ITエンジニア・SEの人手が不足?人材不足解消に有効な「意外な方法」とは

published公開日:2017.10.05
エンジニアは、2020年には30万人不足すると言われています。今でも「エンジニアが採れない」というお声をよく聞きますが、今後はさらに獲得が難しくなることが予想されます。エンジニア不足を解決する有効な方法とは何でしょうか。今回のコラムでは、エンジニアを取り巻く環境から人材不足解消の方法を考えたいと思います。

今後も拡大するエンジニア不足、激化する獲得競争

ITエンジニア(以下、エンジニア)は慢性的に不足しています。経済産業省の調査によると、需要に対して2015年時点で17万人のエンジニアが不足しており、2020年には30万人のエンジニアが不足すると予測されています※1。2020年ごろまで続く大型のIT関連投資や情報セキュリティ等に対するニーズの増大、IoTなど新しい技術・サービスの登場によるIT活用の高度化・多様化の進展がもたらす中長期的なIT需要の拡大、など、エンジニアの需要は高まるばかりです。
また、下図を見ると日本はアメリカに比べると圧倒的に特定業種(IT業)にエンジニアが偏在していることが分かります※2。今後、本格的なデジタルシフトが起こると、幅広い業種においてエンジニアが求められ、エンジニアの獲得競争が激化することも考えられます。

日米の情報処理・通信に携わる人材の割合【産業別】(2015年)|人材育成コラム_4

では、エンジニアを獲得できるかどうかを左右するものは何でしょうか。
IT人材白書によると、「IT企業IT技術者の仕事や職場の環境に対する満足度」を調べた調査で「成果に対する評価」「給与・報酬」「スキルアップに対する会社の支援」「キャリアについての今後の見通し」については相対的に満足度が低い結果となっています。「日本の経営者はアメリカに比べてITに対する理解がない」といった声を聞くこともありますが、例えばずっと営業畑だったという経営者が、これまで自分が歩んできたキャリアではIT技術者の仕事に詳しく触れる機会がなく、IT技術者の仕事内容を正確に把握できないことがあるようです。「頑張っているのは分かるが、どう評価すればよいのか分からないし、どう育てれば良いのかも分からない。」こうした事情が、「理解がない」といった声や評価やキャリアについての不満を生んでいる一因ではないでしょうか。他方エンジニアも、一方的に「評価が低い」と不満を言うだけでなく、自社ビジネスを詳細に理解し、その中に自分の仕事を位置づけ、きちんと価値を可視化する努力が必要かもしれません。

また同白書では「人材不足改善の取り組みのうち効果があったもの」を各企業に聞いており、その結果「社内人材の育成強化」(66.0%)が「多様な人材の採用・活用」(49.0%)を上回り最も多い回答となっています。人材獲得に力を入れるのも大切ですが、新しいエンジニアを採用するよりも社内のエンジニアに対して投資する方が人材不足改善に効果的というのは大変興味深い調査結果です。

※1 出典「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」(2016年、経済産業省)

※2 出典「IT人材白書2017」(2017年、独立行政法人情報処理推進機構)

エンジニアの仕事とは?

ところで、一口にエンジニアと言っても、その種類と求められるスキルは様々です。代表的なところでは、プログラマ、SE、運用保守担当、ITコンサルタント、インフラエンジニアといった職種があります。

職種 仕事内容の例
プログラマ ITシステムの設計書を基に、プログラミング言語を駆使してプログラムを作成し、システムやソフトウェアをつくる仕事です。
SE(システムエンジニア) どういうITシステムにすれば顧客の要望が満たされるか、経営課題の改善案をシステムに落とし込む為の設計や要件定義を行います。
運用保守担当 システムが安定稼動するようにサポートするのが、システム運用管理・保守の仕事です。
さまざまなシステムのメンテナンスや監視、 運用上で問題が出た場合などに対処する役割を担っています。
ITコンサルタント 顧客のビジネスについて現状分析し、最適なITシステムを提案する仕事です。SEよりも、さらに顧客のビジネス目標達成・経営課題解決に重きを置いている点が特徴です。
インフラエンジニア サーバーやネットワークなど、目的に応じて通信インフラの環境を整備することが主な仕事です。
トラブル発生時に迅速に対処できるよう、対処法を事前に予習しておくことが義務づけられています。

いずれの職種も「システム」や「ネットワーク」という単語が登場する辺りからイメージされるのは、いわゆる「理系男子」の活躍する姿でしょうか。実際、男女比は87:13という調査もあり※3、圧倒的に男性の割合が高くなっています。しかし、理系文系比では、実は「文系」出身者も多く、4割が文系出身者という調査結果もあります。

エンジニアといえばずっとコンピュータと向かい合って作業をしている姿を想像される方もいらっしゃるかもしれませんが、上記の通り顧客のニーズに応える仕事ですから、専門知識と同様にコミュニケーションや傾聴などのスキルも大切です。更に、エンジニアというと「忙しい」「業務がきつい」という印象があることもよく耳にしますが、「在宅でも可」を謳うエンジニアの求人が散見されるように、エンジニアこそ多様な働き方に対応しやすい職種とも言えます。こうした観点で見ると、文系出身のIT技術者も、女性のIT技術者も、もっと増えても良いのではないでしょうか。

※3 出典「2016年版 情報サービス産業基本統計調査」

専門知識と同様にエンジニアに求められるビジネススキル

前述の調査(IT人材白書)で「スキルアップに対する会社の支援」「キャリアについての今後の見通し」についての満足度が低いとありましたが、同調査の中で「技術の変化に合わせて自分もスキルアップしなければならないと思う」というエンジニアは9割にも上っています。それだけ変化の激しい世界であると考えられますが、AI(人工知能)の進化によって、エンジニアが現在行っている仕事のある程度の部分がAIに置き換わることも十分考えられます。このため、当社のクライアントの中には「エンジニアの枠を超え、まずは"ビジネスパーソンとして一流"であること」を社員に求めているIT企業もあります。プログラミングだけを請け負うのではなく、プロジェクトの成功という共通のゴールに向かって顧客のニーズを汲み取り、提案し、チームをリードすることがエンジニアにも求められているのです。

顧客のニーズをITシステムの設計書に、さらに設計書をプログラムに"翻訳"するのがエンジニアの仕事と考えると、職種ごとの専門知識に加えてより上流工程の理解やコミュニケーション力も必須となります。当社が提供するITエンジニア養成のための教育プログラムも、専門知識はもちろんのこと、コミュニケーションや仕事の進め方、コンプライアンスといった、ビジネスパーソンとして必須となるスキルも並行して学んでいただきます。おかげさまで、受講をお申込みいただいた企業のご担当者からは「現場で使える」エンジニアに育ってくれたと評価のお声を多数をいただいています。