「女性の働くを科学する」をテーマに「第2回 人材育成イノベーションフォーラム」を開催!|イベントレポート|組織開発・人材育成

-女性活躍推進を女性個人の努力に丸投げせず、職場ぐるみでの改革を-

2017.06.01

去る5月18日、「第2回 人材育成イノベーションフォーラム」を開催しました。おかげさまで大盛況となったフォーラムの様子をレポートします。

「女性の働くを科学する」をテーマに「第2回 人材育成イノベーションフォーラム」を開催!|イベントレポート_3

参加者巻き込み型のフォーラムで醸成された会場の一体感

参加者巻き込み型のフォーラムで醸成された会場の一体感

「女性の働くを科学する」をテーマに行われた「第2回 人材育成イノベーションフォーラム」。2015年に開始した「女性活躍推進研究」の調査結果や、調査結果をもとに開発した「トランジションマップ」を発表したほか、ワークショップやゲストを招いてのトークセッションを実施しました。

当社代表の眞﨑

開催に先立ち当社代表の眞﨑は、「『女性活躍推進』は非常に抽象的で象徴的なテーマであることから、科学的なアプローチの必要があると考え調査を開始した。大規模かつ深い調査ができたのは皆さまのご協力のおかげ」と来場者に感謝の意を表するとともに、「非常に貴重なデータ、すなわち“真実”のようなものを発見することができた。今日のフォーラムでは、解き明かして終わりではなく解決策も提示していく」とフォーラムに懸ける思いを語りました。

本プロジェクトの共同研究者である中原淳氏

続いて、本プロジェクトの共同研究者である中原淳氏(東京大学准教授※1)が調査結果(概要はこちら)を発表しました。中原氏は、「よくある『聞く』→『聞く』→『聞く』→『帰る』の講演は百害あって一利なし。今日は『聞く』→『クイズする』→『考える』→『対話する』→『チェックする』→『持って帰る』の学習モデルで進めていく」と聴講者の興味を引き付け、Q&anp;A形式のワークショップも取り入れながら調査の概要や分析結果などを紹介。ワークショップでは隣同士で活発な意見交換が行われ、中原氏の正解発表を受けて納得する様子や驚きの声が上がる場面が見られました。
※1 肩書はフォーラム当時のもの

中でも「大変でもやりがいのある仕事をしたい」と答えた男性の割合が女性に比べ明らかに低かったという調査結果に対し、中原氏が「男性活躍推進が必要では?」と冗談を交え話した時には、会場から笑いとざわつきが起こり、なごやかながらも“自身の働く”を見つめ直す良い機会となったことがうかがえました。また聴講者から、「答えを考えさせるクイズ形式は、印象に残りやすい方法だと思った」「能動的に受講できた」などの声が聞かれ、メリハリのある進行によって、より理解を深めていただくことができたようです。

解決策は会社の数だけある
トランジションマップを活用し、手段を探ってほしい

解決策は会社の数だけある。トランジションマップを活用し、手段を探ってほしい

中原氏による調査結果の報告に続き、同日発表した「トランジションマップ」をお披露目しました。「トランジションマップ」は働く男女が昇進に伴う役割移行によってどんな課題に直面し、悪戦苦闘しているのかを可視化したものです。当社人材戦略コンサルティング第一事業部長の川合は、「ここから見えてきた解決策は、女性活躍推進にとどまらず、日本全体が直面する『働き方の見直し』という課題への解にもつながる」とトランジションマップを説明。「人事部は育成計画や支援の仕組み構築に、管理職は職場マネジメントに、女性社員は自身のキャリアデザインに、ワーキングマザーが所属する組織メンバーは多様性の理解や働き方の見直しに利用してほしい」と、それぞれの立場での活用方法も解説し、自社においてどのような場面で活用できるかを真剣に考える聴講者の姿が見られました。

その後のワークショップでは、女性管理職・リーダーの創出や、女性が働きやすい環境づくりを進める上で起こりうる3つの状況を想定し、上司から部下への伝え方でどのような改善策が考えられるのか、聴講者同士での議論が行われました。女性に昇進を打診する際のポイントの答え合わせでは、昇進してもらいたい女性にとって「『なぜ自分なのか』、腹落ちする伝え方をする必要がある。自分自身も(打診された時に)同じ質問をした」と川合の経験談も披露したことで、さらなる納得感が得られたようです。また、「女性が求めているのは平等・誠実・残業の見直し。仕事を割り当てている上司が固定概念を変え、データに基づいて働く女性の実情を理解することから始める必要がある」との提案に大きくうなずく聴講者も。「女性が働きやすい職場は業務の標準化が進んでいる。生産性の向上につながり、職場全体の働き方を大きく改善するきっかけになる」と、女性が働きやすい職場づくりを進めることが、女性だけでなく職場全体のプラスになることも解説しました。

施策を軌道に乗せるには3年必要
企業の生の声に共感広がる

施策を軌道に乗せるには3年必要。企業の生の声に共感広がる

フォーラムの終盤では、東京ワークライフバランス認定企業※2に選出されている株式会社プレスクの湯浅信社長と、育児休暇から復帰し、ワーキングマザーとして活躍する森綾乃さんをゲストに迎え、同社の働き方改革や女性活躍推進への取り組み・課題についてトークセッションを行いました。株式会社プレスクは、長時間労働が常態化しているIT業界にありながらも、積極的にワーク・ライフ・バランス(WLB)を進めている企業。湯浅社長は「2008年に男性社員から育児参加への相談を受け、WLBの必要性を考え始めた。ここ4年間で、月間の平均労働時間は154時間、年間では1850時間まで減らすことに成功した。定時退社が当社の基本姿勢」と、働き方改革推進のきっかけや取り組み方針を語り、WLB講習会の定期開催や、経験者がまとめた産後の復職プログラムの冊子化、ご家族に会社に来てもらう「ファミリーデー」の実施といった施策も紹介しました。WLBを推進できた秘訣としては、「全社員に施策を打ち出し、『制度を使ってみたい』と思わせること」を挙げ、「利用されない制度もあったが、仕組みがないと運用すらできない」「制度が理解され、文化として定着するには3年はかかる」と、企画を立てることや中長期で継続していくことの重要性も説明しました。

※2 選出時。現在の名称は「東京ライフ・ワーク・バランス認定企業」(東京都「TOKYOはたらくネット」より)

社内初の育児休暇取得者となった森さんは、「不安もたくさんあったが、『改善点があったらまずは声を上げてほしい』『一緒に制度をつくっていこう』と理解してくれたことがありがたかった」と自身のエピソードを語った

また、社内初の育児休暇取得者となった森さんは、「不安もたくさんあったが、『改善点があったらまずは声を上げてほしい』『一緒に制度をつくっていこう』と理解してくれたことがありがたかった」と自身のエピソードを語り、ワーキングマザーには周囲の理解が欠かせないという生の声に、女性を中心に多くの聴講者が深くうなずいていました。WLBの推進制度を使った感想としては、「家族参加型のイベントのおかげでコミュニケーションが増えた」「講習会や勉強会を通じて、子育て経験のない社員にも子育てについて理解してもらえるようになった」と、各種施策によって変化した社内の様子をレポートしてくれました。

一方、今後取り組むべき課題として湯浅社長は、「IT業界は長時間労働が当たり前というイメージ。働きやすい環境をつくり、女性がますます活躍する業界になっていくことを、私たちと同じようにWLBに取り組むパートナー企業とも手を組んで広めていきたい」と、社外向けの発信を強化していく考えを披露しました。(湯浅社長の事前インタビューはこちら

最後に中原氏は、「女性の労働問題は、女性個人の努力に丸投げしてはいけない」「制度は他者の理解の上に機能する」と強調し、「経営と働き方改革、女性推進、WLBはトレードオフという考え方には限界がある。これからは、経営と働きやすさをセットで考える時代」とトークセッションを締めくくりました。

次回のフォーラムは来年2月!
職場での取り組みを共有してください

閉会に当たり再度登壇した眞﨑は「今日のフォーラムはある意味はじまり。来年2月に、もう一度『女性の働くを科学する』をテーマに掲げたイベントを開催し、調査結果を受けて出てきた新しい取り組みを紹介する。ぜひご協力いただきたい」と呼び掛けるとともに、6月から提供を開始する新たなプログラムなどを通じ、引き続き女性活躍推進を支援していく考えを示しました。

フォーラムを終え、参加いただいた聴講者からは、「データに基づく考察だったので、会社に持ち帰った時に説得力がある」「今までふわっと考えていたことが、数値として見える化されすっきりした」といった科学的データに基づく結果への信頼の声が寄せられたほか、「ワーキングマザーに責任のある仕事を任せてはいけないという考えがNGであることに驚いた」「勘違いしていた知識・理解が訂正できてよかった」などの感想も聞かれ、非常に有意義なフォーラムとなったようです。

大阪開催は6月14日を予定しています。ご興味がおありの方はぜひお早目にお申込みください。また次回(2018年2月予定)の「人材育成イノベーションフォーラム」の詳細は、順次お知らせしていきます。ご期待ください。

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