【業種別の意識調査 (卸売業・小売業編)】
管理職は「マネジメント」、一般社員は「チームでの協力」がますます重要に| ニュースリリース |人材育成・社員研修

【業種別の意識調査 (卸売業・小売業編)】管理職は「マネジメント」、一般社員は「チームでの協力」がますます重要に

累計13,000社350万人以上に人材育成サービスを提供する株式会社ラーニングエージェンシー(旧トーマツ イノベーション株式会社、本社 東京都千代田区、代表取締役社長 眞﨑大輔)は、2021年10月11日~12月13日の期間、ビジネスパーソン5,099人を対象に「組織・チームのあり方の変化に関する意識調査」を行いました。今回はその中から「卸売業・小売業の社員に求められることの変化」に関する結果を公表いたします。

背景

国内での事業展開が多い卸売業・小売業は、人口減少やECによる購入経路の多様化などに大きな影響を受けています。今回は、卸売業と小売業に焦点を当て、現場の視点から管理職と一般社員(非管理職)に求められる役割の変化を解き明かすことに取り組みました。2020年から流行している新型コロナウイルス感染症は、一般消費者の生活スタイルや購買行動に大きな変化をもたらしてきました。SDGsやエコに対する意識の高まりも、消費者の商品選択の基準に影響を与えています。これらの変化は卸売業・小売業に対して大きな変化を迫ったことでしょう。では、現場で働く従業員の方には、どのような影響があったのでしょうか。本アンケート結果が、組織づくりや次世代の幹部社員・管理職育成に悩む卸売業・小売業の経営層、人事担当者、さらには現役の管理職の方や一般社員の方にとって有益な情報となれば幸いです。

*本調査は、ラーニングエージェンシー設立15周年を記念して行いました

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調査結果の概要

  • 1. この10年で卸売業・小売業社員の役割「変化した」が6割
  • 2. 管理職のあるべき姿TOP3は「コンプラ重視」「効率的」「スキルアップ」、実態とは大きな乖離あり
  • 3. 管理職に重視されるスキルは「マネジメント」が最多。市場環境の変化の影響が色濃く出る
  • 4. 一般社員に期待されるのは、個人ではなくチームで協力して成果を上げること
  • 5. 一般社員の重要スキル「タイムマネジメント」「IT・デジタルリテラシー」が過半数、「言語化する力」も4割超
グラフ

調査結果の詳細

1.   この10年で卸売業・小売業社員の役割「変化した」が6割

最初に、卸売業・小売業の管理職や一般社員に求められることが、この10年間で変わったかどうかについて尋ねました。管理職に求められることが変わったと回答した卸売業・小売業の方は58.2%、一般社員に求められることが変わったと回答した方は60.5%となり、いずれも約6割の方が「変化した」と回答しました(図1・図2)。

図1・図2

これ以降の設問は、卸売業・小売業で求められる管理職や一般社員の姿が10年前と比べて「変化した」と回答した方のみに尋ねました。

2.   管理職のあるべき姿TOP3は「コンプラ重視」「効率的」「スキルアップ」、実態とは大きな乖離あり

卸売業・小売業で管理職に求められる役割が変わったと答えた方は、具体的にどのような点で変化を感じているのでしょうか。まず10年前に求められていた管理職像を複数回答で尋ねたところ、TOP3は「トップダウンで物事を進める(79.4%)」「部下に自分の模倣を求める(63.8%)」「前例を踏襲する(57.1%)」でした。

これに対し、現在求められている管理職像のTOP3は「コンプライアンスやモラルを重視する(84.7%)」「時間内で効率的に終わらせる(75.6%)」「個人としてのスキルアップを志向する(73.2%)」となっています。特に、「個人としてのスキルアップを志向する」は卸売業・小売業を除く全業種(以下、『他業種』と記載)と比べると5.6pt多い結果となりました。また、現在求められる管理職像で上位には入らなかったものの、他業種との差が最も大きかった項目は「決められたことを確実に遂行する(44.9%)」で、他業種よりも6.6pt多い結果となりました(図3)。

図3

現在の管理職に多い傾向では、「コンプライアンスやモラルを重視する(50.4%)」が最多を占め、「トップダウンで物事を進める(46.2%)」「企業利益を重視する(45.6%)」と続きます。

また、求められている役割と実態を比較すると「自ら何をすべきかを定義し、遂行する」が最も乖離が大きく、期待よりも実態のほうが44.7pt低い割合となりました。「ボトムアップで物事を進める」「前例にないことを行う」「個人としてのスキルアップを志向する」も、それぞれ44.4pt、40.9pt、40.5ptの乖離があり、期待より実態が低い結果に。特に「ボトムアップで物事を進める」と「個人としてのスキルアップを志向する」は他業種と比較しても期待と実態の間のマイナス幅がそれぞれ4.9pt、8.9pt大きく、卸売業・小売業ならではの特徴の1つとなっています(図4)。

図4

*図3、図4は項目を抜粋しています。全項目のデータは本レポート末尾の「参考資料」をご覧ください

3.   管理職に重視されるスキルは「マネジメント」が最多。市場環境の変化の影響が色濃く出る

管理職像の変化が生じた理由について3つまで選んでもらったところ、最多となったのは他業種と同じく「働き方(雇用形態や勤務時間・場所など)が多様化した」で、69.5%を占めました。第2位、第3位も同様に「市場環境が変化・複雑化した(61.6%)」「従業員満足度や従業員の働きがいを重視する世の中になった(45.7%)」となっています。特に、卸売業・小売業では「市場環境が変化・複雑化した」を選ぶ割合が他業種よりも多く、その差は11.0ptでした。一方で、「求められる成果がより高くなった(31.7%)」「マネジメントする人材(職種や専門分野など)が多様化した(27.2%)」は、それぞれ他業種よりも4.4pt、4.8pt低い結果となりました(図5)。

図5

卸売業・小売業における管理職像の変化は管理職に求められるスキルや知識にも表れています。10年前に比べて特に重視されるようになってきたと感じる管理職のスキルや知識の第1位は「マネジメント(68.5%)」。他の選択肢より突出して選択されており、他業種と比べても9.5pt多い結果となりました。第2位は「コーチング(43.4%)」、第3位は「IT・デジタルに関するリテラシー(42.9%)」です。「コーチング」は他業種よりも2.9pt多く選ばれました。また、他業種より重視されているスキル・知識として「ティーチング(21.6%、+3.9pt)」も挙げられます(図6)。

図6

4.   一般社員に期待されるのは、個人ではなくチームで協力して成果を上げること

次に、卸売業・小売業の一般社員に関して見ていきましょう。10年前に期待されていたことのTOP3は「定型的な業務を確実に遂行する(75.8%)」「個人として成果を上げる(60.2%)」「上位層の方針や判断をこまめに確認し、行動する(51.5%)」でした。これに対し、現在期待されている項目は「チームで協力して成果を上げる(78.8%)」が最多となりました。第2位・第3位は「自ら現場で判断し、行動する(62.5%)」「周囲を巻き込みリーダーシップをとる(58.7%)」となり、チームで働くことを意識した選択肢が多く選ばれました。特に「チームで協力して成果を上げる」は、他業種より5.6pt多く選ばれています。一方、対極的な意味合いの項目である「個人として成果を上げる」は、期待される割合が10年前から22.7pt減少し、他業種と比べてもマイナス幅が11.9pt大きい結果となりました(図7)。

図7

では、実際に卸売業・小売業の一般社員が担っている役割はどうでしょうか。最も多く選ばれたのは「定型的な業務を確実に遂行する」で57.6%、次が「チームで協力して成果を上げる(45.9%)」「上位層の方針や判断をこまめに確認し、行動する(45.0%)」となっています。

また、求められている役割と実態とを比較した際に大きなスコア差が見られた項目は、「周囲を巻き込みリーダーシップをとる(-35.2pt)」「非定型的な業務・プロジェクト型の業務で役割を遂行する(-34.7pt)」「チームで協力して成果を上げる(-32.9pt)」「自ら現場で判断し、行動する(-32.5pt)」の4項目でした。逆に、現在求められる割合があまり高くないものの、実態では大きな割合を占めたのが「定型的な業務を確実に遂行する(+22.3pt)」でした(図8)。

図8

5.   一般社員の重要スキル「タイムマネジメント」「IT・デジタルリテラシー」が過半数、「言語化する力」も4割超

卸売業・小売業の一般社員にこうした役割の変化をもたらした理由は「状況の変化が速くなった」が最多で、56.0%の回答者から選ばれています。2番目に多く選ばれた「顧客やマーケットのニーズが多様化した」でも約半数の48.5%を占め、他業種より6.9pt多い結果となりました(図9)。

図9

新たに期待される役割に関して、特にどのようなスキルや知識が重視されるようになってきたかという設問では、他業種と同様に「タイムマネジメント(53.9%)」「IT・デジタルに関するリテラシー(52.0%)」「言語化する力(相手に合わせた表現で伝える力)(43.1%)」がTOP3を占めています。「マーケティング(22.8%)」は卸売業・小売業で重視されるスキルの第7位ではあるものの、他業種より9.2pt多く選ばれました(図10)。

図10

まとめ

現在期待されている卸売業・小売業の管理職像のTOP3は「コンプライアンス・モラル重視」「効率的」「個人としてのスキルアップ」となりました。特に「個人としてのスキルアップ」は、他業種よりも強く期待されていることがわかりました。商品の入手経路が多様化し、商品や製品自体のスペックもコモディティ化が進む中、会社としての差別化が困難になっています。このような状況になり、1人ひとりの個人力を高めることが、企業の差別化につながるという危機感が表れているといえます。

管理職に現在期待されていることと実態の乖離が大きい項目は「自らすべきことを定義し、遂行する」「ボトムアップで物事を進める」「前例にないことを行う」「個人としてのスキルアップ」と続いています。特にボトムアップとスキルアップは、他業種と比較して期待と実態の乖離が大きい結果となりました。現場の状況に応じてボトムアップ型で判断し、臨機応変に物事を進めていくこと、前例のないことにも挑戦するために個人がスキルアップをしていくことが求められていますが、現状はまだそのようにはなっていないことがうかがえます。

卸売業・小売業における管理職像の変化の要因では、「市場環境が変化・複雑化した」ことが他業種と比較して突出して高くなり、マーケットの影響を即時に受ける卸売業界・小売業界の特徴が表れているといえます。管理職に必要なスキルでは「マネジメント」を挙げる方が突出して多く、「コーチング」「ティーチング」を選んだ方も比較的多く見られました。市場の変化・複雑化に対応していくために、これまでの自身のマネジメントのあり方や部下育成の方法を見直さなければならないという管理職の危機感が表れていると推察します。

一般社員に目を向けると、10年前と比較して大きく伸びた期待する役割は「チームで協力して成果を上げる」「自ら現場で判断し行動する」「周囲を巻き込みリーダーシップをとる」でした。特に「チームで協力して成果を上げる」は他業種と比べて多く選ばれています。このような変化の要因は「状況の変化が速くなった」「顧客やマーケットのニーズが多様化した」の回答が多く、消費者の生活スタイルの変化により、これまでの成功体験に固執しすぎずに状況によりアンラーニングする必要があること、またこの環境下で成果を出すにはチームで知恵を出し合う必要があるという危機意識の表れだと考えます。

一方、これらの大きく伸びた項目は実態と乖離があります。一般社員が現在担っている役割の実態は「定型業務の遂行」が最も高く、「チームで協力して成果を上げる」「自ら現場で判断し行動する」「周囲を巻き込みリーダーシップをとる」といった期待されている役割に対しては、ずれが見られます。現時点では変革途中の段階にあるようです。

なお、一般社員に特に求められるようになったスキルTOP3は「タイムマネジメント」「IT・デジタルリテラシー」「言語化する力」となり、他業種との順位の違いはありませんでした。残業時間の削減のみならず、仕入れ先との交渉やお客様との会話においてもこれまで以上に相手や手段が多様化していることから、相手に合わせた表現・手段で伝える力の重要性もますます高くなってきているといえます。

卸売業・小売業の社員が期待と実態の乖離を埋め、求められるスキルとのミスマッチを軽減していくためには、管理職も一般社員もチーム力を向上し、ボトムアップ型の業務の進め方に切り替えていくことに加え、上記で触れたような個人としての新たなスキル・知識の習得も同時に行っていく必要があるでしょう。本調査レポートが、皆様のチーム・組織運営のあり方を見直し、管理職だけでなく一般社員も含む役割の見直しの一助となれば幸いです。

調査概要

調査対象者 当社が提供する研修(会場型・オンライン型)、オンライン講演の受講者
調査時期 2021年10月11日~2021年12月13日
サンプル数 <卸売業・小売業>663人 <他業種(卸売業・小売業以外の全業種)>4,436人
属性 <卸売業・小売業>
(1)年代
20代以下 153人(23.1%)
30代 184人(27.8%)
40代 193人(29.1%)
50代 108人(16.3%)
60代以上 11人(1.7%)
不明 14人(2.1%)

(2)役職
一般社員(非管理職) 518人(78.1%)
 └一般社員クラス 354人(53.4%)
 └係長・主任クラス 160人(24.1%)
 └その他(専門職・特別職など) 4人(0.6%)
管理職 139人(21.0%)
 └課長クラス 96人(14.5%)
 └部長クラス 37人(5.6%)
 └経営層・役員クラス 6人(0.9%)
不明 6人(0.9%)

(3)従業員数
100人以下 163人(24.6%)
101人~300人 277人(41.8%)
301人~500人 81人(12.2%)
501人~1,000人 33人(5.0%)
1,001人以上 86人(13.0%)
わからない 17人(2.6%)
不明 6人(0.9%)
<他業種(卸売業・小売業以外の全業種)>
(1)年代
20代以下 1,338人(30.2%)
30代 1,154人(26.0%)
40代 1,104人(24.9%)
50代 661人(14.9%)
60代以上 79人(1.8%)
不明 100人(2.3%)

(2)役職
一般社員(非管理職) 3,667人(82.7%)
 └一般社員クラス 2,597人(58.5%)
 └係長・主任クラス 1,021人(23.0%)
 └その他(専門職・特別職など) 49人(1.1%)
管理職 722人(16.3%)
 └課長クラス 530人(11.9%)
 └部長クラス 165人(3.7%)
 └経営層・役員クラス 27人(0.6%)
不明 47人(1.1%)

(3)従業員数
100人以下 1,066人(24.0%)
101人~300人 1,939人(43.7%)
301人~500人 537人(12.1%)
501人~1,000人 386人(8.7%)
1,001人以上 355人(8.0%)
わからない 106人(2.4%)
不明 47人(1.1%)

(4)業種
情報通信業 1,319人(29.7%)
製造業 758人(17.1%)
サービス業(他に分類されないもの) 519人(11.7%)
学術研究,専門・技術サービス業 249人(5.6%)
建設業 243人(5.5%)
不動産業,物品賃貸業 201人(4.5%)
その他,不明 1,147人(25.9%)

*本調査を引用される際は【ラーニングエージェンシー「卸売業・小売業の社員に求められることの変化に関する調査」】と明記ください

*各設問において読み取り時にエラーおよびブランクと判断されたものは、欠損データとして分析の対象外としています

*構成比などの数値は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計値が100%とならない場合がございます

株式会社ラーニングエージェンシー

当社は、設立以来、定額制集合研修 「Biz CAMPUS Basic」、ビジネススキル学習アプリ「Mobile Knowledge」、ビジネススキル診断テスト「Biz SCORE Basic」など、人と組織の学びを支援するサービスを開発・提供することで、これまでに累計13,000社以上の企業を支援しています。

代表取締役社長 眞﨑 大輔
事業内容 人材育成・教育研修
本社所在地 東京都千代田区有楽町 2-7-1 有楽町 ITOCiA(イトシア)オフィスタワー18F
URL www.all-different.co.jp

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