財務とは?会計・経理との違いや仕事内容・やりがい

published公開日:2023.11.13
財務とは?会計・経理との違いや仕事内容・やりがい
目次

ビジネスにおける「コンテクスト」は、業務効率化や人材育成に大きな影響を与えます。ハイコンテクストなコミュニケーションには文脈理解力の育成が必須。人材育成では、まずローコンテクストな指示やフィードバックがポイントです。
本コラムでは、コンテクストとは何か、その特徴や使い分け、人材育成への活用方法を解説します。

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財務とは

はじめに、財務とは何か、その役割や財務担当者のキャリアパスの例を見ていきましょう。

財務とは「会社のお金に関する業務」のひとつ

財務とは、企業の資金調達、財務諸表の分析、予算管理、財務戦略の立案や余剰資金の運用など、会社のお金に関わる幅広い業務を担う仕事です。財務の特徴は、企業の将来を見据えてお金の管理を行い、組織の継続的な成長を支える重要な役割を担う点にあります。

財務の具体的な業務として、銀行融資に伴う折衝や株式の発行、投資、M&Aなどが含まれる場合もありますが、どのような業務を実際に行うかは、企業の規模や業種によって異なるでしょう。

また、財務が重要な業務であるとはいっても、常に財務専門の担当者が配置されるわけではありません。大企業では「財務部」が置かれる場合もありますが、中小企業などでは経理担当者が兼務するケースが一般的です。

組織にとって適切な財務の仕事をこなすには、高度な専門知識とともに、分析力や戦略的な企画力、ビジネスの動向に関する理解力も求められます。

財務の役割や必要とされる理由

企業において財務が重要な業務とされる理由は、会社の財務状況を俯瞰的に評価・分析し、今後の財務戦略を経営陣に提案する役割を担っているからです。財務担当者が提案する資金計画は経営判断に直結するものであり、その分析や予測は、事業の方向性に大きな影響を与えるでしょう。

創業直後の企業で資金が不足している場合、財務は組織の成長・拡大のために、金融機関や投資家から融資を受けるために動きます。一方、資金に余裕のある企業は、有益な投資先を選び、他社の買収や合併といったM&Aを積極的に検討することもあるでしょう。

企業の現状と目指す姿に応じた最適な財務戦略を立てることが財務担当者の重要な責務であり、それは会社の命運を握るといっても過言ではありません。

財務担当者のキャリアパス・キャリアプラン

財務は専門性の高い職種であり、得られるスキルや経験、知識は多様なキャリアパス、キャリアプランの実現に役立ちます。

CFO(最高財務責任者)

財務担当者が社内外で財務の経歴を生かす代表的な役職は、CFO(Chief Financial Officer=最高財務責任者)です。CFOは、法人の財務に関する業務執行を統括する役員や執行役であり、その名の通り財務のトップマネジメントを行う責任者。欧米企業や外資系企業でよく見られるポジションです。

近年はCFOを設置する日本企業も増えており、その役割の重要性が広く認識されるようになりました。そのため、国内の企業であっても、財務担当者として実績を重ねることで、CFOに就任できる可能性があります。

財務・会計コンサルタント

財務・会計コンサルタントに進む道もあります。財務・会計コンサルタントは、顧客の資産状況を分析して、キャッシュフローの最適化や資産運用などのアドバイスを行います。

コンサルタントして活躍するには、財務という専門知識だけでなく、コンサルティングに必要なプレゼンテーションスキルやコミュニケーションスキルも重要です。社会情勢や業界動向などにもアンテナを向け、経営者からの質問・相談にいつでも応じられるよう準備もしておかなければなりません。

財務・会計コンサルタントを目指すなら、目の前の業務を確実にこなすだけでなく、日頃から新聞、業界誌、他社の動向などをチェックする習慣を身につけましょう。

税理士・公認会計士

財務で培った経験や知識を強化し、税理士や公認会計士といった国家資格取得を目指すこともできます。これらは独占業務を許された士業ですので、社内で資格を活かすだけでなく、税理士事務所や公認会計士事務所に所属して活躍したり、独立開業したりして、自身の思い描く働き方に近づけることも可能です。

税理士も公認会計士も、学習開始から合格まで2~3年はかかると言われています。資格取得を目指すのであれば、資格試験の内容と実務をリンクさせながら勉強を進めるとよいでしょう。

財務と会計・経理の違い

「財務」、「経理」、「会計」は、会社のお金を扱うという点で兼任されることも多い仕事です。しかし、これら3つの業務は、それぞれ異なる目的や役割を担っています。

大まかには、下表のような違いがあります。

仕事内容 特徴
財務 事業などのための資金調達、予算立案、投資計画など、組織の未来に向けた資金の管理・計画を担当する。 未来のお金に関する戦略的な管理を行う。
会計 企業活動における金銭や物品など、会社が持っている資産全般の管理を行う。経理が作成した記録や決算書などをもとに、損益の記録、財政状態の報告などを行う。 過去から現在のお金・物品に関連する管理を行い、報告する。
経理 企業活動における金銭の出入りに関する管理を行う。預金・現金管理、売上管理、仕入管理、帳簿への記入、決算書作成などを行う。会計業務の中でお金の流れを具体的に記録・管理する仕事を担う。 日々のお金の出入りを具体的に記録・管理する。

財務と会計の違い

会計は企業活動における金銭や物品などの資産全般を管理する業務であり、経理が作成した記録や決算書などをもとに、損益の記録や財政状態の報告を行います。財務との違いは、過去から現在のお金に関連する業務である点です。

財務は会計とは異なり、「未来のお金」に関する管理を担当します。それまでの会社の資産情報を分析し、今後の活動に必要な予算編成や資金計画、投資計画の立案や資金調達などを行います。

財務と経理の違い

経理は事業活動における日々のお金の流れを管理・記録する業務を担当します。具体的な業務には、預金・現金管理、売上管理、仕入管理、帳簿への記入、決算書作成などがあります。他方、財務は、経理が作成した記録や財務諸表を元に、予算や投資の計画を立て、資金調達などを行います。経理は会計の一部とも考えられる、お金の流れに対する視点は「過去から現在のお金」に向いている点も大きな特徴です。

中小企業のように、経理担当者が財務を兼務することもあります。その場合、過去から現在のお金の流れと、現在から未来へのお金の流れを両方扱うことになるでしょう。

財務の主な仕事内容、適正とやりがい

では、財務の主な業務内容をより詳しく見ていきましょう。具体的な業務内容を見ると、財務の魅力や財務に向いている人の特徴もわかりやすくなります。

財務の主な仕事内容

財務の主な仕事内容には、次の5つがあります。

財務戦略の立案

財務の基本的な業務の一つとして、財務戦略の立案があります。貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を元に、会社の財務状態を細かく分析して課題を洗い出し、無理のない資金繰りと、将来的な成長やビジネスリスクに対応するためのプランを作成する業務です。

こうした戦略立案では、短期・中期・長期の視点を持ち、自社の業績の見通しや他社の動向、マクロ経済の動向も考慮しなければなりません。会社経営の方向性に大きな影響を与えるため、非常に責任の重い業務です。

予算編成・管理

財務戦略に基づいて具体的なお金の流れを決める業務が、会社全体の予算編成と、各部署やプロジェクトへの予算の配分です。重要な事業を担う部署やプロジェクトには、より多くの予算が必要になる可能性がありますし、物価高騰の影響で事業拡大を目指さない部署でも再調整が必要になるかもしれません。

予算決定後は、配分した予算が計画通りに使われているか管理する必要もあります。資金がショートしないよう回避することが前提ですが、災害などで苦しい局面が訪れるかもしれません。その際は、他部署との調整、追加の資金調達などを検討する必要があります。

資金調達

財務では、企業経営に必要な資金を調達するため、銀行からの借り入れや株式・社債の発行、投資家からの資金集めなど、多岐にわたる手段を駆使します。会社の窓口として社外と折衝などを行いますので、コミュニケーション能力、交渉力、さらに金融市場の知識と分析力が欠かせません。

資金調達には、経理が作成した決算書なども必要でしょう。そうした書類を正確に読み解き、かつ相手に「それなら大丈夫」と思わせるような説得力のあるプレゼンテーションができるスキルも求められます。

資産運用

余剰資金が生じた際は、適切な運用によって利益につなげることもあります。具体的には、債券、株式、外貨資産などを対象とした投資やM&Aです。

損失を抑えて利益を得るには、市場分析とリスク評価、戦略的な思考などが必要。的確な分析には、対象の収益性分析、安全性分析、生産性分析なども行います。

IR・監査対応

公認会計士監査への対応や投資家や顧客、金融機関等のステークホルダーへの情報提供(IR)も財務部門の大切な仕事です。

公認会計士監査では、特に財務諸表の妥当性や信頼性に関わる監査を行います。規定された項目について適正に作成されているかどうを厳しくチェックされますので、自社の財務諸表に間違いがないかを事前に確認しておくとともに、監査人がどのような情報を確認しようとしているのかを理解し、対応しなければなりません。

ステークホルダーへの情報提供においては、社会で重視されている項目、情勢を押さえた事業の展開と業績など、世の中の動きと自社の目指す姿を押さえた資料づくりが求められます。

財務の仕事に向いている人

財務の仕事には、まず会計や金融、さらには会社法や税法など、広範な知識が必要です。

法改正の影響を受けることも多く、業界の動向も常に変化していますので、財務担当者には新しい情報を迅速に吸収できる情報収集力と理解力も不可欠でしょう。

また、既に述べたように、資金調達や投資、リスク管理などを行うには、財務諸表の分析ができなければなりません。予算配分や金融機関との折衝で円滑な関係を保つための交渉力、コミュニケーション能力も必要です。

財務に必要なスキルの例

基本スキル 会計に関わるスキル、財務諸表の分析スキル 業務に関連する法律の知識と法改正を把握するスキル 業界の動向に関する情報収集力と分析力
資金調達等 交渉力、プレゼンテーションスキル コミュニケーションスキル
投資、災害への備え等 リスクマネジメントスキル

財務の仕事のやりがい

これまで見てきたことからもわかるように、財務の仕事は、企業の経営を直接的に左右する重要なものです。自分の判断や立案した戦略が企業の成長や方向性に大きな影響を与えるため、その責任は非常に重いものとなるでしょう。この責任こそが、財務のやりがいとなります。

自分が戦略立案に直接関わらない場合でも、法令の把握と実務への適用、各種データの分析といった専門性が求められます。そうした高度な知識とスキルは周囲から高く評価され、頼られることも多いでしょう。

また、財務は部署自体が経営層との近い距離にあります。個別の事業のプロジェクトだけを見るのではなく、経営の視点からビジネスを理解できる立場にあり、将来的に独立して自ら経営者となったり、経営者の右腕として働いたりすることも夢ではありません。

財務担当者になるメリット・デメリット

財務の仕事には、メリットもあればデメリットもあります。同じ事象でも、それがメリットかデメリットかは個人の判断によるところが大きい部分もあるでしょう。いずれも、経営者に近い立場である財務ならではのものです。

財務担当者にとっての3つのメリット

財務担当者にとっての主なメリットは、以下の3つです。

1.経営戦略に関われる

前述の通り、財務の仕事は会社の経営戦略に直結しています。財務戦略の立案や調整によって、企業全体の方向付けや投資の優先順位など、重要な決定に関与しながら会社の未来を描けるからです。

こうした経験を重ねれば、ビジネス全般に対する深い理解と経営視点を養うことができます。自身の成長、スキルアップとともに、より大きな影響力を持てるでしょう。

2.専門性があるため市場価値が高まる

財務の仕事には、会計や税務、金融などの幅広い知識やスキルが必要です。そうした高い専門性を持つ財務経験者は企業にとって欠かせない存在。そのため、今後のキャリアアップでも市場価値が高い人材になれます。

ビジネスの中核であるお金の流れを厳密に捉えることができますので、財務以外の他部署でも知見を活かして活躍できるでしょう。

3.幅広い業界や企業で活躍できる

上記と関連して、財務スキルは、大小問わずあらゆる業界や企業で必要とされます。これは、自分の関心やキャリア志向に合わせて、多様な選択肢から職場を選べることにもつながります。

また、財務担当者として社内外の人々と交渉を行う中で、新規事業や新プロジェクトに関与するチャンスを得たり、新たな人脈ができることもあるでしょう。こうしたつながりも、今後のキャリアにおける選択肢の拡大に寄与します。

こうした形で多方面に視野を広げることで、さらなるスキルアップ、キャリアアップにつなげ、活躍できるでしょう。

財務担当者にとっての2つのデメリット

財務のデメリットは前述の適性ややりがいと密接に関連しています。財務の仕事に向いている人にとっては、こうしたデメリットもむしろやりがいや手ごたえに感じるかもしれません。

1.経営に直結するため責任が重い

自身が立案した戦略や判断が経営に直結するため、財務は非常に大きな責任を持ちます。責任が大きくなればなるほど、プレッシャーも大きくなるでしょう。特に、経営状態が芳しくなく、競争激化などで苦しい状況においては、経営陣から求められる厳しい条件に応えられる提案をしなければなりません。

意欲的に情報を収集し分析・立案を行える人材にとっては、これは大きなやりがいです。一方で、経験が浅い財務担当者や、情報分析・計画立案スキルが十分でない人にとっては、大きすぎる負担となってしまうでしょう。

2.戦略的なビジネスセンスが必要

財務では将来を見据えて計画を立てます。確実に目標を達成できる完璧なプランは存在しないため、一度決定したプランでも、状況に応じて見直したり、状況の変化を想定した複数の選択肢を考えたりしなければなりません。

また、企業を維持・成長させるために、ときにはリスクを取る提案を行うこともあるでしょう。なぜそのリスクを取る必要があるのか、それによって何を得られるのかを説得力をもって説明するスキルが必要です。

常にビジネス環境の変化にアンテナを張り、その状況でどのように動けば自社のプラスになるか(あるいはマイナスを抑えられるか)を見出すビジネスセンスがなければ、「何を提案すればいいのかわからない」と混乱してしまうかもしれません。

こうしたデメリットを避けるには、財務に必要な知識やスキルを身につけ、ビジネス環境の変化とそれに対する分析・評価、課題に応じた戦略立案ができるよう、先人に学びながら自己研鑽に励む必要があります。