慶弔とは|意味や読み、企業の慶弔休暇制度、慶弔見舞金について解説

published公開日:2024.07.05
慶弔とは|意味や読み、企業の慶弔休暇制度、慶弔見舞金について解説
目次

慶弔は、人生の節目に欠かせない儀礼です。企業においても無関係ではなく、社員や取引先に対して適切な対応が求められます。本コラムでは、慶弔の意味や種類、企業における慶弔対応、慶弔休暇制度の導入状況や導入の流れ、慶弔費の相場などを解説します。

慶弔とは

慶弔とは、人生の節目となる出来事に対して行う儀礼や作法のことです。最初に、慶弔の意味や読み方、種類について解説します。

慶弔の意味や読み方

慶弔とは、慶事(慶びごと)と、弔事(お悔やみごと)を合わせた言葉で、「けいちょう」と読みます。慶事は結婚や出産などが該当し、弔事は人が亡くなった際の通夜やお葬式などを指します。

慶弔の種類

企業が関わる慶弔には、社員自身の冠婚葬祭や、取引先に関するものなど、様々な種類があります。具体的な例は以下の通りです。

  社員 取引先
慶事
  • 本人の結婚
  • 家族の結婚
  • 出産
  • 長寿祝い

    など

  • 開店・開業
  • 竣工・落成
  • 創立記念
  • 就任・昇進
  • 受賞・叙勲

    など

弔事
  • 本人の死亡・傷病
  • 家族の死亡・傷病
  • 本人や家族の被災

    など

  • 関係者の死亡
  • 会社の被災

    など

企業における慶弔対応

企業においては、社内外で発生する慶事や弔事に対して適切に対応する必要があります。ここでは、慶弔に関する確認の方法や連絡手段について説明します。

慶弔の確認方法

慶弔対応を行う際には、以下のように4W1Hを意識して、基本事項を確認することが重要です。

  • Who:だれが
  • When:いつ
  • What:何を(どのようなお祝いや不幸)
  • Where:どこで
  • How:どのように対応するか(手配や準備)

慶事への対応

慶事に対応する場合は、以下のように確認します。

  • Who:お祝いの対象となる人
  • When:いつ
  • What:お祝いの内容(結婚、出産、開店祝いなど)
  • Where:お祝いをする場所
  • How:式典がある場合は出欠連絡、お祝い品の手配など

どのように対応するか(How)は、お祝いごとにより異なります。一般的に、社員の結婚式の場合は、出欠の連絡を行い、祝儀や祝電を準備。出産の場合は、お祝い金、お祝いメッセージ、贈りものなどを手配します。取引先のお祝いの場合は、花や品物などを手配することが多いようです。

弔事への対応

社員やその家族が亡くなった場合は、葬儀について確認し、供物や供花、香典、弔電などの手配を行います。葬儀へ参列することもあります。病気やケガ、被災などの見舞いの場合は、見舞金、見舞いメッセージ、見舞品などの手配を行います。

慶弔の連絡手段

慶事(結婚、出産など)や弔事(死去など)の社内連絡は、メール、社内報、社内掲示板などで行います。弔事の場合は、故人や遺族の気持ちやプライバシーへ配慮して行いましょう。

企業における慶弔休暇制度

慶弔休暇とは、慶事や弔事のために会社に申請して取得する休みのことです。重要なライフイベントである慶事や弔事のために、多くの企業が慶弔休暇制度を設けています。

慶弔休暇の法的定義

慶弔休暇は、法律で定められた休暇制度ではなく、企業独自の基準によって付与されるものです。

「特別休暇」として位置づけられる福利厚生の一部であるため、適用となる条件や付与日数は会社によって異なります。「特別休暇」は「法定外休暇」とも呼ばれ、労働基準法で定められる年次有給休暇(法定休暇)とは異なります。会社に慶弔休暇がない場合は、年次有給休暇を使うことになります。

慶弔休暇中の給与

慶弔休暇中の給与についても、有給とするか無給とするかは、企業ごとに対応が異なります。

慶弔休暇が無給であっても、制度があることは重要です。有給休暇の残日数が不足している場合などでも、慶弔休暇を取得することで、欠勤扱いを避けられます。ただし、無給の場合でも、「慶弔見舞金」を支給するケースがあります。「慶弔見舞金」については後述します。

慶弔休暇の種類と日数の目安

では、慶弔休暇にはどんな種類があるのでしょう。1つ1つ解説します。

慶事に関する休暇と日数

慶事に関する休暇は、結婚休暇や出産休暇などがあります。休暇の日数の目安は以下の通りです。

慶事の種類 休暇日数(目安)
本人の結婚 3~5日
子供の結婚 1~2日
配偶者の出産 1~3日

結婚休暇は、従業員本人や従業員の子供が結婚する際に取得するものです。その他の親族の結婚などについて、慶弔休暇の対象に含めるか否かは企業ごとに判断が分かれます。

出産休暇は配偶者が出産するときに取得します。ただし、女性従業員が出産する際に取得する「産前産後休暇」や「育児休暇」は法定休暇となります。

近年では、本人や家族の誕生日に取得できる「バースデー休暇」や、結婚記念日などの「アニバーサリー休暇」などを設ける企業も増えているようです。

弔事に関する休暇と日数

弔事に関する休暇は、家族や親族の葬儀の際に付与されるもので、「忌引き」とも呼ばれます。お悔やみの相手との関係性によって休暇日数が異なることが一般的で、配偶者や親、子など、関係が近いほど日数が長くなる傾向があります。

弔事の種類 関係 休暇日数(目安)
配偶者が亡くなった場合 - 7~10日
父母・子供が亡くなった場合 1親等 5~7日
祖父母や兄弟姉妹が亡くなった場合 2親等 2~3日
伯叔父母や曽祖父母、甥姪が亡くなった場合 3親等以上 0~1日

配偶者が亡くなった場合、一般的に従業員本人が喪主となり、葬儀の手配や進行、その他手続きなどを行います。身体的・精神的な疲労、故人との関係性などを考慮し、他の事由よりも長めの日数を付与する傾向があります。

父母や子供の葬儀に当たっては、5~7日程度の慶弔休暇が付与されることが一般的です。1親等の親族には、配偶者の父母も含まれます。喪主を務める場合や、遠方で葬儀が行われる場合など、個別の事情に応じて休暇日が加算されるケースもあります。

慶弔休暇の対象外となるケース

企業ごとに慶弔休暇に対する考え方は異なりますが、遠縁の人や、血縁ではないけれどお世話になった人の葬儀について規定している企業は少ないようです。一般的に3親等以上の間柄の場合は、慶弔休暇の対象外とされます。

慶弔休暇制度が福利厚生の一部であることを考慮すると、個別の例外を認めることは難しいと考えられます。

慶弔休暇制度の導入状況

2017年に労働政策研究・研修機構が行った調査では、慶弔休暇制度を導入している企業は90.7%、慶弔見舞金制度を導入している企業は86.5%でした。

その他の福利厚生制度の導入状況と比較しても、慶弔休暇制度と慶弔見舞金制度の導入割合は非常に高い結果となりました。企業規模別で見ても割合の差は少なく、多くの企業で取り入れられていることがわかります。

企業規模(従業員数) 慶弔休暇制度 慶弔見舞金制度
全体 90.7% 86.5%
30人未満 87.6% 83.1%
30~99人 94.1% 89.7%
100~299人 96.1% 92.6%
300人以上 97.0% 95.5%

*参考:労働政策研究・研修機構「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」

慶弔休暇制度を導入する際の流れと注意点

では、実際に慶弔休暇制度を導入する場合、どのようなポイントに気をつければよいでしょう。ここでは、慶弔休暇制度の導入の流れと注意点を解説します。

制度の適用条件を確認する

まずは、慶弔休暇制度の適用となる条件や範囲を決めます。どのような行事や出来事を対象に、慶弔休暇を何日付与するか。有給か無給か、親族とは何親等まで対象かなどを定義します。

慶弔休暇の適用に関する検討事項(例)

対象者
  • 雇用形態
  • 勤続年数(入社半年以降など)
申請時期
  • 慶事の場合:何日前まで
  • 弔事の場合:何日以内
取得日数
  • 付与日数のカウント方法(営業日のみ、または土日を含める)
  • 分割取得の可否
取得時期
  • 取得期限(本人の結婚の場合など)

休暇取得の申請方法を決める

休暇取得の申請に当たっては、以下のような事項を従業員が記入します。記入漏れや間違いがないよう、フォーマットを用意しておくとよいでしょう。

    慶弔休暇取得における申請事項(例)

  • 申請者名
  • 取得希望日・期間
  • 理由

    *証明書の有無(入籍届・結婚式の招待状、出生証明書、会葬礼状など)

  • 休暇中の連絡先

慶事・弔事ともに申請方法は同じであることが多いですが、慶びごととお悔やみごとは正反対の性質があります。特に弔事の場合は、従業員の心情に寄り添った対応が求められます。連絡を受けた際は、従業員の状況を考え、丁寧にコミュニケーションを取りましょう。

就業規則に規程を追加する

制度の詳細を決め、就業規則に「慶弔休暇制度」に関する事項を追加します。就業規則を変更する際は、従業員の代表者の意見を聞き、所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります(労働基準法89条、90条、92条)。

就業規則はいつでも従業員が参照できるように掲示、もしくは交付して周知しましょう(労働基準法106条)。

*参考:労働基準法「89条、90条、92条、106条」

慶弔費(慶弔見舞金)

最後に、慶弔費(慶弔見舞金)について解説します。慶弔費の金額の相場や香典との違い、経理処理の方法などを見ていきましょう。

慶弔費の金額の相場

実際の慶弔費の金額については、企業によって規定が異なり、金額には大きな幅があります。以下は一般的な金額の相場です。慶弔費の制度を作る際などにお役立てください。

慶弔費の種類 金額相場
結婚祝い金 1~3万円
出産祝い金 1~3万円
死亡弔慰金(本人) 5~10万円
死亡弔慰金(家族) 1~5万円
傷病見舞金 1~3万円
災害見舞金 2~10万円

慶弔費と香典との違い

慶弔費と葬儀の際に準備する「香典」は、性質が異なります。慶弔費は福利厚生の一部であるのに対し、香典は葬儀で霊前に供えるものです。

香典袋には「御霊前」と「御仏前」があり、仏教では「四十九日」を境に使い分けます。四十九日より前のお通夜や葬儀・告別式で使用されるものは「御霊前」。「御仏前」は四十九日の法要以降に使われます。

葬儀に関わる慶弔費は、「死亡弔慰金」や「弔慰金」と呼ばれます。慶弔費は、家族が亡くなったときに、企業から従業員本人に支払われます。従業員本人が亡くなった場合は、企業から遺族に支払われることになります。

慶弔費の経理処理

祝い金や見舞金、弔慰金など、社内で支給される慶弔費には消費税がかかりません。しかし、物品を購入して支給する場合は消費税が発生します。

一方、社外への慶弔費は交際費として処理します。冠婚葬祭の場では、領収書がないことが多いため、精算書類に情報を記載して出金を証明します。式典の招待状や会葬礼状を添付するのもよいでしょう。