クレーム対応~お客さまが納得する正しい対応とは?~
お客さまが納得する正しいクレーム対応とは、どのような対応でしょうか? クレームとは要求です。
相手の要求に対して、正しい手順と心構えでクレーム対応することで丸く収まるポイントを徹底解説いたします。
また本コラムでは、組織のクレームを少なくするコツもご紹介します。
クレームが発生する要因
マニュアルに沿って正しい接客や対応をしていても、クレームは発生してしまいます。
ここでは、なぜご意見やご指摘を通り越してクレームになってしまうのかを解説します。
クレームはなぜ発生するのか
クレームが発生する要因は、主に下記の4つです。
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1. 商品やサービスのクオリティが想定より低い
購入側は金額に見合った商品やサービスの提供がされると思っていますが、想定よりもクオリティが低いことで不満をいだきます。
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2. 対応者の態度が悪い・気に入らない
接客業や窓口業務の担当者などの態度が悪いと、ぞんざいに扱われたと感じクレームになるでしょう。
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3. 販売側が購入側へルールを押し付けている
売り手が買い手に対して不適切なルールを強要するのは、「そうした店だ」と思われていない限り悪手です。
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4.顧客側の勘違いや価値観の違い
買い手側への説明不足、世代や国籍などによる価値観の違いによって生じるもののため、買い手に理解してもらいやすい説明がされているかを事前に確認しましょう。
日本人によくみられる「サイレントクレーマー」
特に海外の人にとって日本人は「クレーム」というジャンルでかなり恐れられています。その理由は、日本人はクレームを「言わないから」です。「あれ、クレームを言わないのなら良いんじゃないの?」と 思いますよね。
実は日本人は「嫌だと感じたり、頭に来たりしても、その場ではクレームを言わない」ので恐れられているのです。
例えば、飲食店での食事中に何か不満なことがあると、欧米人は即座にスタッフを呼んで自分の要求を伝えます。
一方で日本人の多くは不満を感じてもその場では言わず、店を出た後に、SNSや口コミサイトなどを使ってとにかくその不満を拡散しようとするのです。
「美味しかったです」と言い笑顔で店を出たと思ったら、次の瞬間にはスマホを取り出してSNSに「料理がおいしいと評判なのかもしれないけど、あの店の接客はひどいな~。みんな行かないほうがいい よ!」と投稿してしまうのが日本人です。
怖いですよね。
そのやり方から日本人はサイレントクレーマーと言われますが、前向きな飲食店では後でSNSに悪評を投稿されないように「当店について文句や不満を言ってくださったら次回使える金券をプレゼントしま す」というキャンペーンを行い、お客さまの不満をあえて吐き出してもらうように工夫をしているところもあります。
BtoBでも同様に、「お取引先さまから自社に対する不満を言っていただく」ことを目的として上司が部下の担当企業に対して表敬訪問を行い、顧客が感じている潜在的な不満(サイレントクレーム)を積極的 に吐き出してもらうようにアクションを起こしている企業もあります。
クレームは悪いことではない
クレームと聞くと理不尽な言いがかりと思われがちですが、実は「クレーム=Claim=要求」です。
要求をきちんと受け止めることは、企業にとっては当たり前であり、悪いことではありません。
クレームを受けた際には、相手がどんなに怒っていても、まずは冷静に相手が何を望んでいるのか、そして事実はどうなのかを把握するように努めましょう。
確認すべきは、次の3点です。
- 1. お客さまは何に対してクレームをおっしゃってる(怒っている)のか
- 2. そのクレームの原因となった従業員の言動は具体的にどのようなものか
- 3. お客さまはどのような「着地点」を望まれているのか
例えば顧客管理のクラウドサービスを提供しているIT企業で起きたクレームを見てみましょう。
あるIT企業で起きたクレーム事例
この企業では「ご入金後はいかなる場合でも返金はしない」ということをサービス利用規約で謳い、ご契約時にお客さまに伝えています。
ある日カスタマーセンターの電話が鳴り、「御社のサービス、話と違ってうちの会社じゃ使えないじゃないですか。営業の方にも言ったけど先日振り込みをした初期費用と一年分のクラウド利用料を全額返金 してください。今週中に!」と連絡がありました。
しかし、応対したオペレーターは事情を確認せずマニュアル通りに「規約に定めております通り、弊社ではご入金後の返金については一切対応いたしかねます。申し訳ございません」とお断りしてしまいまし た。
実はこのお客さま企業に対しては、営業担当者が商談時に「クラウドサービスなので、御社の環境でも今日からすぐにご利用いただけます」と提案しましたが、実際は利用不可能な環境でした。つまり、間違 った環境での使用提案をしてしまっており、結論としてお客さまには自社サービスをご利用いただけなかった、ということが判明したのです。
お客さまから「使えないから返金してほしい」とご指摘をいただいた営業担当者は「でも違う方法で使えるかもしれないので、すぐに調べて報告します」と返答。しかし、営業担当者も自分がお客さまに間違 ったご提案をしてしまったことを上司に知られることが怖くて、対応を先延ばしにしていたといいます。
そして、対応をすっかり忘れてしまった結果、しびれを切らしたお客さまがカスタマーセンターにお怒りの電話をかけてきていたのです。
「虚偽の説明で契約をさせておきながら返金もできないとはどういうことですか。裁判所に訴えますよ!」とお客さまが激怒されたのは言うまでもありません。
ただでさえ間違った使用環境を提案して契約してしまったのに加え、お客さまからのクレーム電話への応対がまずかったため、火に油を注いでしまったという事例です。
●どのようにクレームに対応すればよかったのか
もし、クレーム電話を受けたオペレーターが「ご不便をおかけし、申し訳ありません。サービスが使えないので返金をご希望とのことですが、詳細をお聞かせいただけますか。」と状況を確認して真摯にお詫 びをしていれば、お客さまの気持ちは変わっていたでしょう。
クレーム発生時に確認すべき3点に当てはめてみると、以下のようになります。
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1. お客さまは何に対してクレームをおっしゃってる(怒っている)のか
→契約企業の使用環境では使えないクラウドサービスをご提案してしまった
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2. そのクレームの原因となった従業員の言動は具体的にどのようなものか
→「クラウドサービスなので、御社環境でも今日からすぐにご利用いただけます」
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3. お客さまはどのような「着地点」を望まれているのか
→振込済みの初期費用と年間利用料を全額すぐに返金する
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4.顧客側の勘違いや価値観の違い
買い手側への説明不足、世代や国籍などによる価値観の違いによって生じるもののため、買い手に理解してもらいやすい説明がされているかを事前に確認しましょう。
規約で返金はしないと謳っているとはいえ、今回は営業担当者のミスなので返金をすべき案件です。
クレームの背景を知らずに対応したことが、より怒りを買ってしまったといえます。
しかし、クレーム対応には特別なスキルは必要ありません。
まずは、「お客さまの気持ちと事実、要求されている着地点を理解し、しっかりとお詫びをする」ことから始めてみてください。
組織としては今回の営業担当者のように「お客さまからいただいたクレームを担当者が握りつぶしてしまう」ことが最も危険だと言えます。上司は部下に対して会議のたびに「お客さまからいただいている クレームはないか?」などを確認するようにしましょう。
クレーム対応に必要な基本の手順とは
クレームが来た際に知っておきたい対応の心構えや手順について紹介します。クレーム対応の基本では、特殊なスキルは必要ありません。基本を押さえておくことで、誰でも正しい対応が行えます。
クレーム対応の心構えと正しい対応手順
では次にクレーム対応時の心構えと正しい対応手順について考えてみましょう。 ポイントは3つです。
- 1. お詫びをする
- 2. 問題点を確認する
- 3. 代替案を提案する
1.お詫びをする
最初に行うべきことは「お詫びをする」です。まずはお客さまがお怒りになっているという事実に対して、お詫びをしましょう。
「申し訳ありません」という短い言葉だけでなく「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません。詳しくお話しをお聞かせいただけますか?」と、丁寧にお詫びの言葉を述べ、自分の言い分を理解しよう と努めているとお客さまに感じてもらうことが重要です。
2.問題点を確認する
次に、「問題点を確認する」です。何についてお客さまはお怒りなのかを正確に把握する必要があります。お客さまの話にしっかりと耳を傾けましょう。
感情が高ぶっていて話が要領を得ないときは、落ち着くまで待って話を進めます。
●お客様の話を聞くときに気を付けたいこと
お客様の話に耳を傾ける時に気をつけたいことが2つあります。
1つ目は「あいづち」です。
お怒りのお客さまは、自分の話を聞いているスタッフの反応や対応に敏感です。 「はい」「おっしゃる通りです」「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」とあいづちを打ち、お客さまに反応することで真 剣に聞いていることが伝わるようにしましょう。
2つ目は「言い訳をしない」です。
「当日はスタッフが体調不良で休み人手が足りなかったので…」などと言われても、お客さまにとっては関係ありません。
言い訳をしていると思われると火に油を注いでしまいます。こちらの事情を説明したり言い訳をしたりしないようにしましょう。
3.代替案を提案する
3つ目は「代替案を提案する」です。
お客さまはこちらに何かしらの対応をしてほしいのでクレームをおっしゃいます。その期待に応えることが重要です。
例えば先ほどご紹介したIT企業の例では、「大変申し訳ありません。ご提案したクラウドサービスは弊社のご説明ミスでお使いいただけませんが、通常は2倍ほどの費用をいただいている別のクラウドサービ スならば間違いなく御社にご利用いただけます。全額ご返金ではなく、今回ご入金いただいた費用で、上位サービスを1年間ご利用いただく、ということでお許しいただけないでしょうか?」というように代替提案をするのです。
対面でのクレーム対応
対面時は、お客様の視界に自分が入ることになります。そのため、身だしなみや姿勢、目線などに注意が必要です。
クレーム対応の予定がある時は、なるべく地味な装いを心掛けます。色味もおさえて、アクセサリーは付けないか外しておくと良いでしょう。髪が乱れていたり、服にシワが多かったりすると「自分(お客さ ま)には身なりを気にしなくても良いと思われている」と受け取られる可能性があるので、きちんと整えておくことをおすすめします。
姿勢は肩を張り過ぎず、まっすぐに立ちます。座っているときも背筋は伸ばしておきましょう。
間違っても胸をそらしたり、足を組んだりしてはいけません。
目線は相手をしっかり見ることは必要ですが、凝視しすぎると嫌がる人が多いので相槌のタイミングで下にずらすようにします。キョロキョロしたり、下を向きっぱなしにしたりすると、クレームが伝わって いないと受け取られ、ヒートアップする可能性があるので気を付けましょう。
電話でのクレーム対応
電話でクレームを受けた際にお客様が興奮しているようであれば、まずは落ち着いてもらえるようにします。
言葉をかける時は、いつもよりも少し大きな声でゆっくりと発音することが大切です。老齢のお客様の場合は耳が遠くなっていて聞き取りづらくなっていることも考えられます。
まずは、クレームをいただいてしまったことに対して真摯に謝罪し、詳しい状況を聞きましょう。「誠に申し訳ございません。詳しくお聞かせいただけますか」と促し、相手の言葉を反芻しながら確認してい きましょう。反芻することで、お客様は「話を聞いてくれている」と感じるので、興奮や怒りも徐々に収まってくるはずです。
状況を確認したら、次は要望を伺います。何をして欲しいのかが分からないと、的外れな提案をして怒りを再燃させてしまうおそれがあるためです。
要望を伺ったうえで、自分に決定権がある内容であれば代替案を提案します。自分に決定権がない、自分だけでは今後の対応の判断が付かない場合は、いつまでに折り返すか期限を提示して持ち帰ります。
最後は、電話を頂けたことに対して感謝の言葉でしめくくりましょう。人間は、終わりのイメージが強く残りやすいものです。そのため、良い印象を残して電話を切れるようにしましょう。
クレーム対応の良い例・悪い例
良いクレーム対応とは何でしょうか。それは、クレームをくださったお客様が自社のファンになってくれるような対応です。相手の要求に対して真摯に向き合い、マイナスをプラスに転換させるのが良いクレ ーム対応といえます。
悪い例は、ますます怒らせてお客様が自社を嫌ってしまうことです。BtoBの場合は、取引中止となり売上に大きく影響します。BtoCでも、SNSが発達している現代では、一人の口コミが企業のイメージを大き く損なうほどの影響力を持っているため、不誠実な対応をしない・させないことが大切です。
やってはいけないNG対応
一番やってはいけないことが、お客様が悪いと決めつけるような対応です。クレームというと悪質なものというイメージがあるため、「難癖をつけてきている」と決めつけて対応をするのはNGです。
そうした思いがあると、どうしても態度にも出てしまいます。言葉遣いや姿勢、表情などは言葉と同じくらい印象を左右するため、それを感じ取ったお客様はさらに怒ってしまうでしょう。
まずはお客様の話を真摯に聞き、勘違いや価値観の違いは無いか・悪質クレーマーではないかを見極めてから対応を進めていきましょう。
だでで言葉を使って相手の感情を高ぶらせてはダメ
「だでで言葉」とは、「だけど」「でも」「ですから」という相手のおっしゃる言葉を逆説的に否定する枕詞のことです。
クレームを受けた際には、相手のことを否定せず、「この方は最終的にどのような対応や着地点を求めているのだろうか?お怒りの理由や真実はどこにあるのだろうか?」と相手のClaim(=要求)を探るよ うにしてください。クレームを受けた際には、相手のことを否定せず、「この方は最終的にどのような対応や着地点を求めているのだろうか?お怒りの理由や真実はどこにあるのだろうか?」と相手のClaim(= 要求)を探るようにしてください。
クレーム対応の際には「だでで言葉」ではなく「しすたあ言葉」を使いましょう。
しすたあ言葉とは、「失礼しました」「すみません」「大変申し訳ございません」「ありがとうございます」のように、お詫び言葉を指します。そしてお客さまにこちらのご提案をお聞きいただけた場合に は、「ありがとうございます」と深くお礼を述べるのです。
お客さまの気持ちを理解しようとする心構えで、お詫びをする→問題点を確認する→代替案の提案をするという手順で落ち着いて対応すれば、クレームを解決できる確率がグンと上がります。
正しい手順や言葉遣いでクレーム対応をすれば、たいていのお客さまに納得してもらえ、クレームは丸く収まります。
クレームに強い組織にする
世の中にはクレームが少ない企業と多い企業があります。何が違うのでしょうか?
結論を先に言うと、以下のような違いがあります。
- クレームが少ない企業は「クレームを改善の機会と考え、組織で対策をしている」
- クレームが多い企業は「その場でお客さまの怒りを鎮めることだけを考えている」
発生したクレームに対して、個人レベルで対応してその場を収めるのではなく、二度目を起こさないように組織として対策することが重要です。
ある全国展開している不動産企業では、日々のクレーム対応を報告する社内システムをつくり、年間を通して良いクレーム対応や改善案を提出した人を表彰するという制度があります。
「こういうクレームを受けました」という報告はしづらいので、「こういうクレームがありましたが、最後にはお客さまから逆に激励のお言葉をいただきました」というような、クレームをうまくプラスに転 換できた例を共有して、聞いた人が自分でも真似をしたくなるように工夫しています。
クレーム対応力を上げて組織として成長しよう
クレームは、組織にとって成長を促すチャンスでもあります。なぜなら、期待や希望の裏返しがクレームとなって表れるためです。クレーム対応力が上がることで、自社内では見えていなかった成長のタネを 発見できるでしょう。
しかし、中には悪質なクレーマーがいることも事実。そうした人たちと適切に渡り合うためにも、対応スキルを上げておくに越したことはありません。
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