タイムマネジメントとは?時間を味方につける能力向上のコツと実践手順

update更新日:2025.03.12 published公開日:2019.07.16
タイムマネジメントとは?時間を味方につける能力向上のコツと実践手順
目次

タイムマネジメントは、企業の成長に欠かせない重要な経営手法です。社員やプロジェクトの時間管理を最適化することで、組織全体の生産性の向上や業務効率化が期待できます。

本コラムでは、タイムマネジメントの基本概念や実践するメリット、社員の時間管理能力を向上させる方法・手順について詳しく解説します。

タイムマネジメントとは

タイムマネジメントとは、日々の業務における時間の使い方を最適化し、より効果的に目標を達成するための技術・方法のことです。タイムマネジメントには、時間管理やスケジュール調整だけでなく、時間をどのように使うかを戦略的にコントロールする能力なども含まれます。

企業にとって、タイムマネジメントの本質は、時間という有限のリソースを味方につけること、そして個人や組織の成果を最大化することにあります。

具体的なメリットは、以下の5つです。

  • 生産性の向上
  • 業務効率の改善
  • コスト削減
  • ワークライフバランスの改善
  • 組織力の強化

組織全体のタイムマネジメント能力を上げることで、企業と社員の双方に多くの利点が生まれます。

参考:独立行政法人教職員支援機構「NITSニュース第97号 単純な引き算ではないタイムマネジメント」

タイムマネジメントが注目される背景

近年のビジネスシーンにおいて、タイムマネジメントの重要性が高まっています。その背景には、社会や経済の変化が大きく影響しています。

労働力不足

日本では、少子高齢化の進展により、労働力不足が深刻な社会問題となっています。生産年齢人口(15~64歳)は1995年の8,716万人をピークに減少傾向にあり、2070年には4,535万人(2023年の7,395万人から約4割減)になると予測されています。このような状況下で企業が生産性を維持・向上させるためには、個々の従業員の時間当たりの生産性を高めること、つまりタイムマネジメントが必要なのです。

参考:内閣府「令和6年版高齢社会白書『第1章 高齢化の状況』」

ワークライフバランスの重視

政府の働き方改革推進の影響もあり、社会全体で仕事と私生活のバランスを重視する傾向が強まっています。長時間労働を美徳とする風潮は薄れ、限られた時間内で成果を出すことが求められるようになりました。

そのため、現代のビジネスシーンでは、タイムマネジメントスキルが社員のプライベート時間確保と職場での生産性向上の両立に欠かせないものとなっています。

情報過多時代への対応

デジタル技術の進歩により、私たちは日々膨大な情報に囲まれて暮らしています。メールやSNS、ニュースなど、常に新しい情報が流れ込んでくる環境では、集中力を維持するのが難しくなります。

しかし、タイムマネジメント能力が高ければ、この情報の洪水に溺れることなく必要な業務に集中し、こなしていくことが可能です。

グローバル競争の激化

ビジネスのグローバル化に伴い、企業間の競争は世界規模で激化しています。時差のある海外とのやり取りや、24時間稼働のビジネスモデルなど、時間の概念そのものが変化しています。

このような環境下で競争力を維持するためには、時間を味方につける戦略的なタイムマネジメントが不可欠です。

タイムマネジメントが上手な人とうまくできない人の特徴

時間を上手に管理できる人とそうでない人では、仕事の進め方や成果に明確な違いが現れます。以下の表は、タイムマネジメントが上手な人とうまくできない人の特徴を、項目別に比較したものです。

【タイムマネジメントの能力別の特徴】

特徴 タイムマネジメントが上手な人 タイムマネジメントがうまくできない人
優先順位の設定
  • 重要度と緊急度を考慮し、タスクに優先順位をつけられる
  • 「重要だが緊急ではない」業務にも時間を確保し、長期的な成果につなげられる
  • 目の前の仕事に振り回され、重要度を考慮せずに行動しがち
  • 緊急ではあるが重要度の低い業務に時間を費やし、本当に重要な業務が後回しになってしまう
計画性
  • 長期的な目標を設定し、それを達成するための中期・短期の計画を立てられる
  • 予期せぬ事態に備えて余裕を持たせた計画を立てる
  • 目の前の仕事をこなすことに精一杯で、長期的な視点での計画が立てられない
  • 締め切り直前になって慌てて作業を始めたり、突発的な業務に振り回されたりしがち
自己管理能力
  • 自分の生産性が高い時間帯を把握し、その時間に重要な業務を集中して行える
  • 自己の能力や限界を理解し、必要に応じて業務の委譲や協力を求めることができる
  • 自分の生産性のリズムを把握できておらず、効率的に時間を使えない
  • 自己の能力を過大評価し、抱え込みすぎてしまうことがある

上記の表からわかるように、タイムマネジメントが上手な人は、優先順位を適切に設定し、重要な業務に集中して効率的に仕事を進めることができます。一方、タイムマネジメントが苦手な人は、重要度を考えずに作業を進めた結果、時間が足りなくなり、業務の効率や品質が低下してしまう可能性があるでしょう。

このようなタイムマネジメントスキルの差は、個人の生産性だけでなく、組織全体のパフォーマンスにも大きな影響を与えます。そのため、企業は社員のタイムマネジメントスキル向上に積極的に取り組むべきだと考えられます。

タイムマネジメントがもたらす5つのメリット

先述の通り、タイムマネジメントの実践には様々なメリットがあります。ここでは、その主要な利点を5つの観点から詳しく解説します。

【タイムマネジメントがもたらす5つのメリット】

メリット名 説明
生産性の向上
  • 限られた時間内で、多くの成果を生み出せる
  • イノベーションや新規プロジェクトに取り組む時間が確保できる
業務効率の改善
  • 優先順位の明確化や集中力の向上で、業務プロセスが効率化される
  • 無駄な作業や会議が削減される
  • 本質的な業務に集中できるようになる
  • 納期の短縮やクオリティの向上が期待できる
コスト削減
  • 業務効率が改善され、残業時間の削減につながる
  • 人件費や光熱費などのコストカットが実現する
ワークライフバランスの改善
  • 社員の労働時間が適正化され、プライベートの時間が確保される
  • ワークライフバランスが改善され、社員の満足度が向上する
  • 優秀な人材の定着率が高まる
組織力の強化
  • 時間を効果的に使うことで、社員間のコミュニケーションが活性化する
  • 情報共有や問題解決がスムーズになり、組織全体の対応力と競争力が高まる

タイムマネジメントの効果は、短期的な業務効率化にとどまらず、中長期的な成長戦略にも大きく寄与します。

例えば、タイムマネジメントによって生まれた余裕によって、社員が新しいスキルの習得や既存の能力向上に時間を使えるようになります。これにより、社員一人ひとりのキャリア形成が促進されるでしょう。

結果として、企業全体の人的資本が向上し、組織の競争力強化につながります。

タイムマネジメント実践のための7ステップ

タイムマネジメントを効率よく実践するには、いくつかのコツがあります。ここでは、具体的なタイムマネジメント実践方法を7つのステップに分けて詳しく解説しましょう。

(1)業務の洗い出し

まずは、日々の業務内容を詳細に書き出し、整理します。これにより、業務の全体像の把握や分析がしやすくなります。

【タスクの洗い出し手順】

手順 説明
①1週間分の業務を詳細に記録する

日々の業務内容だけでなく、各タスクにかかった時間も正確に把握する

例:「企画立案に2時間」「顧客対応に1時間30分」など

②業務フローを図式化する

業務の流れや各タスクの関連性を視覚的に理解できるように、図で表す

例:「企画立案」→「上司の承認」→「資料作成」→「顧客プレゼン」

③月ごとの業務業務一覧も作成する 月次、四半期、年間単位で発生する業務も洗い出し、包括的な業務の全体像を把握する

タスクを図で表し可視化することで、普段気づかずに行っていた無駄な業務や、思わぬところで時間を消費していた作業などがはっきりと見えてくるでしょう。

(2)工数の確認

次に、各タスクにかかる時間を想定し、実際にかかった時間と比較します。「本来注力すべき仕事に時間を割けているか」「優先して効率化を検討すべき業務は何か」といった点を明確にするためです。

まずは1週間の実際の業務時間を記録し、予定との差異を分析しましょう。このズレを正確に認識することが、効率化の第一歩となります。

【工数確認の手順】

  1. ①各タスクの予想所要時間を設定する
  2. ②1週間の実際の業務時間を詳細に記録する
  3. ③予想時間と実際の所要時間を比較分析する
  4. ④大きなズレがあるタスクを特定し、原因を考察する
  5. ⑤効率化や時間配分の見直しが必要な業務を洗い出す

この工数確認のプロセスを通じて、時間の使い方の実態を把握し、より効果的なタイムマネジメントにつなげることができます。

例えば、予想以上に時間がかかっているタスクについては、効率化の余地がないか検討する必要があるでしょう。逆に、短時間で済んでいるタスクには、さらなる品質向上のための時間を割り当てることも可能になります。

1週間分の工数確認ができたら、次は1カ月ごとや四半期ごとなど、定期的に発生する長期的なタスクもチェックしましょう。長期視点でも工数確認を行うことで、忙しい時期と比較的余裕のある時期のバランスを考えながら仕事を進められます。

(3)優先順位付けと重要度評価

続いて、業務の優先順位付けと重要度評価を行います。業務を「重要度」と「緊急度」の2軸で評価し、4つのカテゴリーに分類しましょう。

  1. ①重要度の尺度:成果につながる業務かどうか
  2. ②緊急度の尺度:納期が近いかどうか

この条件に照らし合わせて、それぞれの業務をマトリクス配置すると、以下のように分類できます。

A:重要かつ緊急な仕事

  • 締め切りの迫った提案書の作成など、締め切り直前のタスク
  • クレーム対応
  • お客さまからの重要な問い合わせ
  • システムトラブルへの対応

B:重要かつ緊急ではない仕事

  • スキルアップのための自己研鑽
  • 業務改善のためのツールの情報収集
  • 社員の教育
  • 健康維持のための取り組み

C:重要ではないが緊急な仕事

  • 重要ではない電話やメールへの対応
  • 突然の来客への対応
  • 突発的に発生する社内の依頼・問い合わせ

D:重要でも緊急でもない仕事

  • 誰も使用していない資料の定期的な更新
  • 形骸化した定例の会議
  • ネットサーフィン
  • 業務に関係のない世間話

この分類により、どの業務に注力すべきかが明確になります。

(4)業務の最適化(捨てる・任せる・効率化)

前述の優先順位付けと重要度評価によって分類された業務のうち、特にCとDのカテゴリーに属する業務を中心に、以下の3つの観点からタスクの最適化を行います。

  1. ①任せる:他者への移管や自動化を検討する。例えば、ルーティン業務を外部に委託すれば、社員はより重要な業務に集中できるようになる
  2. ②捨てる:不要な業務は思い切って廃止する。無駄な時間を一気に削減できる
  3. ③効率化:「手軽で、効率化のインパクトが大きい取り組み」を選択し、業務フローの見直しと改善を行う

業務の移管や効率化を行う際は、組織全体のバランスを考慮することが重要です。特定の部署や個人に過度な負担がかからないよう、慎重に計画を立てましょう。

(5)スケジュールの設定・管理

業務の最適化ができたら、いよいよ優先順位に基づいてスケジュールを作成していきます。スケジュール管理をする際は、以下の点に注意しましょう。

①余裕を持たせたスケジューリング

各タスクに対して、予期せぬ問題や遅延に対応できるよう、予想所要時間よりも少し多めの時間を割り当てましょう。

②バッファ設定

過去のプロジェクトデータを分析し、遅延が発生しやすかった工程や予想外の問題が起きやすかった箇所を特定し、適切にバッファを設定しましょう。

③タスクの細分化

大きなプロジェクトを管理しやすいように小さなタスクに分解し、各タスクに必要な時間と担当者を割り当てます。

④スケジュールの可視化

スケジュール管理ツールなどを使用し、全体のスケジュールを可視化します。これにより、タスクの進捗状況や締め切りを一目で把握しやすくなります。

⑤柔軟なスケジュール調整

スケジュールは固定的なものではなく、状況に応じて調整可能なものとして捉えることが大切です。定期的に見直し、必要に応じて更新しましょう。

⑥関係者へのスケジュール共有

作成したスケジュールを、プロジェクトメンバーやクライアントと共有します。進捗状況の認識を統一させることで、円滑なプロジェクト進行につながります。

コラム「バッファとは?ビジネスにおける意味、使い方と管理方法」はこちら

(6)進捗管理

タスクを実行する際は、定期的に進捗状況を把握することが重要です。これにより、プロジェクトの遅延を防ぎ、早期に問題を発見できます。進捗管理の主なポイントは、「進捗確認ミーティングの実施」「進捗状況の可視化」「関係者へのこまめな連絡」の3つです。

進捗確認ミーティングでは、各チームメンバーが担当タスクの状況を報告し、課題や問題点を共有します。週次や隔週など、プロジェクトの規模や期間に応じて適切な頻度で実施しましょう。

進捗状況の可視化には、ガントチャートなどのツールを活用しましょう。プロジェクト全体の進捗を把握しやすくなり、遅延のリスクを早期に発見できます。

また、定期的に状況を報告し、重要な進展があればすぐに関係者と共有することで、プロジェクトの透明性が高まります。

(7)継続的なフィードバック

タイムマネジメントの効果を最大化するには、定期的に結果を振り返り、改善策を模索していく取り組みが大切です。以下のポイントを参考に、継続的なフィードバックを行いましょう。

【振り返りのポイント】

ステップ 説明
設定時間内での完了状況の確認
  • 各タスクやプロジェクト全体が、当初設定した時間内に完了したかどうかを確認する
  • 予定通り完了した場合も、その要因を分析して記録する
成果物の品質チェック
  • 完了したタスクや成果物の品質を確認する(時間内に完了しても品質が低ければ真の成功とは言えないため)
改善策の検討
  • 時間管理や品質に関する問題点が見つかった場合、改善策を検討する
  • 必要なスキルトレーニングを計画したりタスクの進め方を見直す
次回プロジェクトへのフィードバック
  • 振り返りで得た知見や改善策を次回のプロジェクトや日常業務に活かすため、具体的なアクションプランを立てる
チーム全体での共有
  • 個人の振り返りだけでなく、チーム全体で振り返りセッションを行い、経験や気づきを共有する
定期的な実施
  • 大きなプロジェクトの終了時だけでなく、週次や月次など定期的に実施する

フィードバックを継続して行うことで、タイムマネジメントの効果が徐々に現れ、業務効率が向上します。その結果、組織全体の生産性が高まり、ひいては企業の競争力強化へとつながるでしょう。

タイムマネジメントの注意点と対策

タイムマネジメントの実践には多くの利点がありますが、同時にいくつかの落とし穴も存在します。ここでは、タイムマネジメントを効果的に行うための主な注意点とその対策について詳しく見ていきましょう。

進捗状況の把握不足に注意

複数人で業務を進める場合、個々のタスクの進捗状況が見えにくくなり、プロジェクト全体の遅延や品質低下につながる可能性があります。

効果的な対策として、タスク管理ツールを活用し、各タスクの進捗をリアルタイムで把握するといった方法が挙げられます。また、定期的な進捗確認ミーティングを実施することで、問題の早期発見と解決にもつながります。

時間設定には余裕が必要

楽観的な見積もりは、慢性的な時間不足や、締め切りへのプレッシャーを生み出します。時間設定をする際は、過去のプロジェクトデータを参考にし、大きなタスクを細分化して必要な時間を正確に見積もることが重要です。

さらに、スケジュールにバッファを設けることで、予期せぬ事態にも柔軟に対応できるようになります。

クライアントとの連携の重要性

クライアントとの情報共有が不足すると、計画が崩れるリスクが高まります。プロジェクトを円滑に進めるためには、定期的なミーティングの実施や進捗状況、スケジュール変更の共有が欠かせません。

プロジェクトのスケジュールをクライアントと共有することで、透明性の確保や信頼関係の構築にも役立ちます。こまめな情報交換により、予期せぬ問題にも迅速に対応できるようになります。

人材配置への配慮

メンバーの得意分野や経験を考慮せずにタスクを割り振ると、不慣れな業務に時間がかかり、全体の効率が低下する恐れがあります。さらに、ミスや品質低下のリスクが高まり、プロジェクト全体に悪影響を及ぼす可能性も出てきます。

最適な人材配置のためには、メンバーの得意分野やスキルセットを把握し、適切なタスクを割り当てることが大切です。特に重要なタスクには経験豊富なメンバーを配置し、リスクを最小限に抑えることで、プロジェクト全体の成功率を高めることができます。

タイムマネジメント力向上には研修活用が効果的

タイムマネジメントスキルの向上は、個人の生産性向上だけでなく、組織全体の効率化にも大きく寄与します。しかし、その重要性を理解していても、実践に移すのは簡単ではありません。タイムマネジメントには、業務の優先順位付けや長期的な視点での計画立案・実行など、様々なスキルが必要になるからです。

これらのスキルを短期間で習得し、実践に移すには、専門的な研修プログラムの活用が効果的です。

ALL DIFFERENT株式会社では、タイムマネジメント力を高めるために役立つ研修プログラムを多数ご用意しています。初心者向けの基礎コースから、既にタイムマネジメントに取り組んでいる方向けのスキルブラッシュアップや新手法習得を目的とした上級者向けプログラムまで、幅広く提供しています。

外部研修を活用しながらタイムマネジメント力の向上を目指し、個人と組織の生産性向上、そして最終的な成果の獲得につなげていきましょう。