「女性の働くを科学する」共同調査研究プロジェクトより中堅中小企業の女性活躍推進の成功事例を発表しました
2018年3月6日
女性活躍推進に取り組んでいる企業18社へのインタビュー調査と、中堅中小企業の7,402名を対象とした大規模調査を2016年および2017年に実施。その結果を元に、中原准教授や経済産業省のダイバーシティ推進に携わる担当者などの専門家とともに、女性活躍推進の成功ポイントを導き出しました。
中堅中小企業において女性活躍推進に手ごたえを感じている企業はわずか 1.5%
政府や自治体、大手企業による女性活躍推進の様々な取組み事例が世を賑わせ、順調に進んでいるかのように見えますが、2017年5月に当社が中堅中小企業の約600名に実施した女性活躍推進に関するアンケートでは、「十分に取り組んでおり、望ましい効果が出ている」と回答した割合はわずか1.5%であったことが明らかになりました。また、女性活躍推進に関する課題として中堅中小企業が感じている項目の第1位として、「助け合う職場づくりが不十分」という結果が同アンケートからわかりました。(図1)
女性活躍推進に手ごたえを感じている中堅中小企業はわずか1.5%との結果となりました。そのような状況の中でも、当社顧客の中から女性活躍推進に取り組んでいる企業18社にその取り組みについてインタビュー調査を実施しました。
「女性活躍推進研究」 インタビュー調査概要
女性活躍推進の取り組みに関するインタビュー調査 | |
---|---|
調査対象 | 女性活躍推進の取り組みを行っている企業18社 |
調査方法 | インタビュー調査 |
調査期間 | 2017年8月~2017年11月 |
調査内容 |
|
インタビュー調査から以下の成功ポイントがわかりました。
- (1) 女性活躍推進を女性に押し付けない
- (2) 職場全体を巻き込んで取り組む
- (3) 昇進昇格の節目をサポートする
これらの成功ポイントを実践している企業 3 社の事例を紹介します。
女性活躍推進事例① 【初の女性管理職登用】
エンタテイメント・飲食サービス業
従業員数 157人(男性101人 女性56人)
- 1.
- 女性活躍の取り組み
女性活躍推進の第一歩として女性初のマネージャーを1名登用 - 2.
- 女性活躍を進めるポイント
- (1) 昇進を断られても、フォローする意思を伝え説得する
- (2) 孤立させないよう、昇進した人をきちんとサポートする
- (3) キャリアの理想像に捉われない
当初は女性初の管理職になることに抵抗や葛藤があったものの、周囲からの期待やなぜ自分なのかを繰り返し伝えられたことから管理職になることを決意。「女性ならではのきめ細やかな対応、心遣い、配慮」をサービスに反映させるための提案を行うことで、サービスの改善につながりました。
- 3.
- 女性活躍推進の成果
- (1) 女性視点でのサービス改善に成功
- (2) 女性のみならず男性からも「働きやすい」と評価されるようになる
- (3) 結婚や出産などを迎えても継続的に働く女性が増加
女性活躍推進事例② 【全社を巻き込んだ推進活動】
情報通信業
従業員数 240人(男性180人 女性60人)
- 1.
- 女性活躍の取り組み
- (1) 現状分析のためのタスクチームを結成
- (2) タスクチームにて、社内アンケート、女性活躍推進のための討論会などを実施
- 2.
- 女性活躍を進めるポイント
- (1) 女性活躍推進の旗印をつくる
- (2) 職場全体を巻き込む
- (3) 経営陣と密に連携する
女性が輝くための職場づくりを推進するにあたって、現状分析のためのタスクチームを結成(チームメンバーは、新卒/中途、年齢などバラバラの4人の女性)。社内アンケート、女性活躍推進のための討論会などを女性だけではなく男性も交えて実施し、現状の課題を洗い出して経営層に提案。今後の中期経営計画策定に盛り込み推進していくことになっています。
- 3.
- 女性活躍推進の成果
- (1) 女性活躍推進の活動をきっかけに、働き方について話し合う機会が生まれた
- (2) 女性活躍に関することだけでなく、業務改善案がボトムアップで出てくるようになった
- (3) 中核を担うリーダーになりたいという女性社員が出てきた
女性活躍推進事例③ 【対話が生み出した女性活躍推進】
専門・技術サービス業
従業員数 60人(男性28人 女性32人)
- 1.
- 女性活躍の取り組み
- (1) 毎月社員全員と個別面談を実施
- (2) トランジション(役割移行)を支援するスキルアップ勉強会の実施
- 2.
- 女性活躍を進めるポイント
- (1) 男女問わず変化サポートを行う
- (2) お互いを理解する機会を用意する
- (3) 変化する理由を会社目線で語る
企業規模が急激に拡大する中、男女が同じ業務を行うということになり、従業員からの不満や反発などが出ました。しかし従業員一人ひとりと会社のビジョンや個人のキャリアについて毎月話したり、トランジション(役割移行)を支援するスキルアップ勉強会を行ったりした結果、不満や反発を払拭することができました。
- 3.
- 女性活躍推進の成果
- (1) 会社としての成長につながった
- (2) 社員の定着率が上がった
- (3) 優秀な女性の入社が増えた
また、中堅中小企業の7,402名を対象にした「女性活躍推進研究」アンケート・インターネット調査を2016年の本調査と2017年の追加調査の形で実施し、当該大規模調査から以下の成功ポイントがわかりました。
- (1) 女性社員にはやりがいのある仕事を任せる
- (2) 女性が昇進を受け入れるのは上司の細やかな説得次第
- (3) 女性が働き続けたいのは平等、誠実で、助け合いのある職場
「女性活躍推進研究」アンケート・インターネット調査概要
2016年および2017年に実施(2017年3月3日発表済)
働く男女のキャリア調査(本調査) | 職場の働き方調査(追加調査) | |
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調査対象 | 5,402名 (管理職 / リーダー / 実務担当者について各男女、計6層が対象) |
2,000名 (ワーキングマザーおよびワーキングマザーの上司、職場メンバー(一般社員)、パートナー、計4層が対象) |
調査方法 | 自記式アンケート調査 | インターネット調査 |
調査期間 | 2016年9月~2016年11月 | 2017年3月 |
調査内容 |
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女性社員は大変でもやりがいのある仕事をしたいと思っている
女性社員は男性社員よりも大変でもやりがいのある仕事を求めて(男性18.5%に対して女性30.0%)いることがわかりました。(図2)
女性が昇進を受け入れるのは上司の細やかな説得次第
女性は、「上司に説得され、引き受けた」が男性に比べて高く(男性22.5%、女性32.2%)、女性社員に昇進を引き受けてもらえるかどうかは上司の説得がポイントになることがわかりました。(図3)
女性が働き続けたいのは平等、誠実で、助け合いのある職場
女性がその職場で働き続けたいと思うかどうか、に最も影響を与えるのは「女性に対しても平等に機会を与えられるかどうか」、次いで「責任をもって仕事に取組み、互いに助け合う職場かどうか」となりました。(図4)
最後に
女性活躍推進には助け合う職場づくりが不可欠
女性活躍推進に取り組んでいる企業18社へのインタビュー調査と中堅中小企業の7,402名を対象に当社が昨年実施した大規模調査では、「助け合う職場づくり」が重要との結果が共通しており、女性活躍推進に取り組む上で注力すべきポイントがわかりました。今回の発表内容が、進みにくいとされている中堅中小企業の女性活躍推進の一助となることを期待しています。
【調査概要】
調査対象者 | 企業に勤める管理職・リーダー・実務担当者
|
||||
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回答者数 | 管理職 | リーダー | 実務担当者 | 合計 | |
男性 | 1,575 | 799 | 1,300 | 3,674 | |
女性 | 369 | 344 | 1,015 | 1,728 | |
合計 | 1,944 | 1,143 | 2,315 | 5,402 | |
調査方法 | 自記式アンケート調査 | ||||
調査期間 | 2016年9月~12月 | ||||
調査内容 | 各層ともに、キャリアおよび仕事に対する意識と行動、 また会社の制度や環境、職場文化など長く働くことに関する全般について、 「現在どうか」および「過去のある時点でどうだったか」を調査 |
※ 調査結果を引用・転載する場合には出典を記載してください。
【出典記入例】
- 出典:トーマツ イノベーション(現・ALL DIFFERENT)×中原淳 女性活躍推進研究プロジェクト (2017)「女性の働くを科学する:本調査」(https://www.all-different.co.jp/npro/2017/)
- 出典:トーマツ イノベーション(現・ALL DIFFERENT)×中原淳 女性活躍推進研究プロジェクト (2017)「女性の働くを科学する:追加調査」(https://www.all-different.co.jp/npro/2017/)
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