A. 当社はお客様課題に合わせた開発提案からアウトソーシング、ITコンサルティングまでワンストップでサービス提供しているソリューション・カンパニーです。官公庁や金融機関、大手企業が主な取引先で、そのうち約半数は長年継続してお付き合いさせていただいているお客様です。このような顧客基盤は当社の大きな強みであると認識しています。
Q. そうした顧客基盤の構築に必要なものは何でしょうか?
A. もっとも重要だと考えているのは「信頼関係」です。
お客様と良好な関係性を築くため、社員の育成には特に力を入れて取り組んでいます。
当社はITを生業としているので「技術力」はもちろん重要ですが、お客様が求める提案を実現するための課題認識力や、プロジェクトを円滑に進めるためのマネジメント能力、ひいては立ち居振る舞いや心持ちといった「人間力」とのバランスを意識しています。
お客様からもよくお褒めの言葉をいただくので人材育成の取り組みが実を結んでいることを実感しています。
組織風土や下地づくりから人材育成は始まる
Q. 人材育成の取り組みの中で大切にされていることはありますか?
A. 組織風土や育成の下地づくりが大切だと考えています。
具体的には「同じ釜の飯を食う」機会や、同じ場で同じ学びを得る機会を増やし、社員同士が分かり合える場を提供することです。
また、私の思想や考えを折をみて社員に伝えることも大切にしています。例えば、「衆人皆師」という言葉があります。「小人は縁に出会って縁に気付かず、中人は縁に気付いて縁を生かせず、大人は袖すり合った縁をも生かす」という教えであり、どんな愚かな人からも反面教師として学ぶことができ、自分以外のすべての人が師であるという意味です。
新入社員へのガイダンスではよくこの言葉にまつわる話をしており、このような継続的なメッセージの発信が、当社の社風の一部になっていると考えています。
A. 人間力の育成に関しては、本質的に自分なりの考えがどうあるべきか、つまり内省を促進するような研修プログラムを求めています。特に外部研修には社内では得られない良質な刺激を期待しています。
若手には自分が社会人としてどうあるべきかを真摯に見つめ直すことを重視した研修、管理職には社外の方々との交流を通じてさまざまな視点を獲得し、内省の質を高める研修を受講させたいと考えています。
A. 技術力の育成については、外部研修・内製研修を組み合わせて実施しています。新入社員に関しては、文系、理系や専攻分野を問わず、様々なバックボーンを持った人材を採用しているため、技術系の研修は2カ月間実施しスキルのボトムアップを図っています。内製研修については、中堅や若手社員に講師の機会をあたえています。
私自身、入社1カ月で人に教える機会がありました。人に教えることで自分がわかっていること、わかっていないことがはっきりと認識でき、とてもいい勉強になりました。このような原体験があって、内製研修は、「教えられる側」ではなく「教える側」の育成機会でもあると捉えています。
資格取得に関する支援制度も実施しています。具体的には、合格したら会社が受験料を全額負担し、更に報奨金を授与する制度を整えています。各人の目的意識を持った学習を推進していて、資格を取得すること以上にその過程の学びを大切にしています。得た学びを活かし、実務においていかにチャレンジを継続できるか、という点を重視しています。
A. 人材育成を推進するため、以前は年間の受講回数を決めて研修に行かせたり、研修費を設定する、といった取り組みを実施しましたがなかなかうまくいきませんでした。この取り組みの反省点は、「課題認識や気づきが無ければ結局社員は動かない」ということです。現在は半期毎のMBO(目標による管理)でアクションプランを策定するようにし、業務上の行動目標と学びをうまく連携させるようにしています。「再現性」をもって成果を上げる社員に報いたいという気持ちもあり、チャレンジの過程を評価するという点を意識して運用してます。
A. 理由は2つあります。
1つめは組織としての持続可能性を高めるためです。組織としての健全性を担保するためには、平均年齢を33歳程度に保つことが適当と考えていて、年齢構成のバランスには気を配っています。
2つめは社員の育成のためです。先述のとおり内製研修では若手・中堅に積極的に講師を担当させています。後輩の存在や指導を通じて本当の意味でそれぞれの階層・年次に求められるスキルが獲得できると考えており、こうした学びは大きな意味を持つと考えています。
新卒採用は当社の成長源泉のひとつです。若手・中堅社員が新人を指導することで人間力・技術力を磨き、お客様に信頼される社員に成長します。指導された新人は、同じように次世代の新人を指導することでスキルを磨いていきます。こうした人材育成の仕組みによって、組織の成長サイクルが回っていくと考えています。
新入社員向けの内製研修の様子。 同社の中堅・若手社員が講師を担当する。
Q. 多くの人材育成の取り組みを実施される中で手ごたえや成果を感じるのはどのような時でしょうか?
A. 先ほど述べたとおり、お客様からお褒めの言葉をいただく際には手ごたえを感じますが、最も強く感じるのは実際にそのお客様からのリピート受注につながった時です。本当の意味で信頼関係が構築できていないと、なかなか持続的なお付き合いはできないと思っています。
全部が完璧でなくてもいいですが、技術力や、立ち居振る舞い、心持ちなど、どこかのポイントでお客様の琴線に触れ、信頼が獲得できていることは大きな成果と考えています。
外部研修に期待するのは目からウロコの気づき
Q. 最後に当社に期待することがあれば、お聞かせいただけますでしょうか。
A. まず社外研修に期待することは、社内ではなかなか得られない目からウロコの気づきが得られることです。身内に語られてもなかなか耳に入らないので、研修や講師の雰囲気によって学びが促進されればと思っています。また、技術力育成と人間力育成をミックスした研修プログラムがあれば面白いと思います。
技術力と人間力のバランスが取れた人材育成を推進するために、更なる貢献を期待しています。