」と「⑤一定の期日を定めて」が適用されません。*

*出典:法令リード|労働基準法|条文

賞与と寸志の違い

日本には、日ごろの感謝や労りの気持ちをこめて従業員に金銭を渡す「寸志」という習慣があります。賞与と寸志の違いは、賞与が従業員の成果や労働に対する報酬であるのに対し、寸志は主に従業員へ感謝の気持ちを表すための少額の金銭的贈与である点です。

一般的に賞与では月給の数カ月分相当が支払われますが、寸志は数千円から数万円程度であるケースが多く見られます。

賞与(ボーナス)の決め方と支給要件

賞与の決め方は企業ごとに異なり、就業規則などによって定められています。

賞与の支給基準としては、基本給連動型賞与、業績連動型賞与、決算賞与の3種類があり、支給要件は労働契約上の分類や雇用期間などによって定めるのが一般的です。

ここでは、一般的な賞与の決め方と支給要件について解説します。

支給基準の概要

賞与の支給基準は、基本給連動型賞与、業績連動型賞与、決算賞与の3種類に分けられます。

それぞれの支給基準の概要がどんなものかみていきましょう。

基本給連動型賞与

基本給連動型賞与は、月々の基本給に連動して賞与の支給額を決定する賞与体系です。「基本給の○カ月分」などの形で基本給に一定の月数を乗じて算出する方法で、日本では最も一般的な支給基準といえるでしょう。

なお、基本給には手当などの金額は含まれません。月給そのものの金額ではなく、あくまで手当などを除いた基本給をもとにしている点に注意が必要です。

業績連動型賞与

業績連動型賞与は、会社の業績や個人の成果に応じて支給する賞与体系です。基本給連動型賞与とは異なり、そのときどきの条件によって支給額が変わります。

業績連動型賞与は、従業員のモチベーション向上や評価の納得感を得やすいことなどから、近年導入が進んでいる賞与体系です。

日本経済団体連合会の統計によると、業績連動型賞与体系は2016年から6年連続で5割を超える結果となっています。*

2024年には、大手銀行や地銀などで業績連動型賞与が導入され、金融機関でも普及が進んでいます。

*出典:日本経済団体連合会2021年「夏季・冬季 賞与・一時金調査結果」

決算賞与

決算賞与は、決算期に会社の利益を分配する目的で支給する賞与です。企業の会計年度終了後、決算の結果に応じて支給します。

企業にとって、決算賞与を損金算入することで当期の経常利益を抑えて法人税を節税できるというメリットがあり、しまむらやヤオコーなど近年導入する企業が増えてきています。

決算賞与について詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。

コラム「決算賞与とは?企業事例・メリット・デメリットと損金算入要件」‍はこちら

支給要件

賞与の支給要件は、企業が独自の基準を設けることができます。

例としては、以下のような基準が挙げられるでしょう。

  • 「正従業員のみ」など労働契約上の基準
  • 「係長以上」など一定の役職や等級に基づく基準
  • 「在籍3年以上」など一定の在籍期間に基づく基準

就業規則や労働契約で支給要件を定めた場合は、法律上の支払い義務が生じます。また、賞与を「正従業員のみ」などとした場合は、パートや派遣従業員と業務の内容や責任範囲などが実質的に変わらないのに正従業員だけに賞与を支払うと、「同一労働同一賃金」の原則に違反しているとみなされる恐れがあるので注意しましょう。

賞与(ボーナス)の支払いはいつ?一般的な支払い時期と支給回数

賞与は給与とは違い、賃金支払いの5原則のうち「④毎月一回以上」と「⑤一定の期日を定めて」が適用されないため、支払い時期や回数は企業によって様々です。

賞与の支払い時期や回数は、会社ごとに異なりますが、いくつかの一般的な傾向があります。また、転職や退職時には特別な条件が適用されることもあります。

ここでは、一般的な賞与の支払い時期や回数について解説します。

支払い時期・支払い日

賞与の支払時期について就業規則や雇用契約書で定めている場合は、その時期に支給しなければなりません。一方、定めていない場合は、企業が任意の時期に支払うことも可能です。

一般的には、基本給連動型賞与は夏季(6〜7月)と冬季(12月)に支給する企業が多いでしょう。

業績連動型賞与の支払時期は企業によって異なり、基本給の支払時期以外の時期にする企業もあれば、基本給連動型賞与と同じように夏や冬に支給する企業もあります。

決算賞与については、決算日の翌日から1カ月以内に支給するケースが多く見られます。

賞与の支払日についても、支払時期の中で企業が自由に設定することができます。支払日は毎年同じである必要もありません。賞与の支払日と給与の支払日を別の日に設定することも可能です。

支払い回数

賞与の支払い回数は、基本給連動型賞与では年2回が基本です。これに業績連動型賞与または決算賞与の支給を追加して、年3回支給する企業もあります。

ただし、賞与を年4回以上支給する場合は注意が必要です。

健康保険法や厚生年金保険法において、「『賞与』とは(中略)いかなる名称であるかを問わず、(中略)3月を超える期間ごとに受けるものをいう」*と定義されています。

そのため、賞与の支給が年4回以上になる場合、社会保険においては給与と同様に「報酬」として扱います。すなわち、企業は賞与を標準報酬月額に加算して、社会保険料を算出しなければならなくなり、支払うべき社会保険料が増えてしまうのです。これを避けるため、多くの企業では賞与の回数を年3回以下としています。

*出典:e-Gov法令検索「健康保険法 第一章 総則 第3条第6項」

*出典:e-Gov法令検索「厚生年金保険法 第一章 総則 第3条第1項第4号」

転職時や退職時の賞与支給条件

従業員の転職や退職時の賞与支給条件を別途定めている企業もあります。

一般的には、賞与支給日に在籍していることが条件とされる場合が多いです。この場合、退職予定であっても、支給日時点で在籍する従業員には規定通り全額賞与を支払わなければなりません。

また、「直近の半年間に在籍し、一定の勤務日数を満たすこと」など、一定の勤務期間実績を要件としているところもあるでしょう。

特別や雇用条件や雇用契約になっている場合、退職が会社側の事情による場合などは、個別の交渉で賞与の一部または全額が支給されるケースもあります。

転職や中途退職時の賞与の支給条件が不明確だとトラブルになりやすいので、あらかじめ転職者や中途退職者を想定した条件を設定しておくようにしましょう。

賞与(ボーナス)の計算方法と支給手順

次に、実際に賞与を計算する方法や支給手順について説明します。

賞与の手取り計算の方法についても解説しますので参考にしてください。

賞与支給額の計算方法

賞与支給額の計算方法は、支給方式によって異なります。

ここでは、代表的な「基本給×支給月数方式」と「業績や個人評価を反映した方式」の2種類に分けて解説します。

基本給×支給月数方式

基本給×支給月数方式は、企業が多く採用する賞与支給額の計算方法です。例えば、基本給30万円の従業員に対して「基本給の2カ月分」とする場合、賞与額は60万円となります。

従業員の基本給に支給月数を掛け合わせて算出されるため、計算がシンプルでわかりやすいという特徴があります。ただし、就業規則などであらかじめ支給月数を定めている場合は、業績が悪化した場合でも一定の賞与を支払わなければなりません。

業績・個人評価を反映した計算方法

業績や個人評価を反映する計算方法は、従業員のモチベーション向上や成果主義を重視する企業に採用されています。この方式では、企業全体の業績、部門のパフォーマンス、従業員個人の評価結果などをもとに賞与額を決定します。

例えば、全社の目標達成率が100%の場合に賞与額を満額支給する一方、未達成の場合は減額されるといった方式です。また、個人評価では業績指標(KPI)や目標達成度に基づいて加算や減算を行います。この方式は、貢献度が高い従業員にインセンティブを与えられる一方で、評価基準の透明性を確保しないと不満が生じる可能性があるため、慎重な運用が求められます。

賞与の手取り額の計算例

実際に従業員に支払う賞与支給額、いわゆる手取り金額は以下の式で計算します。

賞与総支給額 -(社会保険料 + 所得税)= 賞与支給額(手取り金額)

毎月の給与と同様に、賞与も社会保険料や所得税の対象です。従業員の口座に振り込む前に、社会保険料や所得税を天引きする必要があります。差し引く金額は、賞与額や扶養親族の有無などにより異なります。

賞与から控除する社会保険料や所得税の具体的な計算方法は、後ほど詳しく解説します。

支給手順

賞与を従業員に支給するためには、いくつかの手順を経ることが必要です。賞与支給の各手順を確実に実行することは、賞与支給の運営を円滑にし、法的リスクを回避することにもつながります。

ここでは、賞与支給の基本的な流れを解説します。

①就業規則などで支給基準やルールを定める

賞与を支給するには、まず支給基準やルールを明確にすることが重要です。就業規則や労働契約書などに、賞与の支給時期、計算方法、支給対象者などを具体的に記載します。

特に、賞与支給基準が曖昧だと、従業員間の不公平感や法的トラブルを生じさせる恐れがありますので注意しましょう。就業規則の変更を行う際は、従業員代表の意見聴取や労働基準監督署への届け出も必要です。

②代表者や役員の賞与は税務署へ届出

会社の代表者や役員への賞与については、事前に税務署に届出が必要です。毎月の役員報酬以外に役員報酬を支払う場合には、事前に「事前確定届出給与に関する届出」を税務署に提出しないと、損金処理ができません。

届出は、株主総会で役員賞与についての決議をした日から1カ月以内または会計年度の開始日から4カ月以内に行う必要があります。届出をした支給日や支給金額などと実際の支給内容が異なっていた場合は、役員賞与全額が損金処理を否認されてしまう恐れがありますので注意しましょう。*

*出典:国税庁|事前確定届出給与に関する届出

③支給額を決定する

既に説明したように、支給月数を掛け合わせる方法や、業績・個人評価に応じた計算方式など、就業規則で定めた方式にしたがって従業員ごとの支給額を決定します。

支給額の計算に当たっては、税金や社会保険料の控除後の手取り額も確認しておきましょう。従業員にわかりやすく納得感のある説明が可能となります。

④賞与明細書を発行する

賞与を支給する際は、従業員に賞与明細書を発行します。賞与明細書には、控除前の総支給額、社会保険料などの控除項目および控除額、差引支給額、賞与支給日などを記載します。

賞与明細書の作成は法的義務ではありませんが、従業員に対する説明責任を果たすために重要なステップです。

賞与明細書は賞与支給時までに従業員へ発行することが一般的です。

⑤従業員に賞与を支給する

最終的に、決定した賞与額を従業員に支給します。振込前には、支給日を従業員に周知しておくとともに、計算内容に誤りがないか最終確認を行いましょう。

給与や賞与を銀行口座へ振り込んで支払うには、口座振込同意書などによって、従業員から同意を得る必要があります。口座振込同意書に「賞与の支払いに関しても、銀行口座振込を利用する」といった旨の文言を加えておくとよいでしょう。

また、支給後には被保険者賞与支払届を日本年金機構に提出し、社会保険料の支払い手続きも適切に進める必要があります。賞与支給後の手続きについては、後ほど詳しく説明します。

賞与(ボーナス)にかかる社会保険料

従業員の賞与から差し引かれる社会保険料は、給与と同じく「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「雇用保険」の4つです。

このうち健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料の3つは、事業主と被保険者が半分ずつ保険料を負担する労使折半です。

賞与における社会保険料の計算方法を確認していきましょう。

健康保険料

健康保険料の計算式は以下の通りです。

標準賞与額 × 健康保険料率

標準賞与額は、税引前の賞与総額から1,000円未満を切り捨てた金額となり、全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合で上限は年間累計額573万円です。*

賞与の支払い回数のところで説明したように、健康保険や厚生年金では、年3回以下の支給のもののみ賞与として取り扱います。

保険料率については、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している企業の場合、都道府県ごとに異なります。料率は毎年改定されるので注意しましょう。

*出典:全国健康保険協会|賞与の範囲

参考:全国健康保険協会| 協会けんぽ |都道府県毎の保険料率

厚生年金保険料

厚生年金保険料の計算式は以下の通りです。

標準賞与額 × 厚生年金保険料率(18.3%)

標準賞与額は、健康保険の場合と同じく、税引前の賞与総額から1,000円未満を切り捨てた金額となり、支給1回につき、150万円が上限となります。

厚生年金の保険料率は、給与と賞与どちらも共通で、一律18.3%です。*

*出典:日本年金機構|厚生年金保険の保険料

介護保険料

40歳以上65歳未満の従業員については、介護保険料が発生します。介護保険料の計算式は以下の通りです。

標準賞与額 × 介護保険料率

標準賞与額の取り扱いは、基本的に健康保険と同じです。

全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している企業の場合、令和6年度の介護保険料率は1.6%となっています。*

健康保険組合に加入している企業の場合は、健康保険組合が介護保険料率を設定しています。

介護保険料も健康保険料や厚生年金保険料と同様に労使折半ですので、上記の計算式で求めた金額を企業と従業員が半分ずつ負担します。

*出典:全国健康保険協会| 協会けんぽ |協会けんぽの介護保険料率について

雇用保険料

雇用保険は社会保険の中でも労働保険に分類される保険で、前述の3つの社会保険「健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料」とは異なる点があります。

雇用保険料の計算式は以下の通りです。

税引前の賞与総額 × 雇用保険料率

賞与額は、健康保険や厚生年金の標準賞与額ではなく、税引前の賞与総額に直接料率をかけて計算しますので注意しましょう。

雇用保険料率は毎年見直しが行われ、また業種によっても保険料率が異なります。さらに、企業と従業員の負担割合も業種によって異なるため注意が必要です。

令和6年度における雇用保険料率や業種ごとの負担割合は厚生労働省の公式ページで確認できます。

雇用保険料の納付については、賞与支給時期には行いません。例年6月1日~7月10日に行う「年度更新」で、賞与の総額も含む賃金総額から概算保険料を計算して納付します。

ただし、納付時期は賞与支給時期でないとはいえ、従業員負担分の雇用保険料自体は賞与支給時に控除しなければなりません。

出典:厚生労働省ホームページ|労働保険料の申告・納付

参考:厚生労働省ホームページ|雇用保険料率について

労災保険料

労災保険も、社会保険のうち労働保険に分類される保険です。雇用保険と同様、「年度更新」において概算保険料を納めます。

雇用保険と大きく異なる点は、従業員の保険料負担がないことです。そのため、賞与支給時の控除は不要です。

年度末に、賞与も含めた賃金総額に所定の料率をかけて保険料を計算します。料率は、雇用保険料率と同じく厚生労働省の公式ページで確認できます。

参考:厚生労働省ホームページ|雇用保険料率について

賞与(ボーナス)の社会保険料を控除しないケース

基本的に賞与からは社会保険料を控除する必要がありますが、いくつかのケースでは社会保険料が発生しないため、控除が不要となります。

ここでは、社会保険料のうち「健康保険料」「厚生年金保険料」「介護保険料」が発生しないケースを解説します。ただし社会保険料の対象とならなくても、雇用保険や労災保険の対象となるケースもありますので注意してください。

賞与支給月に社会保険の被保険者資格を喪失した場合

健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料は、「被保険者資格を喪失する月の前月まで」発生します。資格を喪失する日は「退職日の翌日」とされているため、賞与支給月の末日より前に退職する場合は、社会保険料が発生しません。

例えば、賞与支給日が7月10日で退職日が7月25日の場合、「資格を喪失する日」は7月26日。社会保険料が発生するのは、その「前月」である6月までです。よって、7月に支給された賞与には社会保険料が発生しません。

一方、月末に退職する場合は社会保険料が発生するため、注意が必要です。

例えば、賞与支給日が7月10日で退職日が7月31日の場合、「資格を喪失する日」は8月1日、その「前月」は7月となります。すなわち、7月に支給された賞与に社会保険料が発生しますので、忘れずに控除してください。

参考:日本年金機構|退職した従業員の保険料の徴収

産前産後休業(産休)期間中に賞与が支払われた場合

産前産後休業(産休)期間中に支払われた賞与に関しては、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料)が免除されるため、控除の必要がありません。

なお、この免除期間は、将来被保険者の年金額を計算する際に、保険料を納めた期間として扱われます。

参考:日本年金機構|従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が産前産後休業を取得したときの手続き

育児休業(育休)期間中に賞与が支払われた場合

1カ月間を超える育児休業(育休)を取得した場合、育休中に月末が含まれる月に支給された賞与には社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料)がかかりません。よって、このケースでも控除は不要です。

育休中における免除期間についても、産前産後休業の場合と同様、将来被保険者の年金額を計算する際に保険料を納めた期間として扱います。

参考:日本年金機構|令和4年10月からの短時間労働者の適用拡大・育児休業等期間中の社会保険料免除要件の見直し等について

賞与(ボーナス)と所得税

賞与に対する所得税は、給与所得と同様に源泉徴収の対象ですが、給与の計算方法とは異なる点がいくつかあるので注意が必要です。

以下では、所得税の計算方法と手取り額の算出方法について詳しく解説します。

所得税(源泉徴収)の仕組み

賞与にかかる所得税は、支給時に源泉徴収されます。計算には、給与とは異なる「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」が用いられます。

賞与に対する所得税の源泉徴収は、基本的に賞与額ではなく前月の給与を基準に税率を定め、それを賞与支給額に適用するのが特徴です。例えば、前月の給与額が30万円の場合、その額に対応する税率(例:5%)を適用して、賞与の源泉徴収額を算出します。ただし、社会保険料控除後の賞与の額が、前月の給与の金額の10倍を超える場合には、一部計算方法が異なりますので注意してください。

また、適用税率は前月の給与額だけでなく扶養親族数によっても異なります。

出典:国税庁|賞与に対する源泉徴収

賞与額に応じた税額の計算方法

賞与の所得税計算は次の手順で行います。

  1. ①基準額の確認:前月の給与額をもとに「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」から税率を特定する
  2. ②課税対象額の算出:賞与額から社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険)を差し引く
  3. ③所得税の計算:課税対象額に税率を掛ける

具体的に以下の条件で所得税額がいくらになるかシミュレーションしてみましょう。

【前提条件】

  • 前月給与:25万円(社会保険料控除後)
  • 賞与:55万円
  • 賞与にかかる社会保険料:5万円
  • 扶養親族数:1人(「給与所得者の扶養控除等申告書」を会社に提出済み)

「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和6年分)」によれば、前月給与が25万円で扶養親族が1人の場合の税率は4.084%です。*

課税対象額は、賞与額55万円から社会保険料5万円を控除した50万円となります。よって、50万円×税率4.084%=20,420円が源泉徴収される所得税額となります。

*出典:国税庁|賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和6年分)

賞与(ボーナス)の平均支給額

日本では賞与の平均支給額はどのくらいなのでしょうか。業種ごとの平均支給額や直近の増減傾向なども気になるところです。

賞与の平均支給額や職種別ランキング、公務員の支給額との比較などをまとめました。

日本国内の賞与の平均額

厚生労働省の統計によると、令和6年の夏季賞与の1人当たり平均額は全事業所で414,515円、事業所30人規模以上では478,814円です。業種別に見ると、電気・ガス業の881,533円が最も高く、次いで情報通信業739,621円、金融業・保険業703,753円の平均賞与額となっています。

前年比では、全体では2.3%増、業種別には製造業1.9%増、卸売業・小売業7.4%増、医療・福祉6.3%増、飲食・サービス業で17.5%増となっています。*

*出典:毎月勤労統計調査 令和6年9月分結果速報等(厚生労働省)(2024年12月5日に利用)

職種別の支給額の差

賞与平均額は事業規模や業種などによって異なりますが、職種や業界によっても大きく異なります。

転職サービスdodaが2024年に行った調査によると、ボーナスの平均支給額が高い職種ランキングは以下の通りです。

順位 職種 1年間のボーナス平均額
1 内部監査(企画・管理) 188.6万円
2 法務・知的財産・特許(企画・管理) 177.7万円
3 リサーチ・市場調査(企画・管理) 173.2万円
4 MR(営業) 166.4万円
5 研究/開発(素材/科学/食品系エンジニア) 165.0万円

平均賞与を職種分類別に見てみると、最も多かったのは「企画・管理」となっており、1~3位をはじめ、経営企画や事業企画など9職種が上位30位にランクインしています。

出典:転職ならdoda(デューダ)|ボーナス平均支給額の実態調査【最新版】(冬・夏、年代別、職種別の賞与)

公務員と民間企業の賞与比較

国家公務員は法令で、地方公務員は条例でそれぞれ賞与の支払いについて定められています。

国家公務員における賞与は、期末手当および勤勉手当と呼ばれており、夏季の支給日が6月30日、冬季の支給日が12月10日です。*1

国家公務員の賞与については毎年、内閣官房内閣人事局が報道資料を発表しており、令和6年の国家公務員の平均支給額は約654,900円、前年比3.5%増となっています。*2

*1 参考:「人事院規則九―四〇第十四条|e-Gov 法令検索」

*2 出典:内閣官房内閣人事局 報道資料『令和6年6月期の期末・勤勉手当を国家公務員に支給』

賞与(ボーナス)の支払い後に必要な手続き

賞与の支給後も、まだ各種手続きが残っています。被保険者賞与支払届の提出と社会保険料などの支払いです。

最後に、賞与の支払い後に必要な手続きについて解説します。

被保険者賞与支払届の入手・作成

支給回数が年3回以下の賞与を支給する場合は、管轄の年金事務所または事務センターに対して、「被保険者賞与支払届」の提出が必要です。

あらかじめ日本年金機構に賞与支給予定月を登録している場合は、賞与支払予定月の前月に被保険者の氏名や生年月日などが印字された届出用紙が企業に届きます。

賞与支給予定月の登録は、新規適用届または事業所関係変更(訂正)届の提出などにより行われます。

賞与支給予定月の登録を行っておらず、届出用紙が送られてこない場合は、日本年金機構の公式ページから被保険者賞与支払届をダウンロードしましょう。

被保険者賞与支払届を入手したら、賞与を支給した従業員ごとに、賞与支払い年月日や支給した賞与額などの必要事項を記入します。

参考:日本年金機構|従業員に賞与を支給したときの手続き

被保険者賞与支払届の提出

「被保険者賞与支払届」の提出は、賞与支払日から5日以内に行います。提出先は、管轄の年金事務所または事務センターです。

賞与支払い予定月に賞与を支給しなかった場合は、「賞与支払届」にかえて「賞与不支給報告書」を提出しなければなりません。賞与不支給報告書は、日本年金機構から賞与支払予定月の前月に送られてくる書類で、日本年金機構の公式ページからもダウンロードできます。

賞与支払予定月の翌月までに届出を行わないと、予定月の翌々月に催告状が送付されてきます。

参考:日本年金機構|賞与を支給したとき、賞与支払予定月に賞与が不支給のとき

社会保険料を納付する

被保険者賞与支払届を提出すると、後日「保険料納入告知書」が送付されてきます。

決定した保険料は、賞与を支給した月の翌月末日までに納付してください。