「今の会社で働き続けたい」新人、4年連続で減少
2019年度の新入社員5,673名のキャリアに対する意識調査を実施しました
2019年4月26日
「ずっと同じ会社で働きたい」と考える新入社員は年々減っている、といった話を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。今回は、2019年度の新入社員5,673名を対象に実施したアンケート調査をもとに、新入社員のキャリアに対する意識の変化と、今どきの新入社員を育てるポイントを見ていきます。
新入社員の就社意識が年々希薄に
「今の会社で働き続けたい」新入社員が4年連続で減少
当社は、2014年度から毎年、新入社員を対象としたキャリアに対する意識調査を実施し、勤続意向やキャリアの志向などについて、年度ごとの傾向をまとめています。
今年度の回答を集計した結果、「できれば今の会社で働き続けたい」と答えた新入社員が4年連続で減少し、ついに全体の半数ほどにまで落ち込みました(図1)。これに付随して、「そのうち転職したい」が前年度より1.7%増加の18.4%、「フリーランスとして独立したい」が1.3%増加の4.2%となりました。
フリーランスの台頭といった働き方の多様化や、就活生に優位な売り手市場の継続とそれに伴う第二新卒採用増加などの影響で、新入社員の就社意識が数年で大きく低下しています。今の新入社員はキャリアの選択肢が豊富にあるため、勤めている会社で働くメリットを提示することが早期離職の防止につながるといえるでしょう。
今後取り組みたい仕事は「楽しくてやりがいのある仕事」と「自身の成長につながる仕事」
では、キャリアの選択肢を多く持つ今どきの新入社員は、仕事に対してどんな理想を描いているのでしょうか。今後どのような仕事をしていきたいかについて聞いたところ、「楽しくてやりがいのある仕事」(67.0%)と、「自身の成長につながる仕事」(49.8%)が、突出して多い結果となりました(図2)。
今年度の新入社員は、これから仕事をしていく中で「楽しさ」や「自己成長」を重視しています。しかし、仕事は新入社員が期待するような「楽しくてやりがいのあるもの」だけではありません。日々の何気ない業務にも目的やゴールがあり、業務に取り組んでいく中で成長できるということを、管理職が丁寧に説明していく必要があるでしょう。
仕事を通じて成し遂げたいことは「自己成長」。調査開始以来はじめてトップに
次に、仕事を通じて何を成し遂げたいかについて質問したところ、「自分を成長させたい」(58.3%)がトップとなりました(図3)。2014年度の調査開始以来、「安定した生活を送りたい」が1位、「自分を成長させたい」が2位でしたが、今年度は逆転しました。
今後のキャリアは「専門家」志望がトップを継続も、
「キャリア志向なし、楽しく働きたい」「今後決めていきたい」がさらに増加
将来会社でどのような役割を担いたいかという質問では、前年度に引き続き「専門性を極め、プロフェッショナルとしての道を進みたい(専門家)」(31.7%)を志望する新入社員が、「組織を率いるリーダーとなり、マネジメントを行いたい(管理職)」(24.0%)を上回る結果となりました(図4)。
また、ここ数年間で、「キャリアについての志向はなく、楽しく仕事をしていたい」(22.3%)や、「まだ(キャリアについて)はっきりしていない」(21.3%)が増加傾向にあります。前述したように、新入社員の58.3%が仕事を通じて「自分の成長」を成し遂げたいと考えていますが、その一方で、会社員として将来どのようなキャリアを目指すかを具体的に定めていない人も増加しているという興味深い結果となりました。
自分のキャリアアップにつながると思う上司は「優しく指導してくれる上司」。
「プライベートのことも相談に乗ってくれる上司」も過去最多
自分のキャリアアップにつながるのはどんな上司かという質問には、「優しく指導をする上司」(42.1%)と答えた新入社員が最も多く、「プライベートのことも相談に乗ってくれる上司」(40.5%)と共に、調査開始以来最多となりました(図5)。
このような結果となった要因の1つとして、前述した「将来のキャリアを具体的に描いていない新入社員」が増加していることが考えられます。売り手市場での就職活動によって、自己分析や業界研究を十分にしないまま入社を迎えた人がいることが影響しているのかもしれません。
「定時に帰りたい」は5年連続、「休日出勤はすべきではない」は4年連続で増加
今後3年間の働き方についての質問では、「定時に帰りたい」(42.3%)と回答した新入社員が調査開始以来5年連続で増加し、2年連続で回答者の4割以上がその意向を示しました(図6)。世の中の「働き方改革」の機運が高まっていることから、このような傾向は今後さらに強くなる可能性があります。
また、「必要であれば休日でも出社すべきか」という質問をしたところ、「あまり前向きではないが、必要ならば出社すべきだと思う」(52.9%)が例年と変わらず一番多い結果となりました(図7)。一方で、2番目に多かった「休日に出社すべきではないと思う(22.9%)が、唯一増加傾向にあります。これは、仕事とプライベートのオン・オフの切り替えを重視する人が増えているということかもしれません。企業はこのような新入社員の意識変化をしっかりと理解し、ワークライフバランスを保てる職場づくりを進めていく必要があるでしょう。
新入社員の早期離職を防ぐ3つのポイント
今年度の調査から、新入社員の就社意識がさらに希薄化していること、仕事に「楽しさ」「やりがい」「自己成長」を求めていること、専門家を志望する人が引き続き多い中、キャリアの方向性を定めていない新入社員が増加していること、自分のキャリア形成に対して「優しく指導してくれる」上司を求めていること、さらには、「定時に帰りたい」など自分の時間を大切にしているといった特徴が明らかになりました。
従来よりもキャリアの選択肢が広がっている新入社員にとって、自分の求めている環境が得られない場合、早期に離職してしまう可能性があります。そのため、新入社員に長く勤めて活躍してもらうには、
- ①日々の業務に対する目的やゴールのイメージを管理職から丁寧に説明する
- ②会社でのキャリアに対して継続的に考える機会を新入社員に与える
- ③ワークライフバランスを保てる職場づくりを推進する
ことが重要だといえます。
皆さまの会社では、新入社員の早期離職を防止し、自己成長を感じてもらえるような取り組みを実施できていますでしょうか。新入社員の"本音"をもとに、一度振り返ってみてください。
【調査概要】2019年度新入社員のキャリアに対する意識調査(速報値)
調査対象者 | 当社が提供する新入社員研修の受講者(研修は東京・横浜・名古屋・大阪で開催) | |
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調査時期 | 2019年4月2日~2019年4月11日 | |
調査方法 | 自記式のアンケート調査 | |
サンプル数* | 5,673名 | |
属性 |
(1)性別
①男性:55.1%(3,125名) ②女性:43.9%(2,489名) ③不明:1.0%(59名) |
(2)所属企業の従業員数規模
①50名以下:9.5%(539名) ②51名~100名:21.9%(1,243名) ③101名~300名:39.1%(2,217名) ④301名以上:21.8%(1,234名) ⑤分からない・不明:7.8%(440名) |
* 各設問において読み取り時にエラーおよびブランクと判断されたものは、欠損データとして分析の対象外としています
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