人事部の実態調査(人事の課題編)
人事部の取り組みたいテーマ「人材育成・組織開発」2年連続1位!「人材要件・教育体系の整備」が課題解決のカギ

2024年5月28日

調査・研究

2024年1月15日~3月25日の期間で、企業の人事責任者・人事担当者340人を対象に「人事部の実態調査」を行いました。本レポートでは、人事部の最大のテーマ(課題)や注力したい育成階層のランキングなど、人事の目指す方向性や悩みなどを明らかにする調査結果を公表いたします。

背景

2023年に義務化された人的資本の情報開示を通じ、働く人材の価値向上が企業の価値向上につながると捉える「人的資本経営」の考えがますます注目されています。社員育成の重要度が高まり、経営戦略と連動した人事戦略に取り組む企業が増える一方、何から手を付けてよいかわからないと当社にもお悩みの声が届きます。近年は入社前後のギャップや“配属ガチャ”による若手社員の早期離職、さらには人手不足による優秀な人材の獲得競争の激化など、人材の定着・確保の課題に直面する人事担当者も多くいらっしゃいます。当社では、社員の育成を第一に考える経営者、人事担当者の抱える課題を一緒に解決すべく、まずは実際に人事部がどのような課題を抱いているか実態調査を行いました。本調査結果が、組織創りや新入社員育成に悩む経営層、人事担当者、さらには現場の管理職の方にとって、今後の取り組みに活かせる有益な情報となれば幸いです。

調査結果の概要

  • ● 人事部として取り組みたいテーマ「人材育成・組織開発」が2年連続トップ。301名以上の企業では9割超と昨年より割合高まる

  • ● 人材育成・組織開発を推進する上での課題、300名以下企業は「現場社員の育成に割ける時間がない」、301名以上企業は「部署による意識・取り組みの差」がトップの回答に

  • ● 育成環境の課題、「人材要件・教育体系の整備」と回答する割合が最大

  • ● 最も注力して取り組みたい育成階層は「次期管理職」。301名以上の企業は7割を超える結果に

(概要)

1. 人事部として取り組みたいテーマ「人材育成・組織開発」が2年連続トップ。301名以上の企業では9割超と昨年より割合高まる

本調査では、企業の人事責任者・人事担当者340名に、人事部として抱えている課題や、今後取り組みたいことなどの実態調査を行いました。その結果を、従業員が300名以下の企業(以下、『300名以下企業』と記載)と、301名以上の企業(以下、『301名以上企業』と記載)に分けて分析した結果をご紹介します。

初めに、人事部として取り組みたいテーマ(課題)を質問しました。結果、300名以下企業は84.0%、301名以上企業は95.1%が「人材育成・組織開発」と回答する結果となりました。特に301名以上企業は、300名以下企業より11.1ポイント高く、ほとんどの企業が取り組みたいテーマ(課題)と認識していることがわかりました。次いで、「採用」が300名以下企業は67.1%、301名以上企業は72.5%と続きました。

300名以下企業と301名以上企業の差を比較すると、「経営との連動性の向上」が、301名以上企業が300名以下よりも12.7ポイント高くなりました。割合としては高くないものの、大企業の人事部は中小企業よりも、人材戦略を経営の一貫として捉える傾向にあることが示唆できます。(図1)

(図1)

次に、同様の質問を昨年の結果と比較しました。300名以下企業では、順位は変わらないものの「人材育成・組織開発」の割合は昨年の90.1%から6.1ポイント、「労務管理」は29.7%から7.2ポイント減少し、「経営との連動性の向上」の割合は22.5%から3.0ポイント上昇する結果となりました。(図2)

(図2)

一方、301名以上企業では、「人材育成・組織開発」と回答した割合が、昨年の93.7%から1.4ポイント上昇する結果となりました。「採用」も13.6ポイント上昇し、最大の伸び率となりました。301名以上の大企業では、「人材育成・組織開発」や「採用」に関する取り組みを重視する割合が、昨年よりも高まっている傾向が見受けられました。(図3)

(図3)

2. 人材育成・組織開発を推進する上での課題、300名以下企業は「現場社員の育成に割ける時間がない」、301名以上企業は「部署による意識・取り組みの差」がトップの回答に

8割以上の人事部が「人材育成・組織開発」を今後取り組みたいテーマ(課題)として考えていることがわかりましたが、人材育成・組織開発を推進する上でどのような課題があるのでしょうか。

300名以下企業では「現場社員の現業が忙しく、育成に割ける時間(育成施策を受ける時間)がない」と回答した割合が61.3%と最も高くなりました。次に「人材育成・組織開発を推進するメンバーの知識が不足している」が59.3%、「人材育成・組織開発を推進するメンバーの人手、時間が不足している」が58.2%と続きました。

301名以上企業では「部署によって育成への意識や取り組みに差がある」と回答した割合が75.3%となりました。この割合は300名以下企業よりも21.2ポイント高く、最大の差となりました。次に、「現場社員の現業が忙しく、育成に割ける時間(育成施策を受ける時間)がない」が73.2%、「人材育成・組織開発を推進するメンバーの人手、時間が不足している」が70.1%と続きました。(図4)

(図4)

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