自己肯定感とは?高い人・低い人の特徴と高める方法、仕事への影響をわかりやすく解説



自己肯定感とは、自分の価値を肯定し、自分自身を受け入れる感覚のことです。自己肯定感が高い人は好循環を生み出す一方で、低い人は自分に自信が持てないなどの特徴があります。
本コラムでは、自己肯定感とは何か、高い人・低い人の特徴、仕事にもたらす影響、自己肯定感を高める方法について解説します。
自己肯定感とは
自己肯定感とは「ありのままの自分」を受け入れて、自分の価値や存在意義を肯定する感覚のことです。他人からの評価に左右されず、「自分には価値がある」と自分自身で感じることが重要なポイントです。同じような意味合いの言葉に「自己尊重感」や「自尊心」などがあります。
自己肯定感が高いと、物事を前向きに進めやすく、好循環を生み出せます。一方、自己肯定感が低いと「自分はだめだ」「周りの人より能力が劣っている」と、自分をなかなか認められません。
ただし、自己肯定感は生まれつきの能力ではなく、考え方や気持ちを少し切り替えるだけで高められます。自己肯定感の高い人、低い人の特徴や、高める方法は後述します。
自己肯定感の種類
自己肯定感には大きく分けて「絶対的自己肯定感」と「社会的自己肯定感」の2種類があります。1つずつ解説します。
絶対的自己肯定感
絶対的自己肯定感は、「自分は自分でいい」と自分の存在そのものを肯定する感覚を指します。他者の評価や、自分の長所・短所に関係なく、「どんな自分であっても価値がある」と認められることが特徴です。絶対的自己肯定感は幼少期に愛情を注がれた経験が土台となり、育まれるといわれています。
社会的自己肯定感
社会的自己肯定感とは、他者との比較や外部からの評価といった外的要因によって育まれる感覚です。例えば、仕事で成果を出した経験、努力して資格を取得した際の達成感、他者からの感謝などがきっかけとなります。社会的自己肯定感は、仕事や人間関係における自信やモチベーションにつながります。
自己肯定感と自己効力感の違い
自己肯定感と混同されやすい言葉に「自己効力感」がありますが、両者は異なるものです。
自己効力感とは、目標達成や課題解決に必要な能力があると自覚している感覚を指します。例えば、新しい仕事を任されたときに、自己効力感が高い人は「できる」と感じ、低い人は「無理だ」と諦めてしまいます。自己効力感が高いことで、行動する勇気や前向きな姿勢が生まれるのです。
一方、自己肯定感は、自分の存在そのものに価値があると認める感覚です。能力の有無にかかわらず、自分を受け入れるため、失敗しても挑戦を続けられます。
このように、自己効力感は行動する原動力となり、自己肯定感はそれを支える土台となります。どちらもバランスよく高めることが重要です。
自己肯定感が注目された背景
自己肯定感という言葉は、1994年に高垣忠一郎氏が著書で示し、主に教育現場で注目を集めました。
その後、2019年に内閣府が発表した調査結果などから、日本の子どもたちや若者の自己評価が他国と比べて低いことが問題視されるようになりました。日本財団が2024年2月に実施した「18歳意識調査」においても、「自分の行動で国や社会を変えられると思う」と回答した日本の若者は約46%、「自分には人に誇れる個性がある」と答えた人は約54%で、いずれも調査対象6カ国中で最下位でした。
このような自己肯定感の低さの背景には、謙虚さを美徳とする日本の文化や、他人との比較を重視する教育環境などが影響していると考えられます。
自己肯定感が高い人・低い人の特徴
自己肯定感の高さは、物事に取り組む際の姿勢やパフォーマンスに大きく影響します。ここでは、自己肯定感が高い人と低い人の特徴を解説します。
自己肯定感が高い人の特徴
自己肯定感が高い人には、いくつかの共通点があります。その具体的な特徴を見ていきましょう。
ありのままの自分を受け入れる
自己肯定感が高い人は自分の得意・不得意を客観的に理解し、ありのままの自分を受け入れています。そのため、自分の短所でさえもポジティブに変える力を持っています。不得意なことがあっても、自分を卑下することはありません。前向きに取り組むことで、日々のモチベーションを保ちます。
主体的に行動する
物事に積極的に取り組み、主体性が高いことも自己肯定感が高い人の特徴です。自分の考えや価値観に自信を持っているため、他人に依存せず、自分で判断して行動できます。「自分はこうしたい」と周囲に伝える力があるため、仕事でもプライベートでもリーダーシップを発揮する場面が多いでしょう。
失敗を乗り越える力がある
自己肯定感が高い人は、失敗を恐れずに挑戦し続けるマインドを持っています。他人からの評価や周りの目を過度に気にせず、自分らしく物事に取り組めます。
万が一、失敗しても「何度も挑戦すれば成功する」と前向きに考え、失敗を乗り越えられるでしょう。また、周囲からフィードバックをもらった際には、アドバイスを素直に受け入れ、改善につなげる柔軟さがあります。
コミュニケーションが円滑にできる
自己肯定感が高い人は、周囲の人も肯定的に捉えるため、円滑なコミュニケーションが図れます。相手の良いところを見つけるのがうまく、自然とチームや仲間から慕われることも多いでしょう。他人と衝突することはほとんどなく、良好な人間関係を築けます。
自己肯定感が低い人の特徴
自己肯定感が低い人には、否定的な思考や他人に依存する行動など、いくつかの共通点があります。その具体的な特徴を解説します。
挑戦をためらいやすい
自己肯定感が低い人は、自分を信頼できず、「何をやっても失敗してしまう」「自分にはできない」など、否定的に考えがちです。「失敗するのが怖い」という気持ちが先行し、新しいチャレンジに踏み出しにくい傾向があります。
他人と比較して落ち込みやすい
他人と自分を過剰に比較し、自己嫌悪に陥りやすいのも自己肯定感が低い人の特徴です。自己肯定感が高い人であれば、他人との比較を成長のきっかけにできますが、自己肯定感が低い人にとっては心の負担につながります。
これは、自分の価値に気づけず、物事をネガティブに考えやすいことが原因です。嫉妬や劣等感で苦しむだけでなく、精神状態も安定しないことが多いでしょう。
承認欲求が強い
自己肯定感が低い人は自分自身を肯定することが苦手なため、他人からの評価や承認を強く求める傾向があります。他人の期待に応えることで承認欲求を満たそうとし、自分ではなく他人の基準で物事を判断します。その結果、自分の価値を見いだせなくなり、周囲に依存することも少なくありません。
過去の経験を引きずりやすい
自己肯定感が低い人は、過去の失敗やネガティブな経験を引きずりやすい傾向があります。例えば、優秀な兄弟と比べられて育った経験や、大きな失敗をした記憶がトラウマとなっているケースがあるでしょう。
過去の経験への執着が「またつらい思いをするかもしれない」といった不安につながり、自己肯定感をさらに低下させる原因になります。
自己肯定感が仕事にもたらす影響
自己肯定感は、仕事のパフォーマンスや取り組み方に大きな影響を与えます。自己肯定感が高い場合は積極的に良い結果を生み出す一方で、低い場合には様々な課題が生じます。ここでは、自己肯定感が低い場合の仕事への影響について解説します。
新しい仕事を避ける
自己肯定感が低い人はネガティブな感情に振り回されやすく、「失敗したらどうしよう」「周囲に批判されるのではないか」という恐怖を抱えています。その結果、新しいことへの挑戦を避け、自分がやり慣れた仕事しか選びません。
些細なミスであっても、自分の人間性まで否定する可能性も。新しい仕事を任せる際は、小さな成功体験を積ませるなど、プレッシャーを取り除くような工夫が必要です。
自分の能力を適切に把握できない
自己肯定感が低い人は自分の能力を過小評価し、「自分にはできない」と決めつけがちです。「できない」という気持ちが先行しているため、本来の能力を発揮する前に、チャンスを逃してしまいます。結果として、仕事でも良い成果につながりません。
また、失敗して自分が傷つかないように、保守的な選択をする側面もあり、可能性を閉ざす要因となっています。
コミュニケーション不足が生じる
仕事を円滑に進めるには、チーム内での情報共有が欠かせません。しかし、自己肯定感が低い人は他者とのコミュニケーションが不足する傾向があります。その背景には、コミュニケーションを取ることで、「周りの人と比較して劣等感を抱きたくない」「ミスを報告して怒られたり幻滅されたりしたくない」という気持ちがあります。
結果として、仕事で必要な情報伝達がスムーズにいかず、業務に悪影響を与えてしまうのです。コミュニケーション不足は、職場の信頼関係を損なう原因にもなり得ます。
納期までに仕事が終わらない
自己肯定感が低い人は、頼みを断ることを「相手を否定すること」と捉え、仕事を引き受けすぎる傾向があります。結果として、仕事が増えすぎて納期に間に合わず、周囲に迷惑をかけることが少なくありません。
さらに、「自分のせいで仕事が遅れている」と考え、1人で抱え込むなど、悪循環に陥ってしまいます。
頑張りすぎて折れてしまう
自己肯定感が低い人は「今の努力ではまだまだ足りない」と感じやすく、必要以上に頑張りすぎます。その要因としては、責任感の強さや完璧主義、他の人に仕事を頼めないことなどがあります。
責任感の強さは良い面もありますが、仕事に注ぐエネルギーが過剰になると、心が折れてしまうかもしれません。人に頼れず、根を詰めすぎてしまう場合は、自己肯定感の低さが原因の可能性があります。
自己肯定感を高めるポイント
自己肯定感は、幼少期の体験が影響すると考えられていますが、大人になってからでも高められます。もし、「自己肯定感の低い人の特徴に当てはまる」と感じた方も、心配する必要はありません。仮に、今は自己肯定感が低くても、考え方や気持ちの切り替え方を少しずつ改善し、習慣化することで、自己肯定感は向上します。
ここでは、自己肯定感を高める方法として、以下の2つを紹介します。
- 現状を客観的に受け入れる
- 小さな成功体験を積み重ねる
詳しく見ていきましょう。
現状を客観的に受け入れる
自己肯定感を高めるには、自分の現状を客観的に把握することが重要です。自己肯定感が低いことも含めて、自分の全てを受け入れましょう。
すぐにできる方法としては、ネガティブな気持ちや不安、モヤモヤした思いをノートやメモなどに書き出すことがおすすめです。他人に見せる必要はないため、思いつくままに素直に書いてください。
書き出した内容の中には、否定的な言葉が含まれているかもしれません。その言葉を次のようにポジティブな言葉に書き換えましょう。
- 「どうせうまくいかない」→「やってみないとわからない」
- 「失敗した」→「学びが増えた」
- 「あの人みたいにはできない」→「自分に合ったペースでやろう」
このように自分の思考を整理することで、少しずつ受け取り方のクセを矯正していきます。これを繰り返すことにより、ネガティブな考えや気持ちをポジティブに変換できるようになり、自己肯定感が高まります。
小さな成功体験を積み重ねる
自己肯定感を高めるためには、小さな成功体験の積み重ねが欠かせません。成功体験とは、自分が行動を起こし、その結果「できた」と感じる経験のことです。
まずは、少し努力すれば達成できそうな目標を設定しましょう。大きな目標ではなく、すぐに取り組めるものが適しています。例えば、「締切を守る」「タスクを書き出して優先順位をつける」など、現実的な目標がおすすめです。
目標が見つからないときは、「マズローの欲求5段階説」を参考にするのも1つの方法です。この理論では、人間の欲求が生理的欲求から自己実現欲求までの5段階に分かれており、低階層の欲求が満たされると、次の欲求を追求しやすくなるとされています。

最初は、最も低い階層にある生理的欲求を満たすことから始めてみましょう。「毎日6時間以上の睡眠をとる」「食事の時間を守る」といった基本的な目標をクリアすることで、次第に大きな目標にも挑戦しやすくなります。
達成できた自分を褒め、ときどき振り返ることで、自信を持てるようになり、自己肯定感の向上につながります。
部下やチームの自己肯定感を高める方法
職場での自己肯定感の向上は、チーム全体の生産性に影響を与える重要な要素です。ここでは、部下やチーム全体の自己肯定感をあげるためのアプローチをご紹介します。
部下のやる気を引き出す自己肯定感の高め方
部下に自己肯定感を高めてもらうには、日常的なコミュニケーションの中で、部下の良いところを見つけ、具体的に言葉にして伝えることが大切です。例えば、「この資料はとてもわかりやすい」「プレゼンの内容が的確だった」など、具体的なフィードバックを伝えることで、部下は自分の能力を認識し、自己評価をあげるきっかけになります。
また、今取り組んでいる仕事よりも、少しだけレベルの高い仕事を任せることも、部下の成功体験につながります。部下が目標をクリアできた際には、大げさなくらい褒めることで、次への意欲を引き出します。
失敗したときは、落ち込む必要はないことを伝え、「何を学べたか」を話し合うとよいでしょう。成功しても失敗しても学びを得られると知ることで、自己肯定感が向上します。
自己肯定感を高めるチームの作り方
職場全体の雰囲気をポジティブに保つことは、メンバーの自己肯定感向上に欠かせません。メンバー同士が気軽に意見を交換し、認め合う環境を整えることが重要です。例えば、メンバー同士で感謝やポジティブなフィードバックを伝える場として、社内のイントラネットやチャットツールなどを活用するのもよいでしょう。
また、リーダー自身がポジティブな態度を示すことも効果的です。リーダーがオープンな姿勢でフィードバックを受け入れ、失敗を恐れない態度を示すことで、チーム全体の心理的安全性が高まります。これにより、メンバーが安心して発言や行動できるようになります。
さらに、目標をチーム全員で共有することも有効です。小さな目標を達成した際には、その喜びを全員で共有しましょう。このようなポジティブな習慣を積み重ねることで、チーム全体の自己肯定感が高まります。
コツコツと自己肯定感を積み上げよう
自己肯定感は私生活だけでなく、仕事でのパフォーマンスも左右する重要な要素です。自己肯定感が高い人は職場で好循環を生み出す一方で、自己肯定感が低い人は自分に自信が持てず、周りとのコミュニケーションもうまくいかないことがあります。職場全体のコミュニケーションを円滑にするためには、従業員一人ひとりが自己肯定感を高めることが大切です。
小さな成功体験を積むことや、自分の成長を受け入れる習慣化を身につけることで、自己肯定感は少しずつ高まります。ALL DIFFERENTでは、自己成長のための習慣化に特化した研修を提供しています。従業員の自己肯定感を高めたいとお考えでしたら、ぜひご活用ください。
また、特に若手社員が自分自身について見つめ直し、習慣化に取り組むための第一歩には、下記研修がおすすめです。本研修では、自己理解を深めることで自分の「性質」を把握し、仕事で活かす方法を学びます。