なぜ若手社員には自己理解が必要なのか

published公開日:2022.01.07
なぜ若手社員には自己理解が必要なのか
目次
なぜ若手社員には自己理解力が必要なのでしょうか。
「なんとなく、今の仕事は自分と合っていない」と言うあいまいな言葉を残し離職してしまう若手社員が増えています。この「なんとなく離職する」という状況は、自己理解が不足しているままに、周囲の声に振り回され他者に判断をゆだねてしまっており、放置すべき状況ではありません。

本コラムでは、ライフラインチャートなど自己理解を促すツール、また自己理解と他者理解のギャップを埋めるための具体的手法をご紹介いたします。

若手社員の急な離職は誰にとっても不幸せ

「なんとなく自分は会社に合わない気がするので、辞めます」
その人の上司や採用担当者にとって、最もショッキングな言葉ではないでしょうか?
10年20年選手の社員ではなく、入社して数ヶ月の若手社員がこんな言葉と共に会社を去っていくことは、誰にとっても不幸せと言えます。

この若手社員が離職しようと意思決定をした理由や背景には、どんなものがあるのでしょうか?

もちろん、入社した会社の業績や業界の今後の見通しに不安を感じて退社を決意することもあるかもしれません。でも、これらの情報は入社前でもある程度は知ることができるはずです。

ということは、「なんとなく、自分は会社に合わない」というのは、社風や上司、任せられている仕事内容などが入社前に想像していたものと違った、ということなのかもしれません。

社員は、自分の人生を賭けるつもりで入社を決め、企業側も莫大な採用コストとリソースを割いてその社員に入社してもらっています。このような誰も幸せにならないミスマッチは、できるだけ入社前、そして入社後にも排除していかなければなりません。

若手社員の自己理解を促しましょう

では、どうしたら若手社員の「なんとなく合わない」理由による離職を減らすことができるのでしょうか?そのヒントは「若手社員が自身の自己理解を深める」ことにあります。

自己理解というと少し難しく聞こえるかもしれませんが、かみ砕いていえば

  1. 1. 自分はどのような時に喜びを感じるか=どのような価値観を持って生きているのかを確認する
  2. 2. 自分は何を強み(知識やスキル)と感じているのかを確認する
  3. 3. その価値観と強みを自分以外の人にしっかりと共有し、他者(周囲の)理解と自己理解のギャップを解消する

ということです。逆に言えば、この3つの行動で、自己理解を深めることができれば、「なんとなく」と言って若手社員が会社を辞めてしまうことが少なくなるでしょう。

自己理解を深めるための具体的手法

では、自己理解を深めるための上記3つの視点をもう少し細かく確認してまいりましょう。

1.の価値観を確認するためには、これまでの人生を振り返り、どんな場面で自分が喜びを感じたか、どんな時に悲しいと感じたかという「ライフラインチャート」を書き出してみることをおすすめします。
自分が「幸せ」と感じたとき、また逆に「不幸せ(幸せでない)」と感じたときはどのような時なのか、をグラフにして書き出すことでご自身の大事にしていることを可視化することができます。

例えば

  • 9歳:小学校の学芸会で劇の主役をしたときに大きな拍手をもらい嬉しかった
  • 18歳:第一志望の企業に入社できたのでやる気がみなぎっていた
  • 20歳:先輩の言動が原因で顧客企業からクレームが入ったのに自分のせいにされ、精神的に落ち込んだ
  • 21歳:初めて部下育成を任され、人の成長のために仕事をすることの喜びを強く感じた
  • 22歳:先輩の力を借りずに上場企業からの受注を1人で獲得できて非常にうれしかった

恐らくこの例の方は、「人から自分が評価されていると感じるときに幸せを感じる」「理不尽や不誠実なことは許せない」というタイプの方でしょう。

2.感じている強みとは「知識やスキル」です。
例えば同期のだれにも負けない提案書作成スキル、実は大学時代にゼミでケーススタディを通じ猛勉強していたマーケティング+CRMの知識、継続的に隙間時間で自己啓発をし続ける習慣化スキルなど、小さなことでもよいので、強みと感じたスキルや知識を洗い出しましょう。

3.自分の価値観と強みをしっかりと周りの人に共有することです。仕事上でお付き合いをする方々は、学生時代からの友人や、家族とは異なり、仕事を通じてしか、相手を理解できません。そのため、よほど積極的に自分を開示しないと、例えば大事にしている価値観を理解してもらうことは大変難しいことです。

その理解できるはずのない人に、「自分は本当はこういう人間なのに、周りは全く理解してくれない」と不満を持つのは建設的ではありません。この点を若手社員に理解いただくことが重要です。また、このギャップは価値観だけの話ではありません。スキルや知識に関しても、自分の認識している強みと他人が感じている自分自身への強みは異なります。この他人から見た自分と、自分の認識のギャップについて、もう少し深掘りしてご説明しましょう。

自己理解を深めることは「他人から見える自分」にも気づくこと

ジョハリの窓、という考え方がありますが、ご存知でしょうか?

自己理解と他者理解にギャップがあることを確認できるフレームワークです。

ビジネスにおいては、自分は自分自身をこういう人間だと思っているという自己理解(認識)と、周りの人は自分のことをこういう人間だと思っているという他者理解(認識)はほぼ確実にずれています。

先ほどお伝えしたように、自己の強み・価値観を発信し、周囲に理解してもらうことは大事です。一方で、他者から見た自分や、他人は気づいているが自分が気づいていない自分、つまり他者理解と自己理解のギャップを客観的に把握することも自己理解を深めるうえでは必要です。

他者理解と自己理解のギャップを埋めるには

ではどうしたら他者理解と自己理解のギャップを埋めることができるのでしょうか?明日からでも実行できる取り組みは、ライフラインチャートや自身で棚卸した強みなどを用い、お互いを知るための時間・自己紹介を行う機会を設けることです。「実は私は...」という枕言葉をつけて行うとよいでしょう。

「実は私はこう見えて中学高校と体育会サッカー部に所属しており、50メートルは6秒5、3日間寝ないでもなんとか頑張れる体力を持っています。急ぎの仕事、気合が必要な仕事は私にお任せください!」

「実は私は大学時代に2つのサークルのマネジャーを掛け持ちしており、メンバーの体調とスケジュール管理については常に意識していました。協調と調整が必要な仕事があれば、私にぜひお声がけください!」

このように、得意な部分、大事にしている考え方を伝え合う場を作ると良いでしょう。

また、自己紹介を行って終わりではなく、発表者以外の人から自己紹介を聞いて意外と感じた点・想像通りと感じた点について、本人にフィードバックをすることです。

自己紹介の機会以外にも、「自身で振り返った「強み」に関し、上司や同僚、あるいはお客様にその内容を伝え、率直な意見をヒアリングしてみる」「自分が強みと感じていることとその理由を紙に書き出す。同じように自分に対して上司や同僚が強みと感じていることとその理由を書き出してもらい、見比べてみる」といった方法もよく使われます。
また、個人の努力に依存せず、会社としてその自己理解を深めるサポートを仕組としていくことも重要です。定期的な1on1面談や人事評価フィードバックの場で自己認識を振り返らせ、また他者である上司から見た本人の強みや改善点を伝えること、360度評価を通じて他者認識を伝えることも会社がサポートするために取りうる施策と言えるでしょう。

若手社員の自己理解を促しましょう

もし、「なんとなく会社が合わない」と悩んでいる若手社員の方が周囲にいらっしゃったら、ぜひ自己理解を深めるための3つの視点でご自分の価値観や強みなどを振り返り、他者認識とのギャップを埋めることをおすすめしてください。
人事部や部下をお持ちの方は、社員や部下の方に対して自己理解を深めるためにライフラインチャートを書かせ、それを基に自己紹介とフィードバックなどをする機会を作ることをおすすめします。

自己理解を深める(深めさせる)ための具体的な手法や考え方についてさらに知りたい、と感じられた方は、ぜひこちらの研修にご参加ください。

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