アナロジー思考とは?意味と使い方・ビジネス事例・トレーニング方法

published公開日:2024.10.11
アナロジー思考とは?意味と使い方・ビジネス事例・トレーニング方法
目次

ビジネスで注目されるアナロジー思考は、商品・サービスの新しいアイデアにつながります。しかし、アナロジーとは何か、具体的にビジネスではどのような使い方が可能なのかを理解しなければ、効果は半減するでしょう。

本コラムでは、「アナロジー思考とは何か」という基本からビジネスでの事例、得意な人の特徴、トレーニング方法まで解説。アナロジー思考活用の“はじめの一歩”にお役立てください。

アナロジー思考とは

アナロジー思考とは、ある分野で見られる構造を別の分野に応用して考えることです。

有名な事例では、グラハム・ベルが開発した電話の送受話器があります。これは、人間の耳の構造から着想されました。近年の例でいえば、雑誌の定期購読に見られる「一定期間のサービスの利用権」を販売するビジネスモデルを雑貨や家具、アプリケーションなどに応用したサブスクリプションモデルがあるでしょう。

競合の企業が展開しているサービスや商品の特徴をそのまま自社の商品・サービスに使ってしまうと盗用になります。しかし、他の分野で成功している商品・サービスの考え方を応用することは、盗用ではなく「アナロジー思考」の産物です。

現在のビジネスシーンにおいても、後述する「将棋ウォーズ」開発や寝具業界におけるビジネスモデルのように、アナロジー思考が活用されている事例は珍しくありません。複数の事象の構造から類比的に考えるという“思考のクセ”が、新規事業のアイデアや顧客価値の向上につながるのです。

そもそもアナロジーとは、どういう意味?

ビジネスにおける事例やアナロジー思考の特徴をより深く理解するため、まずは「アナロジー」という言葉の意味をおさえましょう。例文とともに解説します。

アナロジーの辞書的意味・日本語での言い換え

「アナロジー」の辞書的意味は、「ある事柄をもとにして、他の事柄について推し量ること」。つまり、もとになる事柄(ベース)と推し量りたい事柄(ターゲット)の間に何らかの類似点があることに注目し、類似点以外の部分についても類推することです。

よって、アナロジーという言葉を言い換えると、「類推」「類比」などとなります。

アナロジーを用いた例文

アナロジーについて理解を進めるため、具体的な例文も確認しておきましょう。

有名な例の1つが、いわゆる「クジラ構文」です。

【クジラ構文】

クジラが魚でないのは、馬が魚ではないのと同じことだ。

クジラと馬には、どちらも哺乳類であるという共通点があります。そして、「哺乳類は魚類ではない」という関係は、クジラよりも馬のほうが理解しやすいでしょう。これを利用して、「海で泳ぐ流線形の動物であっても、哺乳類である以上は魚ではない」ことを説明しています。

では、ビジネスシーンではアナロジーをどのように使えるのでしょうか。例えば、次のような言い方を考えてみましょう。

【ビジネスでのアナロジー】

新人にこのプロジェクトをやらせるのは、普段走らない人に突然フルマラソンをさせるようなものだ。

「新人」も「普段走らない人」も、どちらも挑戦させようとする事柄に対して初心者です。初心者にとって、フルマラソンを走ることは非常に困難であり、下手をすればケガをする恐れさえあるでしょう。

このことから、例文は「新人が当該プロジェクトに取り組む困難さ」を類推させる表現となっています。

アナロジーとアブダクション・メタファー・例え話の違い

アナロジーと比較される言葉に、「アブダクション」「メタファー」「例え話」があります。いずれもアナロジーとは深い関係にある言葉であり、アナロジー思考においても重要な方法です。

アナロジーとアブダクション

アブダクションとは、アメリカの哲学者C.S.パースが、演繹や帰納のほかに提案した推論形式です。アナロジーとは異なりますが、「アナロジー思考」においては活用されます。

ここで、アブダクションとは何かを理解するために、少し頭の体操をしましょう。

厳密な論理では、「AならばBである」ことが成立しても、その逆「BならばAである」が成立するとは限りません。

【例】

「郵便ポストであるなら、赤い色をしている」

→「これは赤い色をしているから、郵便ポストである」?

(ほかに赤い色のものはたくさんある)

しかし、日常生活では「AならばBである」から「BならばAである」を推論することは意外と多いものです。

【例】

「優秀な営業は、顧客のリサーチを怠らない」

→「彼は顧客のリサーチを怠らないから、優秀な営業だ」?

このように、既に成立している「AならばB」からその逆「BならばA」を推論する形式が、アブダクションです。

アブダクションは、日常ではよく使われる推論形式ですが、厳密に正しい推論ではありません。そのため、「BならばA」は、あくまで仮説となります。

アナロジー思考でアブダクションを用いる例としては、「あの業界ではAというアイデアを用いることで成功した」という事実から、「うちの業界で成功するには、Aというアイデアが使える」などの仮説を立てることなどがあります。

アナロジーとメタファー

メタファーは、「隠喩」や「暗喩」と呼ばれる表現技法を意味します。直喩・明喩と呼ばれる「〜のように」を使った比喩表現とは異なり、「〜のように」を使わずに表現するものです。

次の例文をご覧ください。

【メタファーの例文】

社用車の中はサウナだった

これは「実際に社用車の内部がサウナに改造されていた」という話ではありません。夏の暑さの中で社用車内の温度が非常に高くなり、それをサウナの温度に例えて表現したものです。

メタファーには、アナロジーが活用されているといえます。社用車の中の「温度の高さ」とサウナの「温度の高さ」という類似点に注目し、別の事象同士を結びつけて「高温の中にいるつらさ」を類推させる効果があるからです。

アナロジーと例え話

例え話も、ある事象を説明するために他の事象を用いるという点で、メタファーと共通しています。そのため、例え話もアナロジーで使われる表現の1つです。

例え話とメタファーに違いがあるとすれば、それを用いた表現の長さ・量でしょう。メタファーは文章内の特定部分における表現の形式を指しますが、例え話は一定の長さがある寓話のようなものです。

新人をプロジェクトにアサインするという先の例に関連していえば、「このプロジェクトはフルマラソンだ」はメタファーです。

一方、「ベテランのAさんを何回もフルマラソンを完走するようなランナー、新人のBさんを今年の4月にはじめてジョギングに挑戦し始めた人だとしよう。このとき……」などと説明するのであれば、それは例え話ということになります。

アブダクション、メタファー、例え話はアナロジー思考の手段

以上のように、アブダクション(推論形式)、メタファー(比喩表現)、例え話(寓話的)は、いずれもアナロジー思考に活用できる考え方や表現です。

しかし、ここで注意しておきたいことがあります。それは、「アナロジー思考の重要性は、アブダクション、メタファー、例え話を使って説明すること自体にはない」ということです。

アナロジー思考の目的は、「アイデアを出す」「わかりやすく説明する」ところにあります。言い換えれば、アブダクションなどの手段を上手に組み合わせつつ、実際のビジネスに活用できるアイデアを練り上げることこそ、アナロジー思考の本当の目的なのです。

「手段の活用に終始して目的を忘れてしまった」ということのないよう、十分気をつけなければなりません。

アナロジー思考のビジネス活用事例

ビジネスにおけるアナロジー思考の具体的な活用例には様々なものがありますが、近年では、特に詳細なインタビューを実施した坂井氏・井上氏による論文「アナロジーによるビジネスモデル創造 —準抽象化理論における経験の役割—」があります。

今回は、その論文からHEROZ株式会社の共同代表の一人である林隆弘氏、および株式会社エムール代表取締役の高橋幸司氏が用いたアナロジー思考の例をご紹介します。

HEROZ株式会社の将棋AI開発と営業戦略

HEROZ株式会社(東京都港区、以下HEROZ)は、「将棋AI」の開発と活用によるサービス「将棋ウォーズ」で知られるIT企業です。

同社はAI関連の手法を得意としており、2024年5月には生成AIを活用した企業向けAIアシスタントSaaS「HEROZ ASK」をリリースしました。これは、社内の様々なデータを探して要約・翻訳をしたり、音声のテキスト化を行ったりするシステムです。

共同代表者の一人である林氏は、「朝日アマチュア将棋名人戦」で全国優勝を果たした実力者。HEROZのAI開発や営業戦略などでも、将棋の経験をベースとする多数のアナロジー思考を活用してきました。

例えば、将棋AIと「将棋ウォーズ」の開発は、林氏自身が対局中に感じた「(名人が)その場で教えてくれれば」という思いに着想を得ました。将棋AIが自分の代わりに指すという代指し機能「棋神降臨」として、これを実装。ユーザーが「将棋ウォーズ」における自身の対局で困った際に活用することで、ただ将棋をするだけでなく、指し方を見て学べるという付加価値のあるアプリを開発できたのです。

その後の事業継続においても、自社がエンジニア中心の少数精鋭企業であるという点と、少ない兵力で大きな相手と戦うという将棋の戦略がもつ類似性に注目。他社とは異なる選択と集中を意識した営業戦略を展開し、成約の確度を向上させています。

株式会社エムールのビジネスモデル構築

株式会社エムール(東京都立川市、以下エムール)の代表取締役である高橋氏は、ユニクロやアシックス、ZOZOなどのビジネスモデルをベースとしたアナロジー思考により、自社のビジネスモデルを構築しました。

同社の中心的事業は、寝具・家具の商品開発・販売と「寝室空間」全体の提案です。その中で課題となっていたのが、寝具・家具の商品開発・販売におけるコストパフォーマンスでした。

ここでアナロジー思考のベースとしたのは、SPA(製造小売業)のリーディングカンパニーであるユニクロとGAPのビジネスモデルです。両者は、業界における“様々なメーカーの製品を集めて販売する”という従来の形態ではなく、自身で商品開発と販売を行うことで人気ブランドとなりました。

高橋氏によれば、寝具の業界も同様の構造をもっているとのことです。SPAのビジネスモデルを応用し、エムールも寝具の「オリジナル総合メーカー」として企画から販売まで手がけることにより、高品質低価格を実現しました。

他方、寝室を中心とする睡眠環境の提案では、アシックスやZOZOなどが展開するオーダーメイド製品の発注システムや、リンクアンドモチベーションズの従業員の活力に注目したコンサルティング事業をベースとして、アナロジー思考を活用しました。

顧客一人ひとりに対する“パーソナライズした睡眠環境の提供”というこのアイデアは、やがて同社のサービスである「法人向け睡眠コンサルテーション」に結実。健康経営実現および企業の生産性向上の観点から、一人ひとりに合わせたソリューションを提供するビジネスモデルです。

*参考:坂井貴之・井上達彦(2023年)「アナロジーによるビジネスモデル創造」,『日本ベンチャー学会誌』41 巻, p. 43-58

アナロジー思考が得意な人の5つの特徴

上記の事例では、ビジネスモデル構築や商品・サービスの開発にアナロジー思考が用いられました。これ以外にも、アナロジー思考には「日々の業務・経験で、他の人よりも多くのことに気づきやすくなる」などのメリットがあります。

アナロジー思考が得意な人のもつ主な特徴から、5つをご紹介しましょう。

問題の本質に気づきやすくなる

アナロジー思考が得意な人は、物事の仕組みや構造を抽出する視点をもっています。多くの人が表層的な性質に注意を向けて判断する傾向があるのに対し、アナロジー思考の人は「内部」に目を向けているからです。

エムールの高橋氏の例でいえば、ユニクロやGAPがカジュアルウェアであるのに対し、自身の業界は寝具でした。ユニクロなどは主に外出するために身にまとうファッションを展開する業界であり、寝具は家の中で過ごすための環境作りを行う業界。この点では、両者は対極にあります。

しかし、高橋氏は業界の構造を見ていました。そうすることで、寝具や睡眠に関わる業界の問題の本質に気づき、自社のコストパフォーマンスを向上させる解決策を見いだしたのです。

物事の関係性を見つけられる

問題の本質を構造レベルで見極められるアナロジー思考は、一見無関係な物事の間に何らかの関係性を見つけることも得意です。そのため、他の人が気づかないような類似性、相違点、相関関係などについて、アナロジー思考を得意とする人がそれらを指摘する場面は多く見られます。

例えば、ホテルの客室と旅客機の座席の類似性がわかりやすいでしょう。部屋や座席には、それぞれいくつかの種類があり、どのくらい多くのお客さまが利用するかが売上に関わります。なるべく多くの人に利用してもらえるよう、当日の状況、顧客の条件によって、無料アップグレードや格安での提供などを行い、空室や空席を可能な限り減らす工夫をしてきました。

両者は、提供するサービスのグレードによって事業自体が分かれている点も似ています。ビジネスホテルとシティホテルの区別を格安航空会社と一般航空会社の区別に対応させて考えることができるでしょう。

小さな経験から大きな学びを得られる

アナロジー思考が得意な人は、日常の小さな経験においても、無意識のうちに物事の抽象化や類似点・相違点の探索を行います。

ホームセンターへ買い物に訪れた際、ドッグフードとキャットフードの商品展開の類似性・差異性に注目したり、リビング用品・キッチン用品とキャンプ用品のバリエーションを比較したり。あるいは、飲食店を利用したときに、店内のオペレーションから業務分担やコミュニケーション方法を学ぶこともあるかもしれません。

アナロジー思考に慣れている人は、そうした日常の些細な出来事でも新しい知識を既知の事柄と結びつけて考え、共通点と応用可能性に気づき、他の人よりも深い理解と学びを得ているのです。

日常の経験をビジネスに応用できる

以上のような特徴は、当然ながらビジネスシーンでも大いに役立ちます。日々の業務や私生活でのささいな気づきを、商品開発・商談・顧客とのコミュニケーションの中で応用できるからです。

相手方の話から類推して提案する場合、たとえ業界の細かな事情を知らなくても、構造的に類似する事象を知っていれば、問題がありそうな部分やその解決策の方向性を見いだしやすくなるでしょう。相手がまだ言及していない問題点に先回りして気づき、解決の糸口を提案できる可能性も高くなります。

こうしたアナロジー思考は、相談や交渉の相手方に好印象を与えます。

「熱心に問題に向き合ってくれている」

「付け焼き刃ではない、本質的な提案をしてくれる」

という信頼感は、その後も続くビジネスで成功するために必要不可欠な要素です。

他業界のアイデアを自社に応用できる

さらにアナロジー思考を活用できる人は、他業界のアイデアを自社の商品・サービスに応用するという、より複雑な活用も可能になります。企業の経営層や上位の管理職にとって非常に重要な能力です。

複雑なアナロジー思考は、周囲の人から見れば「無関係なことに気を取られている」と思われやすいものです。しかし、どの業界のアイデアが自社に応用できるかは、実際に事例を収集し、構造を分析してみなければわかりません。

そのため、アナロジー思考が得意な経営層は、経済系の全国紙や自社が関わる業界紙のみならず、一見関係のなさそうな業界の雑誌、新聞、コラムなどにも目を通しています。異業種交流会などで、他業界の情報収集を行うこともあるでしょう。

「まさか、そのような考え方があったとは」と周囲が思わず唸るような発想は、地道な情報収集と高度なアナロジー思考のたまものといえるのです。

アナロジー思考のトレーニング方法

最後に、アナロジー思考のトレーニング方法における4つのポイントをチェックしましょう。

多くのメリットをもつアナロジー思考を習得するには、日々のトレーニングが必要です。“思考のクセ”をつける訓練ですので、1〜2日で効果が出るものではありません。しかし、トレーニングを続ければ息をするようにアナロジー思考を使えるようになります。

複数の事象の共通点を見つける

アナロジー思考の根幹は、異なる複数の事象の間に見られる共通点を見つけることにあります。例えば、机の引き出しとバッグの共通点は「ものを入れておくもの」、パソコンと机の共通点は「作業で使う場所」などです。

こうした共通点は、視点を変えることで、いくらでも見つけられるでしょう。個人的な体験をもとに机の引き出しとバッグの共通点を「見られたくないものを隠す場所」と考えることもできますし、「なくても別の手段で代替できるもの」と考えることもできます。

複数の事象の共通点を見つける練習では、日常の些細なことから時事問題、社内で観察できる事象など、手元にある素材を絶えず比較・分析することが大切です。

「大きさではどうか?」

「機能面ではどうか?」

「歴史的観点で見ると?」

「市場価値の動向は?」

「使う人は主にどのような人?」

など、複数の問いを立てて考えてみてください。

事象同士の相違点を見つける

反対に、事象同士で異なる点を見つけることも重要です。共通点ばかりを見ていると、「AとBには共通点がある。だからBではAの手法を使えるはずだ」という考えにとらわれ、無視すべきではない相違点を見逃し、妥当性の低い類推をする可能性が高まってしまうからです。

相違点を見つけるトレーニングでは、共通点を見つけるために使った問いを流用できます。慣れれば、共通点と相違点の分析を同時に行うことも可能です。

もし問いが浮かばないようなら、「オズボーンのチェックリスト」をアレンジして活用しても構いません。例えば、

「転用」→AとBのそれぞれの使い道は何か?

「逆転」→前後や上下左右、使う人を逆転させるとどうか?

「結合」→他のものとの組み合わせで、何があるか?

といった具合です。

他のフレームワークも、同様の方法でアナロジー思考の訓練に活用できるでしょう。

目的をもって構造を分析する

共通点・相違点を探す際は、目的をもつことも意識しましょう。複数の共通点や相違点が見つかったとしても、それを関連づける土台がなければ、アイデアは発散したままで終わってしまいます。

アナロジー思考の際に必要な目的とは、例えば「新規プロジェクトで開発する製品の方向性を決定する」「より効率的な会議の進め方を考える」などです。効率的な会議の進め方についてアイデアを出したい場合、まずは性質が似ている「話し合いの場」の例を列挙して分析することができます。

インターネットやビジネス書を活用して、問題解決の回答を直接得たいと考えるビジネスパーソンもいるかもしれません。しかし、それではアナロジー思考の訓練にはなりません。あえて「答えのある場所」を外し、学生時代に体験したクラスやサークルでの話し合い、家族会議、友人との相談などに目を向けることが大切です。

分析対象を定めたら、次は「成功した理由」「失敗した理由」などを分析しましょう。対立したときの感情、合意が成立したときの振る舞いなども比較すると、より広範囲に活用できるアイデアが生まれやすくなります。

余裕があれば、さらに視点を拡大して「メール連絡」「SNSでの情報収集」など、直接は結びつかないように見られる事象も分析してみてください。思いがけないヒントを得られるかもしれません。

分析で得られた構造を別のものに当てはめる

構造分析と共通点・相違点の分析ができたら、それらを本来の目的である問題解決につながるアイデアに収束させましょう。

ここで気をつけたいのは、見つけた共通点・相違点を全てアイデアに活用できるとは限らないということです。せっかく見つけた特徴を捨てるのは「もったいない」と感じるかもしれませんが、「目的は何か」をもう一度確認し、それに応じた要素の取捨選択を行いましょう。

前項の「より効率的な会議の進め方」でいえば、一例として次のようなアイデアのまとめ方が可能です。

【アナロジー思考のアイデアのまとめ方(例)】

分類 具体的なアイデア
事前準備 セミナー講師のように、資料と段取り、制限時間を事前に決める
メールなどで、議題に対する最初の提案をメンバー全員で共有する
発言の方式 人数が多い場合、学級会のように手挙げ方式で意見を出してもらう
人数が少ない場合、家族会議のようにメンバー全員が順番に意見を出す(必要に応じて指名する)
進行・まとめ SNSのように、動画や画像、テキストで視覚的に問題を把握できるようにする
ワークショップのように、参加者から出た意見をホワイトボードに貼り出す
SNSのように、出された意見をテーマごとにスレッド風にまとめる

アイデアをまとめ終えたら、「これらを実現した会議はどのようになるのか」を検討しましょう。問題が発生しそうなポイントを見つけた場合は、再度アイデアを出します。

アナロジー思考は、あくまでアナロジーによるインスピレーションに導かれた仮説の立て方に過ぎません。アイデアを出したあとは、実際に検証を経て改善を重ねることが不可欠です。

アイデアを“出しっぱなし”にせず、検証と改善のサイクルに落とし込み、より現実的な解決策を導くエンジンとして機能させていきましょう。