ボトムアップとは|メリット・デメリット、意識すべきポイントを解説

update更新日:2023.10.18 published公開日:2023.02.27
ボトムアップとは?メリットとデメリットを詳しく解説
目次
本コラムでは、ボトムアップのメリットやデメリット、適しているケースなどを解説していきます。
日本企業の多くは、ボトムアップではなくトップダウン方式の経営といわれます。しかしながら、近年は働き方の多様性に伴い、現場の意見を重視しようという動きが活発化してきています。そこで必要なのが、ボトムアップ方式の経営です。
まずは、ボトムアップとトップダウンの違いについて見ていきましょう。

ボトムアップ・トップダウンの違い

ボトムアップとは

トップ(=経営層などの上層部)が現場の従業員たちの意見や提案を確認したうえで、意思決定する経営スタイルをボトムアップといいます。

現場の声を収集しながら意思決定を行うため、従業員の意見を反映させて彼らに寄り添いながら会社を経営できます。風通しのよい風土が作れるのが特徴です。また、ボトムアップ方式での経営を行うと、従業員の成長を促進できるともいわれています。

トップダウンとは

トップダウンはボトムアップと異なり、上層部で意思決定を行い、現場の従業員に指示を与えます。従業員たちが指示に従い実行していく経営スタイルです。

トップダウン方式は、企業内での意思統一がしやすいのが特徴です。意思決定を迅速に行えるので、スピード感が求められる分野の商品・サービスを取り扱っている場合や、素早い判断が求められるときなどに適しています。

トップダウンについては以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらの記事も参考にしてみてください。

トップダウンとは|メリット・デメリット、意識すべきポイントを解説

ボトムアップのメリット・デメリット

ここでは、ボトムアップ方式のメリットとデメリットを紹介します。ボトムアップを取り入れているがうまくいかない、という場合や、新たにボトムアップ方式を取り入れるという際はぜひ参考にしてください。

ボトムアップのメリット

現場の声を上層部に届けられる

現場しかわからない課題や問題点などの意見が経営トップに届きやすくなるのが、ボトムアップ方式のメリットの1つです。現場レベルの課題を放置していたことで問題が大きくなり、社会的に報じられた結果、会社の信用を落としてしまったというケースも少なくありません。

定期的にヒアリングをする、意見を通しやすい制度を作るなど、体制を整えて実施しましょう。組織的な課題だけでなく、アイデアが集まって新たな事業が生まれることもあります。また、現場は自身の意見に耳を傾けてもらえることで不満がたまりにくくなり、仕事のモチベーションも高まります。

当事者意識が高まる

従業員たちに考える機会を作り出すことで、当事者意識を高められるのもメリットです。意見や提案をトップに伝えるためには、自身の仕事の目的を把握し、どのように進めるべきかを考える必要性が出てきます。すると、仕事の意義ややりがい、責任感といった当事者意識が芽生えるのです。

与えられた仕事を全うするのはもちろん、進んで業務改善に取り組むことが期待できるため、事業成長の促進につながるでしょう。

マネジメントスキルが身につく

ボトムアップ経営では、現場の従業員の声をまとめなければなりません。まとめ役を務める人材には、従業員それぞれの得意分野や課題を見つけ、適切な行動を促すマネジメントスキルが求められます。

そのため、人材育成の一環としてボトムアップの環境が役立ちます。育成したい人材に、現場のまとめ役としての役割を与えて、メンバーの育成や意見の取りまとめ、上層部との折衝などの経験を積ませるのです。同様のやり方でスキルアップできることがわかれば、他の人材を育成する際にも転用できるため、効率的な人材育成が期待できます。

ボトムアップのデメリット

現場の声をまとめるのに時間がかかる

上層部の人数に対して現場の人数の方が多いため、一人ひとりから意見を聞くのはどうしても時間がかかります。さらに、出された意見をまとめるのにも一定の時間を要することから、スピード感を求められる意思決定には不向きといわれています。

効率的に意見を集約できる制度を設ける、部署やチーム単位で日ごろから意見をまとめておくといった対策でカバーしましょう。

まとめ役がいないと機能しない

従業員の数が多い場合、すべてをトップに伝えるわけにはいきません。無数の意見を収集してそれぞれの意見を吟味し、まとめる作業が必要です。したがって、従業員の声をうまくまとめられる人材がいなければ、ボトムアップ方式の経営は機能しません。

まずは、チームリーダーや係長、課長などの役職者にまとめ役を任せ、徐々に現場の人間に任せるといったステップを踏み、まとめ役の育成を図りましょう。

ボトムアップが適しているケース

ここでは、ボトムアップ方式が適しているケースをご紹介しますので、自社に当てはまるかチェックしてみてください。

業態が幅広い

部署や事業部によって仕事内容が大きく違う企業では、上層部が現場の状況を把握しにくくなります。現場で何が行われているか・何が必要なのかがわからないと、業務改善や効率化が鈍化し、機会損失を招いてしまうこともあるでしょう。

特に、従来の事業とは全く異なる新規事業を展開したような場合、トップに現場の知識が無いために任せきりになるケースがあります。現場は現場で、自身の仕事を理解してもらえないと不満を持ち、双方にとって良くない状況に陥るリスクがあるのです。

正しい情報が無ければ、経営判断の誤りにもつながるため、ボトムアップ方式を積極的に取り入れて、現場の状況を把握するようにしましょう。

専門性の高い業務や業界

専門性の高い業務・業界においても、ボトムアップが良い効果をもたらします。

現場に専門知識を持つ人が多く、経営層との間に知識の乖離があると、何ができて何ができないのかの判断がつかないためです。また、知識の乖離が溝となって、現場と経営層との組織観にズレが起きてしまうと、企業としての力も弱まります。

そのような事態を招かないためにも、ボトムアップ方式を取り入れて、積極的に現場理解に努めることが重要です。ただし、意思決定を行うのは経営層です。専門知識が無いからと、現場の言いなりになる必要はありません。「うちのトップは現場を知らない」と、驕る従業員が出てくる可能性があるためです。

現場の声を聞いて理解を深めつつも、利益が出るのか出ないのか、社会的に実行する意義はあるのかなど、総合的に見て判断しましょう。

トップダウン方式の意思決定がボトルネックになっている

トップが業務内容を把握したり、意思決定を行ったりする際に時間がかかるような場合もボトムアップ方式で経営を実施するのが適しています。

意思決定が遅くなってしまうのは多くの場合、経営体制が整っていないことが原因です。経営スピードを上げたいと考えている方は、ボトムアップへのシフトを検討すると共に、自社で掲げているビジョンや目標が明確であるか、経営のPDCAサイクルに問題が無いかも、確認してみてください。

人材育成に力を入れたい

能動的かつ当事者意識を持った人材を育成したい場合は、ボトムアップ方式を取り入れたり比重を大きくしたりしてみましょう。

現場や部下が、上司やトップに何かを伝えたいとき、そこにあるのは不安や不満、アイデアなどです。しかし、忙しい上司に的確に情報を伝える、現場から集約するのには、スケジュール管理やコミュニケーション能力、文書作成スキルなど、さまざまなスキルを要します。

つまり、ボトムアップ方式を取り入れることにより、必然的に現場の人間への要求スキルが高まり、ベースアップにつながるのです。また、まとめ役を設けることで、マネジメントスキルも身につけざるを得なくなるため、リーダーシップを持った人材も育成できます。

ボトムアップできる環境にするには

ボトムアップ方式で経営できる環境にするための方法をご紹介します。以下でご紹介する4つの方法をぜひ実践してみてください。

トップとの交流の機会を増やす

立場が違う社員同士で交流する機会を作ってみましょう。研修やOJT等、業務に即した形で機会を増やすというのもよいのですが、業務から少し離れる形で、従業員と経営層との定期的な面談やミーティングの場を設けるというのもよい方法です。

これまで長年トップダウンでの経営をしてきた場合、従業員たちはそれに慣れてしまっているため、すぐにボトムアップにシフトすることは難しいでしょう。そのため、まずは交流の機会を増やすことから始めてみるのがおすすめです。

現場でのコミュニケーションを活性化させる

現場で従業員同士のコミュニケーションを活性化させることも大切です。例えば、報連相の機会を増やす、ランチミーティングや社内イベントを実施するなど、接触機会の増加を図ります。従業員同士の交流機会を増やすことで、話しやすい環境づくりが行えるのです。

話しやすい環境になり意見が出やすくなれば、トップに届けられる声が増えます。つまり、経営判断に必要な現場の情報が増えるということです。大きな決断をする際に、現場から得た情報に偏りがあれば、判断を誤りかねません。そうならないために、従業員同士がオープンに話せる場を作りましょう。

コミュニケーションツールを使用する

対面でのコミュニケーションだけでなく、文字のやり取りやテレワークの普及によるビデオ通話などでのコミュニケーションも大切にしてください。伝える手段を増やすためのツールを活用するのもよいでしょう。

チャットツールやバーチャルオフィスツールなど、オンライン上で仕事だけでなく社員同士が交流できるツールは多数あります。面と向かって話すのは苦手だけど、文字のやり取りなら平気、といったようにツールにより従業員がコミュニケーションを取りやすくなることもあります。

自社に合うツールを導入して、多角的なコミュニケーションを図ってみてください。

取りまとめられるリーダーを育てる

リーダーを育てるという意識も大事です。現場の状況を把握し、現場の声をまとめられる優秀な人材の育成は、ひいては会社全体の利益にもつながります。また、現在中堅社員として働いているなら、トップと現場の間に入って積極的に声を上げることで、新たなポジションを掴める可能性があります。

ボトムアップ・トップダウンマネジメントはバランスが重要

ボトムアップとトップダウンのどちらか一方に偏り過ぎると、問題が生じるケースがあります。そうならないためには、バランスが大切です。

利益拡大や人材育成など、組織にとってのメリットを最大化させる場合、トップダウン方式で意思統一を図りながら、ボトムアップで社員の当事者意識を育てる、といったように両者のメリットを掛け合わせた経営を行うようにしてみましょう。両方をバランスよく取り入れると、それぞれのデメリットを打ち消す効果も期待できます。

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