MECEとは|フレームワークの具体例や使い方をわかりやすく解説

update更新日:2025.02.19 published公開日:2017.11.21
MECEとは|フレームワークの具体例や使い方をわかりやすく解説
目次

仕事を進めていくうえで重要なロジカルシンキング。このロジカルシンキングの基本概念の1つにMECE(ミーシー)があります。

MECEは業界や職種を問わず世界中の様々なビジネスシーンで導入・活用されていますが、どんなメリットがあるのでしょうか?

本コラムでは、MECEの基本的な意味や具体例、ビジネス上のメリットや活用できるフレームワークなどについて解説します。

MECEとは?基本的な意味と具体例

MECEとは、「漏れなくダブりなく」という意味のロジカルシンキングの基本概念の1つです。英語の「Mutually Exclusive Collectively Exhaustive」の頭文字をとったもので、読み方は「ミーシー」「ミッシー」などと読みます。

MECEはビジネスシーンだけでなく日常生活においても様々なシーンで役立てることができる考え方です。

MECEの基本的な意味や具体例、注目されている背景などについて解説します。

MECEとは?「漏れなくダブりなく」の概念

MECEとは、次の4つの単語の頭文字をとったものです。

「Mutually(相互に)」

「Exclusive(排他的な)」

「Collectively(集合に)」

「Exhaustive(包括的な)」

意味をそのまま直訳すると、「相互に排他的で、包括的な集合」となりますが、わかりやすく表現すると「抜け漏れなくダブりのない状態」となります。

MECEは、国際的なコンサルティング会社であるマッキンゼー・アンド・カンパニーに所属していたバーバラ・ミント氏が最初に考案した概念で、同社の社内用語として定着したのち、全世界的なビジネスシーンで用いられるようになりました。*

物事を整理・思考する際に、抜け漏れやダブりがあると全体像を正しく把握することができず、最悪の場合誤った結論を導き出してしまう可能性があります。MECEの考え方を使えば、大きなアイデアや課題、トピックなどを小さな要素に分類して整理することが可能です。MECEはロジカルシンキングに必要かつ有効な手段といえます。

*参考:McKinsey & Company

MECEが重視される理由

MECEは、特にビジネス上の問題解決や戦略立案などで多く用いられています。膨大な量のデータや情報、あるいは複雑な課題やアイデアについて検討する際、MECEの考え方を使うことで、効率的かつ効果的な分析が可能になるからです。

「漏れなくダブりなく」を意識した分類は、意思決定や業務改善に役立ちます。例えば、ある課題に対して解決策を考える際、MECEに分解することで、全体の把握と必要な対応を網羅できるでしょう。

また、MECEを使うことで、関係者間での認識のズレが少なくなり、スムーズなコミュニケーションや共通理解が進みやすくなります。そのため、MECEは問題解決の基本となるスキルとして多くのビジネスシーンで取り入れられているのです。

MECEの具体例

「漏れなくダブりのない状態」という言葉だけでは、MECEな状態をイメージしにくいかもしれません。

そこで、あなたの会社に勤めている従業員を例にして、MECEの具体例を考えてみましょう。

例えば、従業員を「20代」と「管理職」に分けた場合にはMECEといえるでしょうか。この場合、例えば「30代以上の非管理職」は分類から漏れてしまいますし、「20代の管理職」はダブってしまうため、MECEの状態とはいえません。

10代、20代、30代...と、全員を年代ごとに区切っていくと、漏れなくダブりのない状態、つまりMECEで全体を分けることができます。この場合、「年齢は〇月〇日時点で判断する」「管理職とは△△より上位の職掌を指す」など、定義を明確にしておくことも大切です。

MECEの分け方、わかりやすい分類法とは

MECEに基づいて情報を分けることで、見落としを防ぎ、効率的かつ論理的に課題を整理できます。

ここでは、MECEを実現するための分け方を紹介し、効果的な分類法を解説します。

MECEの分け方

MECEの分け方としては、基本的に以下の3つの手順で進めるとよいでしょう。

  1. ①対象となる課題や情報の定義とMECEの目的の設定をする
  2. ②適切なアプローチ法を用いて大まかな要素に分解する
  3. ③大まかな要素をさらに細かく分解する

まずは、MECEの対象となる課題や情報を定義し、MECEの目的を設定します。ここが曖昧なままだと、検討を進めていくうえで定義の理解に齟齬が生じたり、手段が目的化したりしてしまう恐れがありますので、定義や設定を明確にしておきましょう。

対象の定義や目的が定まったら、まずは適切なアプローチ法を用いて対象を大まかな要素に分解します。そして、因数分解や要素分解などの分類法を使って、さらに細かくそれらの要素を分解していきましょう。

トップダウンアプローチとボトムアップアプローチの使い方

MECEの分解には、トップダウンアプローチとボトムアップアプローチという2つの方法があります。

トップダウンアプローチは、まず大きな枠組みを決めてから、その枠の中で詳細に分解していく手法です。例えば、売上高の減少要因を分析する際、市場環境の変化や顧客行動などマクロな観点で原因を分析していきます。目的が明確で、分類基準を決めやすい場合に有効で、構造的に全体像を把握しやすいというメリットがあります。

一方、ボトムアップアプローチは、個別の要素を先に洗い出し、関連性に基づいてグルーピングして、全体構造を作り上げる方法です。売上高の例でいえば、営業支社や営業社員ごとの売上高など、個別の要素を積み上げて全体を分析していきます。複雑なテーマや全体像が不明確な場合には、ボトムアップアプローチで進めると効果的です。

状況や目的に応じてこの2つのアプローチを使い分けることで、MECEに沿った明確で抜け漏れのない構造が作りやすくなります。

要素分解と因数分解

要素分解と因数分解も、MECEの観点で頻繁に利用される手法です。

要素分解は、分析対象を構成する要素に分け、それぞれが全体のどの部分に当たるのかを見極めます。例えば、「マーケティング」を「広告」「販売促進」「PR」と分けるように、構成要素ごとに整理する方法です。全体の中から各要素の役割や構造が明確になるというメリットがあります。

因数分解は、要素を数式のように表し、各要素の影響度を数値的に分析する方法です。例えば、売上を客数×単価として分解し、それぞれの要素を個別に分析することで、全体に影響する要素を明確化できます。

このような分解方法を組み合わせることで、MECEの視点に立った問題解決が実現するのです。

MECEに活用できる主要フレームワーク一覧

いきなりMECEに物事を考えようとしても、ゼロからMECEを作り出すのはそう簡単ではありません。

そこで役に立つのがフレームワークです。フレームワークとは、枠組みや構造といった意味ですが、ビジネスの場面においては、分析・戦略立案・問題解決を進めるための、効率的な考え方の枠組みを指しています。

MECEに活用できるフレームワークとしては以下のようなものがあります。

【MECEに活用できる主要フレームワーク一覧】

3C 「Customer」「Competitor」「Company」の要素に分解
SWOT分析 「Strength」「Weakness」「Opportunity」「Threat」の要素に分解
PEST 「Politics」「Economy」「Society」「Technology」の要素に分解
QCD 「Quality」「Cost」「Delivery」の要素に分解
4P 「Product」「Price」「Place」「Promotion」の要素に分解
ロジックツリー 要素をツリー状に分解

一覧にある代表的なフレームワークについて、それぞれの特徴や使い方などを解説します。

3C

3Cは事業の問題点・改善点を考える際の基本となるフレームワークです。新規事業の立ち上げ時などに、事業や商品のターゲットとなる市場分析に用いられます。3Cとは、以下3つの単語の頭文字からなります。

Company(自社)

Competitor(競合)

Customer(市場・顧客)

企業をとりまいている環境を「自社」「競合」「市場・顧客」の3分野から分析し、マーケティングや事業戦略に役立てるのが3Cの手法です。

SWOT分析

SWOT分析は、市場における自社の強みや弱みといった環境を分析するためのフレームワークです。主に市場分析、競合分析などで使用されます。

SWOTは以下4つの単語の頭文字からなり、読み方は「スウォット」などと読みます。

Strength(強み)

Weakness(弱み)

Opportunity(機会)

Threat(脅威)

SWOT分析は、強みと弱みという観点が導入されているため、マーケティングや環境分析にくわえて、競合他社との比較や事業戦略の立案の際に役立ちます。

QCD

QCDは主に製造業や生産管理の場で重要視される要素です。また社内で業務改善を考える際にもこの切り口がよく用いられます。

QCDとは以下3つの単語の頭文字をとったものです。

Quality(品質)

Cost(価格)

Delivery(納期)

製造業の場合は、これにSafety(安全)を加えて「SQCD」と呼ぶ場合もあります。

QCDは元々製造現場から生まれた管理手法ですが、業務改善やプロセスのマネジメントなど幅広く活用することが可能です。

PEST

企業を取り巻く、制御不可能な外部環境のことをマクロ環境といいますが、PEST分析はそのマクロ環境を政治、経済、社会、技術といった4つの観点から分析するためのフレームワークです。

PESTは以下4つの単語の頭文字からなります。

Politics(政治)

Economy(経済)

Society(社会)

Technology(技術)

PESTは外部環境に着目してマクロな視点で分析を行う手法で、主に新規の事業展開や事業エリア・分野の拡大時などの分析に役立ちます。

4P

4Pは、主にマーケティング戦略を考える際に使われるフレームワークで、マーケティングミックスとも呼ばれます。

4Pは以下4つの単語の頭文字からなります。

Product(製品)

Price(価格)

Place(場所)

Promotion(販売促進)

4Pは、自社の商品やサービスを分析する際に役立つ手法です。4つの視点をもとに、具体的なマーケティング戦略や施策を立案していくこともできるでしょう。

ロジックツリーの活用方法

ロジックツリーは、情報を構造化し視覚化することで論理的に思考する手法です。問題をツリー状に分解していき、その本質的な原因や解決策を見いだすために使用します。

ロジックツリーを作成する際には、基本的に、ツリーの構成要素がその1つ下の下位要素の合計となるように注意しましょう。これにより漏れや重複を防ぎ、理想的なMECEの状態をつくることが可能です。

ビジネスシーンでのMECEの必要性とメリット

1つのコンサルティング会社で使われていた概念MECEが、世界中に広まったのはなぜでしょうか。

ここでは、MECEのビジネスシーンにおける必要性とメリットについて解説します。

論理的な問題解決を可能にするMECE

ビジネスでの課題は複雑で、全体を網羅しながら解決策を見いだすにはMECEの思考が重要です。

MECEによって課題を整理し、要素を「漏れなくダブりなく」分解すると、問題の全体像が明確になり、優先すべきポイントが浮き彫りになります。例えば、売上低迷の原因を分析する際、MECEを活用して「顧客数」「単価」「リピート率」といった要素に分ければ、具体的にどこに問題があるかがわかりやすくなります。

こうした論理的アプローチは、解決策の質を高め、より実行可能な対策を生むための第一歩です。

効率的なコミュニケーションへの寄与

MECEを活用した分類は、関係者間での意思疎通を円滑にします。

MECEのフレームワークで構造化した情報は誰にとっても理解しやすく、無駄な重複や漏れがないため、議論がスムーズに進みます。例えば、プロジェクトの進行中に各タスクをMECEに基づいて整理することで、誰がどの部分を担当し、何が完了しているかを明確に把握でき、コミュニケーションの効率が向上するでしょう。

このため、MECEはチームでの協力作業や意思決定の場面でも大いに役立ちます。

MECEの訓練方法と日常生活での実践

MECEのスキルは訓練によって高めることができます。

日常生活での実践として、まずは日々のTo-DoリストをMECEにしたがって分類する方法が効果的です。例えば、「緊急」「重要」「それ以外」といった分類を行うことで、優先順位が明確になり、効率的に日常業務を進められます。また、ニュースやビジネス書を読む際も、内容をMECEで整理する練習を行うと、情報の理解や思考力が向上するでしょう。

こうした訓練を重ねることで、MECE思考が身につき、ビジネスの場での活用が容易になるというメリットがあります。

MECEの注意点と課題

漏れなくダブりなくというMECEの考え方は、様々な問題や事象を整理し思考するために有用なものです。

しかし、MECEを有効に実行するためにはいくつか気をつけるべき注意点があります。

最後に、MECEに考えるときの注意点や上手に活用するポイントなどを解説します。

分類すること自体が目的にならないようにする

MECEはあくまで、物事を思考しやすいように全体像を整理するための考え方です。真の目的は、MECEに物事を整理した後に解決策を見いだすなど、その先にあるはずです。分類することにこだわり、本来の目的がおろそかにならないよう注意しましょう。

また、無理に分類をした結果、誤った思考や結論を導くことにもつながりかねません。そのため、できるだけの分類を行うことは間違いではありませんが、分類できないこともある、ということを念頭に置いておきましょう。

漏れのリスクを防ぐための注意点

MECEを使うときは「漏れ」を防ぐ意識が大切です。

要素の洗い出しをするとき、初期の段階で重要な要素を見落とすと、後の工程で問題解決の大きな障害となるリスクがあります。

複数の視点から見直したり、他のメンバーと確認しながら進めたりすると、より広範な漏れのない分類が可能です。チームでのブレインストーミングや、類似ケースの参照なども、効果的な漏れ防止の手段といえます。

MECEを上手に仕事で活用するには

MECEを効果的に活用するには、日々の業務で使い慣れていくことが大切です。具体的には、日常的なタスク管理やプロジェクトの見直しにMECEの思考を取り入れ、複雑な問題も「漏れなくダブりなく」分けて整理する習慣をつけることが効果的です。例えば、プロジェクトの進捗管理や新製品の企画において、MECEを意識することで全体像を把握しやすくなり、問題の早期発見や迅速な対策に役立ちます。

「全体像の整理が苦手」「考えをうまくまとめられない」などのお悩みがあれば、ぜひMECEな考え方を取り入れ、ご紹介した代表的なフレームワークを活用してみてください。きっと仕事の効率を上げられるはずです。

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