業務委託とは|簡単にわかる契約の種類と違い、メリット、注意点
働き方の多様化や業務効率化とともに、業務委託の活用が増えてきました。業務委託を検討する企業にとっては、仕事の品質や報酬、契約に当たっての注意点など、気になるところも多いでしょう。
本コラムでは、業務委託の定義や特徴、種類、委託側と受託側双方のメリット・デメリットを解説。業務委託契約の際の注意点などもお伝えします。
業務委託とは
業務委託とは、簡単にいえば外部の企業や個人に業務を委託することです。業務内容や成果物の完成責任という観点から、民法では請負契約・委任契約・準委任契約の3種類に分けられています。
まずは、法令における定義と、業務委託と同じような意味で使われる「外部委託」「アウトソーシング」「外注」などの関連語について見ていきましょう。
業務委託の定義
業務委託とは、自社で行っている業務の一部または全部を、外部の企業や個人に委託することです。2023年5月に公布され、2024年11月に施行予定の「フリーランス・事業者間取引適正化等法」では、「業務委託とは、事業者がその事業のために他の事業者の物品の製造、情報成果物の作成又は役務の提供を委託すること」と定義されています。
業務委託を行う際に、委託する側と委託を受ける側の間で交わされるのが業務委託契約です。業務は契約内容に基づいて進められます。原則として、委託元は具体的な業務指示や労働場所・時間を指定することはできません。
主に、自社にリソースやノウハウが足りない場合や、より高い品質を求めて外部の専門家に依頼したい場合に活用され、業務の遂行や完成した成果物に対して報酬が支払われます。
業務委託の主な関連語
業務委託の関連語には「外部委託」や「アウトソーシング」などがあります。これらの用語は実務上の通称として状況に応じて使い分けられますが、業務を外部に委託するという点で共通しています。業務委託の主な関連語の意味は、以下の通りです。
【業務委託の主な関連語】
用語 | 意味や特徴 |
---|---|
外部委託 |
|
アウトソーシング |
|
外注 |
|
クラウドソーシング |
|
上記の用語は、業界や状況によって微妙に意味合いが異なる場合があります。業務委託を行う際は、契約相手との間で用語の定義や範囲を明確にし、誤解を避けることが重要です。
業務委託・雇用契約・派遣契約の違い
業務委託の基本概念を確認したところで、次は主な契約形態について簡単にご説明します。
企業が人材を活用する方法には、業務委託・雇用契約・派遣契約など、様々な形態があります。これらは、以下のように分類されます。
【主な契約形態の種類】
契約の種類 | 下位分類 | 労働者の例 |
---|---|---|
雇用契約 | 無期雇用契約 | 通常の正社員 短時間正社員 限定正社員(勤務地限定、職務限定など) |
有期雇用契約 | 契約社員 パートタイム労働者 アルバイト 嘱託社員 |
|
労働者派遣契約(派遣) | ― | 派遣社員 |
業務委託契約(業務委託) | 請負契約 委任契約 準委任契約 |
他企業の労働者 個人事業主(フリーランス) |
雇用契約は、企業が直接労働者を雇用する形態であり、正社員、契約社員、パート・アルバイトなどが含まれます。一方、派遣と業務委託は、企業が外部リソースを活用する際によく用いられる形態です。
続いて、それぞれの契約形態の特徴を比較してみましょう。
【雇用契約・派遣契約・業務委託の比較】
項目 | 雇用契約 | 派遣契約 | 業務委託 |
---|---|---|---|
契約関係 | 雇用主と労働者の二者間 | 派遣元、派遣先、派遣労働者の三者関係 | 委託者と受託者の二者間 |
指揮命令権 | 雇用主にある | 派遣先企業にある | 委託者にはない |
労働時間・場所の管理 | 雇用主が管理 | 派遣先企業が管理 | 受託者が自己管理 |
法的規制 | 労働基準法などが適用 | 労働者派遣法が適用 | 特別な規制なし |
報酬形態 | 定期的な給与支払い | 派遣元から給与支払い | 業務や成果物に対して支払い |
社会保険 | 適用あり | 派遣元で適用 | 原則として適用なし |
「指揮命令権」とは、業務の遂行方法や時間、場所などを具体的に指示する権利のことです。雇用契約や派遣契約では存在しますが、業務委託にはありません。同様に、社会保険についても業務委託の場合は適用されない点をおさえておきましょう。
業務委託契約の種類
業務委託には、以下の3つの契約形態があります。
- 請負契約(民法632条):仕事の完成を約束する契約
- 委任契約(民法643条):法律行為を委託する契約
- 準委任契約(民法656条):法律行為以外の業務を委託する契約
それぞれの違いについて、確認していきましょう。
請負契約
請負契約とは、受託者が仕事を完成させる責任を負い、委託者はその成果物に対して報酬を支払うという契約です。
受託者には、成果物の数量・品質・種類について契約書通りのものを納品する義務があり、これに反する場合、委託者は「契約不適合責任」を問うことができます。
具体的には、
- 成果物が完成しなかった
- 成果物が納品されなかった
- 契約の目的や契約書に規定された条件を満たさなかった
という場合に、契約解除や損害賠償の請求、補修・代替物や不足分の請求、代金減額ができます。
請負契約の事例としては、
- 会社のロゴ制作や広報用のイラスト制作
- Webデザインやサイト制作
- オウンドメディアの記事作成
- システム開発
- 楽器演奏
- 警備(成果は「安全」)
- 営業(成果は「売上」)
- 建設業における請負工事
- 運送
など、様々な業務があります。
委任契約
委任契約とは、委任者が受託者に対して業務の遂行を委託し、それに対して報酬を支払う契約です。
請負契約との違いは、成果物の完成ではなく、業務を行ったこと自体に対価が発生する点です。そのため、受託者に完成責任はありません。
一方で、受託者は業務の遂行について善管注意義務(善良な管理者の注意義務)を負います。すなわち、「業務の遂行に当たって、社会通念上当然に要求される注意を払う」ことです。
委任契約で委託される業務は、「法律行為」に限定されます。具体的には、
- 弁護士
- 行政書士
- 税理士
- 社会保険労務士
などが行う業務が該当します。
業務の結果や成果物の有無は報酬の支払いに影響しません。例えば、弁護士との委任契約では、訴訟の勝敗にかかわらず報酬を支払う必要があります。
準委任契約
準委任契約は、法律行為以外の業務の委託を行う場合に締結される契約です。委任契約と同様、業務の遂行自体に対して報酬が発生します。
典型的な例として、ITベンダーによるシステム開発があります。準委任契約には委任契約の規定が準用されるため、受託者には完成責任がなく、契約不適合責任も原則として問えません。
ただし、システム開発のような成果物の引き渡しが不可欠な準委任契約は「成果完成型」と呼ばれ、成果物について善管注意義務を果たしながら作成することが求められます。
準委任契約における職種例には、
- ITエンジニア
- 医師
- コンサルタント
- マッサージ師
- エステティシャン
- 不動産鑑定士
などがあげられます。
業務委託のメリット・デメリット【受ける側】
業務委託の受託者にとって、業務委託という契約形態には様々なメリット・デメリットが存在します。主なメリットは働き方の自由度、デメリットは収益の不安定さです。
業務委託を受ける側のメリット
業務委託を受ける側のメリットは、業務の遂行に関する具体的な指示や命令を受けずに済むことです。フリーランスや事業主が受託者の場合、会社員のような労働時間や勤務場所の縛りもありません。
また、委託される業務を受けるか否かも、受託者自身が決定できます。得意分野がある企業やフリーランスなら、その分野に絞って受注することも可能。これまでに培ったスキルや経験を存分に活かし、専門性の高い業務に専念できます。
多数の案件やより報酬が高い案件を受注することで、収益アップを目指すことも不可能ではありません。
業務委託を受ける側のデメリット
受託者にとっての業務委託のデメリットは、収益が安定しにくいことです。仕事をするには、自分で案件を見つける必要があります。一度受注できたとしても、その後も継続的に仕事を獲得できるとは限りません。季節によって受注量が大きく変動する場合もあります。
そして、特にフリーランスでは請求書の発行や報酬の交渉、帳簿の管理、社会保険料の支払い、確定申告なども自分で行わなくてはなりません。
フリーランスには労働基準法による保護(割増賃金・年次有給休暇など)が適用されないため、休日の取得や体調管理など、多くの面でセルフマネジメントが必要になってきます。
業務委託のメリット・デメリット【企業側】
これに対して、業務委託を行う企業側にとっては、コスト削減や業務効率化というメリットがある一方、高額な報酬や品質への不安といったデメリットも存在します。
企業が業務委託を行うメリット
企業が業務委託を行うメリットとして、人手不足の解消やコスト削減などがあげられます。
人手不足解消と人件費の抑制
業務委託は、業務量や納期を条件とした単発での依頼が可能です。そのため、企業の一時的な繁忙期や欠員などによる人手不足の際に労働力を確保しやすい点が大きなメリットとなります。
例えば、繁忙期だけの発注であれば、閑散期の人件費を抑えられます。
また、業務委託では、雇用契約による人材確保とは異なり、社会保険料の会社負担や備品などの支給も不要です。既に豊富なノウハウがある企業や個人に発注することで、社内の育成コスト削減にもつながります。
専門性の高い業務を任せられる
高度な専門スキルや知識をもった人材に業務を任せられる点も、大きな魅力です。
例えば、デザイナーやシステムエンジニア(SE)といった高い専門性を持つ職種が必要な場合、業務委託であれば、既に高度なスキルや実績がある人材を選んで業務を依頼できます。社内で人材を確保しなくても、質の高い業務を効率的に遂行してもらえるということです。
自社の人材を有効活用できる
社内に高いスキルを持つ人材がいる場合でも、業務委託は有用です。コア業務に直接関係のない業務を外部に委託することで、社内のリソースをより効率的に活用できるからです。
例えば、営業アシスタント業務やコールセンター業務、採用活動における面接日程の調整・連絡などは、テンプレートやマニュアルがあれば遂行しやすい業務です。情報漏洩防止対策を講じたうえで外部に委託すれば、本業に割く社内リソースが増やせるでしょう。
人材の適材適所も実現しやすくなり、業務効率化や組織の生産性向上が期待できます。
短時間勤務を行うことになった社員の業務量を減らす際に活用するなど、働き方改革の観点からも大きなメリットといえます。
企業が業務委託を行うデメリット
業務委託の主なデメリットは、外注コストの発生や、社内ノウハウが蓄積されないなどの点です。
専門性の高さに応じて報酬が高くなる
あまり専門性が高くない業務の場合、業務委託によって人件費を抑えられます。一方、専門性の高い業務を委託すると報酬が高額になることが多く、従業員に任せるよりも大きなコストが発生しやすくなるでしょう。
しかし、専門的な業務を委託する場合でも、メリットとなることがあります。例えば、有名なクリエーターやアーティストへの発注であれば、その仕事によって費用を大きく上回る売上が出るかもしれません。あるいは、高効率・高品質な仕事によって最終的にはコスト削減につながるケースもあるでしょう。
このように業務委託では、委託先の仕事の品質とそれによる影響、内製する場合の費用や期間など、総合的な判断が求められます。
社内にノウハウが蓄積されない
自社で対応できない業務を委託する場合、成果物は得られても、そのプロセスや専門知識が社内に残らないというデメリットがあります。ノウハウが蓄積されなければ業務の内製化も困難になり、結果として継続的に業務委託に頼らざるを得なくなるかもしれません。
業務委託を行いながら社内のノウハウを高めるには、委託先との定期ミーティングを実施したり、報告書の提出を求めたりするとよいでしょう。何を目的として、どのように業務を進めているのかを知ることができますので、知見の一部を取り入れることができます。
なお、定期ミーティングや報告書の提出を求めるには、その旨を盛り込んだ条項を作成して合意形成を図り、業務委託契約を締結しましょう。
委託先によって成果物・業務の質が左右される
業務委託では、委託先によって成果物や業務の質にばらつきが出る可能性があります。特に、委託先が個人である場合、業務プロセスや品質管理に違いが出やすく、思ったような成果物が得られないケースが見られます。
また、業務遂行能力が不十分な場合、納期遅れや品質の問題以外に、違法行為などのトラブルに巻き込まれる恐れもあるでしょう。
業務委託契約を締結する際は、委託先の信用度や業務レベルを確認したうえで、進捗などを定期的に確認することが大切です。
偽装請負と見なされるリスクがある
業務委託契約では、発注者に業務上の指揮命令権がありません。そのため、その受託者を自社の管理体制や指揮命令下に置いて仕事をさせると、「偽装請負」や「偽装フリーランス」と呼ばれる違法行為となってしまいます。「実態は労働者派遣や労働者供給であるにもかかわらず、形式的に請負契約として偽装している」などと見なされるからです。
偽装請負は、労働者派遣法や職業安定法などによって禁止されています。違反すれば、委託者も受託者である企業も、どちらにも罰則が適用される可能性があります。偽装フリーランスについても、2024年11月施行のフリーランス・事業者間取引適正化等法により、さらに厳しい目が向けられるでしょう。
労働者派遣法や職業安定法における具体的な罰則は、
-
当該労働形態が労働者派遣と見なされる場合
派遣元に1年以下の懲役または100万円以下の罰金(労働者派遣法第59条第2項)
-
派遣元と労働者の間に雇用契約がなく労働者供給と見なされる場合
派遣元と派遣先の双方に1年以下の懲役または100万円以下の罰金(職業安定法第64条第9項)
となっています。
厚生労働省からの助言や指導、勧告が行われても状況の改善がない場合は、企業名公表の対象にもなるため、会社の社会的評価も低下してしまうでしょう。
業務委託を行う際は、業務の管理監督者や関係社員に、偽装請負に当たる行為を行わないよう、具体例とともに注意喚起する必要があります。
業務委託を行う際の注意点
業務委託を行う場合、事前に確認しておくべきポイントや注意点が5つあります。
安すぎる報酬額はトラブルの元
業務委託で多く発生するトラブルの1つに、報酬額をめぐるトラブルがあります。
「納品したのに報酬が支払われなかった」
「想定していた品質より低い成果物が納品されたため報酬を減額したら、裁判になった」
などの例です。
業務委託は、業務の結果や遂行に対して報酬を支払うものです。業務遂行中の指導や命令はできません。そのため、業務依頼前に報酬に関して十分な合意形成を行うことが大切です。
報酬の金額は、
- 業務に要するであろう時間や最低賃金制度
- 業務にかかる経費・交通費
- 受託者が普段受けている内容での相場
- 自社が出せる報酬額
などをもとに、検討・決定を行いましょう。こうした合意形成を事前に行うことが、報酬に関するトラブル防止につながります。
業務内容・成果物を明確に
業務委託では受託者の仕事の進め方に対して細かな指示を出すことはできません。そのため、業務の遂行方法や成果物の質について、想定していたものとは異なる結果になってしまったというトラブルも多く見られます。具体的な業務内容や成果物の質について十分に擦り合わせを行い、業務委託契約書にも明記しておきましょう。
特に、デザインや楽曲制作などのクリエイティブな業務においては、発注者としては「何パターンか作ってほしい」「イメージに合わないから修正してほしい」と言いたくなることもあるでしょう。しかし、契約書に記載のない業務や成果物については、事前の取り決めがなく業務量が報酬に見合わないとして、受託者から拒否されることもあります。
業務委託のうち成果物の品質や数量がポイントになる契約では、作成するパターンの数や修正回数、修正可能なタイミングなども含めて明記したうえで契約するとよいでしょう。
経費・交通費の取り決めも明記
一般的に、業務委託では業務の遂行または成果物完成のために発生した経費を発注者が負担します。経費の支払いについて取り決めがないと、受託者との間でトラブルに発展しかねません。
トラブルを避けるには、
- 具体的にどのようなものが経費として認められるか
- 金額の上限はいくらか
- どのような手続きで請求するか
などを受託者と擦り合わせる必要があります。
例えば、取材業務を委託した場合、
「現場に行くまでに要した交通費や料亭で取材対象者を接待した場合は経費と認める」
「交通費は別途請求」
というように、業務上発生し得る具体的なケースを想定したうえで合意形成を図りましょう。
再委託の可否は慎重に判断
業務委託では、「再委託」という事態も発生する可能性があります。再委託とは、受託者が依頼された業務を第三者に委託することです。
再委託を認める場合、最初の受託者と再委託を受けた側とが業務を行うため、納期短縮などのメリットがあります。一方で、業務に関連する様々な情報が再委託先にも伝えられることになり、情報漏洩リスクが高まったり、委託先の業務管理体制が弱まったりするといったデメリットが生じるかもしれません。
万が一情報漏洩が起これば、重大な損害につながる恐れがあります。再委託の可否については、信頼できる受託者かどうか、情報セキュリティ対策の実施の有無などを加味したうえで、事前の取り決めを行ってください。再委託を禁止する場合は、必ず業務委託契約書に明記しましょう。
中途解約や損害賠償に関するルールを明記
請負契約では、成果物の納品前に契約を解除することはできますが、損害賠償の支払いが発生する可能性があります。
委任契約や準委任契約では、委託者側と委託者側のどちらからも、時期を問わずに契約を解除することが可能です。しかし、相手方に不利な時期での中途解約となる場合は、損害賠償の支払いが発生するリスクがあります。
安全に中途解約を行うには、双方の合意が必要です。業務委託契約書に、あらかじめ契約解除に関するルール(解約条項)を明記しましょう。中途解約の必要が出た際は受託者と話し合いの場を設け、受託者側の立場に配慮しつつ、中途解約の合意形成を行います。そのうえで、業務委託契約の解除通知書(解約通知書)を作成し、受託者に内容証明郵便で送ってください。
なお、どちらかに不利益が生じる状況で解約を行う場合、違約金や損害賠償の支払いを条件に合意形成が行われるケースもあります。どのような条件で違約金の支払いが発生するのか、どのような場合に損害賠償請求が行われるのかなど、業務の進め方や成果物の要件などを考慮しながら、契約書に記載しておくとよいでしょう。
業務委託契約書の重要性と作成手順
業務委託を円滑に進めるためには、業務委託契約書を適切に作成することが重要です。最後に、契約書の重要性と基本的な作成方法について簡単にご紹介します。
業務委託契約書の重要性
業務委託契約書は、委託業務の内容や報酬、契約期間などを詳細に定めることで、潜在的なトラブルを防ぐ役割を果たします。万が一紛争が発生した場合でも、契約書が法的な証拠となり、問題解決の助けとなるでしょう。
委託者にとっては、適切な業務遂行を担保できるほか、成果物の知的財産権の帰属を明確にできるなどのメリットがあります。一方、受託者には、報酬を確実に受け取れる、委託者からの過剰な要求を防げるといった利点があります。
特に、下請法の適用を受ける取引(資本金1000万円超の企業が、特定の業務を下請けに出す場合など)では、契約書の作成自体が法的要件となる点に注意が必要です。
さらに、2024年11月1日に施行される「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)によって、個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者に対し、新たな義務が課されることになりました。具体的には以下の4つが義務付けられます。
- ①業務委託をした際の取引条件の明示
- ②成果物等を受け取った日から原則60日以内での報酬支払い
- ③ハラスメント対策のための体制整備
- ④その他、1カ月以上の業務委託における禁止行為、育児介護等との両立に対する配慮、中途解除の事前予告・理由開示など
この法律により、フリーランスの取引環境の改善と保護が図られることが期待されています。業務委託を行う企業はこれらの新しい規制に対応するため、契約内容や支払い条件、社内体制の見直しが必要となるでしょう。
業務委託契約書の作成手順
最後に、業務委託契約書の一般的な作成手順を解説します。主な手順は、以下の4つです。
-
①業務委託の内容を協議し、契約書の作成者を決定する
(通常は委託者側が用意) -
②契約書に記載する内容を検討する
(主な項目は以下の10個)- 委託業務の内容と範囲
- 委託業務の遂行方法
- 再委託に関する規定
- 契約期間
- 報酬額と支払時期
- 知的財産の帰属
- 禁止事項
- 秘密保持条項
- 損害賠償規定
- 契約解除の条件
-
③これらの項目について、委託者と受託者間で合意形成を行う
-
④最後に、法的要件を満たす手続き(紙の契約書の場合、収入印紙の貼付など)を行い、契約締結とする
業務委託契約書の作成は、単なる形式的な手続きではありません。双方の利益を守り、円滑に業務を遂行するための重要なプロセスです。
特に、委託業務の内容・報酬・知的財産権の帰属などの重要事項については、慎重に協議し、明確に記載することが大切です。法的な観点から適切な内容となっているか確認するため、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることもおすすめします。