アクティブラーニングとは|企業研修におけるメリット・デメリットや活用のポイント

published公開日:2024.08.28
アクティブラーニングとは|企業研修におけるメリット・デメリットや活用のポイント
目次

アクティブラーニングは従来の講義スタイルとは異なり、参加者自らが能動的に学ぶ学習方法です。ビジネス研修でも重視され、取り入れる企業が増えています。本コラムでは、アクティブラーニングの意味やメリット・デメリット、活用のポイント、主な9つの手法などをご紹介します。

アクティブラーニングとは

最初に、アクティブラーニングの意味やビジネスで重視される背景についてご紹介します。

アクティブラーニングの意味

アクティブラーニングとは、学習する人が積極的に参加する学習方法です。指導者から受講者へ知識を伝達する講義形式とは異なり、ディスカッションやグループワーク、ゲームなどを取り入れ、受講者同士で情報を共有し合います。

アクティブラーニングが広まった背景

アクティブラーニングは1980年代のアメリカで提唱され、高等教育に取り入れられました。日本でも文部科学省の中央教育審議会において、2012年に取り上げられ、小学校から大学まで、多くの教育機関で普及が進んでいます。

アクティブラーニングは従来のインプット型の教育に比べ、学習の定着率が高いことも明らかになっています。能動的なアウトプット型のアクティブラーニングの活用により、これからの社会で求められる思考力、判断力、表現力などのスキルの育成が求められています。

企業研修におけるアクティブラーニングの重要性

アクティブラーニングは、ビジネス研修などにおいても重視されています。VUCAと呼ばれる不確実で変化の激しい時代に、従来の学習方法では満たせない新しい課題が出現しているためです。

これらの課題を解決するためには、アクティブラーニングが有効です。社員が能動的に学ぶ学習を取り入れることで、実践的なスキルを身につけられるでしょう。

アクティブラーニングの3つのメリット

企業研修などにおいて、注目を集めているアクティブラーニング。導入することで、どのようなメリットがあるのでしょう。ここでは、アクティブラーニングのメリットを3つに分けて解説します。

(1)知識の定着率の向上

アクティブラーニングでは、学習者が能動的にアクションを起こすことで、理解が深まり、学びが定着しやすくなります。従来の方法では、単に情報を暗記するだけの表面的な知識となりやすく、実践への応用が難しい一面がありました。

しかし、アクティブラーニングでは、学習者が自身の知識や経験と結びつけながら学習するため、より実践的な学びへとつなげられます。

(2)問題解決力と発想力の向上

アクティブラーニングでは、講師から知識や正解を教わるわけではありません。具体的な課題に対して学習者が自分で考え、解決策を導き出します。このようなプロセスを経験することで、自然と問題解決力が養われます。

また、グループワークやディスカッションを通して、他者の考え方に多く触れるため、発想力も豊かになります。学習者自身も、自由な発想でアウトプットする機会が多くあるため、新しいアイデアを生み出すきっかけになるでしょう。

問題解決力や発想力は、どのような職業でも役立つ汎用的能力に含まれます。

(3)自発性と対人スキル向上

アクティブラーニングは、従来の受動的な学習スタイルとは異なり、学習者自身が主体となって課題に取り組むことが求められます。自ら問題点を見つけ、解決策を考え、行動に移すことで、自発性が育まれるのです。

アクティブラーニングでは、グループワークを取り入れることも多く、対人スキルの向上にも役立ちます。異なる視点を持つメンバーと意見を交わし、共通の目標に向かって協力するため、自分の考えを論理的に説明する力や相手を理解する力、チームを円滑に運営する力などが身につきます。

アクティブラーニングのデメリット

有益な学習方法であるアクティブラーニングですが、デメリットがないわけではありません。ここでは、アクティブラーニングのデメリットをご紹介します。

(1)時間とリソース確保の難しさ

アクティブラーニングを効果的に実施するには、十分な時間とリソースの確保が不可欠です。しかし、忙しい業務の合間に研修を行う際など、これらの確保が難しいことがあります。複数人数で行う場合は、参加者のスケジュール調整も課題となります。

グループワークやディスカッションには一定の時間を要するため、時間配分を考慮したカリキュラムが必要です。資料作成や参加者のスケジュール調整など、計画的に準備しましょう。

(2)運用や評価の難しさ

アクティブラーニングでは、学習者の知識やスキルに差がある場合、グループワークの効果が限定的になる可能性があります。学習者のレベルに応じたグループ分けの工夫や、適切な課題の設定など、細やかな配慮が必要です。

また、アクティブラーニングの評価においては、知識の習得度だけでなく、学習者の主体性、協調性、問題解決能力などの多面的な成長を評価する必要があります。しかし、これらの能力は従来のテストでは測りにくく、評価基準の設定が難しい点もデメリットといえます。

アクティブラーニングを活用する4つのポイント

多くのメリットがあるアクティブラーニングですが、単に導入するだけでは、十分な効果が得られません。アクティブラーニングを最大限に活用するための4つのポイントをご紹介します。

(1)研修の目的を明確にする

アクティブラーニングを導入する際には、研修の目的を明確にすることが重要です。アクティブラーニングはあくまでも学習手法の一つであり、導入するだけで全てが解決するわけではありません。

参加者に「何を学んでほしいか」をはっきりと示す必要があります。目的を明確にすることで、「なぜ学ぶか」が明らかとなり、参加者のモチベーション維持にも役立つでしょう。

アクティブラーニングの結果は数値化しづらい側面があるため、理解度や習熟度などの判定基準を明確にしておくことも大切です。目的に合った結果が出ているかを定期的に確認し、必要があれば改善につなげましょう。

(2)学習者の主体性を引き出す

アクティブラーニングの大きな特徴は、他の学習者からの学びが多い点です。そのため、学習者一人ひとりの主体性を引き出すプログラムを構築する必要があります。

学習者が受け身で積極性に欠ける場合、プログラム内容を再考します。双方向の学習やフィードバックを増やすなど、実践的な内容を取り入れましょう。

学習者が積極的に参加するためには、共に学ぶメンバーやテーマも重要です。学習者の経験や知識のバランスを考慮し、適した難易度のテーマを選定しましょう。

(3)講師の質を保つ

アクティブラーニングでは、学習者が主体的に学ぶため、講師は一方的に知識を伝えるのではなく、学びをサポートすることが重要です。講師にはファシリテーターとしての役割と同時に、学習者を適切にゴールへと導く指導力も求められます。

そのため、コーチングスキルやファシリテーション能力など、適切なスキルを備えた講師を選ぶ必要があります。期待した効果を得るためには、専門プログラムなどを活用して講師を育成するか、社外の専門家に依頼することなどを検討しましょう。

(4)学習内容を現場に活かす

研修は経費をかけて実施するため、その成果が現場で生かされなければ意味がありません。学習内容を現場でどう活かすかを研修の中で明確にすることで、実際の業務に直結する効果的な研修が実現します。社員のモチベーションやスキルの定着が期待でき、結果としてアクティブラーニング本来の効果が発揮されるでしょう。

アクティブラーニングの9つの手法

最後に、アクティブラーニングの代表的な手法を9つご紹介します。

(1)ジグソー法

ジグソー法は、異なる役割を持つメンバーが協力して課題を解決する学習方法です。以下の3ステップで構成され、表現力、理解力、発想力などを総合的に鍛えられます。

  1. ①エキスパート活動
  2. ②ジグソー活動
  3. ③クロストーク活動

順番に見ていきましょう。

①エキスパート活動

全体を複数のグループに分け、問題解決のための異なる専門知識をそれぞれ学びます。

②ジグソー活動

エキスパート活動のグループを分解し、新たなチームを編成。お互いに専門知識を共有しながら課題に取り組みます。

③クロストーク活動

チームごとに結果を発表し、全体で議論を深めます。主流の考え方を把握し、個人の答えを振り返る機会とします。

(2)Think-Pair-Share

Think-Pair-Shareは、学習者がまず個人で問題について考え(Think)、次に2人1組のペア(Pair)でアイデアを議論し、最後にグループ全体でそのアイデアを共有する(Share)方法です。

学習者が自分の考えを整理し、他者と協力しながら深い理解を得られます。全員が主体的に参加でき、討論の準備としても活用できます。

(3)ラウンド・ロビン

ラウンド・ロビンは、4~6人のグループに分かれ、参加者全員が順番にアイデアを出す方法です。

ブレインストーミングの一種として用いられ、グループディスカッションや意見交換に役立ちます。特定の人の意見だけではなく、全員の視点や意見を共有するため、多様なアイデアが集まりやすくなります。

(4)ピア・レスポンス

ピア・レスポンスは、レポートやプレゼンテーションなどを作成する過程で、同僚やチームメンバーからのフィードバックを活用する手法です。

他者からのフィードバックは、成果物の質の向上や新しいアプローチの学びにつながります。建設的なフィードバックの交換は、個人の成長を促進し、チーム全体の成功にも寄与します。

(5)マイクロ・ディベート

マイクロ・ディベートとは、少人数で行う簡易的なディベートです。3人1組となり、肯定側・否定側・ジャッジに分かれ、与えられたテーマについて議論します。3人の役割を変えて、繰り返し議論することで、異なる立場から論理的に考える機会となります。

(6)LTD(Learning Through Discussion)

LTD(Learning Through Discussion)は、自己学習とグループディスカッションを組み合わせた「話し合い学習法」です。まず、個人で課題文を読み、内容をまとめ、議論の準備を整えます。

次に、グループになり、メンバー同士で意見交換をしながら、課題について検討します。一連の取り組みにより、学習者の自己学習能力や思考力が磨かれます。また、メンバー同士の連携も自然と高まるため、チームワークの向上にもつながるでしょう。

(7)チーム対抗型多人数討論

チーム対抗型多人数討論は、複数のチームに分かれ、与えられたテーマについて議論する手法です。勝敗を競うため、ゲーム感覚で取り入れられます。大人数での実施が可能で、相手チームとの競争意識から活発な討論が生まれやすくなります。

(8)フィールドメソッド

フィールドメソッドは、学習者が実際の現場に出向き、直接体験することで学ぶ方法です。現場における消費者の購買行動の観察、業務プロセスの確認、顧客との対話など、実践的な活動を行います。

現場の生の声に触れ、実務を体感することで、問題解決力や状況対応力、チームワークなど、職場で求められる実践的なスキルを身につけられます。自身の長所と短所を知る機会にもなり、個人の成長にもつながるでしょう。

(9)ケースメソッド

ケースメソッドは、実際に起きた事例をケースとして提示し、分析や解決策を検討する方法です。

グループディスカッションやディベート、ワークショップなどの活動を通じて、複数の視点から検討を重ねることで、論理的思考力や分析力を鍛えられます。同時に、「自分であればどのように対応するか」という視点から、主体的に考えることも促されるでしょう。