グラフィックデザイナー・佐藤卓氏を迎え、スペシャルセミナーを開催しました|イベントレポート|組織開発・人材育成
2021.06.10
各界の著名人を講師に招き、ビジネスパーソンに“学びの楽しさ”を届けるスペシャルセミナー。5月18日に開催したセミナーでは、グラフィックデザイナーの佐藤卓氏を講師に迎え、ビジネスにおける様々なシーンで活用されている“デザインマインド”について、実例を交え語っていただきました。1,150人の参加者は佐藤氏の講演から何を学んだのか。今回のレポートでは、講演内容の一部と、参加者が得た新たな気付きについてお伝えします。
15周年記念スペシャル企画! 第1弾を開催
2021年に設立15周年を迎えたALL DIFFERENT株式会社。人と組織の学びに寄り添える会社を目指し、人材育成と組織開発に関するサービスを開発・提供し続けています。そして現在、設立15周年を記念し様々なプロジェクトを推進中。その1つが、今回ご紹介するスペシャルセミナーです。
「ビジネスパーソンに、学びの楽しさを届けたい」という思いから生まれた本企画。アートやテクノロジー、スポーツなど、一見普段の仕事とは直結しない、違う視点で見るからこそ気づくこと、学べることはたくさんあるはず――。そんな考えから、様々な業界で活躍する方々にご自身の経験やそこから得られた学びを語っていただくスペシャルセミナーを企画しました。
5月18日に開催した第1弾では、日本を代表するグラフィックデザイナーである佐藤卓氏に、「『デザイン』がビジネスに与える影響」をテーマにお話しいただきました。
企業のビジョンやミッションの浸透に"デザイン"を活用
セミナーでは、佐藤氏が携わった代表的なプロジェクトである「松屋150周年プロジェクト」での具体的な施策やエピソードを多数披露いただき、それをもとに、そもそもデザインとは何なのか、そしてデザインがビジネスに影響を与えるとはどういうことなのか、1,150人の参加者とともに探りました。
「生活を支えるありとあらゆる場にデザインがある。デザインと関わりのないものは何ひとつない」と佐藤氏。
「松屋150周年プロジェクト」では、従来、デザインで生活を豊かにすることを発信していた松屋が、『デザインの松屋』として改めて生まれ変わるため、売り場をはじめ、バックヤード、さらには社員の立ち居振る舞いまで、あらゆることを"デザイン"と捉え、『デザインとは、気遣い。』というコンセプトを掲げて様々な施策を推進していったと言います。
そして、社内外に『デザインの松屋』を浸透させるための取り組みの1つとして、プロジェクトのためのシンボルマークの策定・活用を提案。「かつてのコーポレートカラーである青を基にした水色と注意を促す黄色の2色、一切言葉はない」という、「抽象的」なものにすることを意識し、デザインしたそうです。
そこには、「わざと抽象的なマークにすることで、お客さまから"これは何のマークなの?"と質問が来る。そうすると当然、聞かれた社員には答える機会が生まれる」という、佐藤氏の仕掛けが。これはつまり、質問に答えるために、「社員一人ひとりが『デザインの松屋』とは何なのかを理解し、自分たちがこれから『デザインの松屋』を目指していくこと、その決意を表すシンボルマークであることを説明できないといけない」ということ。「シンボルマークが意識を変えていくためのトリガーとなる」というように、シンボルマークを起点に自社のビジョンやミッションを浸透させるための仕組みづくりを展開していったというこのエピソードから、"デザインマインド"を持って日々の仕事に向き合うことの有用性が伝わってきました。
デザインの活用が、自身の"課題"を受け入れやすくなる土壌づくりに
このほかにも、様々な場面でデザインの影響力を活用したという佐藤氏。商品ディスプレイや案内表示といった館内の課題調査では、「このディスプレイで本当にステキに見えるのか」「(商品が並ぶ)表側だけをきれいにすればいいのではない」「違う"デザイン言語"が隣同士になると、情報が錯綜してしまう」など、まずはデザイナーの視点で課題を全て洗い出したそうです。そして調査の様子を映像にとって社員食堂で繰り返し流し、共有。言葉だけでなく、映像・画像を使って視覚的に表現することで、自身の売り場、またその周辺でどんなことが起きているのか気づきやすくなる、また課題を受け入れてもらいやすくなる。そんなデザインマインドの活かし方を披露していただきました。
「松屋150周年プロジェクト」でのエピソードを通じて、ビジネスとデザインの関係性やデザインマインドの重要性を改めて提示してくれた佐藤氏。最後に、「松屋には従来からデザインの文化があったとはいえ、松屋に限らず、全ての仕事においてデザインが大切であることは間違いない。このセミナーがデザインの大切さに気づくきっかけになって、皆さまのお役に立ってくれたら嬉しい」と語り、セミナーを締めくくりました。
参加者からは、「デザインは自身の仕事とは関係のないことと思っていたので、ビジョン、ミッションの浸透にもデザインの視点が使えるというのは意外だった。新しいことを学べば違うものが見えてくることを改めて感じた」「店舗などの空間に限らず、例えば自分が取り組んだ仕事は"気遣い"が感じられるものとなっているのか、といったことを見直すきっかけになった」などの声が寄せられ、一見デザインとの関わりがなさそうな、日々の仕事につながる新たな気づきを得てもらえたようです。
次回セミナーは7月に開催。ご期待ください!
セミナー終了後のアンケートでは、佐藤氏の講演を通じて新しいことを学びたいと「強く思った」「思った」参加者が95.6%に上り、本セミナーの大きな目的である"学びの楽しさ"を届けられただけでなく、様々な物事に目を向け、学びの機会を持ち続けることの意味・意義を再確認する良い機会にもなりました。
今後も様々な業界から著名人をお招きし、計5回にわたって開催予定のスペシャルセミナー。第2弾は、7月を予定しています。詳細は後日、当社15周年特設サイトにてご案内します。ご期待ください。1979年東京藝術大学デザイン科卒業、1981年同大学院修了。株式会社電通を経て、1984年佐藤卓デザイン事務所(現 株式会社TSDO)設立。「ニッカウヰスキー ピュアモルト」の商品開発から始まり、「ロッテ キシリトールガム」「明治おいしい牛乳」のパッケージデザイン、「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」のグラフィックデザイン、「金沢21世紀美術館」「国立科学博物館」のシンボルマークなどを手掛けるほか、商品や施設のブランディング、企業のCIを中心に活動。また、NHK Eテレ「にほんごであそぼ」アートディレクター、「デザインあ」総合指導、21_21 DESIGN SIGHT館長を務め、展覧会も多数企画・開催。著書に『塑する思考』(新潮社)など。
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