提案営業とは?課題を解決するための提案4ステップ

update更新日:2022.04.14 published公開日:2017.11.29
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営業パーソンであれば、「提案営業」という言葉は聞き慣れた言葉かと思います。しかし、提案営業の定義をしっかりと把握し、ポイントを体系的に整理できている方は意外と少ないのではないでしょうか。今回のコラムでは、提案営業の意味や本質を確認するとともに、売れる営業が実践する提案営業の4つのステップをご紹介します。

「提案営業」とは? 「御用聞き営業」「ソリューション営業」との違い

営業のスタイルは様々あり、時代背景や商品の特徴によってそのスタイルは変わってきます。皆さんも、「提案営業」のほか、「御用聞き営業」「ソリューション営業」といった言葉をよく耳にするかと思います。これら様々な営業スタイルの中から、今回は「提案営業」に焦点を当て、ご紹介します。まずは、それぞれの言葉の定義から確認してみましょう。

提案営業の定義

まずは改めて、提案営業の意味を確認してみましょう。当社では、提案営業とは「お客さまの課題(悩み)を解決する営業」と定義しています。つまり、課題が起きている根本的な原因を深掘りし、その原因を取り除くための提案をする営業スタイルです。

御用聞き営業の定義

一方、御用聞き営業は「お客さまに言われたことにそのまま答える営業」と定義しています。 お客さまからいただいたご要望に対して、「わかりました」と言って、お客さまに言われたことをそのまま叶える営業が御用聞き営業のイメージです。

ソリューション営業の定義

ソリューション営業とは「お客さまの課題(悩み)に対して自社の商材を解決策に含み提案する営業」と定義しています。広義では、ソリューション営業も提案営業に含まれることがありますが、厳密にはソリューション営業と提案営業は異なります。その違いは、お客さまに提案する解決策が「自社の商材を用いた解決策であることが前提か」という、課題解決の「プロセス」にあります。

お客さまが持つ「顕在的な課題」と「潜在的な課題」

提案営業やソリューション営業の定義で、お客さまの"課題"という言葉が何度か出てきました。ここで言うお客さまの課題は、下記の2つに分類することができます。

  1. (1) お客さまが認識している課題=顕在的な課題
  2. (2) お客さまが認識していない本質的な課題=潜在的な課題

提案営業では、これら2つの課題に対して原因を深掘りし、解決策を提示していくことになります。つまり、提案営業と一口に言っても、そのアプローチは二段階あるということ。

一段階目:お客さまが認識している「顕在的な課題」に対して様々な側面から提案する段階
二段階目:お客さまが認識していない「潜在的な課題」を発見し、その課題を認識していただいたうえで、本質的な課題に対する提案を行う段階。

この「本質的な課題」を特定し、解決につながる提案をすることが、目指すべき提案営業ともいえます。また、上述したように、ソリューション営業は、上記の二段階とは別の切り口の定義であり、顕在的な課題にせよ、潜在的な課題にせよ、お客さまからいただいた課題に対する提案が「自社の商材を含んだ解決策の提示」であることを指します。

事例で見る提案営業の二つの段階

ここまでご説明したように、営業ひとつとっても様々なスタイルがあり、また提案営業の中でも二段階に分かれるなど、営業とは幅が広く、実に奥深い仕事です。定義だけを聞いてもなかなかイメージが湧きづらいと思いますので、具体的な事例をご紹介します。

一段階目の提案営業

一段階目の提案営業では、「社内コミュニケーションツール『A』を導入したい」というご要望に対して、「なぜ導入したいのですか」と掘り下げ、把握できた課題に対して様々な側面から提案をしていきます。
例えば、「コミュニケーションがうまくいっていないからです」という課題が出てきたら、お客さまのご要望を叶えるために、『A』を導入するという解決策に留まらず、より役立つツール『B』を提案する、カフェスペースの使い方や社内コミュニケーション活性化のためのイベントを提案する、といったイメージです。

二段階目の提案営業

そして二段階目の提案営業では、「コミュニケーションがうまくいっていないからです」という課題をさらに掘り下げ、本質的な課題の発見に努めます。その結果、「業務が忙しく、コミュニケーションをしっかり取る時間がない」という、お客さま自身も気づいていない課題が発見できたとします。この本質的な課題に対して、「社内コミュニケーションツールの導入」ではなく、業務効率化のコツや、生産性向上施策、また生産性向上に寄与するようなツールの提案、これが二段階目の提案営業のイメージです。このお客さまが認識していない「本質的な課題」に対する提案をすることこそが、目指すべき提案営業の姿と言えるでしょう。

「本質的な課題に対する提案」がもたらす最大のメリット

提案営業のイメージはつかんでいただけましたでしょうか?
ここからは、「本質的な課題に対する提案」を行うことで、どのようなメリットが得られるのかを考えていきます。ここまでの内容をざっくりまとめると、営業スタイルは、次の3つに分けることができます。

  1. (1)お客さまに言われたことにそのまま答える営業
  2. (2)お客さまにプラスαの提案ができる営業
  3. (3)お客さまも気づいていなかったようなことも気づかせることができる大変役に立つ営業

この3つが、言い換えると「御用聞き」「顕在的な課題に対する提案=一段階目の提案営業」「本質的な課題に対する提案=二段階目の提案営業」と言えます。このうち、「本質的な課題に対する提案」ができると、圧倒的な信頼を獲得することができ、他社とのコンペになりにくいといったメリットが得られます。

しかし、本質的な課題を発見することや、お客さまにその課題を認識していただくことはそう簡単なことではなく、「本質的な課題に対する提案」、すなわち先ほどお伝えした二段階目の提案営業は、場合によっては長い時間を要す非常に難易度が高い手法と言えます。

ただ、二段階目の提案営業を身につけるまでには至らなくとも、「お客さまが認識している課題」を確実に把握し、様々な側面からアプローチを行うことができれば、十分に競争力のある提案になりますし、「本質的な課題」の見極めにもつながっていきます。

そこで次の項目では、提案営業の第一段階である「お客さまが認識している課題」に対し、競争力のある提案を行うためにはどのようなポイントがあるのか、売れる営業パーソンの行動をもとに考えていきます。

売れる営業パーソンが実践する「提案営業」の4つのステップ

当社では、提案営業を実践する際、次の4つのステップで進めることを推奨しています。

  1. (1)お客さまとの信頼関係づくり
  2. (2)お客さまの課題を把握する
  3. (3)お客さまと課題に対する認識をすり合わせる
  4. (4)お客さまに課題の解決策を提案する

それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。

Step 1 お客さまとの信頼関係づくり

提案営業の最初のステップは、お客さまとの信頼関係づくりです。営業活動では、たった数回しかお会いしていないお客さまから信頼を勝ち取り、自社の課題をすべて話してもらう必要があります。

そこで意識していただきたいのが、「有益な情報を数多く提供してくれる専門家」として認知してもらうことです。例えば、病院に行ったとき、初対面のお医者さんだったとしても、自ら進んで症状や状況を話しますよね。これは、「お医者さん」という専門家としての認知が出来上がっているため、「自身の状況を話したら有益なアドバイスがもらえるのではないか」という期待があるからです。

営業も同じです。お客さまの業界についてお客さまよりも詳しく把握し、また自社商品や自社業界の情報に精通していれば、「この人は専門家だ。相談すれば良いアドバイスがもらえるかもしれない」と思っていただけるはずです。業界や商品の知識をしっかり身につけ、お客さまに悩みや課題を話してもらえるような信頼関係を構築していきましょう。

Step 2 お客さまの課題を把握する

お客さまとの信頼関係が構築できたら、次はお客さまの課題を把握するステップです。その際ポイントとなるのが、キーパーソンにとっての課題を把握すること。立場が変われば、見える、感じる課題は変わってきます。
例えば、社長の立場から見た課題と、部長の立場から見た課題、現場の担当者から見た課題が異なるのは当然のことです。担当者の課題に振り回され、社長(キーパーソン)が感じているものとは異なる課題に対して提案をしても、受注にはつながりません。常にキーパーソン≒決裁者の考えている課題は何かを意識するとよいでしょう。

Step 3 お客さまと課題に対する認識をすり合わせる

お客さまの課題を把握したら、必ずその認識をすり合わせましょう。このステップをしっかり踏むことで、いざ提案の段階になったときに、提案の的が大きく外れることを避けることができます。

お互いの認識を確実に合致させるには、Step 2で把握をした課題をわかりやすくまとめる必要があります。そのポイントはいくつかありますが、「お客さまが使っていた言葉でまとめる」ことは必須。お客さまが「マネジャー層」というキーワードでお話しされているにもかかわらず、「管理職層」と言い換えて話を進めてしまうと、お客さまが言葉に持たせている意味や意図に違和感を覚えさせてしまうだけでなく、認識のズレを生じさせる一因になってしまいます。

また、「3個程度のカテゴリにまとめる」こともお勧めです。10個も20個も粒度の細かい状態で課題を列挙するのはあまり望ましくありません。人間の脳が楽に処理できる要素の数は、3個から4個だとされています。多すぎるとお客さまを混乱させる可能性が高まるため、いくつか挙がった課題をカテゴリごとに整理し、できる限りコンパクトにまとめることを意識しましょう。

Step 4 お客さまに課題の解決策を提案する

最終ステップでは、お客さまに課題の解決策を提案します。その際活用したいのが「提案書」です。口頭のみで、課題や提案をうまく伝えることは非常に難しいもの。提案書を作って内容を"可視化"することで、要点も明確になり、自身の頭も整理されます。

提案書を用いてお客さまに提案する際のポイントは、大きく分けると以下の3つです。

  1. 1. 課題に対して的確な提案内容であること
  2. 2. 提案書がわかりやすいこと
  3. 3. お客さまに響く説明ができること

成果を出す営業パーソンの多くは、「提案までに勝負はついている」と言います。つまり、「取り上げた課題が適切で、提案が課題にフィットしていること」が大前提です。

また、2つ目のポイントである「わかりやすい提案書」を書くためには、提案のゴールや目的が明確であること、そしてそこに向かうシナリオに一貫性があることなどが挙げられます。

これらのポイントを踏まえ、「いかにわかりやすく相手に伝えるか」が大切。どれほど提案が素晴らしくても、その内容が相手に伝わらなければ意味がないからです。説明をわかりやすくするには、「デリバリースキル」、すなわち伝える力を磨くことが重要です。
デリバリー成功のポイントは、言葉遣い、表情、立ち居振る舞いなどいくつかありますが、達人になると「リスナーウォッチング」と言って、相手の気持ちや状況に合わせてプレゼンテーションをコントロールすることができるようになります。

当社では、プレゼンテーション入門<シナリオ作成編>プレゼンテーション入門<デリバリー力向上編>といった研修を提供していますので、提案力を磨きたい方はぜひ受講をご検討ください。

今回のコラムでは、様々ある営業スタイルのうち、提案営業に焦点を当て、その意味や意義、実践するポイントなどをご紹介しました。提案営業は、しっかり習得すればあらゆる商品やサービスの営業で使える武器となります。
ご自身の日々の行動を振り返りながら、どのような提案がよいのかイメージを膨らませ、お客さまの真の課題を発見・解決できる営業パーソンを目指しましょう。