内定者意識調査(2023年度 想定する入社後の壁編)
24卒内定者の8割が社会人になることが不安と回答。入社後に想定している壁と企業に求めるサポートが明らかに!
2024年1月29日
2023年10月16日~12月4日の期間で、404名を対象に「内定者意識調査」を行いました。2024年に入社を予定している内定者が抱える不安や想定している壁について調査・分析を行いました。
背景
企業が社会情勢やビジネス環境の大きな変化を乗り越え発展していくためには、人的資源の確保・定着が急務となっており、優秀な若手社員の定着も経営課題のひとつとされています。当社で実施した社会人1年目の意識調査*1では、上司とのコミュニケーションにネガティブなギャップを感じた新人は「会社を辞めたくなる」という結果が明らかとなり、若手社員の早期離職防止には上司からの働きかけが大きく影響することがわかりました。入社後にネガティブなギャップを感じさせないためには、企業や上司が入社前の段階から、内定者の気持ちや想定している壁を知り、入社に向けた適切な受け入れ準備を進めることが重要です。そこで、当社は例年、内定者が入社前にどのような気持ちを抱いているか実態を調査しており、昨年の内定者意識調査*2では、8割以上の内定者が不安を抱えていたことがわかりました。大学入学直後から卒業するまでコロナ禍で過ごしてきた24卒の内定者は、どのような特徴があるか、また入社後に直面する壁をどのようにイメージしているか、本レポートにまとめました。新入社員・若手社員育成に悩む経営層、人事担当者、さらには現場の管理職の方にとって、有益な情報となれば幸いです。
調査結果の概要
- ● 社会人になること、約8割が「不安・心配」と回答し最大の割合に
- ● 半数以上の内定者が「仕事についていけるか」「成果を出せるか」に不安を感じている
- ● 入社後に直面すると想定している壁は、「仕事の難易度」「生活リズムの変化」が上位
- ● 内定先に求めるサポートの上位は、「先輩社員との関係構築」「マナーなどの社会人の基礎教育」
- ● 入社後に期待することは、「成長できること」「給料がもらえること」「社会の役に立てること」
- ● 内定辞退や早期離職を防ぐために企業が取り組めることとは
1. 社会人になること、約8割が「不安・心配」と回答し最大の割合に
まず初めに、内定者404名に対し、社会人になるにあたりどのような気持ちが強いか質問しました。 結果、「不安、心配な気持ち」が78.7%と最も高い割合となりました。次に「期待感」が46.2%、「嬉しさ、楽しみな気持ち」が42.7%と続きました。(図1)
2. 半数以上の内定者が「仕事についていけるか」「成果を出せるか」に不安を感じている
学生から社会人になるにあたり、大きな不安を感じている内定者は、具体的にどのような不安を感じているのか質問しました。
結果、65.8%の内定者が、「自分の能力で仕事についていけるか」に不安を抱えている結果となりました。続いて「しっかりと成果を出せるか」が55.1%と、半数以上の回答を集めました。
また、今回新たに項目として追加した「先輩・同期とうまくやっていけるか」という項目は46.2%と第3位にランクインし、「上司とうまくやっていけるか(41.9%)」よりも高い割合となりました。内定者にとっては、上司との関係性以上に、先輩・同期のような身近な存在との関係性に不安を感じている割合が高いことがわかりました。(図2)
3. 入社後に直面すると想定している壁は、「仕事の難易度」「生活リズムの変化」が上位
次に、学生から社会人へのトランジションを迎える過程で、どのような壁に直面すると思うか質問したところ、98.0%の内定者が何らかの壁に直面すると想定していることが明らかになりました。想定する壁のうち、「仕事が難しい(51.9%)」と回答した内定者が最も高く、次に「生活リズムの変化(47.6%)」が続きました。(図3)
4. 内定先に求めるサポートの上位は、「先輩社員との関係構築」「マナーなどの社会人の基礎教育」
これまでの結果から、「仕事が難しい」、「生活リズムの変化」という壁に直面すると想定している内定者が多いことがわかりましたが、その壁を乗り越えるために、それぞれどのようなサポートを必要としているのか質問しました。
結果、どちらの壁においても、半数以上の内定者が、「先輩社員との人間関係を築く機会」を最も必要としていることが明らかとなりました。図2の入社に向けての不安においても、「先輩・同期とうまくやっていけるか」が3位にランクインしており、内定者が抱く不安の理由や解決策には、「先輩社員との関わり方」が重要だということが認識できる結果となりました。加えて、業界の専門知識や専門スキル、マナーや仕事の進め方などの社会人の基礎スキルを学ぶ機会も求めており、事前に学習できることは習得したいという、タイムパフォーマンスを重要視するZ世代の傾向が見受けられました。
●仕事の難しさの壁に直面すると考えている内定者は、どのようなサポートを必要としているか(図4)
●生活リズムの変化の壁に直面すると考えている内定者は、どのようなサポートを必要としているか(図5)
5. 入社後に期待することは、「成長できること」「給料がもらえること」「社会の役に立てること」
最後に、入社に向けてどのような期待があるか質問しました。結果、「色々なことを学び成長できる(67.0%)」「給料がもらえる(50.9%)」「社会の役に立てる(40.2%)」が上位を占める結果となりました。(図6)
まとめ
労働人口減少が進む中で、会社の未来を担っていく内定者の悩みや想定する壁の実態を明らかにすべく、本調査を実施しました。結果、内定者が今一番強く持っている気持ちは、例年同様「不安、心配な気持ち」が高いことがわかりました。不安を感じる内容についても、「自分の能力で仕事についていけるのか」「しっかりと成果を出せるか」が昨年に引き続き1位、2位となり、それぞれ半数以上の回答が集まりました。また、3位には今年新たに回答の選択肢に追加をした「先輩・同期とうまくやっていけるか」が入りました。
入社後に直面する壁としては、「仕事の難しさ」だけでなく、「生活リズムへの適応」の壁も想定していることがわかりました。その壁を乗り越えるために、企業に求めるサポートとして「先輩社員との関係構築」や「業界の専門知識・専門スキルの教育」「マナーなどの社会人の基礎教育」が上位に挙げられました。
各企業の新卒社員の人材確保競争は激化しており、内定辞退防止や早期離職予防の取り組みが、企業の今後を左右するといっても過言ではありません。学生から社会人への移行(トランジション)は、想定していなかった大きな壁に直面することが考えられます。現時点の不安を払しょくするだけでなく、入社後に直面するであろう「壁」の予告や、その壁を乗り越えるために必要なマインド、知識・スキルの習得を支援する仕組みが必要です。先輩社員をはじめとする、既存社員との関係構築や会社全体としてサポート体制の整備など、いかに計画的・体系的・継続的に取り組むことができるかが、入社後の長期活躍の土台となっていくでしょう。
【考察】内定辞退や早期離職を防ぐために企業が取り組めることとは
調査結果より、2024年卒の内定者は、「期待・楽しみ」より「不安・心配」を強く感じている傾向にあります。仕事の成果創出に対する不安を感じる一方、入社後の学びや成長に対する期待を持つ内定者が多いこともわかりました。今年の内定者は、生まれた時からインターネットやパソコンのある環境で育ってきた「デジタルネイティブ世代」であり、大学・高校に入学したときから様々な行動制限がかかっていた「フルコロナ世代」でもあります。オンラインでの学習経験が多く、仕事に対する価値観や知識・スキルの獲得方法なども、以前の内定者と比較すると大きく変化していると言われています。そのため、新入社員の受け入れ・サポート・育成を、新入社員に合わせてアップデートせず、過去のやり方を踏襲していると、新入社員の立ち上がりが困難となったり、メンタル不調者や早期離職者の増加につながる可能性もあります。
初期教育においては、正しい考え方・やり方を教えるだけでなく、「できるようになるまで」丁寧にトレーニングを行うことが効果的です。特に学生時代に対面コミュニケーションの機会が少なかった24卒の内定者がコミュニケーション能力(聴く・話す・読む・書く)を強化することは、円滑な業務遂行や職場での良好な人間関係構築、ひいては入社前後の不安解消につながりやすくなります。また、デジタルツールを活用した個別最適な学びの提供は、タイムパフォーマンス重視のデジタルネイティブの学習意欲を高めます。加えて、成長を続けるための環境・仕組みの構築も必要です。特に、配属先の上司・OJT担当者など「育てる人」の育成の強化・改善は、長期的な成長支援に直結するでしょう。
ALL DIFFERENT株式会社
組織開発コンサルティング本部 コンテンツマネジメント部 部長
河合 司真子(かわい・しまこ)
事業会社を経て2017年にALL DIFFERENT株式会社(旧トーマツ イノベーション/ラーニングエージェンシー)に入社。研修講師とコンサルタントを兼務し、サービスの企画・開発、研修講師育成、中堅~大企業に対して研修の企画・提案および実施などをはじめとした人材育成支援に従事。その後、サービスの企画・開発部門のリーダーとして、アセスメント・サーベイ、対面研修、オンライン研修などの新サービスを企画・開発。研修講師育成のリーダーとしても活動。研修講師としては公開講座や企業内研修等で、管理職研修を中心に年間100回以上の研修を実施。
調査概要
調査対象者 | 当社が提供する内定者向け研修の受講者(2024年卒業予定) | ||
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調査時期 | 2023年10月16日~12月4日 | ||
調査方法 | Web・マークシート記入式でのアンケート調査 | ||
サンプル数 | 404人 | ||
属性 |
▼業種 情報通信業 154人 (38.2%) 製造業 34人(8.4%) 卸売業,小売業 34人 (8.4%) 建設業 25人(6.2%) 不動産業,物品賃貸業 22人 (5.5%) 学術研究,専門,技術サービス業 20人 (5.0%) 運輸業,郵便業 18人 (4.5%) サービス業(他に分類されないもの) 14人 (3.5%) 生活関連サービス業,娯楽業 13人 (3.2%) 複合サービス事業 7人 (1.7%) 電気,ガス,熱供給,水道業 4人 (1.0%) 金融業,保険業 4人 (1.0%) 農業,林業 3人 (0.7%) 鉱業,採石業,砂利採取業 1人 (0.2%) その他 42人 (10.4%) 不明 8人 (2.0%) |
▼企業規模 1~50人 56人(13.9%) 51~100人 62人 (15.4%) 101~300人 176人 (43.7%) 301~1,000人 65人 (16.1%) 1,001~5,000人 11人 (2.7%) 5,001人~ 1人 (0.2%) わからない 32人 (7.9%) |
*本調査を引用される際は【ラーニングイノベーション総合研究所「内定者意識調査」想定する入社後の壁編】と明記ください
*各設問において読み取り時にエラーおよびブランクと判断されたものは、欠損データとして分析の対象外としています
*構成比などの数値は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計値が100%とならない場合がございます
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