BPRとは?業務改善との違いや成功事例をわかりやすく解説

update更新日:2025.02.14 published公開日:2022.11.25
BPRとは?業務改善との違いや成功事例をわかりやすく解説
目次

BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)は、ビジネスを根本的に再構築して既存のルールを見直す手法です。ビジネスを成功に導くため、企業だけでなく、多くの自治体でも取り入れられています。

本コラムでは企業にBPRを導入するメリットや導入方法、導入事例について紹介します。BPR導入を検討している担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

BPRとは

BPRはBusiness Process Re-engineering(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)の略で、ビジネスプロセスの根本的な見直しと再設計(リエンジニアリング)により、コスト、品質、サービス、スピードなどを劇的に改善するための手法です。

BPRが生まれた背景

1990年代に、マサチューセッツ工科大学の教授であったマイケル・ハマー博士と経営コンサルタントのジェイムズ・チャンピー氏がBPRを提唱しました。両名は業務の細分化や専門化を進めることで、ビジネスに非効率さやコスト増が生じていると指摘しています。

企業はそれぞれの目的を持ってビジネスを行っていますが、細分化された組織が必ずしも一丸となっているわけではありません。また、時代の変化に対して、企業のやり方が古くなっている可能性もあります。

BPRの特徴

BPRは、企業における既存のルールや業務を根本的に見直し、ITツールの導入や新しい働き方の検討を含めた抜本的な再設計を行う特徴があります。単に組織や業務を改善するだけではなく、効率的なビジネスを実現する手法といえます。

BPRがなぜ注目されているのか

BPRは、日本ではバブル崩壊後の経営危機の際に、ビジネスを根本的に見直すために取り入れられました。しかし、BPRを導入した結果、大量のリストラが起こり、一度は敬遠された歴史があります。

近年は、グローバル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進、働き方改革などを背景に、社会をとりまく考え方や価値観が急激に変化し、企業に対応が求められています。

特に中小企業では、少子高齢化による人手不足や後継者問題などの課題があり、時代の流れに対応するためには、新しい技術やシステムの導入が不可欠です。

企業が生き残るためには、組織や業務を見直し、競争力を高める必要があるため、BPRが再び注目を集めているのです。

BPRと業務改善・DXとの違い

BPRは、日本語では「業務改革」を表し、業務のプロセスを全社的に見直す手法です。業務改善やDXと混同されることが多いため、それぞれの違いを解説します。

BPRと業務改善の違い

BPRと業務改善は、主に改善の範囲が異なります。

業務改善は、改善業務フローの一部分を対象とし、業務をスムーズに行えるようにする取り組みです。関わる人やもの、作業手順などの無駄を省いて、業務の効率化を図り、日々の業務をよりスムーズに進めることを目的としています。

一方、BPRは業務フロー全体を抜本的に見直す取り組みです。部分的な効率化にとどまらず、細分化された全ての業務プロセスを見直して、生産性や顧客満足度の向上を目指します。これにより組織を最適化し、ビジネスを成功へと導きます。

このように、業務改善は部分的な効率化を目指すのに対し、BPRは全体を包括的に改革する点が大きな違いといえます。

BPRとDXの違い

BPRとDX(デジタルトランスフォーメーション)は、どちらも業務の改善を目指しますが、目的や手段に違いがあります。

DXは、デジタル技術を活用して、組織やビジネスモデル自体を変革し、新しい価値や競争力強化を目指す取り組みです。業務の効率化だけでなく、企業の体制を進化させます。

一方、BPRは業務プロセスを抜本的に見直して生産性向上を目指す手法で、通常、ビジネスモデルの変革までは含みません。

BPRを導入する4つのメリット

BPRを企業に導入することで、様々な効果が得られます。ここでは、BPRがもたらす具体的なメリットを4つ紹介します。

  1. (1)業務の効率化
  2. (2)迅速な意思決定
  3. (3)従業員満足度・顧客満足度の向上
  4. (4)リスク管理の強化

1つずつ詳しく説明していきます。

(1)業務の効率化

BPRを導入することで、社内全体の業務プロセスを見直し、効率化につながる仕組みを構築できます。多くの企業では、部門や部署、プロジェクトチームごとに異なる業務フローが存在し、それぞれが業務効率化に取り組んでいます。

しかし、社内全体を見渡すと、重複した業務や非効率な手順が見つかることも少なくありません。BPRでは、こうした業務効率化を阻害するボトルネックを発見し、無駄を排除することで、効率的な業務フローを再設計できます。業務の効率化は、生産性の向上やコスト削減にもつながります。

(2)迅速な意思決定

BPRにより業務プロセス全体を改善することで、業務の無駄や重複が削減され、必要な情報が適切に流れます。これにより、経営層から現場までの情報共有がスムーズになり、迅速に判断できる体制が整います。迅速な意思決定は、変化する市場を前に、企業が柔軟に対応するために必要不可欠です。

(3)従業員満足度・顧客満足度の向上

BPRによる業務改善は、従業員の働きやすさにつながり、満足度を高めます。本来の業務に集中できる環境が整うことで、従業員のモチベーションが維持され、パフォーマンスもあがります。

従業員満足度が高まると、商品やサービスの品質が改善され、結果として顧客満足度もアップします。こうした良いサイクルが生まれ、継続すれば、社内全体のパフォーマンスはさらに高まり、企業の成長にもつながるでしょう。

(4)リスク管理の強化

特定の担当者に依存する業務プロセスでは、担当者の異動や退職に伴い、業務が滞るリスクがあります。BPRにより業務フローを標準化し、マニュアル化することは、誰でも対応できる体制の構築に役立ちます。担当者依存のリスクを減らすことで、持続可能な企業運営が可能です。

BPRを導入するデメリットと注意点

BPRは企業全体の業務改革を通じて大きな成果をもたらしますが、様々な課題も存在します。導入を検討する際は、以下のようなデメリットを十分に理解し、慎重に準備を進める必要があります。

  • コストと労力がかかる
  • 失敗によるリスクが大きい
  • 従業員が混乱する

では、1つずつ解説していきます。

コストと労力がかかる

BPRの導入には、多大なコストと労力が必要です。企業全体の業務プロセスを分析し、再設計する必要があるため、計画段階から本稼働までの各プロセスで時間や費用がかかります。特に、規模が大きい企業では取り組むべき課題も多く、負担も大きくなるでしょう。

また、外部の専門家やITシステムの導入が求められるケースも多いため、短期的なコスト負担が大きくなる可能性があります。初期投資は長期的には回収が見込まれますが、導入時には慎重な計画と判断が欠かせません。

失敗によるリスクが大きい

BPRは企業の根幹に関わる大規模な変革であり、計画の失敗が重大なリスクとなり得ます。万が一、改革が途中で止まった場合や失敗に終わった場合、投資した時間や資金に加え、組織の信頼性や市場での競争力にも悪影響を与える可能性があります。

このようなリスクを避けるためにも、リスク管理を十分に行い、計画的にプロジェクトを進めることが重要です。

従業員が混乱する

BPRによる業務改革は、従業員にも大きな変化をもたらします。新しい業務プロセスの導入により、混乱や戸惑いを感じる従業員も少なくありません。場合によっては工数や時間の負担が増えることもあります。

改革の理由が十分に伝わらないまま業務が変わると、抵抗感が生まれ、モチベーションが低下する恐れがあります。BPRの導入では、初期段階から従業員に情報を共有し、理解と協力を得ることが重要です。

BPRの主な5つの手法

BPRを効果的に進めるには、目的や業務プロセスに合った手法を選ぶことが大切です。ここでは、BPRでよく活用される代表的な手法を5つ紹介します。

  1. (1)業務仕分け
  2. (2)ERP(統合基幹業務システム)
  3. (3)BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)
  4. (4)シェアードサービス
  5. (5)RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)

(1)業務仕分け

業務仕分けは、BPRを進める際に欠かせない手法です。現行の業務プロセスを詳細に分析し、無駄や重複を可視化します。業務を分類し、整理することで、効率的な業務フロー構築に役立ちます。

(2)ERP(統合基幹業務システム)

ERPはEnterprise Resource Planningの略で、企業のリソース(人、モノ、金、情報)を一元管理する考え方やシステムを指します。日本語では「統合基幹業務システム」と呼ばれることが多く、代表的な例としてはSAPやオラクルなどがあります。ERPは部署間の連携を強化し、業務効率を向上させるために有用です。

(3)BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)

BPOはBusiness Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の略で、自社の業務を外部の専門業者に委託することを指します。一般的には、特定のタスクではなく、業務のプロセス自体を委託します。

自社では対応できないソフト開発やデジタルマーケティングを、外部の専門業者に委託することもBPOの一種です。

BPOにより、企業はコア業務に集中し、コスト削減や業務効率化が実現しやすくなります。経理、人事、マーケティングなど幅広い業務で利用可能です。

(4)シェアードサービス

シェアードサービスは、複数のグループ企業や部門で共通する業務(経理、人事、ITなど)を集約する手法です。業務の標準化やコスト削減が可能で、人員や設備などを効率的に活用できます。

(5)RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)

RPAはRobotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略で、ITやAIを活用した業務の自動化を図るためのツールです。RPAを活用することにより、業務を効率化し、BPRの効果をさらに高めることが期待できます。

BPR導入の5つのステップ

BPRを導入して社内の改革をスムーズに進めるため、基本的な手順を確認しましょう。ここでは、以下の5つのステップに分けて解説します。

  1. ステップ1:改善点のヒアリングと業務範囲の設定
  2. ステップ2:対象業務の分析
  3. ステップ3:計画や方針の策定
  4. ステップ4:計画の実行
  5. ステップ5:計画のモニタリング・評価

順に見ていきましょう。

ステップ1:改善点のヒアリングと業務範囲の設定

BPRを導入する際、各部門の従業員から改善すべき点をヒアリングします。ITやAIシステムの活用を検討する場合は、社内全体の業務を横断して、見直すべきプロセスを把握します。企業戦略に沿った改善点を明確にするために、経営層からも意見を聞きましょう。

集めた意見をもとに、効率化の対象となる業務範囲を設定します。その際、BPR導入の目的や目標を明確にし、共有することで、「手段の目的化」を防ぎ、本来の目的である業務効率化を実現できます。

ステップ2:対象業務の分析

業務範囲の設定が完了したら、効率化の対象となる業務を分析します。社内の現状をできるだけ詳細に把握し、問題点を特定するため、分析ツールなども活用しましょう。業務によって課題の深刻度は異なるため、問題点の多い業務から優先的に分析を進めることが効果的です。

BPRの目的は、業務を細分化したことにより生じたボトルネックを解消することにあります。社内全体を俯瞰して、どこに解決の余地があるか、本質的な問題は何かを見極めながら、解決手段に落とし込みましょう。

ステップ3:計画や方針の策定

詳細な分析が完了したら、BPRを成功させるための計画と方針を策定します。複数の戦略案を出して、全従業員が納得して取り組める方針を整えましょう。全社的な理解を得ずに計画を進めると、「仕事の進め方が急に変わった」「仕事がなくなった」など、不満や反発が出るリスクがあります。

また、必要に応じて業務の削減や、外部の専門家に業務を委託するアウトソーシング(BPO)の活用も検討しましょう。

複数の問題や課題を一度に解決することは困難です。リストアップした改善点に優先順位を付けて、効果が大きいものから取り組むことで、コストを抑えながら効率的に進められます。

ステップ4:計画の実行

計画や方針が整ったら、いよいよ実行に移ります。計画を実行する前には、当初の目的や目標に沿った方針が共有されているか、全従業員が理解しているかを確認することが重要です。社内全体が共通の認識で協力体制を維持できるかどうかが結果を左右します。

BPR導入による社内改革は長期的な取り組みになるため、最終目標だけでなく、短期的な目標も設定することが大切です。短期目標の達成を積み重ねることで、段階的な進捗管理がしやすくなります。

ステップ5:計画のモニタリング・評価

BPRを活用した業務改善が始まったら、定期的に計画のモニタリング・評価を行いましょう。モニタリングでは、以下の点を重視します。

  • プロセスを含めて、ビジネス全体の進捗に問題はないか
  • 計画を実施したことで新たな問題は生じていないか
  • 短期的な目標をクリアできているか

モニタリングと評価で問題点があれば、必要に応じて計画を修正します。また、評価結果を全社で共有することで、各部門が進捗や成果を確認でき、従業員の積極的な協力を得やすくなります。

BPRの事例

ここでは、BPRを活用した業務改善に取り組んで成功した事例を紹介します。国内外の具体的な取り組みを通して、BPRの効果がどのように現れるかを見ていきましょう。

日刊スポーツの事例

国内初のスポーツ新聞として知られる「日刊スポーツ」では、Webメディアで使用していたCMSの老朽化が問題となっていました。しかし、CMSはメディア事業の中核となるシステムであり、簡単に入れ替えることはできません。

そこで、日刊スポーツはパートナー企業とともに、システムの刷新に着手。その結果、情報発信のスピードアップと、業務の効率化や統制を実現しました。

日立製作所の事例

日立製作所では、中期経営計画の実現を目指し、ITを活用した新システムの構築に取り組みました。計画設計から1年間で約100億円を投資して、財務部門・人事総務部門・資材部門に新システムを導入。これにより、業務量の削減や資材手配の効率化を実現しています。

フォードの事例

アメリカの大手自動車メーカーであるフォードでは、間接費と管理コスト削減が課題でした。支払い部門の人員削減を検討する中、支払いプロセスだけでなく、注文から支払いに至るまでの、調達プロセスの見直しを実施。

商品到着時にオンラインデータベースを確認し、注文に紐づけた小切手を自動で発行する仕組みの導入を決定しました。その結果、支払い部門の人員を500人から125人へ削減することに成功しています。

ムダな業務を見直して生産性を上げよう

BPRは自社のビジネスにおけるプロセスを根本的に見直して、業務のムダを改善する手法です。政府が推進するDXや働き方改革に合わせて新しいツール導入を検討する際にも、BPRの考え方が役立つでしょう。

社内のムダを見直して、生産性を向上したいと考えている場合は、BPRの導入を検討してみてください。

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