ロールプレイングの進め方は?メリットや活用シーンを解説
ロールプレイング(役割演技/ロープレ)は、実際のビジネスシーンを模倣する手法です。適切に実施することで、効果的なスキル向上やノウハウの共有が期待できます。
本コラムでは、ロールプレイングの意味や進め方、メリット・デメリット、活用シーンなどを解説します。
ロールプレイング(役割演技)とは
ロールプレイングは、ロール(role「役割」)とプレイ(play「演じる」)を組み合わせた言葉です。日本語では「役割演技」と訳しますが、「ロールプレイ」と呼ばれることや、「ロープレ」と略されることもあります。
はじめに、ロールプレイングの定義や目的、重要性についてご紹介します。
ロールプレイングの定義
ロールプレイングは現実的な状況を再現し、参加者が役割を演じて実践的なスキルを学習する方法です。営業や接客、電話応対など実務を想定した場面で、相手の立場で考え、適切な行動を体験的に学びます。
ロールプレイングの目的
ロールプレイングの目的は、即戦力となるスキルを向上させることです。実際に模擬的な体験をすることにより、向上が必要な技能や知識などを把握できます。
ビジネスシーンにおけるロールプレイングは、顧客対応、部下指導、会議進行など、様々な場面で役立ちます。特に、営業や接客のスキルは、受け身では学びにくいため、ロールプレイングの実施が効果的です。
ロールプレイングの進め方
ロールプレイングの進め方はいくつかありますが、代表的な方法をご紹介します。
実施の順序は以下の通りです。
- 1. 目的と手順を説明する
- 2. 役割を決める
- 3. 役割を演技する(ロールプレイング)
- 4. 演技の評価とフィードバックを行う
- 5. 必要に応じて再演技を行う
少人数のグループを作り、準備、演技、フィードバックに同等の時間を設けます。特に、フィードバックの時間を十分に確保することが重要です。
また、役割シートやフィードバックシートを事前に準備しましょう。役割シートには、本人役や相手役の人物設定を記載します。フィードバックシートは評価すべきポイントをチェックできるよう作成します。
演技の時間は10~15分程度が適当です。相手役は非協力的な態度で接してもよいでしょう。
フィードバックでは、主役、相手役、観察者がそれぞれコメントを述べ、行動を改善するためのヒントを得ます。その際、可能な限り具体的な言葉や行動に対してコメントすることが重要です。
ロールプレイングの主な4つの種類
ロールプレイングには、目的や形式に応じて様々な種類があります。代表的なものとして、以下の4つが挙げられます。
- ケース型ロールプレイング
- グループ型ロールプレイング
- 問題解決型ロールプレイング
- モデリング型ロールプレイング
それでは、1つ1つ見ていきましょう。
ケース型ロールプレイング
ケース型ロールプレイングは、業務上必要な場面を設定して行うロールプレイングです。顧客への接客や取引先との交渉、クレーム対応などの練習として行います。
社員が実際の現場で応用できるよう、実際の場面に近い設定にしたうえで、顧客や取引先のペルソナを細かく定めて、複数のシナリオを準備しましょう。
グループ型ロールプレイング
グループ型ロールプレイングは、2名から4名程度の小グループに分かれ、役割を交代しながら実施します。上司と部下、顧客と担当者など、双方の立場の理解が深まるため、相手の気持ちに立った多様な視点から学ぶことができます。
問題解決型ロールプレイング
問題解決型ロールプレイングは、過去に発生したトラブルや困難な状況を想定して実施します。直面している問題をテーマとして設定し、解決策を探ります。
ロールプレイングを行っている社員も見ている社員も、客観的な視点から考察できるため、新たな問題解決の糸口が見つかる場合もあります。
モデリング型ロールプレイング
モデリング型ロールプレイングは、代表者のロールプレイングを他の参加者が観察し、模倣して実施するものです。指導型の研修や共通の理解を深める場合などに活用できます。個別のロールプレイングを行う前の準備としても効果的です。
ロールプレイングの3つのメリット
ロールプレイングには、実践力の向上や個人の課題認識、チームワーク強化など、様々なメリットがあります。これらを理解し、適切に活用することで、効果的にスキルアップできるでしょう。
ここでは、ロールプレイングの3つのメリットについて詳しく見ていきます。
実践力の向上
ロールプレイングの最大のメリットは、実際の状況を想定した体験を通じて、実践力が身につくことです。繰り返し訓練を行い、成功体験を積むことで、自信につながり、本番でもスムーズに対応できるようになります。
さらに、得たノウハウや知恵を社内で共有することで、社員全体のスキルを底上げすることも可能です。
個人の課題認識
ロールプレイングでは、参加者同士のフィードバックや他者の行動観察を通じて、日常業務では気づきにくい自身の癖や、不足している部分に気づくことがあります。経験豊富な社員のロールプレイングを見ることで、個人の課題を把握し、改善策を講じられるでしょう。
営業や接客などの実務がはじまる前に、課題を改善できることは大きなメリットです。
チームワークが深まる
ロールプレイングは個人の理解を深めるだけではなく、参加者同士の相互理解も進みます。参加者同士がフィードバックを行うことで、互いの強みや弱みを理解し、信頼関係が向上します。
チームで支え合うことの大切さを感じられるため、チームワークが深まり、実際の業務でも目標に向かって協力するきっかけになるでしょう。
ロールプレイングのデメリットと注意点
ロールプレイングは多くのメリットがある一方で、デメリットや注意点もあります。
社内で実施する場合、顔見知りの同僚と行うことで緊張感が欠如したり、毎回同じようなシーンで実施するとワンパターン化したりする恐れがあります。
慣れにより新たな気づきを得にくくなることがあるため、必要に応じて内容を見直し、様々なアプローチで実践することが求められます。メンバーの入れ替えや普段と違う場で実施するなど、常に緊張感を保てるよう工夫しましょう。
企業や組織におけるロールプレイングの活用シーン
ロールプレイングは、様々なビジネスシーンで活用できます。最後に、具体的な活用シーンを6つご紹介します。
ビジネスマナー
ビジネスマナーは社会人にとって基本的なスキルの1つで、顧客や取引先と良好な関係を築き、仕事を円滑に進めるために不可欠です。
実務に直結する名刺交換や電話応対は、二者間でのロールプレイングが効果的。特に電話応対は企業イメージを左右します。電話の取り方・かけ方、メモの準備、相手先や要件の確認の仕方、取り次ぎ、切り方などを練習することで、スムーズな対応が可能になります。基本パターンをロールプレイングで身につけましょう。
傾聴力
傾聴力は相手の話に耳を傾け、真意を理解する力です。傾聴はコミュニケーションの重要な要素ですが、書くことや話すことに比べて受動的であるため、意識的に学ぶ機会が少ない傾向があります。
顧客の要望把握や、部下や後輩からの相談対応など、傾聴力が必要な機会は多くあるため、ロールプレイングでの練習が効果的です。
傾聴力のロールプレイングは、聞き手、話し手、観察者に分かれて行います。時間を決めて、聞き手が主導で会話を進めましょう。
傾聴の目的は相手に話してもらうことであり、「聞く」が8割、「話す」が2割といわれています。観察者は話し手の発言割合や、聞き手の視線・相づち・表情などをチェックし、終了後にフィードバックします。傾聴ができると、相手が話しやすくなり、本質的な話ができるようになります。
ビジネストーキング
ビジネストーキングとは、社内での報告や会議、顧客への説明など、仕事におけるコミュニケーションのことです。ビジネストーキングのスキルを向上させることで、相手の意図や要望を正確に理解でき、解釈の差異を減らすことができます。その結果、手戻りや二度手間が減り、業務の効率化につながります。
ビジネストーキングのロールプレイングも、聞き手、話し手、観察者に分かれて行います。話し手が伝えたい内容を聞き手に伝え、聞き手はその内容をどのように理解したかを説明します。観察者は話の聞きやすさや口調、スピード、わかりやすさをチェックし、フィードバックします。
交渉
ビジネスにおける交渉は、自社(または自身)の利益を得るためのものです。自社だけでなく相手も利益を得ようと交渉するため、場合によっては対立が生じたり、しこりが残ったりすることがあります。そのような状況を避けるために、効果的な交渉スキルを身につける必要があります。
交渉のポイントは、まず得たいゴールを決めることです。そして、利害関係を把握し、必要な情報を集めます。これらの情報をもとに、交渉の進め方を決定してから、実際に交渉します。
ロールプレイングで交渉スキルを学ぶ際には、ケーススタディを準備して実践します。自身の交渉スキルを把握することで、課題がわかり、改善につなげられるでしょう。
人事評価
人事評価では、適切で公平な評価やフィードバックが求められます。評価の仕方に個人差が出ることは避けなければなりません。
人事評価を学ぶロールプレイングでは、ケーススタディを用意するとよいでしょう。企業内部で行う場合は、実際にあった事例に基づいて行うことも有効です。評価者、評価対象者の役を演じ、実際の人事評価と同じようにフィードバックを実施します。周囲の人の意見や感想を聞くことで、改善点を見つけられるでしょう。
面接官
採用面接において、面接官の役割は非常に重要です。しかし、社員の裁量に任せるケースがあり、面接官の質にばらつきが生じることがあります。公平な評価のためには、面接官を育成し、一定の質を保つ必要があります。
面接官を育成する効果的な方法の1つが、ロールプレイングによる模擬面接です。模擬面接は、面接官役、応募者役、観察者の三者で行います。採用する人物像の確認、質問の準備、面接の流れの説明、質問、選考過程の説明など、実際の面接を想定した内容で行います。
練習を繰り返すことや、フィードバックにより改善点を見直すことで、面接官としてのスキルアップにつながるでしょう。